日本小児看護学会誌
Online ISSN : 2423-8457
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ISSN-L : 1344-9923
31 巻
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研究
  • ―毛細管採血におけるかかわり―
    吉田 美幸
    2022 年 31 巻 p. 1-9
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、看護師が親と協働して子どもの調整能力発揮を支えるために、小児科外来で毛細管採血を受ける幼児後期の子どもに付き添う母親のかかわりを明らかにすることを目的にした。母親10名の参加観察および半構成的面接を行い、質的記述的研究方法により分析した。結果、母親のかかわりには、【子どもの感情の包容】、【子どもの安心の拠り所としての見守り】、【子どもの意思表出への寄り添い】、【我慢できる力を備え自分でやろうとする「この子」の受け止め】、【子どもの参加に向けた医療従事者への橋渡し】、【子どもへの精一杯の後押し】、【子どもの不安・恐れ・嫌への巻き込まれ】、【子どもの見通し形成と参加に向けた医療従事者からの支えへの受け止めと信頼】が生成された。看護師は、母親に採血の見通しを示しつつ、母親のかかわりを尊重し、温かく見守り、母親が看護師と協働し子どもを支えていることを意識化できるよう支援する重要性が示唆された。

  • 絹谷 果歩, 本田 順子
    2022 年 31 巻 p. 10-17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     小児がん医療の進歩により、治療後に日常生活を送る小児がん経験者は増加傾向にある。本研究では小児がんを発症し患肢温存手術もしくは切・離断術を受けた後、学校生活や進学・進路においてどのような影響があり、また困難に感じているのかを明らかにすることを目的とした。A病院の外来に通院する13名に半構造化面接を実施し、内容分析の手法を用いて分析を行った結果、進学と進路へ影響することとして3カテゴリーと8サブカテゴリー、学校生活の中での病気や治療が原因で困難なこととして7カテゴリーと22サブカテゴリーが抽出された。疾患部位が下肢の対象者では学校選びの際にエレベーターの有無を重視したり、日常生活動作(ADL)の状態に合わせて学校までの通学手段や距離を考慮したりする傾向があることが明らかになった。また活動制限があることから体育の授業への影響が大きく、復学時の体育の授業に対する支援の必要性が示唆された。

  • ―エピソード記述を用いて―
    平田 美紀, 森口 弘美, 堀田 法子
    2022 年 31 巻 p. 18-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、採血を受ける2歳未満の子どもに付き添う母親の行動の意味を明らかにし、子どもの採血に付き添う母親の支援モデルの提示につなげることである。採血を受けた2歳未満の子どもと母親3組を対象に、採血場面の非参加観察および母親への半構成的面接を行った。研究デザインは、看護において重要な他者の思いや意図に近づくための方法として、エピソード記述のアプローチを援用した。母親は、子どもに付き添い “母親役割” を発揮するが、子どもの身体を抑えるよう促されたことで “介助役割” を担うことになった。一方で、“母親役割” を担いつつ、自ら子どもが動かないように抱きしめる “介助役割” をも担っていた。母親の行動は、“母親役割”、“介助役割”、“母親役割” と “介助役割” の3場面があることが明らかとなり、母親が “介助役割” を担いつつも “母親役割” を発揮するために、看護師が実践する支援モデルの必要性が示唆された。

  • ―育児経験者である看護師の育児経験前の臨床経験から―
    山本 久美子, 今井 多樹子, 中吉 陽子
    2022 年 31 巻 p. 26-34
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、育児経験者である看護師の育児経験前の臨床経験を通して、小児看護の困難感を生み出す構造を明らかにすることである。育児経験前・後で小児病棟で5年以上勤務する看護師6名を対象に、半構成的面接を実施しKJ法で分析した。その結果【“子ども” への親愛感は必須の特性】、【子どもをめぐる “環境” という視野の狭さ】、【“母” への想像力不足】、【“子ども” の個別性へのアプローチ不足】、【育児という実体験がない弱み】、【母子を優先できない姿勢】、【“子ども・母親” との人間関係構築不足】という7つの島に統合され困難感の極みとも言える構造が指し示された。育児経験者である看護師は、育児経験前の看護師に【育児という実体験がない弱み】に配慮した教育的支援など、小児看護の場で果たすべき教育的役割は大きいことが示唆された。

