日本小児看護学会誌
Online ISSN : 2423-8457
Print ISSN : 1344-9923
ISSN-L : 1344-9923
32 巻
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
研究
  • 本田 真也, 中島 登美子, 横山 利枝
    2023 年 32 巻 p. 1-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は小児看護学実習において看護学生のとらえる子どもとの関係とその関連要因について明らかにすることである。調査票の原案を検討し、因子分析による構成概念妥当性を確認した。その結果、【子どもとの親しさ】と【援助者としての関係の深まり】の2因子が抽出され、Cronbach’s αは0.828~0.878であった。調査票を用いて看護学生のとらえる子どもとの関係を調査した結果、一元配置分散分析と多重比較により【援助者としての関係の深まり】では実習後の〈実施〉と〈達成感〉は実習前の〈必要性〉および〈実施希望〉より有意に低く(p<.001)、【子どもとの親しさ】に有意差はなかった。「子どもが好き」は、実習後は実習前より有意に高かった(t=−2.02、p<.05)。実習において学生は子どもに親しみをもち、好感度も高くなるが、援助者として子どもとの関係を深め、達成感を得ることは難しかったと言える。

  • 市川 百香里, 岡田 摩理, 泊 裕子
    2023 年 32 巻 p. 9-17
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     目的:障がい児の在宅生活を専門的に支援している看護師がコーディネーションを行うプロセスを明らかにする。方法:小児在宅のコーディネーションを行っている看護師6名に約1時間のインタビュー調査を行い、M-GTAで分析した。結果:看護師は最初【障がい児と家族を洞察しつつ関係性を築いて行う専門的判断】を行い、次に【障がい児と家族への時宜を得た看護ケア】、【適切な支援者の見極めと調整】、【家族が安心できる支援者へのつなぎ】を行った上で【障がい児の育ちと家族の思いに調和した継続可能な支援体制の構築】を行っていた。これらの活動は【個々の障がい児と家族を中心として協働できる地域支援者チームづくり】を目指すプロセスだった。考察:小児在宅のコーディネーションは、家族と関係を築きながら、児と家族を洞察する重要性があるとともに、支援者の力を見極めて多職種を調整し協働体制を整える必要があることが見出された。

  • 清水 いづみ, 浅野 みどり
    2023 年 32 巻 p. 18-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     研究の目的は、Parenting Stress Index-Short Form(PSI-SF)を用いて第1子の乳児をもつ父親の育児ストレスにおける数値を得て、サポートニーズの現状を明らかにすることである。1,147名の父親に調査を依頼し、有効回答数239名(21%)を分析対象とした。育児ストレスは日本版PSI-SFにより測定した。父親のPSI-SFの平均得点は、総点37.3(±8.8)点、子どもの側面18.3(±4.7)点、親の側面19.0(±5.3)点で、先行研究における母親や父親の平均得点よりやや低かった。また、会社や国に対する子育て支援の満足度の平均値は、5点満点中2.8(±1.0)であった。子育て支援におけるサポートニーズは、父親のフレキシブルな育児休業取得の要望という、現在国が力を入れている施策に関する内容と、経済的支援や保育所の充実など以前から存在している継続した課題に関する要望があった。

  • 新井 二千佳
    2023 年 32 巻 p. 26-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究では、医療的ケア児(以下、医ケア児)と生活するきょうだいによる医ケア児への医療行為に対する母親の思いを明らかにすることを目的とした。きょうだいがいる医ケア児の主介護者である母親7名に半構造化面接を行い、質的帰納的に分析した。その結果、母親の思いとして8カテゴリーと19サブカテゴリーが抽出された。母親は医療行為よりもきょうだいの人生を優先し、きょうだいの医療行為に対する思いを大切にしたいと考えていた。また、きょうだいが医療行為をすることはごく普通のことであり、家族は助かると思っていた。母親は、医療行為を通してきょうだいと医ケア児によい関係をつくってほしいと願い、医療行為を通してきょうだいは成長すると肯定的にとらえていた。さらに、きょうだいに負担をかけずに、安心して安全に医療行為を実施できるようにしたいと思っていた。医ケア児と家族の支援を検討する際に母親の思いを尊重する必要性が示唆された。

