日本小児看護学会誌
Online ISSN : 2423-8457
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30 巻
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
研究
  • 川勝 和子, 楢木野 裕美
    2021 年30 巻 p. 1-8
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     小児がんの子ども・家族にかかわる看護師のストレッサーについて看護師7名に半構成面接を実施し、質的記述的研究方法を用いて分析した。看護師は【がんになって生活の変化に混乱し】たり、【治療の副作用による苦痛に苦し】んだり、【再発したことを何とか受け止めようとする子どもの姿】を見ることや、【子どもが主体的に治療に取り組めないこと】をストレッサーととらえていた。家族については、【子どもががんになり危機的状況】になったり、【外来通院に伴う生活への不安をかかえ】たり、【再発して不安定】になり、【子どもを失うかもしれない】という家族の精神状態をストレッサーととらえていた。また、ケアでは【化学療法の複雑な管理を行うこと】や【子どもの治療を支援する体制が整わないこと】、終末期では【難渋している子どもの苦痛緩和に対応すること】、【子ども・家族の最期の過ごし方の希望に沿えないこと】をストレッサーととらえていた。

  • 橘 ゆり, 入江 亘, 菅原 明子, 名古屋 祐子, 林原 健治, 塩飽 仁
    2021 年30 巻 p. 9-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     医療的ケアが必要な重症心身障害児を亡くした親が、子どもと在宅生活をともに過ごしてきた時から子どもが亡くなった後の日常生活をどのようにとらえて過ごしてきたのか、家族一人ひとりの語りから体験を明らかにし、支援のあり方を検討することを目的とした。東日本の小児専門病院をかかりつけとし1年以上在宅で医療的ケアを受けながら過ごした重症心身障害児を20歳未満で亡くした親を対象に半構造化面接を行った。子どもとの死別時の状況、死別後から現在までの生活、子どもと在宅で過ごした時の生活やそれに伴う心境などを中心にインタビューを行い、Giorgiの現象学的アプローチを参考に分析を行った。親は複雑性悲嘆に陥りやすい要因がありながら子どもを亡くした悲しみと能動的に向き合い子どもとの新たな絆を結び直す体験をしていた。そこには、在宅生活で培われた親の高いレジリエンスが存在し、在宅生活からつながりが続いていたことが考えられた。

  • 上杉 佑也, 前田 貴彦
    2021 年30 巻 p. 17-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、医療的ケアを必要とする重症心身障がい児の父親が在宅での新たな生活を作り上げる過程を明らかにすることを目的とした。父親9名に半構成的面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。父親は【新たな生活への戸惑い】が生じ、【目の前のことで精一杯な日々の暮らし】を送りながら負担感の強い《右往左往する生活》を過ごしていた。母親に子どもの養育を頼る中で、自身も子どもの対応を行えるという【自信の獲得】が《生活の根幹をなす安心》となり、【心のゆとりによる行動の広がり】を見せるとともに【我が家のライフスタイルの模索】をしていく。周囲のサポートや自身の信念が《子どもと共に生きていくことを支える力》となり、幾多の経験を乗り越える中で、多様な【ものごとの受け止め】ができるような精神的な成長を遂げ、《我が家のペースが創られた生活》を確立していくという過程が描かれた。

  • 上原 章江, 奈良間 美保
    2021 年30 巻 p. 26-34
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、通院や入院を必要とする健康障がいをもつ子どもの親が、自分の思いや考えなどの感覚を表出することへの看護師の認識を明らかにすることを目的とした。子どもにかかわる4年目以上の看護師を対象とし、6名の研究協力者に4回のフォーカスグループインタビューを実施した。その結果、以下の3つのカテゴリーを抽出した。『親の感覚を聞こうとしているが、聞けていないし、親も言っていないがそれでいい時もある』、『親が表出する感覚の内容からケアが決まったり、看護師としての力量を感じたりする』、『親が自分の感覚を表出することへの自分たちの思い』。看護師は、親が表出する感覚の内容から自分自身のケアや力量をとらえており、親が感覚を表出することは看護師にとって重圧を感じることでもあった。親が表出することを他者と話し合ったり、親が自分の感覚を表出することの意味に着目したりする必要があると考える。