  • 小泉 麗, 長谷 美智子
    2022 年 31 巻 p. 35-44
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     目的:訪問看護師による医療的ケアの必要な在宅重症心身障害児の親の体調に関する把握の視点と方法、実施している支援を明らかにする。方法:質的記述的研究。医療的ケアの必要な在宅重症心身障害児を訪問する看護師10名を対象に、インタビューガイドに基づく個別の半構成的インタビューを行った。結果:訪問看護師による親の体調に関する把握の視点と方法として【ケアの抱え込みをとらえる】、【日常における体調の揺らぎやすさをとらえる】、【いつもと違う様子を敏感に察知し体調を感じ取る】、【自然な会話の中で体調の話を引き出す】、支援として【元気を回復できるようかかわる】、【自分の体調を整えられるよう働きかける】、【サポート体制を整える】、【尊重し寄り添う】を抽出した。結論:訪問看護師は、親の体調を察知し、サポート体制を整え、子どものケアの抱え込みを回避することや、親自身による体調管理を支援することが重要である。

  • 小代 仁美, 早川 友香
    2022 年 31 巻 p. 45-52
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、小児がんの子ども(以下、子ども)の入院における闘病仲間(以下、仲間)とのかかわりに対する親の思いを明らかにすることである。方法は、病名告知を受けている子どもの親7名を対象とした半構成的面接による質的帰納的研究である。結果、3カテゴリーと9サブカテゴリーを抽出した。親は、子どもの入院における仲間とのかかわりに対して【子どもの心身の安寧と闘病の力となる期待】を抱いていた。そして、【子どもの心身の安寧と闘病の力となる期待】を抱きつつ【子どもと仲間に生じる負担に対する懸念】の思いがあった。一方、親自身も子どもとともに【仲間の親子との絆に感謝】があった。子どもの看護は、傍にいる親との協働が大切であるため、子どもの心身への影響がないように闘病を支えている親の思いを考慮して、子どもと仲間とのかかわりへの支援を考えていく必要がある。

  • 長谷 美智子, 櫻井 育穂, 辻本 健, 瀧田 浩平, 添田 啓子
    2022 年 31 巻 p. 53-60
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     「入院中の子どものセルフケア能力・親のケア能力向上への看護を測定する尺度」を開発することを目的に、小児専門病院に入院していた子どもを育てている家族300名を対象に質問紙調査を実施し、信頼性と妥当性を検証した。分析対象は78名分(有効回答率70.2%)であった。項目分析と探索的因子分析により17項目3因子が抽出された。さらに、確認因子分析により探索的因子分析で得られた仮説モデルの適合度が確認された。信頼性では、クロンバックα係数は尺度17項目全体が0.961、因子別では0.902~0.927の範囲であった。外的基準としての「看護師の支援度」との相関係数は0.637であった。「入院中の子どものセルフケア能力・親のケア能力向上への看護を測定する尺度」は一定の信頼性と妥当性を備えていると言える。今後臨床の場で活用できるものと考えられる。

  • 杉浦 将人
    2022 年 31 巻 p. 61-69
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、急変時に必要な看護実践能力を見極め、効果的な急変対応教育につなげるための示唆を得るために、小児病棟の医師が看護師に期待する内容を明らかにすることである。医師10名を対象に半構成的面接を行い、面接内容を質的に解釈して期待の内容を抽象化し、コアカテゴリーを見出すとともに、関係性を概念図に表した。その結果、医師の期待は「患児の状況に合わせた予測や対応に関する知識を習得している」、「患児の状況・成長を考慮し医師の指示に基づいた処置・検査・治療の実施と環境調整ができる」、「緊急度に合わせたチームのコミュニケーションづくりができる」、「家族への傾聴や児の状況説明ができる」であった。これらは、患児の急変対応に関する知識の習得を基盤として、チームのコミュニケーションづくりを念頭に置いた技術の実践や環境調整が期待されていた。また、意思決定者である家族への対応を看護師に期待していることも解釈された。