  • ―幼少期から家族に対して抱いていた思いに焦点を当てて―
    土屋 沙織, 髙橋 衣
    2023 年 32 巻 p. 35-43
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     医療的ケアを受ける在宅重症心身障害児(者)の青年期きょうだいのライフイベントに伴う体験を明らかにする質的記述的研究を行った。家族との生活【同胞の症状が悪化し、交流のない生活】、【同胞に合わせた生活の調整】、【自分ばかり叱られ親が同胞にとられる制限のある生活】、【親の姿を見ての同胞の介護の手伝い】、【同胞への支えと世話が必要という認識の目覚めと親の喜ぶ姿からの存在価値の見出し】、【自分のことよりも、同胞の生命と親を優先】、【両親のきょうだいの意思を尊重したかかわりと社会とつながる活動への参加】、ライフイベントに伴う体験【同胞の存在を優先した進路・職業の選択】、【同胞の存在を意識しながらの友だちとの交流】、【同胞のことで交際を断られたり認めてもらえない不安】、【子どもを生むことへの不安と親の後押し】、【子どもの成長を同胞と重ねて考える親としての思い】が得られた。幼少期からの葛藤を支え役割変化の過程での支援が必要である。

  • 藤原 紀世子
    2023 年 32 巻 p. 92-99
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     「病棟で小児看護に携わる看護師の困難感尺度」の開発を目的とした。概念分析、質的研究を基に尺度原案を作成した。表面妥当性と内容妥当性を検証し、64項目の尺度原案となった。尺度原案の信頼性、妥当性の検証では、病棟で小児看護に携わる看護師を対象に質問紙調査を行った。1,040部を配布、有効回答307部であった。項目分析、探索的因子分析をし、5因子39項目を抽出した。Cronbach’s α係数は0.790~0.937、外部基準とのSpearmanの順位相関係数はp=0.362(p<0.01)を示し、再テスト法による下位尺度の級内相関係数は0.70~0.86であった。以上から、尺度の信頼性と妥当性が検証された。本尺度は、病棟で小児看護に携わる看護師が自己評価に活用でき、管理者が小児看護の困難感の現状やそこに潜む問題を組織単位として見出すことができる。

  • 岡田 摩理, 市川 百香里, 泊 祐子
    2023 年 32 巻 p. 125-133
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    目的:障がい児の在宅生活を専門的に支援しコーディネーションしている看護師が行うアセスメントの様相を明らかにし、アセスメントに必要なスキルを検討する。方法:小児在宅のコーディネーションを行う看護師6名に約1時間のインタビュー調査を行い、質的記述的に分析した。結果:アセスメントの内容および方法として、【この子の今と未来を見極め、必要な支援を判断する】、【親を中心に家族全体の状況を俯瞰し、生活に必要な支援を見出す】、【他職種の強み・苦手を把握し、協働する方法を検討する】、【行政対応の可能性を探り、支援を継続する策を考える】の4カテゴリを見出した。また、基盤となる姿勢や考え方の3つのカテゴリがあった。考察:結果から、看護師は卓越した状況判断スキルと、創造的な介入を粘り強く追及する介入判断スキルをもっており、基盤には信念や行動基準などの考え方と情報収集、関係構築のスキルがあった。

  • 川勝 和子, 岩田 由利子, 石橋 朋子
    2023 年 32 巻 p. 143-149
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     乳幼児期に肝移植を受けた子どもの家族が退院後に抱く不安を明らかにすることを目的として、家族5名に半構成面接を実施し、質的記述的研究方法を用いて分析した。子どもが乳幼児であることから、家族が主体になって健康管理を担う責任を認識するため、医療従事者がそばにいない状況での家族は【感染症や身体症状への不安】、【免疫抑制療法を担う不安】、【医療的ケアを担う不安】を抱いていた。また、健康な子どもと比較して【肝障害による成長発達の遅れへの不安】や、長期入院で家族と離れての生活をしていたことで退院後も【きょうだいに及ぼす影響への不安】を抱いていた。そして、肝移植を乗り越え、在宅療養生活が落ち着いてきたからこそ、将来に目が向けられるようになり、【不確かな将来への不安】が生じていた。移植後早期に、乳幼児期にある子どもの家族が退院後に抱く不安は、家族が健康管理を担うことや子どもの成長発達への懸念が特徴であると言える。