  • 森山 雄三, 二宮 球美
    2021 年30 巻 p. 35-42
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究はNICUから中間施設の役割をもつ総合病院小児科病棟に転院した重症心身障がい児の母親・家族に対する在宅ケアへの移行支援のプロセスについて明らかにすることを目的とした質的帰納的研究である。中間施設の役割をもつ総合病院の小児科病棟で勤務する看護師9名を対象に半構造化面接を行った。データの分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。分析の結果、移行支援のプロセスは、<母子分離の埋め合わせ>、<移行支援戦略の策定>、<在宅ケアへの適応を促進する移行支援の強化>、<母親・家族の個別性に合わせたゴールの評価>の4つのカテゴリーから形成されることが明らかとなった。中間施設における在宅移行支援機能と在宅生活支援機能の強みを生かして、母子関係構築を基盤とした重症児と家族の絆づくりと母親・家族の心身の状況に合わせて支援の進捗を調整することが重要である。

  • 草野 知美, 津島 ひろ江
    2021 年30 巻 p. 43-51
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、知的障害のない自閉スペクトラム症のある子どもへ特性や診断名を告知する過程を母親の体験から明らかにし、看護の示唆を得ることである。自閉スペクトラム症と診断を受けた子どもの母親10名に半構成面接を行い、質的記述的分析を行った。その結果、【特性のある子どもを受容することへの揺らぎ】、【子どもの特性への直面】、【子どもの承認と提案】、【家族や周りへの調整】、【診断名の告知と葛藤】、【自立に向かう子どもへの寄り添い】の6カテゴリが抽出され、告知過程は6段階を経ていることが明らかになった。看護師は、母親の体験を理解し共感的な姿勢でかかわり、母親が特性・診断名告知過程をたどれるよう支援する必要がある。また、子どもへの特性・診断名告知過程を体験する母親の揺らぐ思いや子どもへの特性や診断名の告知に関する意思決定を継続的に支援する看護の必要性が示唆された。

  • 甲斐 鈴恵
    2021 年30 巻 p. 98-106
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究では、乳児と養育者の電子メディア接触の実態および生活習慣ときょうだい数の関連を明らかにした。こども園の乳児の養育者へ無記名式郵送調査、150世帯から回答を得た。電子メディア接触時間および各質問項目間の分析には、IBM® SPSS® Statistics Ver. 25を用いた。乳児の電子メディア接触時間の平均は、平日61.2分、休日87.0分であった。WHO推奨の1時間以内が7割を占めていた。きょうだいなしの乳児の約5割が、電子メディアに2時間以上接触していた。養育者の子育てにおけるスマホの利用目的は、きょうだい数にかかわらず、写真を撮る8割、情報検索が5割であった。子どもを静かにさせる目的は、きょうだい数が増えると利用の割合が増加した。きょうだいなしの乳児が、電子メディアに長時間接触となる傾向があることから、乳児のみの養育者へ早期から長時間の電子メディア接触を避けることを意識した生活を啓発する重要性が示唆された。

  • 西宮 園美, 楢木野 裕美
    2021 年30 巻 p. 107-114
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は集中治療を受けている乳幼児をケアする看護師が『何か変』と察知する様相を明らかにすることを目的とした。方法は看護師11名に半構造化面接を行い質的帰納的に分析した。結果、3大カテゴリー、9カテゴリー、29サブカテゴリーを抽出した。1つ目の大カテゴリーは看護師が子どもの現在の一時的な状況から感覚的に察知した〔看護師の感覚によりとらえた子どもの様相〕で4カテゴリーから構成された。2つ目の大カテゴリーは看護師の判断軸からの変化により察知した〔子どもとのかかわりやケアの中でとらえた子どもの様相〕で3カテゴリーから構成された。3つ目の大カテゴリーはほかの看護師や家族からの指摘・情報から察知した〔他者からの指摘・情報を手がかりにとらえた子どもの様相〕で2カテゴリーから構成された。しかし実際には1つの様相だけでなく、さまざまな察知方法を組み合わせて子どもを『何か変』と的確にとらえようとしていることが考えられた。

  • 髙橋 恵, 小島 ひで子
    2021 年30 巻 p. 115-121
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、小児集中治療に携わる小児科医師がとらえたEnd-of-Lifeを迎える患児家族との相互作用のプロセスを明らかにすることである。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用い医師5名にインタビューを実施した。医師のEnd-of-Lifeを迎える患児家族との相互作用には、【家族の期待を背負い児の状態に対し治療への苦渋の岐路に立つ】、【End-of-lifeに向かう状況に腹をくくり家族への説明を模索】、【児のQOLについて家族の思いを掘り下げ決断を支える】プロセスが抽出された。医師は、病状により早期に治療の限界と予後をイメージできる一方、内科系疾患のように長期集中治療が想定される場合、治療の限界を判断するタイミングには、自問自答や葛藤が生じていた。家族が治療を託す中で治療継続を逡巡する時間は、児や家族にとっての治療の意味や今後を見据えた方針を再検討する転換期になると推察された。