  • 谷 彩乃, 上田 敏丈, 堀田 法子
    2022 年 31 巻 p. 70-77
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     新生児集中治療室(NICU)における子どもの痛みのケアに参加することへの母親の思いを明らかにし、母親への看護の検討を目的とした。痛みのケアに参加した母親に半構造化面接を実施し、Steps for Coding and Theorization(SCAT)を用いて分析した。母親の思いは3期に分類された。痛みの処置を知る時期:母親は「痛みの処置の無知識」の状態であり「痛みの処置への漠然的恐怖」を感じる。「痛みの処置を知る義務感」から徐々に情報を得て「痛みの処置へのリアリティーショック」を受けるが、「痛みの処置への鼓舞」を行い許容していく。痛みのケア参加開始期:「痛みのケアへの興味・関心」をもち、痛みのケアへ参加するが「痛みのケアへの葛藤」も感じる。痛みのケア参加展開期:「痛みのケア参加への喜び」や「育児ケア実施への喜び」を感じる。痛みのケア参加により得た経験は「退院後の育児ケアへの自信」へとつながっていた。各期の母親の思いを尊重し痛みのケアへの参加を支援していく必要がある。

  • ―幼児期の子どもの採血場面を通して―
    大日方 るり子, 野中 淳子, 米山 雅子
    2022 年 31 巻 p. 109-117
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     小児クリニックでの採血場面における看護師の幼児期の子どもへのかかわりの特性を明らかにすることを目的とした。方法は質的記述的研究で、クリニック3施設の2歳~6歳の子どもの採血11場面の参加観察と、採血に携わる5名の看護師への半構造化面接を実施した。結果、各時間軸で経過を分析し4つのパターン(①ひとりでできる、②一部固定、③馬乗り固定、④延期)に分類した。看護師は子どもと誠実にかかわることを意識し、“親を巻き込み”、“真剣な時こそ笑顔” や絶妙な言葉かけで子どもも採血に向き合えていたが、馬乗り固定を選択した場面のかかわりでは効果はみられず、過去の子どもの採血における嫌な体験と重なっていた。看護師は採血前に時間的な余裕がない分、採血後に意図的に子どもとかかわる時間をつくり、子どもの緊張を解放するサポートを行っていたが、子どもと親の採血前のアセスメントと肯定的な体験へと変える取り組みの必要性が示唆された。

  • 髙橋 恵子
    2022 年 31 巻 p. 118-125
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、保育所に通う医療的ケア児にかかわる保育所看護職が医療的ケアを実施した体験から、保育所看護職の役割をどのように考えたのかを明らかにすることである。医療的ケア児にかかわる保育所看護職10名に、半構成的面接を行い質的記述的に分析した。その結果、【保育所で医療的ケア児を受け入れられるようにする】、【保育士が医療的ケア児の健康状態や医療的ケアについてわかるようにする】、【保育の流れに配慮して医療的ケアを行う】、【家庭と保育所で継続した医療的ケアができるようにする】、【医療的ケア児が医療的ケアに主体的に取り組めるようにする】の5つのカテゴリーが抽出された。以上のことから保育士をはじめ、主治医および保護者との連携や、医療的ケア児を含めた他児とのかかわりが重要であった。また、医療的ケア児の自立への支援に向けて、主体的に医療的ケアに取り組むかかわりの必要性が示唆された。

  • 森田(冨中) 美幸, 村端 真由美, 加藤 由香
    2022 年 31 巻 p. 126-133
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     目的:小児がん経験者の運動量と健康関連QOLを一般集団と比較し違いを明らかにする。方法:退院後5年以内で外来通院中の思春期小児がん経験者と年齢・性別をマッチングさせた一般集団を対象に、運動と健康関連QOLについて自記式質問紙で調査し、ウィルコクソン符号順位検定を行った。結果:1週間の運動量中央値は小児がん経験者90.0分、一般集団391.2分であった(p<.001)。健康関連QOL身体機能得点中央値は小児がん経験者90.6点、一般集団95.3点であった(p=.001)。考察:小児がん経験者の運動量は有意に少ないため、運動の継続支援、運動量低下を見据えた入院中からのアプローチが必要である。小児がん経験者の健康関連QOLは身体機能領域が低下しやすい。結論:小児がん経験者は運動量が少なく、運動量と健康関連QOLの低下を最小限に食い止めるために運動の必要性を伝え支援する必要がある。

