木材学会誌
Online ISSN : 1880-7577
Print ISSN : 0021-4795
ISSN-L : 0021-4795
61 巻, 5 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
カテゴリーI
  • 河西 優衣, 尾頭 信昌, 中田 了五, 今井 貴規
    2015 年 61 巻 5 号 p. 297-307
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/09/28
    ジャーナル フリー
    カラマツの心材成分の局在・堆積様式を観察するため,2-アミノエチルジフェニルボリナート(2-APB,DPBA)処理後の各種試料について蛍光顕微鏡観察を行った。まず,カラマツ心材から3種類のフラボノイドを単離同定した。これらをスポットしたメンブレンについて,DPBA処理前後の蛍光顕微鏡観察を行った。また,各フラボノイドの溶液についてDPBA処理後の蛍光スペクトル測定を行った。その結果,処理後に蛍光が強まり,フラボノイドの種類に応じて蛍光色調および強度が特徴的であることが分かった。カラマツ心材切片の蛍光顕微鏡観察において,DPBA試薬処理後の蛍光色調は,フラボノイド標品の蛍光色調(メンブレン試験結果)と類似していた。さらに,メタノール抽出済み心材切片では,DPBA処理後に蛍光は顕著に減少した。したがって,本手法により,カラマツにおけるフラボノイドの材組織内分布を可視化できることが分かった。
カテゴリーII
  • 田中 孝, 足立 健, 山田 雅章
    2015 年 61 巻 5 号 p. 308-315
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/09/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,代表的な木材接着剤のX線質量減弱係数をX線管電圧15-100kVの幅広い範囲で明らかにすることであった。10種類の代表的な木材接着剤の硬化物を作成し,それらのX線透過像を管電圧15-100kVの範囲で撮影し,得られたX線透過像から各種木材用接着剤の木材に対するX線質量減弱係数比を導出した。その結果,クロロプレンゴム接着剤,水性高分子イソシアネート系接着剤,フェノール樹脂接着剤およびポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート接着剤については,木材との質量減弱係数比が管電圧によって大きく変化することが分かった。これは,適切な管電圧を選定することで,木質材料に含まれる接着剤要素を強調したX線透過像が得られる可能性を示唆している。また,適切な管電圧の組み合せを選定することで,木質材料に含まれる接着剤の二重エネルギーX線吸収法を用いた計測も可能と考えられる。
  • アカマツ木粉の管状炉による熱分解
    山㟁(錦織) 香, 勝亦 京子, 横山 朝哉, 松本 雄二
    2015 年 61 巻 5 号 p. 316-325
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/09/28
    ジャーナル フリー
    管状炉を用いてアカマツ木粉を熱分解に供し,生成物を,熱分解残渣,気体状生成物を冷却して得られる液体状の回収留分,そして気体状生成物に分けた。熱分解条件に応じて回収留分は30~50%,熱分解残渣は20~50%の重量収率で得られた。GC-MS(Gas Chromatography-Mass Spectrometry)およびGCによって回収留分中の主要な18種化合物の同定・定量を行った結果,最高温度600℃での熱分解では,同定成分は回収留分中の約10%を占め,木粉に対して約5%の収率で得られていた。1H-NMRを用いて回収留分中の水分を測定することにより,回収留分中の有機物は40%と算出されたので,同定成分は重量ベースで回収留分中の有機物の25%を占めることがわかった。炭素量をベースとした評価では,熱分解残渣及び回収留分中には元の木粉の有機炭素の約60%と20%がそれぞれ含まれ,18種同定成分の有機炭素は元の木粉の炭素の8%,回収留分のそれの40%であった。
  • 京都府を事例として
    渕上 佑樹, 木村 友紀, 古俣 寛隆, 佐々木 ふみ, 古田 裕三
    2015 年 61 巻 5 号 p. 326-334
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2015/09/28
    ジャーナル フリー
    京都府内で府産材を使用して建てられた公共建築物を対象に,府産材利用がもたらす府内への経済波及効果を産業連関分析により算定した。木質製品の最終需要額を8132千円としたとき,生産誘発額総計は12110千円,生産誘発倍率は1.49倍となった。次に,木質製品の流通シナリオとして「生産・加工・流通の全てを京都府内で完結させた場合(比較シナリオ1)」あるいは「移輸入材を使用して建設した場合(比較シナリオ2)」を設定し,府内にもたらされる経済波及効果を算定した。この結果,比較シナリオ1では,生産誘発額総計は22021千円,生産誘発倍率は2.71倍となり,府内への経済波及効果が非常に大きくなることがわかった。比較シナリオ2では生産誘発額総計は4560千円,生産誘発倍率は0.56倍となり,商業,運輸部門にしか直接効果が発生していないため,林業あるいは木材産業に係る部門への効果がほとんど生じないことがわかった。
feedback
Top