日本小児看護学会誌
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15 巻, 2 号
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  • 鎌田 佳奈美, 楢木野 裕美
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 1-7
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、質的帰納的研究方法を用いて、入院初期の被虐待児に対して看護師がどのようにケアしているかを明らかにした。研究参加者は、常時、被虐待児が入院している小児病棟に5年以上勤務した経験のある看護師12名であり、半構成的質問紙を用いて面接をし、KJ法の手法を一部取り入れて分析を行った。看護師のケアが明確になるよう統合した結果、7の上位カテゴリーを抽出した。看護師は入院初期の被虐待児に対して、【日常生活を脅かさない】ケアを行うことで、彼らの不安や恐怖心の軽減に努め、肯定的な人間関係を形成するために【人との温かい関係を経験してもらう】ケアを行っていた。そして、被虐待児の言動の変化を見極め、【自己調整能力を培うことをサポートする】ケアを展開していた。また、これらのケアの前提には、被虐待児の【言動の背後にあるものがわかる】【看護師自身の感情をコントロールする】【他機関・チーム間で協働する】ことが必要であり、看護師には【被虐待児が生きていく力を培うことを目指す】という認識が存在していた。
  • 薬師神 裕子, 村上 笑子, 中村 慶子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 8-14
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、小児看護学実習における学生の体験から、学生が描いた関連図の特徴や学びを分析し、関連図を活用した実習での学習効果を明らかにすることである。実習を終了した4年制大学の3年生42名を対象に、関連図を用いた実習展開の学びについて自由記述式のアンケート調査を実施し、内容分析を行った。学生の自由記述の分析結果から、関連図を用いた学習効果に関する内容として230のコードと8つのカテゴリーを抽出した。カテゴリーは、さらに学生の実習展開を発展させた要因と、逆に実習展開を困難にした要因の二群に分類できた。学生の実習展開を発展させた要因は、【看護過程における論理的思考の強化】、【対象理解】、【情報の整理統合】、【関連図の効果的活用】であった。一方、実習展開を困難にした要因は、【描き方の難しさによる混乱】、【修正の繰り返し】、【枠組みのない情報収集とアセスメント不足に対する不安】、【情報収集・整理の難しさ】であった。関連図を活用した実習は、看護過程における学生の論理的思考を強化し、情報を整理統合する能力を育成するだけでなく、対象に応じた個別性のある看護計画の立案や、根拠に基づいた介入方法やケアの実践を促進する効果があることが示唆された。
  • 高木 亜希子, 法橋 尚宏
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 15-21
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    Prader-willi症候群の子ども(PWS児)をもつ母親のQOLをPWS児の食行動の変化に応じた年齢区分別に評価し、それと食事療法との相関を検討することで、看護支援への示唆を得ることを本研究の目的とした。自記式質問紙を用いた郵送法による調査を実施し、母親135名の有効回答を分析した。WHO QOL26の「QOL平均値」は1歳以上6歳未満よりも12歳以上18歳以下のPWS児をもつ母親のほうが有意に低く、領域別にみると「心理的領域」「社会的関係」「環境」「全体」で有意に低かった。母親は長期にわたり常にストレスを感じ、療育上の不安や困難を抱えていることが考えられた。また、1歳以上6歳未満のPWS児をもつ母親では「盗み食いの頻度」が、12歳以上18歳以下のPWS児をもつ母親では「食事療法が家族に与える影響度」「学校生活での食事療法の協力度」が母親のQOLと相関関係があった。これらより、食事療法を継続できるような環境を整え、母親への継続した支援が必要であることが示唆された。
  • 仁尾 かおり, 藤原 千恵子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 22-29
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、先天性心疾患をもち生活に制限をかかえる思春期にある人のレジリエンスの要素の具体的内容を明らかにすることを目的とした。先天性心疾患をもつ15〜18歳の高校生16名を対象とし、面接ガイドに基づいた自由回答式の半構成面接を行った。データは質的帰納的に分析し、レジリエンスを構成する内容を抽出した後、Grotbergの考え方に基づいて、"I Have""I Am""I Can"のレジリエンスの要素に分類した。その結果、"I Have"には【病気をもつ自分を支えてくれる友達がいる】他3カテゴリー、"I Am"には【将来に夢をもっている】他3カテゴリー、"I Can"には【人に頼らずに自分で病気の管理ができる】他2カテゴリーが分類された。本研究より、先天性心疾患をもつ思春期にある人は、自分の病気を受け入ようとし、自立に向けて病気を自分で管理できると実感できることがレジリエンスの具体的内容の一つとして重要であると考えられた。
  • 大西 文子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 30-38