  • 牧田 綾, 奥田 真央, 大北 真弓, 村端 真由美
    2022 年 31 巻 p. 134-142
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     潰瘍性大腸炎術後には便漏れが起こると言われている。思春期患者の生活上の困難と対処行動を明らかにするため、半構成的面接法を実施した。参加者は人工肛門閉鎖術後3年以内の思春期患者4名で、結果を質的帰納的に分析した。困難として【日常的に便漏れや疼痛・掻痒感がある】、【療養行動をとらなければならない煩わしさがある】、【友人と同じように学校生活を送れない】、【勉強についていけない】、【教師に病気のことを含めて自分のことを理解してもらえないと感じる】、【将来への不安がある】があった。対処行動として【症状をコントロールするために意識的に行動する】、【起こりうる困難を予測して療養生活を送る】、【病状に合わせて無理をせずに学校生活を送る】、【遅れを取り戻すために勉強する】、【友人の目を気にしながら行動する】、【困った時は親や医師に相談する】があった。入院中から退院後の生活を見据えた学校との連携や情報提供などの支援が必要である。

  • 片岡 美翔, 野本 美佳, 薬師神 裕子
    2022 年 31 巻 p. 160-168
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、特別支援学校に通う障害をもつ子どもの保護者の災害準備状況に影響を及ぼす要因と災害準備における工夫を明らかにすることである。小学生~高校生の保護者に無記名自記式質問紙調査を実施し、防災意識、災害準備状況、災害時の課題と独自の工夫、必要な支援について209名から回答を得た。分析には記述統計、t検定、重回帰分析を用いた。防災意識尺度総得点の高い保護者のほうが災害準備状況総得点が高く、保護者の災害準備状況に影響する要因は「防災意識」と「世帯年収」であることが示唆された。また、保護者の防災意識は一般の人より高く、子どもの特性に合わせた個別性の高い災害準備を行えていた。今後は、災害に対する想像力を高めることでさらに災害準備状況を整える支援や、学校のサポート体制の充実が必要である。

  • 神道 那実, 大西 文子, 岡田 摩理, 遠藤 幸子, 鳥居 賀乃子
    2022 年 31 巻 p. 169-177
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、全国的なプレパレーション実施状況を把握し、看護師の属性、必要性の認識、学習経験との関連を明らかにすることで、今後の課題を検討することを目的とした。全国の小児科を標榜する病床数400床以上の一般病院と小児専門病院の小児病棟・小児科外来に勤務する看護師1,712名を対象とし、2017年8月~2018年3月に無記名自記式質問紙調査を行った。有効回答数は741(有効回答率43.3%)であった。プレパレーション実施経験者は約8割であったが、最近3か月以内の実施経験者は5割に満たなかった。5段階の実施状況では情報収集・アセスメントの実施者が少なかった。影響要因として、勤務場所、病棟での小児看護経験年数、学習経験があった。今後のプレパレーションにおける課題は、日常的看護への定着、事前の情報収集・アセスメントの促進である。

  • 石川 桂
    2022 年 31 巻 p. 178-185
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、NICUに入院経験のある医療的ケア児を育てる母親が退院を意思決定した要因を明らかにすることである。NICUなどを退院後、外来通院をしている医療的ケア児を育てる母親6名を対象に半構成的面接を実施し、質的統合法(KJ法)を用いて分析を行った結果、6つの要因が明らかになった。母親は、【対処を模索 : 生命の危機感がもたらす不安への対処を模索】と【責任の移譲 : 背負いきれない子どもの命と家族の生活の間で悩み夫の意見に移譲】の相反する2つのことを実施しながら、その後、変化し、【向き合う覚悟 : 生命の尊さを感じ子どもと向き合う覚悟】をしていた。そして、【情報の獲得 : 子どもと生活していくための安心できる情報の獲得】を通して、【家族の喜び : 子どもと過ごす時間がもたらす家族の喜び】を感じ、【生活の再構築 : 在宅移行体制の構築】する構造が常に循環し、退院に対する意思決定へと至っていた。

