日本小児看護学会誌
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25 巻, 3 号
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原著論文
  • 阿久澤 智恵子, 金泉 志保美, 青栁 千春, 佐光 恵子
    2016 年25 巻3 号 p. 1-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究は、食物アレルギー児のアナフィラキシーショック発症時の対応に対して保育所看護職者が認識している困難感を明らかにし、保育所内の救急処置体制の構築によりアドレナリン自己注射薬を持参する子どもを受け入れ対応するために必要な支援について検討することを目的としている。研究協力の得られた保育所看護職者9名を対象に、インタビューガイドに基づきインタビューを実施した。内容分析の手法を用い質的帰納的に分析した結果、【職員全体の緊急時の対応力に対する不安】、【緊急時の対応を担う負担感】、【緊急時対応のための体制が不十分】、【保護者・医師と園との対応方針の相違】の4つのカテゴリーが形成された。全保育所への看護師配置を法や指針で明確にし、人件費の補助を負担するなどの具体的な対策が望まれる。また、保育所看護職者が自信をもって保育職員への教育的役割を遂行していけるよう研修体制や法的な権限保護などの支援体制の整備が必要であることが示唆された。

研究報告
  • 下野 純平, 市原 真穂
    2016 年25 巻3 号 p. 9-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     在宅超重症児の母親7名を対象とし、父親による父親役割遂行に対する思いを明らかにし、家族マネジメントの視点から家族への看護援助を考察することを目的に質的記述的研究を行った。

     結果、【父親として超重症児を可愛がってくれていることで得られる安堵】、【仕事が主要な役割でありながら育児を遂行してくれていることへの敬意】、【現在の育児家事の協働体制を維持したい】、【超重症児のことを安心して任せきれない】、【超重症児のニーズに応じた取り組みを尊重してくれていることに感謝】、【話を聞いてくれることで精神的な支えとなってくれていることに感謝】、【時にすれ違う歯痒さ】、【父親役割を遂行することで生じる葛藤を汲み取りたい】、【ともに今を一生懸命暮らすしかない】が抽出された。

     家族への看護援助として、超重症児が高度医療機関に入院中から両親の思いの違いに注目していくことや父親が超重症児と触れ合い、その時の思いを表出できるように関わることが必要である。

  • 櫻井 育穂, 勝本 祥子, 添田 啓子, 西脇 由枝, 田村 佳士枝, 望月 浩江, 松本 宗賢, 株﨑 雅子, 近藤 美和子, 久保 良子 ...
    2016 年25 巻3 号 p. 17-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究は、オレム理論の認知度、1) 「オレム標準看護計画」 、2) 「オレム理論の視点を取り入れたガイドブック」 の利用状況と評価、3) オレム理論の看護過程への活用について、1小児医療施設の看護師395名を対象に質問紙調査を実施・分析した。結果、279名 (質問紙回収率70.9%、有効回答率70.6%) から回答を得た。オレム理論について約半数が内容を理解し、約8割がオレム標準看護計画を使用し役立つと認識していた。また、看護師は親のケア能力と子どものセルフケア能力を高める支援において子どもの成長発達と家族を含めた看護を意識的に行っており、これは平成19年度からの教育的介入によりオレム理論を活用することが浸透しているためと考えられた。しかし、理論の視点を取り入れたガイドブックの利用率は低く、内科系外科系部署の特徴による看護過程への理論の活用状況に差が生じており、教育的介入方法の検討の必要性が示唆された。

  • —医療的ケアを必要とする子どもの在宅ケアを検討してから家庭で生活する時期に焦点を当てて—
    松岡 真里, 上原 章江, 茂本 咲子, 大須賀 美智, 花井 文, 橋本 ゆかり, 奈良間 美保
    2016 年25 巻3 号 p. 24-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     子どもの在宅ケアを検討してから家庭で生活する時期における『子どもと家族を主体としたケア』に関する看護師の認識の特徴を明らかにするために、病院および訪問看護ステーション勤務の看護師を対象に質問紙調査を行った。看護師は、『子どもと家族を主体としたケア』を大切と認識しながらも、実践しているという認識が低い項目があることが明らかとなった。特に、チームや組織としての取り組みが求められるケアにおいて、実施されにくい現状が示された。因子分析では、『子どもと家族を主体としたケア』は、【見方、意向を共有しながら一緒に取り組む】、【子ども、親、家族であることを尊重する】、【子ども、親、家族の生活上必要な情報やサポートを提供する】、【お互いに話し合う機会の保証】の4つの構成概念であることが明らかとなった。

  • 櫻井 育穂
    2016 年25 巻3 号 p. 32-38
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     現在、先天性心疾患患者の多くが、成人型医療への移行を求められている。本研究は、15歳以上の先天性心疾患患者とその親の移行の認識とその相違について明らかにし、支援の方向性を検討した。患者とその親に無記名自記式の質問紙調査を行い、患者35名、親32名 (回収率87.5%、80.0%) の回答を分析した。その結果、患者の漠然とした病気の理解と自己管理に対する認識の低さが移行に対する動機づけに影響を与えていることが考えられた。また、移行に影響する要因として、患者の周囲への病気説明や病気関連の情報取得があり、それらには、病気説明や医師から情報的サポートが関連していた。しかし、移行の実態は、医師・親中心であり、患者は医師が変わる不安や、移行に対する情報不足により判断できない状態であった。今後、患者の病気の理解や移行に関する情報提供等の支援と同時に、親が患者の移行を手助けできる支援を検討していく必要がある。