  • 望月 浩江, 添田 啓子, 田村 佳士枝, 櫻井 育穂, 辻本 健, 瀧田 浩平, 平田 美佳, 近藤 美和子, 中田 尚子
    2023 年 32 巻 p. 150-158
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     小児医療施設の看護過程にセルフケア理論を取り入れ、子どものセルフケア・親のケア能力を高めるために、看護師と著者らで構成された合同プロジェクトを通して、看護師と組織への教育介入を行った。教育介入の効果検証として看護師の学び、認識の変化、看護師がとらえた看護実践の変化を明らかにすることを目的にリフレクション逐語録、議事録を質的記述的に分析した。結果、【子どものセルフケア・親のケア能力を支援する看護実践への足掛かりを得た段階】、【看護計画として子どものセルフケア・親のケア能力支援を実践し、支援の効果と看護の意味を実感した段階】を経て【部署カンファレンスを活用した子どものセルフケア・親のケア能力支援が看護過程として定着し、看護の価値と自信を得た段階】に到達し、困難な状況の子どもと親へのセルフケア支援、子どものセルフケア・親のケア能力の向上とともに、看護師が看護の価値と自信を得ることができていた。

  • 塚原 美穂, 大久保 明子
    2023 年 32 巻 p. 159-167
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、小児がん患児のきょうだいへの情報提供における看護師のかかわりのプロセスを明らかにし、きょうだいへの情報提供における看護師の役割について示唆を得ることを目的とした。小児看護師6名に半構成的面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果、小児がん患児のきょうだいへの情報提供における看護師のかかわりは、【きょうだいの存在への気付き】から、常に【きょうだいの様子を気にかけ】ながら、【いま、私たちが伝えないと】と情報提供を決断し、【きょうだいの「知りたい」に応える努力】を惜しまず、情報提供を行った結果、【早期からの情報提供の必要性を実感する】に至るプロセスであった。このプロセスにおいて看護師は、きょうだいの困りごとをとらえる役割、きょうだいの「知りたい」に応えるためのコーディネーターとしての役割を担うことが重要であると示唆された。

  • 長谷 美智子, 櫻井 育穂, 辻本 健, 瀧田 浩平, 添田 啓子
    2023 年 32 巻 p. 177-184
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

     入院中の「子どものセルフケアを補完する親のケア能力を測定する尺度」を開発することを目的に、小児専門病院に入院していた子どもを育てている家族300名を対象に質問紙調査を実施し、信頼性と妥当性を検証した。分析対象は95名分 (有効回答率85.5%) であった。項目分析と探索的因子分析により11項目2因子が抽出された。さらに、確認因子分析により探索的因子分析で得られた仮説モデルの適合度が確認された。信頼性では、クロンバックα信頼性係数は尺度11項目全体が0.879、因子別では0.788~0.823の範囲であった。外的基準としての「ケア能力の獲得度」との相関係数は0.552であった。入院中の「子どものセルフケアを補完する親のケア能力を測定する尺度」は一定の信頼性と妥当性を備えていると言える。今後臨床の場で活用できるものと考えられる。

  • 小泉 麗, 長谷 美智子
    2023 年 32 巻 p. 185-193
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

     目的:重症心身障害児の病態進行に伴う治療選択に関する親と医療従事者のshared decision making(SDM)における看護実践を明らかにする。方法:看護師9名を対象に半構成的面接を行い、質的記述的に分析した。結果:9カテゴリーを抽出した。看護師は【チームで意思決定支援の方向性を共有する】ことでチームの一員として親にかかわり、【親に治療の検討を促すための糸口をつかむ】ようにしていた。【情報の理解を促す】、【両親で相談して決められるよう支援する】、【不安を軽減することで一歩踏み出せるよう支援する】、【治療の必要性の気付きを促す】かかわりにおいて【親の揺れに寄り添い答えを出すまで待つ】姿勢を貫き【親が決めたことを尊重】していた。常に【親と信頼関係を築く】ことに努めていた。結論:SDMにおいて、看護師は親の意思決定を待つ支援と促進する支援を組み合わせ親の決定を尊重していた。