  • ―職種間の比較―
    北本 千春, 宮城島 恭子, 坪見 利香
    2021 年30 巻 p. 122-130
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、子どもと成人混合で外来診療を行う医療職の子どもに対するストレス緩和支援の実態について明らかにすることを目的に、医師152名、看護師192名、診療放射線技師151名、臨床検査技師195名の計690名を対象に質問紙調査を行った。その結果、4職種全体では、子どもに対するストレス緩和支援の必要性を高く認識していたが、実施状況は診療前が低い傾向にあり、「事前説明の確認」など診療前の5項目は実施割合が70%未満であった。看護師は、子どものストレス緩和支援の必要性の認識・実施状況ともに他の3職種に比較して有意に高かった。医療職が考える子どものストレス緩和支援に必要なことは、子どもの視点に立つ、子どもにわかりやすく伝える、親との協働、子どもの反応の理解であった。看護師は、他職種の役割や業務を考慮し、親と協働し、子どもの視点に立った言葉かけや態度で診療前の子どもの心理的準備を整える必要がある。

  • 坂田 美枝子
    2021 年30 巻 p. 139-147
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、小児訪問看護師が母親と信頼を築くプロセスを明らかにすることを目的とした。対象は、小児訪問看護師8名、訪問看護の参加観察と半構造化面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。結果、小児訪問看護師は母親の【要望を確認する】ことを基盤として、【その家のルールを守る】ことを中核に、【母親を思いやる】コミュニケーションを図り、在宅での療養生活を支える【身近なひとりとなる】プロセスが抽出された。小児訪問看護師が母親と信頼を築くためには、母親の意向を尊重し、【その家のルールを守る】ことの必要性が示唆された。

  • 日下部 修也, 井上 玲子
    2021 年30 巻 p. 148-155
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、気管切開を受けた子どもと母親のコミュニケーションの様相を明らかにすることを目的とした。学童期以前に気管切開し、データ収集時点で18歳以下の子どもの実母9名に半構造化面接でデータ収集し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析を行った。その結果12個の概念と5個のカテゴリーが抽出された。母親らは子どもが表すすべてを【聴こえるあの子なりの声】ととらえていた。気管切開後、母親らは『言いたいことをしゃべろうとする子どもへ語りかけ表情からくみ取 (った)』るよう工夫し、『子どもが努力して発した音に意味のある声を重ね始め (る)』ていた。母親らは【子どもがおなかの中にいたからわかる感覚】とその音に感じ揺らぎながら、前進していた。看護師は、気管切開後も母子が互いを再認識できるよう、子どもの表す音や仕草一つひとつに母親が意味付けを行えるよう密にかかわり支援することの重要性が示唆された。

  • 遠藤 晋作, 上田 敏丈, 堀田 法子
    2021 年30 巻 p. 156-165
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     先天性心疾患をもつ学童期までの子どもに対する病気説明における母親の情報認識プロセスを明らかにし、医療従事者が行う支援の針路を見出すことを目的とし、疾患をもつ8歳~12歳の子どもの母親6名に半構成的面接を行った。分析にはSCATの手法を用いた。結果として、母親の 「理解不十分」 を 「説明実施可能」 とするために必要な 「必要性の認識」、「理解の向上」、「手段の試行錯誤的確立」 の3プロセスを補うことが支援の針路となることが明らかとなった。考察として、「必要性の認識」 にはおのおのの母子が重要と考える情報に配慮しながら必要性の判断に医療従事者の視点を加えていくこと、「理解の向上」 には 「必要性の認識」 との両立を意識しながら説明が必要とされる時に子どもへ情報を随時伝えられるようにしておくこと、「手段の試行錯誤的確立」 には接触の機会が限定的であっても、母子の対話状況に注目して個別性に応じた媒体提供を行うことが求められる。