  • 浅利 剛史
    2016 年25 巻3 号 p. 39-46
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は 「幼児の達成感」 という概念を明らかにし、医療者が行うケアの評価指標となり得るかを検討することである。Rodgers & Knafl (2000) の方法を参考に看護学、心理学、教育学、その他 (看護学以外の医療系学問) の和文献32件を対象として概念分析を行なった。その結果 「幼児の達成感」 は、負荷のあるイベントを幼児が大人との相互作用を通じて準備・遂行すること、幼児を取り巻く大人が幼児を直接支援したり場を設定するなどの間接的な支援をしたりすることが先行要件であった。属性は【安堵】、【うれしい思い】、【成就した感覚】、【満ち足りた思い】といった感情で構成された。幼児が達成感を得られるとそのイベントに関する成果が得られるだけでなく、社会性、主体性が強化され、情緒が安定するという帰結が導かれた。以上の結果より、幼児の達成感を評価することは大人が行ったかかわりや幼児と大人の相互作用を間接的に評価するための指標となりうると考えられた。

  • 田畑 久江
    2016 年25 巻3 号 p. 47-54
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究は、本邦における 「子どもの主体性」 の概念について明らかにし、病気をもつ子どもの看護に有用であるか検討することを目的とした。Rodgersの概念分析方法を用いて、看護学、教育学、心理学、発達学の和文献と書籍75件を対象として概念分析を行った。その結果、7つのカテゴリが抽出された。 「子どもの主体性」 は、子どもの【能動的な認知・情意・行動】であり【段階的に発達】するという属性で説明された。またそれは、【子どもの発達・情意・体験】と【周囲の大人の働きかけ】を先行要件とし、【子どもの健康的な自我・発達】、【子どもの前向きな情意】、【子ども自身が対処・周囲に適応する力】という帰結につながり、先行要件、属性、帰結が循環しながら発達していくことが示唆された。病気をもつ子どもへの看護には、先行要件の【周囲の大人の働きかけ】を参考にすることができ、属性と帰結は、個々の 「子どもの主体性」 をとらえ評価する際に活用できると考えられる。

  • —保護者の認識による一考察—
    津田 聡子, 北尾 真梨, 高田 哲
    2016 年25 巻3 号 p. 55-61
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     【研究背景】障害のある女子の月経は、障害や発達の影響を受けるとされる一方、その実態についての報告は少ない。本研究では障害のある思春期女子の月経・月経随伴症状について保護者の認識を明らかにすることとした。

     【方法】特別支援学校に在籍する女子の保護者205人に質問紙調査を行い、回収した133部を有効回答とした。

     【結果】回答者の平均年齢は45.1±6.3歳、94.0%が母親であった。質問項目は月経の初来時期や月経随伴症状測定尺度 (MDQ) に基づき構成し障害の程度別に月経随伴症状の有無を分析した。その結果、MDQ得点では定型発達女子と比較し、総合得点・症状別得点は共に低かった。また、障害が重度なほど症状は 「不明」 となり、下位尺度17項目で重度の障害のある女子と軽度の障害のある女子との間で有意差を認めた。

     【結論】月経随伴症状は、障害が重度なほど 「不明」 と評価され、障害のある女子の月経随伴症状について定量的な判定基準の確立が示唆された。

  • 齊藤 志織, 楢木野 裕美
    2016 年25 巻3 号 p. 62-68
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究は、医療的ケアが必要になった幼児の家庭での生活を見据えて、看護師が幼児の発達を支えるために必要だと認識している看護を明らかにすることを目的とし、A圏内2医療機関の小児病棟に勤務する看護師10名に半構造化面接を実施し、質的記述的に分析した。

     看護師は、医療的ケアが必要になった幼児の発達を支えるために、【発達できる体調に整える】、【子どもと家族が医療的ケアが必要になった現状を受け止められるようにする】、【その子にとってのふつうの生活を過ごすことができるようにする】、【発達段階に合わせて発達を促す機会を意図的につくる】、【医療的ケアそのものが発達を支える機会とする】、【基本的生活習慣を確立を目指す】、【集団生活の機会をつくる】、【子どもが育つ環境を整えるために家族を支える】ことが看護として必要と認識していた。

資料
  • 下野 純平, 中村 伸枝, 佐藤 奈保
    2016 年25 巻3 号 p. 69-76
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究は、日本における新生児集中治療室 (以下、NICU) に入院した児の父親を対象とした研究の動向を文献検討により明らかにし、今後の研究課題を検討することを目的に、医中誌 (Ver. 5) を用いて文献検索を行った。結果、NICUに入院した児の父親を対象とした文献37件を得た。