実践報告
  • 中村 結実, 松山 彩夏, 森田 晴美, 佐藤 朝美
    2023 年 32 巻 p. 44-50
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     目的:1型糖尿病 「発症時教育入院プログラム」 を受けた学童期後期から思春期の子どもの療養行動における困難と対処の体験を明らかにする。方法:発症時教育入院プログラムを受けた子ども5名に半構造化面接を実施した。結果:【学校では、周りの状況に左右され思ったように療養行動がとれない】、【自分から病気のことを伝えていないクラスメートや部活の人には理解してもらえない】、【いつもとは違う療養行動に不安がある】、【療養行動があるため、友だちと自由に行動できない】との困難、【療養行動を生活の一部として受け入れ、気持ちを切り替える】、【病名や療養行動は、必要な人だけに必要な内容を伝える】、【療養行動は、周囲に不自然なく短時間に安全に行う】、【友だちや先生と思いを共有して療養行動を継続する】、【緊急時は先生の力を借りながら、運動時や学校で低血糖にならないよう工夫する】との対処が示された。考察:友人との関係における支援が重要である。

  • 吉村 利津子, 岡本 スエ, 高谷 恭子
    2023 年 32 巻 p. 51-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、子ども医療電話相談事業 (#8000事業) を担う看護師の看護のわざを明らかにすることを目的とし、小児看護経験10年以上で相談員の実務経験4年以上の看護師4名に半構成的面接を行い、質的記述的研究を行った。その結果、看護のわざとして【家庭の中で子どもの置かれた状況を見極める】、【親がとらえることを同じように可視化する】、【仕事と子育ての労をねぎらう】、【子どもの心配事に照準を合わせる】、【実行可能な対応に切り替える】、【家で看る親に効果的な伝え方をする】、【安心して家で看る親の気持ちを整える】、【親の後ろ盾となり受診を勧める】を抽出した。相談員は、8つの看護のわざを組み合わせながら、親の気持ちに寄り添い力を見極めて、子どもの安全が守れるよう支援していた。このことは、親が子どもを育む家庭での看護力につながる看護実践であることが示唆された。

  • 鳥居 賀乃子, 岡田 摩理, 佐々木 典子, 神道 那実, 遠藤 幸子, 大西 文子
    2023 年 32 巻 p. 134-142
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     目的:本学では、小児看護学領域の統合実習を地域で暮らす医療的ケア児を支援する3施設を組み合わせて行った。本研究では、実習における学生の学びを明らかにする。方法:実習を受けた学生の実習記録をコピーして同意した場合のみ提出するように依頼した。実習記録の中から学びを抽出し質的帰納的に分析を行った。結果:各施設の役割に応じた特徴的な学びがあり、児と家族の対象理解を深めていた。看護の役割については【児の健康を守るための支援】などの児への支援や、【家族の安心につながる支援】などの家族支援、多職種連携の学びもあった。児に関する学びは特別支援学校に多く、家族に関する学びは訪問看護ステーションに多かった。考察:地域の複数の施設で統合実習を行うことにより、地域で暮らす医療的ケア児と家族を包括的に理解できるとともに、多職種で協働しながら支援する看護の役割について多様な学びを得ることができると考える。

資料
  • 佐々木 啓太, 涌水 理恵
    2023 年 32 巻 p. 59-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、在宅移行期にあり、退院後も何らかの医療ニーズを有する子どもの家族に対して、病棟看護師が行う退院指導についての現状と課題を明らかとし、求められる指導について示唆を得ることを目的とした。医学中央雑誌Web版を用いて、「小児」、「看護」、「退院支援/退院指導」、「在宅」、「家族」のキーワードで検索を行い、得られた14件の文献について文献検討を行った。その結果、家族は【在宅への移行に向けた不安】や【療養生活の継続への困難感】をかかえており、その不安や困難感を解消するために病棟看護師は、【親の思いに寄り添う】ことでニーズをとらえ、【在宅生活のイメージ化のための指導】や【支援体制を整える】ことを行っている。これらの退院指導を充足させ、在宅移行に向けた家族の不安をより少なくするためには、病棟看護師と家族が双方向性にコミュニケーションをとりながら退院指導内容および体制を構築していく必要性が考えられた。