  • 山口 大輔, 深谷 基裕
    2021 年30 巻 p. 166-173
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、入院に付き添う母親が捉えた学童期の子どもに対する 「よい看護」 を明らかにすることを目的とした。入院に付き添う母親23名に半構造化インタビューを行い、テーマ分析をした。結果として【処置以外に声をかけることで、病棟の中に子どもの 「居場所」 ができる】、【子どもの好きなものを見つけて、とっかかりとして話すことで、子どもの心が開く】、【選択肢を広く多く提案し、子どもがタイミングを選べるようにすることで、その子のペース、リズムに合った処置が受けられる】、【根気強く待って、子どもにわかるよう具体的に説明していくことで、子どもが納得できる】、【優しさだけでなく、時には強さをもって、処置から逃げ出したい子どもの思いを受け止めることで、処置に立ち向かえる】など6つのテーマが抽出された。看護師は子どもが病棟で自分らしく過ごせるよう、子どもの状況を正確に捉えた上でかかわることが重要と示唆された。

実践報告
  • 鈴木 千琴
    2021 年30 巻 p. 52-60
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     子どもの慢性機能性便秘症 (以下、便秘症) は薬物療法に加え、子どもの排便を回避する行動の変容が不可欠である。しかし、養育者は子どもの特徴的な排便の行動に困難感を抱き、子どもへかかわる手立てを見出せないことが多い。本研究は便秘症の幼児の排便に対する養育者の認識や対処が、看護支援を通してどのように変化したかを明らかにすることを目的とした事例研究である。研究対象者は便秘症をもつ幼児とその養育者4組である。子どもの便秘症が改善しない状況に養育者は自らの育児が原因と責める、我が子特有の問題ととらえると否定的な認識をもち、親子の排便に関連したやり取りが乏しかった。それらに対して養育者が自らの役割を引き受け、子どもにかかわる手立てを見出せるよう看護支援を行った。その結果、養育者が子どもの排便に関する言動の意味をとらえ、組み入れながら対応できるようになったことで、排便に関連した親子の呼応的なやり取りが生まれた。

  • —病名告知から初回治療終了まで—
    狗巻 見和, 楢木野 裕美
    2021 年30 巻 p. 174-180
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、小児がんの病名告知を受けた学童前期の子どもの母親に対して、病名告知から初回治療終了までに看護師が実践している母親へのケアを明らかにする目的で、A圏内小児がん拠点病院2施設の看護師16名に半構造化面接を実施し、質的記述的に分析した。看護師は、【母親の体調管理に向けたケア】、【母親が安心して病名告知を受けるためのケア】、【衝撃を受けた母親を受け止めるケア】、【母親が子どもの病気を受け入れるためのケア】、【子どもの治療に関する必要な知識を身につけるためのケア】、【治療を受けながら生活の見通しがもてるケア】、【子どもへの母親役割が果たせるケア】、【母親が家族の中の役割が果たせるケア】を実践していることが明らかになった。看護師は母親が子どもの状況を受け入れながら、治療を受ける子どもを支えていけるように母親にケアを提供していたと考える。

資料
  • 清水 史恵
    2021 年30 巻 p. 61-71
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、「安全文化」 の概念を明らかにし、特別支援学校における安全文化の醸成に向けた学校看護師による介入内容を検討することを目的とした。保健学、工学、交通科学、教育学、安全科学、農学、社会福祉学、心理学の和文献と英文献を対象とし、Rodgersの概念分析方法を用いた。結果、五つの属性、六つの先行要件、三つの帰結が抽出された。先行要件として、《組織における安全体制整備》、《個の活動の尊重》、《トップの関与》、《教育の実施》、《絆の強化》、《潜在力》が抽出された。学校看護師は、特別支援学校の安全文化醸成に向け、体制整備や教育内容を企画実施する際に医療の専門職としての力を生かせる可能性が示唆された。「安全文化」 の概念は、学校看護師が安全文化の醸成にどう貢献できるかを検討する上で有用であるが、教育分野の研究が少なく、教育現場に安全文化の概念を活用していくためにも、さらなる研究が望まれる。