  • 中水流 彩, 中村 伸枝, 佐藤 奈保
    2022 年 31 巻 p. 186-193
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、幼児期に先天性心疾患手術を受ける患児の思いと反応について明らかにし、患児の情動反応について記述すること、さらには看護援助の示唆を得ることである。先天性心疾患手術を受ける幼児4名を対象に質的縦断調査を実施し、入院中の患児が情動反応を示した85場面に対する参加観察を行った。参加観察において記述したフィールドノートを質的に分析した結果、幼児期に先天性心疾患手術を受ける患児の情動反応は、6つの体験に分類された。6体験の中で、[新たな環境への接触]、[入院中に生じた制限]、[苦痛を伴う処置]では、周術期に特有の体験であるにもかかわらず、患児の主体的反応がみられ自己防衛は軽微に止まった。一方、患児の自己防衛が強かったものは、療養生活の中で体験することの多い[服薬]、[苦痛を伴う検査]、[身体侵襲を伴う処置]であった。これらの体験に焦点を当てた教育的介入と患児の対処を高める支援の必要性が示された。

  • 西田 幹子, 西田 みゆき
    2022 年 31 巻 p. 194-201
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は幼児期にネフローゼ症候群を発症し、成人期を迎えた患者の療養行動が自立するまでのプロセスを明らかにすることを目的とした。成人医療施設に転院した患者5名を対象に質的記述的研究方法を用いて分析した。分析の結果、【嫌な入院生活を通して病気である現実を直視する】、【再発を繰り返す病気であることを知る】、【尿試験紙検査や内服などを習慣化する】、【再発が失敗した感覚になり自分が病気であることを自覚する】、【社会生活を通して病気と向き合う】、【病気と生きていくことを覚悟する】、【治療に関する疑問や再発予防に関する意見を述べる】、【病気と付き合いながら生きることを具体的に考える】が生成された。これらの構成要素から受動的な時期、受動と能動が混在する時期、能動的な時期の各体験から一連のプロセスが認められた。看護師は、子どもが成長発達の中でその体験を積み重ねることができるように支援していく必要性が示唆された。

  • 中込 彩香, 安藤 晴美, 石川 眞里子
    2022 年 31 巻 p. 202-210
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     重症先天性心疾患のある学童の発達に関する母親の認識を明らかにすることを目的に、母親12名へ半構成的面接を行い、質的帰納的に分析した。重症先天性心疾患のある学童の母親は【コミュニケーションがうまくいかない】などの社会性の遅れや、【栄養を十分に摂れない】などの身体的な発達について気になっていた。また、発達の遅れや偏りがあることは学校生活の中で支援を受けて【良くなってきている】などと受け止めていた。発達について気になることやそれらの受け止めを経て母親の認識は、【子どもの個性に合わせる】こと、【子どもの可能性への期待】へと移り変わっていた。重症先天性心疾患児の支援においては、継続した発達フォローにより信頼関係の中で保護者が子どもの発達の遅れに気付き戸惑う時に相談相手となり、子どもへのかかわり方についてともに考えていくことが求められる。

実践報告
  • 別所 史子, 増田 由美
    2022 年 31 巻 p. 78-86
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究は、重度の運動機能障害のある子ども(以下、子ども)に対して、姿勢保持用具(Early Activity System, LECKEY社)(以下,EAS)を用いて行った在宅での姿勢のケアへの専門職のかかわりを明らかにすることを目的とした。半構造化面接を行い、データを質的記述的に分析した結果、専門職のかかわりとして【子どもの安定した抗重力姿勢をつくる】、【抗重力姿勢への力を引き出し子どもの可能性を広げる】、【抗重力姿勢を母親と子どもの生活に調和させる】が抽出された。子どもにとって抗重力姿勢は負担を伴うが、専門職はより良い刺激を提供できるよう基盤を整えて子どもの意欲を引き出していた。そして、抗重力姿勢を子どもと母親の生活に調和させることで母子の触れ合いの充実を支援していた。多職種が活用できるEASを用いた抗重力姿勢への取り組みから、抗重力姿勢をとることによる子どもの反応や母親の期待が明らかになり、姿勢のケアが母子の生活を豊かにする一つの支援となり得ることが示唆された。