  • 笹木 忍
    2023 年 32 巻 p. 66-75
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

     子どもの味覚は文化的背景に影響する食生活と密接に関連しており、身体的成長のみならず、その後の心理社会的発達に影響を及ぼす。本研究では、国内における18歳未満の子どもを対象とした味覚に関する調査研究を収集し、それら調査対象者の特徴と味覚評価方法を明らかにすること、各検査の適応年齢や小児看護の臨床への応用ついて検討することを目的とした。文献検索は医学中央雑誌Web版とCiNii Articlesのデータベースを用い、53件を対象とした。文献は、味覚全体に関する文献と味覚異常に関する文献に分類した。小児看護の臨床において、6歳未満の子どもを対象とした客観的味覚評価は、検査の信頼性は十分検証されているとは言い難く、保護者などによる代理評価を参考とすることが推奨されていた。今後、子どもの味覚に関する主観的、客観的指標となる評価方法を確立し、子どもの食生活への支援を検討する必要性が示唆された。

  • 原口 梨那, 北尾 美香, 藤田 優一
    2023 年 32 巻 p. 76-83
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、国内の文献を対象に日本の新生児集中治療室(以下、NICU)における意思決定の現状とその支援について、文献検討により明らかにすることを目的とした。文献検索は医学中央雑誌Web(Ver. 5)を用いて検索、キーワード「新生児」と「意思決定」を用いて検索、対象は13文献であった。意思決定の内容とその支援は、「出生前から出生後の入院・治療」、「在宅移行とそれに伴う医療的ケア導入」、「治療差し控えや中止、看取り」の3つに分類できた。NICUでは自分で意思決定できない児に代わり、親と医療従事者との話し合いにより行われていた。意思決定支援について医療従事者は、かかわり方に配慮しながら愛着形成を促進し、治療の選択や医療的ケアの習得、終末期のケアの支援を行っていた。医療従事者は、揺れ動き変化する親の思いを受け止め、児の最善の利益を考え話し合い、協働して意思決定を進めていく必要がある。

  • 久保 美抄, 鎌田 佳奈美, 池田 友美
    2023 年 32 巻 p. 84-91
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は子ども虐待の発見や報告および連携に関する看護師の知識・判断・認識・自信を明らかにすることである。全国の小児専門病院と300床以上の小児病棟を有する計504件の病院のうち、調査の承諾を得られた99件の病院の小児外来、小児病棟、救急外来などに勤務する1,634名の看護師を対象に自記式質問紙を用いて調査を実施した。回収のあった710名(回答率43%)のうち有効回答を得た630名(有効回答率39%)を分析対象とした。結果、社会資源や性的虐待に関する知識、対応への自信が低く、判断においては精神症状に関する項目に対して「わからない」と回答した者が3割程度であった。以上より虐待を疑った時の看護師の報告・連携行動において、社会資源の活用や性的虐待に関することへの関与ができていないことが明らかになり、積極的な報告・連携行動を促すためには今回の結果をもとに研修内容を検討していく必要性が示唆された。

  • 角谷 あゆみ, 市江 和子
    2023 年 32 巻 p. 100-107
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     在宅で医療的ケアを必要とする子どもの成長・発達に合わせた支援について文献検討を行い、その課題を明らかにすることを目的とした。分析対象13文献から49の記述内容を抽出した。医療的ケアを必要とする子どもの成長・発達に合わせた訪問看護師の実践では、【医療的ケアを必要とする子どもの呼吸機能やADLに合わせてケアを工夫する】、【医療的ケアを必要とする子どもの感染予防と環境整備から体調管理をする】、【医療的ケアを必要とする子どもの興味や特性に合わせて働きかける】、【医療的ケアを必要とする子どもの成長・発達を家族や多職種とともに促す】、【医療的ケアを必要とする子どもと家族の生活全体を支える】の5つのカテゴリーが生成された。訪問看護師は医療的ケアを必要とする子どもの成長・発達に合わせた支援の土台となる体調管理とともに、子どもの成長・発達支援や家族の生活支援に有用な関係機関・職種とつなぐ実践をしていた。