  • 2014年から2018年の国内文献に焦点をあてて
    久保 仁美, 岡本 奈々子, 阿久澤 智恵子, 山﨑(今井) 彩, 柏瀬 淳, 金泉 志保美
    2021 年30 巻 p. 72-80
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、NICU看護師によって行われる退院支援内容を2014年~2018年における文献検討より明らかにすることである。医学中央雑誌 (Web版Ver. 5) を使用し 「NICU/新生児ICU」 and 「退院支援」 のキーワードで検索を行った (2019年1月2日実施) 。結果、分析対象文献は16件であった。文献の掲載数の推移は、2014年を除いて毎年2件~6件あり2016年が6件と最も多かった。また、地域の受け皿である訪問看護師を対象とした研究が1件のみであった。 「NICU入院児と家族に対する看護師の退院支援内容」 についての内容分析を行ったところ【児と家族の自宅での生活を想定した直接的な支援】、【地域移行に向けた多職種の調整と協働】、【家族中心のケアの理念に基づく態度や実践】の3コアカテゴリが形成された。今後の課題は、児の家族や地域の看護職の退院支援に対するニーズとを併せて検討し実践に反映させることである。

  • 狗巻 見和, 井上 みゆき
    2021 年30 巻 p. 81-88
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、重症児の成長による身体変化に伴う治療をめぐる意思決定に関する文献検討を行い、 「その子らしく生きるための」 意思決定支援への示唆を得ることを目的とする。文献検索は医学中央雑誌Web (Ver. 5) を用い、キーワード 「重症心身障害児 (者)」 と 「意思決定」 を用い、対象は9文献であった。質的研究のシステマティックレビューを参考に分析した。研究目的と研究対象者から誰が考えた意思決定支援かを分析し、医療従事者が考える意思決定支援、親が歩んだ意思決定過程とその時の思い、親が考える意思決定支援の三つに分類できた。親への意思決定支援の現状を明らかにしたものが多く、今後は具体的な意思決定支援の介入方法を考えていく。また、看護師から働きかけた内容と親が認識した内容を基盤にし、重症心身障害児がその子らしく生きるために親が治療をめぐる意思決定ができるように介入計画を考えていく必要がある。

  • 小代 仁美
    2021 年30 巻 p. 89-97
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、小児がんの初発で、入院、治療を受ける子どもの付き添いをしている核家族を中心に、入院から退院までの時間的経過における家族の状況を明らかにすることを目的とした。 「小児がん」 、 「家族」 、 「母親」 、 「父親」 、 「きょうだい」 、 「付き添い」 をキーワードに医学中央雑誌、CiNiiにて、会議録を除外した国内文献に絞り、27件の文献を抽出した。結果、家族の状況は 「診断から初回治療終了時期」 、 「初回治療終了後から退院時期」 の病期で状況が異なっていた。入院時の家族は、親の心理的混乱がきょうだいへと波紋が広がっていた。この時期は、特に家族の心理面への援助が必要である。初回治療終了後は、子どもの世話と家事、きょうだいの世話による親の心身の疲労と、退職などによる経済的負担が生じていた。加えて、きょうだいの登園・登校拒否の問題もあった。この時期は、特に親の心理・身体的負担と経済的負担への援助が必要である。

  • 清水 いづみ, 浅野 みどり
    2021 年30 巻 p. 131-138
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究は日本における子育てに関する一般的な父親のストレス、NICU退院後の父親の子育てに関する研究の動向を文献検討により明らかにし、今後の研究課題を検討することを目的に、医学中央雑誌Web版(ver. 5)を用いて文献検索を行った。子育てに関する一般的な父親のストレスは【育児ストレス】、【父親の役割と親性】、【父親のサポートニーズ】、NICU退院後の父親の子育ては【早産児の父親】、【双子の父親】に分類された。一般的な父親の育児ストレスについては、母親と比べるとストレス値は低く、影響要因として子どもが複数いること、仕事で育児の時間がとれないこと、学歴が高校卒業以下であることなどが認められたが、論文によって不一致であった。サポートニーズとして、経済支援や活用しやすい育児支援制度があげられた。今後は両者の育児ストレスの違いやソーシャルサポートニーズについて明らかにしていくことが課題である。

  • 徳島 佐由美
    2021 年30 巻 p. 181-189
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     【研究目的】全国の在宅重症心身障がい児 (以下、重症児) のレスパイト入院における養育者が看護支援に対する期待の程度と看護支援を受けた頻度について明らかにすることを目的とした。【研究方法】小児を対象とする訪問看護ステーションの644施設へ調査を依頼し、同意が得られた養育者へ質問紙調査を実施した。調査内容は、研究対象者および重症児の基本的属性、レスパイト入院中の看護支援に対する期待の程度と受けた頻度を各34項目とした。これら看護支援項目を記述統計にて比較した。【結果および考察】返答があったうちの61名を分析対象とした。記述統計の結果、重症児の養育者はレスパイト入院における看護支援に対する “期待の程度” と看護支援を “受けた頻度” の間には差がみられ、養育者の期待に到達していないことがわかった。特に改善が必要な項目は、「勤務交代をした看護師間で正確な引き継ぎがある」 であった。