  • 橋本 侑美, 大橋 麗子
    2022 年 31 巻 p. 211-218
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、小学5、6年生を対象とした心肺蘇生教育の実施により、教育前後の一次救命処置(BLS)手技に対する自己評価と救命に対する思いの変化、心肺蘇生教育後に児童が感じたことを明らかにすることである。小学5、6年生225名を対象に調査を行った。心肺蘇生教育実施により、「BLS手技に対する自己評価」、「救命に対する思い」の向上がみられた。過去に心肺蘇生教育を受けた経験がある児童はそうでない児童よりも、心肺蘇生教育前の「BLS手技に対する自己評価」、「救命に対する思い」が高かったが、実施後にその差は小さくなった。児童の心肺蘇生教育に対する学習意欲は心肺蘇生教育前後ともに高かった。心肺蘇生教育後に児童が感じたことでは、【人命救助意識のめばえ】、【心肺蘇生法実践意欲の向上】が示された一方、【実技に対する困難感】や【心肺蘇生法実践に対する不安】も示された。

資料
  • 草野 淳子, 神野 桃子, 高野 政子
    2022 年 31 巻 p. 87-93
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     目的:在宅で訪問看護師が医療的ケア児に行う看護の実践について、文献検討を行い、明らかにすることである。方法:医学中央雑誌Web版(ver. 5)を用いて、2003年以降の原著論文を選択した。キーワードは、「訪問看護師」、「医療的ケア」、「重症心身障害児」として文献検索を行い、目的に合致する13文献を抽出した。訪問看護師が医療的ケア児に行った看護の実践に関する記述を抽出し、意味の内容ごとにサブカテゴリ、カテゴリに分類した。結果:49の記述内容が抽出され、19サブカテゴリ、6カテゴリが生成された。カテゴリは【退院前からの連携により継続したケアを工夫する】、【体調悪化を見極め児と家族の力を発見する】、【児の意思表示を促し反応をとらえる】、【児の力を生かした特有のケア方法を選択】【成長発達を促す遊びの提供をする】、【児が自身の力を発揮できるように呼吸をサポートする】であった。

  • 佐川 雅世, 浅利 剛史, 草薙 恵, 田畑 久江, 今野 美紀
    2022 年 31 巻 p. 94-101
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     目的:採血を受ける3歳~7歳の幼児の「がんばった」言動を支援する看護師のかかわりを明らかにする。方法:3歳~7歳の幼児の採血において幼児の「がんばった」言動とそれらがみられる前の看護師の言動を観察記録表により観察し、質的帰納的に分析した。結果:対象は採血を受ける幼児20名(年齢の中央値は5歳4か月)と採血を行う看護師8名(小児看護師歴の中央値は16年)。「がんばった」言動を支援するかかわりとして【がんばれる雰囲気の醸成】、【幼児の気持ちに寄り添った情報提供】、【幼児の主体性を促すための提案】、【幼児の理解を促し確認する問いかけ】、【幼児のがんばりに対する称賛】、【幼児の特性に合わせたディストラクション】が抽出された。考察:看護師は【がんばれる雰囲気の醸成】を基盤とし【幼児の主体性を促すための提案】などを行っていた。また【幼児のがんばりに対する称賛】は幼児の主体性を育む継続的な支援の可能性が示唆された。

  • 原 加奈, 飯村 直子, 金丸 友, 西田 志穗, 杉本 晃子, 吉野 純, 西村 実希子, 三池 純代
    2022 年 31 巻 p. 102-108
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、慢性疾患の子どもの学校生活の現状と、子どもが学校生活を送るために行っている家族、学校関係者、医療従事者の支援について、文献検討を通して明らかにすることである。「慢性疾患」、「学校」、「養護教諭」、「医療」をキーワードに文献を検索し、30件を分析対象とした。慢性疾患の子どもが安全に楽しく学校生活を送るためには、周囲のサポートが必須であった。しかし、サポート側の担任と養護教諭は多くの困難をかかえているが、その支援が不足していた。また、家族と学校、学校と医療は十分に連携を取れているとは言えない現状が明らかとなった。家族、学校関係者、医療従事者が十分にコミュニケーションを取り子どもを支援することが望まれる。そのために、それぞれの立場の状況をより詳しく調査した上で子どもへの支援を検討する必要があることが示唆された。

