木材学会誌
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51 巻, 6 号
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一般論文
  • 大井 健介, 王 悦, 朝田 鉄平, 飯田 生穂, 古田 裕三, 石丸 優
    2005 年 51 巻 6 号 p. 357-363
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    ヒノキ飽水材半径方向の曲げ応力緩和を20℃から30~80℃範囲の6条件の各温度へ急上昇, また30~80℃範囲の各温度から20℃へ急下降させ, 温度変化3分後からの応力緩和を3時間測定した。そこで, 木材の流動量を相対緩和弾性率の変化量 (1-Et /E0) と定め, その量を求めて検討した。得られた結果は以下のとおりである。
    1) 20℃から30~80℃範囲の6条件の温度へ急上昇させた試験片は, 急上昇後の各温度に相当する一定温度に長時間保持した試験片に比べて明らかに流動性の増加を示した。従って, 急激な温度の上昇においても不安定状態が生じることが明確となった。
    2) 急激な温度の下降と上昇による流動性の増加を比較検討した結果, 温度下降の場合には, 温度変化幅に比例して増加したが, 温度の急激な上昇の場合には, 20℃から50℃, 60℃の温度に上昇する条件で流動量の最大値を示す。特に60℃以上の温度で流動量の減少を示す理由は, 高い温度ほど不安定の解消速度が大きいことによる。
    3) 合成曲線から求めた緩和スペクトル分布のピークは, 流動性の大きい不安定状態の試片で安定状態の試片 (コントロール試片) に比べて短時間側に認められた。またシフトファクターと絶対温度の逆数の関係から求めた見かけの活性化エネルギーは, コントロール試片で72.6 Kcal/mol, 温度履歴試片で61.8 Kcal/molとなり, 後者がより小さい。従って, 温度の急上昇によって細胞壁内に緩和を生じる不安定構造が形成されたと言える。
  • 石倉 由紀子, 中野 隆人
    2005 年 51 巻 6 号 p. 364-371
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    アルカリ処理による木材細胞構造と吸湿特性の変化を検討するため, エゾマツ試験片を用いて, NaOH処理 (処理濃度0~20%) し重量, 寸法変化の測定と, 調湿9条件で吸着試験を行った。絶乾状態において体積と断面積は処理濃度15%まで減少し, 15%以上ではほぼ一定となった。繊維方向収縮は12~15%で生じその前後で一定の値を示した。これらは, 処理濃度5%までの木材成分の溶脱と, 処理濃度12%以上での細胞壁のミクロフィブリルの収縮による細胞構造の変化に起因すると考えられた。
    吸着試験の結果, NaOH処理濃度5%において相対湿度71%以下で未処理材より含水率が減少し, その他の条件では含水率が増加した。Hailwood & Horrobin解析の結果, 木材1g当たりの吸着サイト数は, 処理濃度5%で減少し20%で増加, 水和水の生成に関わる平衡定数は, 処理濃度10%以上で増加した。低相対湿度での吸湿性は, 処理濃度5%ではヘミセルロースの溶脱により減少し, 10%以上ではセルロースの非晶領域の増加に伴い増加することが考えられた。吸着点1つに吸着する水分子の数 (クラスタサイズ) は, 高相対湿度になるに従い変化が認められ, 処理濃度5%で増加した後12%で再び増加した。高相対湿度における吸湿性は, 処理濃度5%までの木材成分の溶脱と, 処理によるセルロースのミセル間及びミセル内膨潤により生じる木材中の空隙に起因して変化することが考えられた。
  • 山本 慎二, 中野 隆人, 則元 京, 宮崎 淳子
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2005 年 51 巻 6 号 p. 372-379
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    代表的な国産竹材であるマダケ, モウソウチク, ハチクについて, 吸湿性を測定しHailwood & Horrobin理論に基づいてその吸着挙動を解析した。
    水分吸着特性は用いた3種の竹材で異なり, その吸湿性はマダケ<モウソウチク, ハチクであり, 油抜きしたマダケの吸湿性が低かった。部位別でみるといずれの竹種も内側>外側の吸湿性を有した。しかし, アルカリ抽出処理を施すことで, これらの竹種間および部位間の差異はなくなった。このことから, 竹種および部位間の差異が含まれる抽出物の含量に依存するものであることが明らかになった。Hailwood & Horrobin解析に基づいた抽出処理前後および抽出処理過程における吸着サイト数1/Wの変化と, 抽出過程における1/Wと乾燥吸着媒への水蒸気吸着反応の平衡定数K1K2との関係から, 吸湿性の変化が抽出物の溶脱だけでなく溶脱に伴う実質内のクラスタ形成可能領域の生成が関与していると推察された。
  • プレーナー屑を原料とした実大厚さパネルの蓄熱効果
    関野 登, 河村 義大, 山内 剛