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、点頭てんかんを持つ子どもの母親11名を対象に、日常生活における療育体験とその思いを明らかにすることであった。母親の療育体験とその思いは、点頭てんかんの早期確定診断・早期ACTH治療の開始の希望とそれができなかったことへの後悔、病気に対する不十分な告知のために発作が止まって訓練をしたら発達するという思いで必死になって訓練に通った、日常生活における具体的な過ごし方が分からない、などがあり、医師・看護師の不適切な対処への不満があった。母親の希望として、重積発作に対する救急体制整備、入院中の付き添う母親の人権尊重や生活条件の確保、療育体制の改善や情報提供、きょうだいや学校および社会の偏見への改善があった。その他では、母親は24時間ケアが集中する母親のストレスに対するコーピング行動を持っていること、母親の癒しは家庭とこの子の笑顔、この子のおかげで価値観が変わった、があった。
  • 恩田 清美, 上別府 圭子, 杉本 陽子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 39-45
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    小児がんの在宅療養は家族にとって有意義なものであると同時に家族への影響が大きい。特に母親への影響は大きいと言われている。本研究は子どものターミナル期の在宅療養を経験した母親の語りから、母親を含む家族内の各サブシステムの関係の中で、母親が各家族成員の反応をどのように体験しているかを明らかにすることを目的に行った。対象は、過去1年以内に在宅療養していたターミナル期の子供を持つ母親5例で、半構造型面接を行い得られたデータを質的に分析した。分析の結果母親の体験は、父親に対しては《感謝する》《立場を思いやる》《関係がギクシャクする》、祖父母に対しては《感謝する》《立場を思いやる》、きょうだいに対しては《感謝する》《申し訳なさを感じる》《満足する》《困惑する》《きょうだいに気がつかない》のカテゴリーが抽出された。在宅療養中の家族サブシステムの中で、母親はさまざまな体験をしていることから、各サブシステムごとに必要な家族看護支援や今後の課題が明らかになった。
  • 橋爪 永子, 杉本 陽子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 46-52
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    小児がん患児の父親への援助について考えるために、患児の発症前後での父親の生活や役割意識の変化を明らかにすることを目的に、入院中及び外来通院中の発症後5年以内の小児がん患児の父親を対象に質問紙調査を行った(回収数42、回収率61.8%)。その結果、患児の入院中に父親が家事と育児に費やす時間は増加し、仕事、睡眠、趣味や娯楽の時間は減少していた。患児の発症後に家事や家族の健康管理、悩みの相談相手、子どもの世話やしつけを父親の役割と考える父親は増加していた。患児の入院中、父親が仕事や個人の時間を削り、家庭生活を維持するための時間を捻出していることがうかがえ、患児の発症による精神的苦痛に加え、家事や育児の負担の増える中、休養やリフレッシュする時間を十分とれず、心身共に厳しい状況にあると考えられた。父親の状況に配慮した関わりと、父親が受けているサポートをアセスメントし、対応する必要がある。
  • 奈良間 美保, 堀 妙子, 田中 千代, 宮城島 恭子, 松岡 真里
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 53-60
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、病院勤務の看護師における小児在宅ケアに関する看護師の理解、実施、気持ちの特徴を明らかにすること、包括的支援の実践能力向上を目標に教育プログラムを提供し、看護師の理解、実施の変化を明らかにすることであった。病院で小児在宅ケアに携わる看護師14名を対象に、在宅療養児と家族のケアモデルに基づきコーディネーター研修会を5回開催し、研修会前・中・後に包括的支援の理解、実施、気持ち、看護師の主観的変化について質問紙調査を行った。その結果、看護師は研修会前から小児の日常生活の世話を理解、実施していたが、親子の相互作用を意図した支援、継続看護や他職種との連携は必要性を理解しながらも充分に実施できず、社会資源の活用は理解も実施もできていないとの回答が多く、ケアへの否定的気持ちを持つ者も多かった。研修会中に理解や実施の自己評価が低下する者もいたが、多くは事例検討後に上昇し、教育プログラムの効果が示唆された。
  • 大池 真樹
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 61-67
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、幼児がどのように手術に伴う短期入院中の体験を理解するのかを明らかにし、幼児の体験への理解を促す看護援助を検討することである。総合病院の小児病棟に手術目的で予約入院した幼児11名とその母親11名を対象とし、絵本によるオリエンテーションを行い、質問紙調査、参加観察法により得られたデータを質的に分析した。分析の結果、入院中の体験について、入院を環境の違いとして理解し、入院後の体験を手術の過程の一部としてではなく、断片的に捉えていた幼児と、病気を治すという入院目的が分かり、一つ一つの体験を手術の一連の流れとして理解していた幼児がいた。そして、短期入院中、幼児は、新しい環境に適応しなければならない状況の中で、体験前に絵本を見ることで知っている体験が増えたことや、入院中の母親の存在により、体験に対する不安が軽減され、一つ一つの体験を乗り越える力が引き出されていたことが明らかになった。
  • 山田 知子, 浅野 みどり, 杉浦 太一, 三浦 清世美, 石黒 彩子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 68-75