  • 厚美 彰子, 青木 雅子
    2023 年 32 巻 p. 108-115
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     アトピー性皮膚炎は乳幼児期の有症率が多く、増悪軽快を繰り返すため、セルフケアを学習し継続させ、疾患をもつ自分を受け入れながら発達していくことが必要である。本レビューの目的は、子どものセルフケアの現状を明らかにしセルフケアの学習や継続の課題を検討することである。文献22件の「セルフケアの認識」は、子どもと家族の負担、成長発達による変化、治療やケアの認識が医療従事者と異なること、「セルフケア支援」は、学童期以降の子どもや家族への教育プログラムとスキンケア支援が中心であること、「セルフケア継続への影響」には、子どもの成長発達、家族・医療従事者のかかわりが影響していることが明らかになった。今後の課題として、ケアを継続させるための医療従事者の役割の明確化、保育園や学校、地域連携など新たな支援者の役割の検討、教育プログラムの内容・年齢の見直しの必要性など、研究発展の必要性が示唆された。

  • ―教員の認識に焦点を当てて―
    清水 史恵, 勝田 仁美
    2023 年 32 巻 p. 116-124
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     特別支援学校で医療的ケアを実施する教員が、実地研修や普段の学校生活における学校看護師による支援をどう受け止め、どのような支援を求めているのかを明らかにした。特別支援学校の教員687名に無記名自記式の質問紙調査を実施した。教員262名の質問紙を分析の対象とし、質問項目ごとに単純集計をし、自由記載の回答は質的内容分析を行った。

     教員の6割~7割は、実地研修での指導や学校生活における学校看護師からの支援に満足していた。一部の教員は、学校看護師に医療的ケアの実施を十分に見守ってもらえないこと、学校看護師により支援内容に差があることで、不満を抱いていた。教員は、安全安心を保証できる見守り、医療の専門職としての助言、教員とともに子どものことを考えること、教育を意識した支援、教員の実施が難しいケアの代行を学校看護師に求めていた。医療の専門性を発揮し、教員に寄り添うこと、学校看護師間での連携が重要である。

  • 今田 志保, 佐藤 幸子, 佐々木 るみ子, 今 陽子, 五十嵐 誌保
    2023 年 32 巻 p. 168-176
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、腰椎穿刺による髄腔内注射(IT)や骨髄穿刺(BMA)を繰り返し受けた小児がんの学童の対処行動の変化を明らかにし、治療状況や検査前後の様子から対処行動の変化に影響を与える要因を検討することである。学童と保護者3組を対象に、IT・BMAの参加観察と聞き取り調査を縦断的に行った。分析は、対処行動に関するデータを抽出し、事例ごとに対処行動の変化とその要因を検討した。その結果、学童は、繰り返し受けることで検査に対する質問や要望を表現しており、質問や要望に医療従事者が対応し、疑問が解決したり要望が叶うと検査に対する理解をさらに深め主体的な対処行動に変化していた。急な検査の告知や検査開始の遅延、体調の悪化、前回の検査での苦痛を伴う体験は、否定的な対処行動につながっていた。以上より、学童の質問や要望を引き出し表現を手助けするかかわり、表現された質問や要望に可能な限り応えるかかわりが必要である。

  • 関口 里美, 青木 雅子
    2023 年 32 巻 p. 194-202
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、先天性心疾患をもつ学童期の子ども(以下、CHD児)が日常生活や学校生活の中で行っている療養行動の内容を明らかにし、療養行動の促進に向けた看護支援の検討を目的とした。医中誌WebとCiNiiを用いて文献検索し、対象文献18件を分析した。CHD児の療養行動は、【病気について理解している】、【病気のために必要なことを守っている】、【体調を自分で判断して活動している】、【希望をもって治療を受けている】、【病気のことを意識しないようにしている】、【病気の話題は避けている】、【病気について周囲に理解を求めている】、【周囲のサポートをもらっている】の8カテゴリーが抽出された。CHD児の療養行動の促進には、子どもの知識・理解力を高める支援、自分の身体を守りながら療養行動が主体的にできるための支援、周囲とのかかわりを持ちながら安心して学校生活が送れる支援が必要であると考えた。