    2005 年 51 巻 6 号 p. 380-386
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    プレーナー屑を原料とする建築用バインダレス断熱パネル (密度100 kg/m3) を, 厚さ50~150 mmの範囲で製造した。非定常温度スケジュールにおける壁内一次元熱流を測定し, 断熱性と蓄熱性に及ぼすパネル厚さの影響を調べると同時に, 本断熱パネルの熱的性質を市販のグラスウールおよびフェノールフォームと比較した。得られた結果を要約すると, 1) 実用的な厚さ範囲 (100~150 mm) でほぼ一定の熱伝導率 (0.060 W/mK) を示した。2) 同一熱抵抗を持つグラスウールやフェノールと比較して壁体への流入熱量が抑制され, 保温性の優位性が示唆された。3) 熱拡散率 (0.41 × 10-6 m2/s) はグラスウールの約1/2, フェノールフォームの約3/4となり, 蓄熱効果による保温性が期待できる。
  • 吉本 博明, 江口 文陽, 桧垣 宮都, 大賀 祥治
    2005 年 51 巻 6 号 p. 387-393
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    種々の基材から調製した堆肥培地で培養し得られた, ヒメマツタケ子実体について, 薬理効果の違いを培養細胞およびレプリカ法を用いた薬理効果評価法を用いて検討した。培地基材としては, サトウキビ茎葉, 稲わら, 麦わら, 広葉樹バーク, ヒラタケ廃菌床の5種類を使用した。評価には, 得られた子実体乾燥粉末をメタノールで抽出し, 減圧濃縮した抽出物について, 1) PAFあるいはアラキドン酸ナトリウムで惹起した血小板凝集抑制作用, 2) ヒト線維芽細胞に対してTNF-αで惹起したケモカイン遺伝子 (IL-8) 発現抑制作用, 3) レプリカ法による実使用試験の3種を行った。
    血小板凝集抑制およびケモカイン遺伝子発現抑制試験の結果, サトウキビ茎葉を培地基材としたヒメマツタケ子実体が最も高い抑制を示した。レプリカ法による実使用試験においても, 対照群のイオン交換水あるいは, ツクリタケ抽出物に比較して有意に高い改善率を示した。これらの結果から, 5種の培地基材のうちでは, サトウキビ茎葉で培養した子実体で最も高い薬理効果のあることが明らかになった。
ノート
  • 津島 俊治, 古賀 信也, 小田 一幸, 白石 進
    2005 年 51 巻 6 号 p. 394-401
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    九州産スギ在来品種の成長および材質を明らかにすることを目的に, MuPS分析によるDNA鑑定で品種を同定した16品種48個体を用いて実験を行った。
    各品種は, それぞれに品種に特有な成長型を示した。心材の生材含水率と心材色のL*値, a*値の品種内変動は小さく, 品種間に統計的な差が認められ, 品種固有の性質と考えられた。容積密度と丸太の動的ヤング率も品種間で異なり, 早生型品種に比べ中生型および晩生型品種は容積密度が高く, 動的ヤング率が低かった。動的ヤング率の樹高方向変動には, 地上高が高くなるにつれ増加するパターンと1番丸太が最も低くそれより上部ではやや高い値で比較的安定するパターンが認められ, 前者が中生型あるいは晩生型品種で, 後者が早生型品種に認められた。曲げ試験の荷重-たわみ線図は, 品種あるいは成長型ごとに異なった。
  • 川本 邦男, 林 寛, フダ ミフタフル, 喬 文明, 持田 勲
    2005 年 51 巻 6 号 p. 402-407
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    インドネシアのパルプ工場から廃材として発生するアカシアマンギウム (Acacia mangium) の樹皮 (繊維とチップの混合物) を炭化 (推定300~400℃) し樹皮炭とした。その際副生する木タールと樹皮炭の粉炭を混合し, 一定の形状・強度・燃焼性を有する成型炭の製造を試みた。成型炭は, 混合, 成型, 不融化, および炭化の順序で調製した。省エネルギーの観点から, 不融化処理のみの影響, または炭化温度の影響についても調べた。4時間の不融化処理のみ, もしくは不融化せずに400℃以下の低温で炭化をして得られた成型炭は, タール臭は強いものの十分な硬度を示した。4時間の不融化処理後, 300℃もしくは400℃で炭化をするか, 不融化処理のみを20時間行って得られた成型炭では臭気が消え, 硬度が高くなる傾向が見られた。不融化処理の有無に係わらず600℃で炭化をした成型炭は発熱量が高くなる傾向を示し, 着火温度が上昇した。一方, 不融化せずに300℃で炭化した成型炭の発熱量は高くないものの, 着火温度は233℃で, 着火用として適していると考えられる。不融化処理後, 900℃で炭化して得られた成型炭を賦活処理して活性炭を調製したところ, 900℃, 60分間の水蒸気賦活によって, 収率36 wt%, 表面積615 m2/gの活性炭を得た。廃木材由来の活性炭と同程度の表面積となった。
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