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    思春期にある喘息児(以下思春期児と略す)が医療従事者との協働において自分自身や医師,看護師の役割をどのように認識しているのか,協働において何が大切だと認識しているのかを明らかにすることを目的に,小児科外来に通院する13〜18歳の喘息児11名に半構成的面接を行った。思春期児は自分自身の役割を,「医師への報告』,「指示された治療を守ること』,『生活の調整』であると認識していた。医師の役割を,『自分にあった治療方法を見つける』,「自分にあった治療方法をアドバイスする』と,看護師の役割を,「見守り』,『第二の支援者』,『苦痛から守る』,『協働のメンバーと意識していない』と認識していた。協働において大切なことは,『支援の実感』,「治したいという意思』,『治療に納得がいく』,『自立心』,『成果の実感』,『信頼関係』,『責任感』,『対話』であると認識していた。思春期児は治療計画管理における主体的な参加を望んでおり,思春期児の視点に立った目標設定と,それぞれの役割遂行をエンパワメントしていくことの重要性が示唆された。
  • 遠藤 芳子, 片桐 千鶴, 高橋 昭恵, 永澤 直子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 76-81
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、前回研究の結果得られた「点滴を施行される子どもを処置室の外で待つ母親の疑問・不安・恐怖」の緩和を目的として改善した「子どもの入院時対応『心得」」と新たに作成したパンフレット「お待ちいただいている御家族の方へ」を使用した看護の効果を明らかにするために実施した。初めて子どもが入院し点滴することになった母親を対象とし、「処置室の外に出された時・外で待っている時・点滴が終了して子どもと再会した時」の3場面での気持ちを面接によって収集した。その結果、母親の気持ちは、3場面において『安心』が出された。また、『恐怖』が出されなかったことから、今回の改善策の実施は母親の気持ちを安心させる効果があったと考えられたが、依然として「疑問・不安』が出されたことに対しては、処置時に母親に付き添ってもらうなどの改善策や母親への対応方法、パンフレット提示方法の検討が必要である。
  • 涌水 理恵, 上別府 圭子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 82-89
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
  • 山下 早苗, 真鍋 美貴, 高野 政子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 90-97
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、外来通院している小児がん患者への告知に対する親のコーピングを明らかにし、コーピングに影響を及ぼす要因を分析することである。9歳以上の告知を受けていない小児がん患者の親17ケースを対象に、質問紙調査を行った。子どもへの告知に対して親が行っていたコーピングは「問題解決」と「医療者サポートによる情報収集」のみで、「社会的サポートによる情報収集」は行わない傾向を示した。親は情報収集源が少ない状態で、子どもへの告知に対する意思決定への取り組みを行っていることが明らかになった。また、子どもへの告知に対する親のコーピングには、「子どもの現在の年齢」と「寛解期間」が影響していた。子どもの年齢が思春期である時期や寛解期間が0〜3年という時期は、小児がんの子どもをもつ親にとって告知に対する不確かさの強い時期となるが、コーピングを高める機会になっていることが示唆された。
  • 霜田 敏子, 井上 寛隆, 原嶋 朝子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 98-104
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
  • 種吉 啓子, 法橋 尚宏
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 105-111
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、摂食障害と家族機能に注目し文献検討を行い、最近11年間に報告された研究結果を明確にすることで、有効な家族支援に対する示唆と摂食障害と家族機能に関する研究の課題を見出すことを目的とした。1995年から2005年までの国内文献43件と国外文献31件を検討し、以下のことが明らかになった。1.摂食障害のある子どもとその家族に対する理解と有効な看護支援を模索している現状があった。2.摂食障害のある子どもの家族に対して家族機能に働きかける支援を検討する必要性が示唆された。3.摂食障害の症状が慢性化していることを考慮し、家族に長期的な支援を行うために縦断的な研究が課題である。4.生活や病気の負担を共有する家族に対し、家族機能評価を行い家族の強みを明確にすることが有効な家族支援につながることが示唆された。
  • 田村 麻里子, 加藤 令子, 小室 佳文, 沼口 知恵子
    原稿種別: 本文
    2006 年15 巻2 号 p. 112-118
    発行日: 2006/09/20
    公開日: 2017/03/27
    ジャーナル フリー
    国内において乳幼児期の子どもの睡眠に関して看護者がどのように関心をもっているのか、またどのような援助を行っているのかを明らかにするために、「医学中央雑誌」において文献検索を行った。結果、看護においては46文献が検索された。睡眠に関する研究は、近年増加傾向にあり関心が高まっていることが伺えた。また、研究対象は、病児と健常児であり、文献数はほぼ同じであった。研究内容として病児に関するものは、検査や治療等に関する援助等であり、具体的な支援につながる研究がなされていた。一方、健常児を対象にした研究では、子どもの睡眠の実態やそれに関連する親の睡眠や悩みなどの実態調査が主であり、支援の内容に踏込んだものはごく少数にとどまり、具体的支援にはつながっていない現状にあった。本研究により、今後、看護者が健常児の睡眠に関し、具体的支援を導き出すための研究を行うことが課題であると示唆された。
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