  • 野村 佳代, 豊田 ゆかり, 枝川 千鶴子
    2021 年30 巻 p. 190-197
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     医療的ケア児とその家族が地域で安心して在宅生活を継続できるために、地域包括ケアの推進が重要である。訪問看護師による多職種との協働に向けた取り組みを明らかにすることが、小児地域包括ケアシステムが効果的に機能するための体制づくりの一助となると考えた。そこで、訪問看護ステーションと地域の関連する専門職との協働を目指した取り組みの内容を明らかにすることを目的として、訪問看護ステーションの管理者4名を対象とした半構成的面接を実施した。その結果、管理者からの働きかけとして【関係づくり】、【機能の紹介】、【相談依頼】が見出され、訪問看護師の役割や機能などの情報について機会をとらえて専門職に伝える〈発信〉があった。そして、管理者の〈発信〉によって訪問看護師の機能を理解した専門職からの要請として【参加要請】、【問い合わせ】が見出され、それらの専門職のメッセージを管理者が受け取る〈受信〉があった。

  • 足立 綾, 高野 政子, 草野 淳子
    2021 年30 巻 p. 198-204
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、保護者が行う予防接種スケジュールの管理と看護師の支援について明らかにすることを目的とし、過去10年間の文献を検討した。17文献を分析した結果、保護者が行う予防接種スケジュールの管理では【医療従事者がスケジュールを作成】、【保護者と医療従事者でスケジュールを作成】、【保護者自身で子育てスケジュールに合わせ作成】、【作成したスケジュール表を用いた管理】、【アプリを使用した管理】の5カテゴリー、予防接種に関する看護師の支援では【予防接種実施に向けた支援】、【予防接種前後のかかわり】、【保護者の心理的サポート】、【保護者に対する教育活動】の4カテゴリーが生成された。保護者は、医療従事者が作成あるいは保護者と医療従事者で作成したスケジュールに基づいて、予防接種を管理しており、看護師は、保護者の理解度に合わせてスケジュールを作成することで、確実な接種につなげていることが明らかとなった。

  • 藤田 優一, 植木 慎悟, 北尾 美香, 福井 美苗
    2021 年30 巻 p. 205-212
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染症の感染拡大による小児の入院環境の変化と対応策を明らかにするため、全国の小児が入院する病院352施設を対象に横断調査を行った。61施設より回答があり (回答率17.3%)、病床利用率は68.2%から54.6%に低下していた。その理由は 「感染症患者 (新型コロナウイルス感染症以外) が減少した」 が92.5%と最も多かった。プレイルームの利用規則を変更した施設は62.3%であり 「使用禁止」 や 「使用人数の制限」 などの変更がされていた。付き添い率は72.6%から65.0%へ低下していた。面会基準は、「親以外は不可」 が60.8%と最も多く大きな変化がみられた。入院環境の問題として 「面会の制限」、「付き添い者の交代制限」 が多く、対応策としてリモート面会や運用マニュアルの作成などが行われていた。感染対策と子どもの権利擁護、付き添い者の負担軽減ができる対応策がとられていた。

  • 岸良 佳代子, 池田 友美
    2021 年30 巻 p. 213-219
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     目的 : 通所支援施設に就業する看護師の役割とその課題を文献検討により明らかにする。方法 : 医学中央雑誌Web版 (ver. 5) で 「通所支援」、「通園施設」、「療育施設」、「児童発達支援」 と 「看護」 をキーワードに2000年以降の原著論文を検索し、施設利用児、その保護者、施設関係者を対象としたものに限定し33件を抽出した。通所支援施設の看護について記載のある部分を抽出し、看護師の役割という視点で分類した。結果 : 看護師の役割は5つに分類された。考察 : 通所支援施設の看護師の役割には一方的な知識提供だけではなく保護者の思いに寄り添うこと、やりとりを介して専門的にかかわること、各専門職間の連携が機能するよう常に配慮することが重要であると明らかになった。しかし、通所支援施設の看護師が対象となった文献はないため、通所支援施設の看護師の実態とかかえる課題を調査し、その役割を明らかにしなければならない。

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