  • 辻 朋子
    2022 年 31 巻 p. 143-150
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     集中治療室で小児のEnd-of-Life(以下、EOL)ケアに携わる看護師の抱く困難感について、文献検討を通して現在の知見と今後の研究課題を明らかにすることを目的とし、2021年9月、医学中央雑誌WebVer. 5を用いて文献検索を行った。文献数は5件で、集中治療室で小児のEOLケアに携わる看護師の抱く困難感についての検討は進んでいないことが明らかになった。また、集中治療室で小児のEOLケアに携わる看護師の抱く困難感として、家族を十分に支えられていない不全感、家族の気持ちに共感することの難しさ、チームメンバーとの連携のあり方に関する悩み、救命治療とEOLケアとの間での葛藤、自分のケアに自信がないことへの不安、集中治療という病棟環境から生じる制限への苦悩、子どもの死を受け止めることへの困難感の7項目を抽出した。今後は小児集中治療室に焦点を当てたさらなる検討が望まれる。

  • 永田 真弓, 飯尾 美沙, 廣瀬 幸美, 橋浦 里実
    2022 年 31 巻 p. 151-159
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル フリー

     一般病棟の周術期小児への看護実践に関する特殊性と支援ニーズについて、看護師262名の質問紙調査により明らかにした。周術期小児に携わる一般病棟の看護師は、第一に、安全・安静に対する細心の注意に特殊性を感じていた。支援ニーズでは、卒後・現任教育における小児看護全般や周術期小児の看護に関する教育の充実・拡大を求めていた。看護師は、周術期小児への実践の特殊性・支援ニーズともに家族を含めた小児という対象特性を意識し、実践していたと言える。また、看護師の4割が自施設に病院のこども憲章がないと回答しており、周術期小児の看護実践の課題には【小児期の特性に合わせた周術期看護のための教育体制の強化】、【円滑な周術期の小児医療のためのチーム連携の充実】が抽出されたことから、周術期小児の権利とそのチーム医療を保障するための施設全体での取り組みが必要である。

  • 宮谷 恵, 市江 和子, 池田 麻左子, 真木 希, 元木 実希
    2022 年 31 巻 p. 219-225
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     障がい児へのケアの方針や方法に対する障がい児家族と看護師の『行き違い』の実態を明らかにし、看護支援を検討することを目的とした。障がい児施設や訪問看護の利用経験がある障がい児家族と障がい児施設・訪問看護ステーションの看護師に、質問紙調査を行った。回答は障がい児家族55名(回収率26.6%)、障がい児施設看護師109名(回収率26.2%)、訪問看護ステーション看護師72名(回収率23.8%)であった。障がい児のケアにおける家族と看護師の『行き違い』は家族と看護師双方の経験として発生していたが、頻度、内容の認識などで異なっていた。『行き違い』解決への対応方法として、家族とのコミュニケーションやカンファレンスに時間をかけることで、看護師の困難感と障がい児のケアにおける家族と看護師の『行き違い』が減り、『行き違い』の解決にかける時間と労力を減らし、障がい児と家族にとって最善のケアにつながる示唆を得た。

  • ―看護師からみた親との相互作用―
    宇佐美 由利香, 高橋 由紀, 奈良間 美保
    2022 年 31 巻 p. 226-233
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、入院している子どもをもつ親との相互作用に着目して小児病棟に勤務する看護師の体験を明らかにすることである。小児病棟の看護師6名に対して、半構造化面接を実施し、質的帰納的分析を行った。その結果、【日々の様子から親の印象を感じ取る】、【話し方やアイコンタクトから親との心理的距離を感じ取る】、【親のことを思ってどうするか考える】、【看護師としての役割と自分の気持ちの間で揺れる】、【自分の特性を認識する】、【親子を支えるために行動する】、【親への心理的距離に応じて関わり方が変わる】、【親と思いを共有する】を含む16カテゴリーが抽出された。看護師は、親との相互作用を繰り返す中で、自分の中で揺れ動く気持ちを感じ、自分の特性を認識する体験をしていた。加えて、看護師には、親のことを思う確かな主観が存在し、その看護師の主観的体験が小児病棟における看護実践に関わっていることが示唆された。