  • 小柴 梨恵, 佐藤 奈保, 中水流 彩
    2023 年 32 巻 p. 203-212
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、医療的ケアを要する幼児に対する保育所などでの保育・看護の実際に関する国内研究を概観し知見を整理するとともに、医療的ケア児に対する保育の場での看護の示唆を得ることを目的にスコーピングレビューを行った。医中誌WEBとCiNiiを用い国内文献を検索し、選定基準を満たした17文献を分析対象とした。保育所などにおける医療的ケア児に対する保育・看護の実際に関する知見を統合した結果、【園生活を基盤にした、安全な医療的ケアの実施・調整と医療的ケア児の体調管理】、【医療的ケア児への個別な支援と他児とともに育つ保育の実践】、【医療的ケア児の保育にかかわる専門職や保護者との情報共有と連携】の三つのカテゴリーと九つのサブカテゴリーが生成された。以上より、園生活において、医療的ケア児の安全確保を基盤に、自立心を支え仲間とともに活動する環境調整という共通した視点があり、保育士と看護職の協働の必要性が示唆された。

  • 国分 映希, 本田 順子
    2023 年 32 巻 p. 213-222
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、文献検討を通して疾患を経験した子どものPTGに関する研究の動向やPTGと関係する要素を明らかにし、今後の研究課題や子どものPTGの向上の一助となる看護を検討することである。文献36件を分析したところ、研究の実施国はアメリカが最も多く、日本は全体の6%に満たなかった。研究対象者の疾患はがんなどの重症度が高く慢性化をたどる可能性の高い疾患のみであった。研究方法は量的研究が最も多かった。疾患への認識の仕方やソーシャルサポートなどの心理社会的状況、積極的コーピングなどがPTGを高める要因となっており、PTGの向上に貢献するためにはこうした要因に注目した看護を行う必要性が示唆された。PTGは社会文化的背景の影響を受けるため、今後は我が国において多様な疾患を経験した子どもを対象に質的研究や介入研究を行い、幅広い知見の獲得と看護援助に関する示唆を得ることが課題である。

  • 林 亮, 西田 みゆき
    2023 年 32 巻 p. 223-230
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、幼児へのプレパレーションの研究の特徴を明らかにすることである。26件を分析対象とし、プレパレーションの「対象者の年齢」、「目的」、「方法」、「実施者」、「評価方法」に焦点を当てて整理した。結果、「対象者の年齢」は、幼児後期を中心としつつ、幼児前期を対象としたものも散見された。「目的」では、治療や疾病の理解の促進、処置などへの不安・恐怖の軽減、処置や入院状況への対処能力の向上、主体的な治療への参加などが示された。「方法」では、絵本やパンフレットを用いた説明、見学やメディカルプレイなどによる体験などが示された。「評価方法」では、鼻部皮膚温度などの生理的指標、心理測定尺度、行動アセスメントスケール、参加観察法が用いられていた。幼児が主体的に選択を表現できるプログラムの構築や、生理的指標や尺度を中心に活用しつつ、参加観察法などを併用することでより正確に評価していく必要性が示された。

  • 小倉 あゆみ, 平谷 優子
    2023 年 32 巻 p. 231-238
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

     1型糖尿病の患者は血糖コントロールが生涯にわたり必要であるため、子どもがセルフケアを獲得し継続できることが重要である。本研究の目的は、1型糖尿病の学童期までの子どものセルフケアに関する先行研究を概観し、幼児期・学童期の子どものセルフケアとセルフケア獲得のための支援を明らかにすることである。医学中央雑誌Web版を用いて、キーワードを「小児」、「1型糖尿病」、「自己管理」とし、原著論文に絞って検索した。23件の文献を分析した結果、幼児期では、親が行う血糖測定などを受け入れ、一部の手技の実施や糖尿病管理に関心をもつなど、セルフケアに取り組み始めていた。学童期は、技術や知識を習得して実践できるようになる過程であり、心理的な側面や友人関係がセルフケアに影響することが明らかになった。子どもの発達段階に即した支援や保育所・小学校と医療機関との連携の必要性が示唆された。

feedback
Top