     わが国においてNICUに入院した児の父親を対象とした研究は増加傾向にあり、2006年以降は継続的に研究がみられていた。研究の対象は、児の条件を早産もしくは/および低出生体重児と限定した文献が20件と最も多かった。研究方法は面接調査が19件と最も多かった。記述内容に関しては、父親の心理、体験、行動・意識の変容と影響要因の3つに分類された。今後は、NICUに入院している児の疾患的背景に関する条件を拡大して研究をしていくことや父親と母親間の関係性に着目した研究をより一層行い、両親を対象とした看護援助方法を検証していくことが必要である。

  • —理由と病気説明内容からの検討—
    遠藤 晋作, 堀田 法子
    2016 年25 巻3 号 p. 77-83
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究は先天性心疾患をもつ学童期後半の子どもに対し、母親が病気説明をしやすい・しにくい理由と説明内容を明らかにし、母親が希望通りに病気説明を行うための支援の示唆を得ることを目的とする。10歳~12歳の患児の母親へ無記名自記式の質問紙調査を行い、65名より質問紙を回収し、59名より有効回答を得た。

     結果、病気説明をしやすい・しにくい理由ではともに、【説明内容の特性】、【子どもへの配慮】、【説明方法】の3大カテゴリーを抽出した。病気説明をしやすい・しにくい内容ではともに、【病気の内容】、【現在までの治療内容】、【日常生活への影響】、【今後のこと】の4大カテゴリーを抽出した。

     病気説明をしやすい・しにくい理由から、病気説明は【説明内容の特性】や【子どもへの配慮】に影響され、【説明方法】に《医療者から説明がある》、《利用できる媒体がある》ことが有効な援助になると考える。また【今後のこと】は病気説明をしにくい内容に特徴的に示された。

  • 久保 仁美, 今井 彩, 松﨑 奈々子, 阿久澤 智恵子, 下山 京子, 佐光 恵子, 金泉 志保美
    2016 年25 巻3 号 p. 84-90
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、過去10年間に日本国内の看護系学術雑誌に掲載されたNICU看護師の母親に対する退院支援に関する研究動向と課題を明らかにすることである。Web版医学中央雑誌 (Ver. 5) を用いて 「新生児集中治療室/NICU」 and 「母親」 and 「退院」 を検索し、研究目的に沿った14論文を研究対象とした。結果、年次別の文献推移は2006年から2013年までに毎年1件~3件あり、2014年以降は0件であった。研究内容は退院後の育児に対する思いや愛着形成に関する研究が5件、退院の意思決定や母親の心理状態についての研究は2件、母乳育児継続の支援に関する研究は2件、Family-Centered Care (以下、FCC) や家族形成のプロセスについての研究は3件、退院後の継続支援についての研究は2件であった。今回のレビューより、出生後早期からの退院後の育児を見据えた看護支援の提供、退院の意思決定に寄り添う看護支援の提供、FCCの理念に基づいた看護支援の提供、病院の看護職と地域の看護職との連携である看-看連携および他職種連携の強化の重要性が示唆された。

  • —1事例の面接を通して—
    浅井 佳士
    2016 年25 巻3 号 p. 91-96
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     多くの重症心身障がい児は両親の献身的な援助のもとで生活している。本研究では、重症心身障がい児を育てる主養育者の養育観を知り、援助のあり方を考察することを目的とする。そこで主養育者に半構造的インタビューを行い、語られた経験から養育観の分析を行った。主養育者の語りにより、告知後のフォロー体制の不足、地域における物的・人的支援環境の不足の課題が明らかになった。また、児のために行っていることが、主養育者自身の生活の充実感にもつながっており、重症心身障がい児を育てるという経験を肯定的にとらえることができ、育児意欲にもつながっている。しかし、その充実感のためには、支援環境の充実がかかわってくることも明らかになった。重症心身障がい児を育てる主養育者への援助のためには、主養育者と語り合うことで主養育者の求めているものを知り、そこから支援の方向性を検討していくことが大切である。

  • 岩間 恵, 泊 祐子, 竹村 淳子
    2016 年25 巻3 号 p. 97-102
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、1型糖尿病の乳幼児をもつ親が療養生活においてもつ心配や困難と、それへの対応を文献研究にて明らかにすることである。医学中央雑誌Web版 (Ver. 5) とCiNiiを用い、2005~2014年の1型糖尿病の乳幼児をもつ親の療養生活に関する内容が記述された12文献を対象とし分析した。

     親の心配や困難の内容は、【療養行動の管理に関する心配や困難】と、【復園・入学時に生じる心配や困難】、【療養行動を習得するための指導に関する心配や困難】に分類された。それらの心配や困難への支援として、親が療養生活において心配や疑問を感じた際に気軽に専門家に相談できるシステムの構築や、親から子どもへ療養行動の管理が移行される時期について、医療者は子どもの発達段階、ライフイベント、きょうだいの有無や親の就労状況など家庭内での指導環境をアセスメントし、継続してかかわっていくことが必要であると示唆された。

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