オオヤマレンゲ(Magnolia sieboldii subsp. japonica)は,日本原産の落葉樹木である。複数の県で絶滅危惧I類またはII類に指定されており,希少価値の高い樹種である。本研究では,オオヤマレンゲの植物体再生系の確立を目標として,未成熟種子をα-ナフタレン酢酸と6-ベンジルアミノプリンを添加したLepoivre 培地,窒素源を半分にしたMurashige and Skoog培地およびWoody Plant Medium培地に植え付けた。その結果,不定胚形成細胞(Proembryogenic masses; PEMs)の誘導と不定胚の形成が認められた。PEMsの誘導には,開花から1~3週間後に採取した未成熟種子が適していた。不定胚の一部は明条件下で植物体に成長し,組織培養を用いた未成熟種子からの植物体再生に成功した。
冬季の寒冷地における屋内環境のような低湿度環境での使用を想定し,過乾燥処理を行った直交集成板 (Cross Laminated Timber,以下CLT)について,面外および面内せん断強度試験を実施した。併せて,平成12年建設省告示第1446号に規定されている促進劣化処理 (煮沸法) を行ったCLTについても同様にせん断強度試験を実施し,強度低下の度合いを比較した。CLTはカラマツおよびトドマツCLTとし,面外せん断試験体は5層5プライ,面内せん断試験体は3層3プライのCLTを対象とした。試験の結果, (1) 面外せん断強度は,過乾燥処理による強度の低下はみられず,煮沸処理において1割程度低下すること, (2) 面内せん断強度は,過乾燥処理で2~3割,煮沸処理で2~4割程度低下すること, (3) 外観的な劣化状況と強度低下との間に関係性はみられないことが示された。
市販の板紙から試験体を採取し,簡易な試験装置を使用して両端単純支持状態で座屈試験を実施した。座屈試験では荷重Pおよび荷重点変位xを測定した。また,P-x関係からelasticaの理論に依拠して試験体中央部のたわみδ,および曲げヤング率EBを求め,(A)P-x関係の平坦部の荷重,(B)P-x関係の非線形開始点,(C)Southwellの方法(D)δ/Pの最小値における荷重および(E)Eulerの式の5つの方法で座屈荷重を評価した。その結果,ここで使用した簡易な装置で適切に板紙の座屈試験を実施することが可能であると示された。また,ここで検討した5つの方法の中では簡便で客観的な(D)の方法が適切であることが示唆された。
日本国内に植栽されたコウヨウザンの幹および枝心材から得た逐次抽出物のヤマトシロアリに対する抗蟻活性について検討した。ヘキサン抽出物に強い抗蟻活性が認められ,ガスクロマトグラフ (GC) 分析から,幹心材ではcedrol,枝心材ではisoabienolがヘキサン抽出物の主要成分として検出された。両成分を単離して活性を検討したところ,cedrolに高い抗蟻活性が認められ,低濃度では主に摂食阻害活性に寄与し高濃度では殺蟻活性に寄与することが明らかとなった。また,isoabienolは高濃度の試験においても殺蟻活性は緩慢で無給試験と同様の致死活性の推移を示し,主に摂食阻害活性に寄与することが示唆された。以上の結果より,コウヨウザンの幹および枝心材に含まれるcedrolおよびisoabienolがヤマトシロアリに対する抗蟻活性に強く関与し,各成分の濃度によって強い殺蟻活性や摂食阻害活性を発現することが明らかとなった。
カラマツ3層3プライ直交集成板(CLT)に対して3種類のせん断試験を実施し,試験方法がCLTのせん断強度に与える影響と,CLTの直交層を構成するラミナの欠点および幅はぎ接着がせん断強度に与える影響を調べた。その結果,3点曲げ破壊試験と逆対称4点曲げ破壊試験間でせん断強度に差は見られなかったが,圧縮型試験から得られたせん断強度は3点曲げ破壊試験で得られた値と比較して低い値を示した。ラミナの節や幅はぎ接着の存在によるせん断強度への影響は確認されなかった。モンテカルロシミュレーションによって直交層の破壊程度とCLTの最大せん断耐力の関係を調べた結果,CLTの最大せん断耐力は複数枚の直交層ラミナが順次破壊して決定されることが明らかとなった。