  • 今田 志保, 佐藤 幸子, 佐々木 るみ子, 今 陽子, 五十嵐 誌保
    2022 年 31 巻 p. 234-241
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、腰椎穿刺による髄腔内注射(IT)や骨髄穿刺(BMA)を繰り返し受けた小児がんの幼児の対処行動の変化を明らかにし、治療状況や検査前の様子から対処行動の変化に影響を与える要因を検討することである。幼児と保護者3組を対象に、IT・BMAの参加観察とインタビュー調査を縦断的に行った。分析は、対処行動に関するデータを抽出し、事例ごとに変化とその要因を検討した。その結果、幼児は、IT・BMAの回数を重ねることで効果的な対処行動が取れるようになるとは限らなかった。対処行動が変化する要因には、化学療法に伴う吐き気やだるさ、ステロイド剤に伴う食欲亢進や精神変調があげられた。IT・BMAを待つ間の幼児の心理状態が入室時や処置室内の対処行動に影響していた。以上より、治療経過や副作用の出現を観察、予測しながらかかわる必要性や、検査前までの幼児の環境を整えて臨めるようにすることの重要性が示唆された。

  • 塚原 美穂, 大久保 明子
    2022 年 31 巻 p. 242-250
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、国内の文献を対象に小児がん患児のきょうだい支援の内容と課題を明らかにすることを目的に、医学中央雑誌Web版(Ver. 4)を用いて文献検索をし、きょうだい支援の内容と課題に関する内容分析を行った。その結果、きょうだい支援として<きょうだいへの説明>、<きょうだいと家族がともに過ごす時間の確保>などがなされていた。一方で、<きょうだいが知りたい情報の不足>や、<きょうだいが家族と過ごすための支援の不足>などの課題があった。<きょうだいへの説明>では、医療従事者と保護者が連携すること、<きょうだいと家族がともに過ごす時間の確保>のためには、保護者からの情報収集や、利用可能な社会資源を十分に活用することも重要である。きょうだい支援においては、医療従事者が保護者からきょうだいの情報を得ることが不可欠であることから、きょうだいについての意図的なコミュニケーションが重要であることが示唆された。

  • 手塚 園江, 小林 京子
    2022 年 31 巻 p. 251-261
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     目的 : 小児集中治療室には積極的治療にもかかわらず医学的に救命の限界となりEnd-of-Lifeの転帰をたどる子どもが存在する。小児集中治療室におけるEnd-of-Life Careの概念の極めて重要な要素をとらえ操作的定義を明らかにすることを目的に概念分析を実施した。方法 : WalkerとAvant(2018)の分析方法を用い文献57件を対象とした。結果 : 定義属性は子どもへの直接ケア、家族への直接ケア、家族と医療従事者の関係性、意思決定支援、子どもとの死別、医療従事者の能力の6つのテーマが抽出された。結論 : 小児集中治療室におけるEnd-of-Life Careは多様な発達段階と病の軌跡にある子どもと家族に繰り返される意思決定のプロセスと、子どもと家族への直接的なケアを通じ相互理解を経て構築された関係性を基盤に子どもの最善のために継続的に支援する子どもと家族を中心としたトータルケアであった。

  • 草野 知美
    2022 年 31 巻 p. 262-271
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、自閉スペクトラム症のある子どもへ特性や診断名を伝える過程で揺らぐ母親をアセスメントし、看護を検討する際に活用するアセスメントツールを作成することである。アセスメントツールを洗練するために、自閉スペクトラム症のある子どもへの看護経験を有する看護職9名に半構造化面接を行った。得られたデータは、意見の内容ごとに類型化した。その結果、母親の状況を理解し支援するという視点と内容は有用で適切、アセスメントツールの使用方法は追記および検討が必要、アセスメント項目を具体的でわかりやすい表現へ修正が必要、必要な看護の追加・変更が必要、発達段階に配慮したアセスメントツールが必要、という意見が得られた。今後「特性・診断名告知過程で揺らぐ母親を支えるアセスメントツール」の妥当性を検討する必要がある。

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