木材学会誌
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66 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
カテゴリーI
  • 高麗 秀昭, 渡辺 憲
    2020 年 66 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    パーティクルボードの曲げ強さ(Modulus of rupture (MOR))を測定するための標本の大きさの設計方法を開発した。はじめに多数の標本からMORを測定した。測定したMORからモンテカルロシミュレーションで10000組の標本平均を求め,標本の大きさと標本平均の関係を解析した。標本の大きさが15個で9605組の標本平均が95%信頼区間に存在したので,適切な標本の大きさは15個とした。これが起こる確率は96.05%と高かった。次にこの9605組の標本平均の5,10,20,30%点を求めたところ,標本の大きさはそれぞれ10,8,4,2個で95%信頼区間に達した。例えば,67.55%の比較的高い確率で標本の大きさが2個となった。一般的な方法では標本の大きさは28個であったので,本方法により標本の大きさを大きく減らすことができた。

  • スギCLTの機械的性質に対する影響因子の実験的研究
    戸塚 真里奈, 青木 謙治, 稲山 正弘, 森田 仁彦
    2020 年 66 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    CLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー)の木口面の部分圧縮性能は,接合部の性能を考える際に重要となる。しかし,既往実験では支圧幅や余長が限定された範囲の検討にとどまっている。本報では,スギCLTを用いて木口面の部分圧縮性能(降伏応力,初期剛性,二次剛性)に寄与する影響因子を実験的に把握した。実験は支圧幅,支圧位置,幅はぎ接着の有無,余長をパラメータとし,単調圧縮載荷とした。結果として,支圧幅と余長,幅はぎ接着の有無が部分圧縮性能に大きく寄与し,支圧位置はあまり寄与しないことが分かった。支圧幅の影響は支圧幅が小さいほど大きくなった。余長効果についても支圧幅が小さいほど大きくなった。また,余長長さ100mm以上であれは無限長とみなすことが出来た。さらに,幅はぎ接着のある試験体では幅はぎ接着のない試験体と比べCLTの部分圧縮強度が向上する可能性を示した。

  • 金 光范, ドゥー ヴー ターン, 吴 芸梦, 林 冠萱, 朱 春鳳, 中川 明子
    2020 年 66 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    中国では多くの種類のタケが製紙用の良好な原料として使用されている。しかし,タケは材質が硬く,通常は化学法で処理される。タケの加圧条件でのサーモメカニカルパルプ(TMP)に関する研究は報告されていない。本研究は,TMP化法でタケを処理し,得られたタケ繊維画分の化学成分的特徴を分析した。また,化学的な前処理と加圧処理が,タケ繊維の化学成分的な特徴に与える影響を調べた。ニトロベンゼン酸化と熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析で,TMP化処理によるリグニンの変化を分析した。アルカリ性で100℃の前処理をして調製したTMPは,160℃で前処理した場合と比べ,パルプシートの密度,引張強度,引裂強度,および白色度がより高かった。繊維が短くなるにつれて,リグニンの含有量が減少し,キシラン/グルカン比が増加した。

  • 河村 奏瑛, 井上 雅文
    2020 年 66 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    2018年の新設木造軸組住宅に使用された木質部材の国産材率を1ポイント増加させることによる経済波及効果は,生産誘発額が44.9億円増加,粗付加価値誘発額が21.0億円増加と試算された。住宅の部位ごとに国産材率を増加させる場合の波及効果を比較したところ,合板使用部位および土台を国産材に代替することで木材産業および林業への波及効果はそれぞれ最大となった。また,住宅供給事業者の事例を調査したところ,国産材率増加によって,材料費の軽減から住宅供給事業者の利益が増大するとともに,国の経済成長にも寄与することが分かった。試算と事例調査から,木材産業への波及効果は,外国産材であっても,国内の加工比率を上げることによって増大し,また,林業への波及効果は,合板・集成材よりも製材の国産材率の増加の寄与が大きく認められた。

カテゴリーII
  • 水溶性薬剤を用いた薬剤処理木材の屋外における劣化挙動
    河原﨑 政行, 平舘 亮一, 平林 靖, 菊地 伸一, 大宮 喜文, 李 在永, 野秋 政希, 中村 昇
    2020 年 66 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    水溶性薬剤を用い,3水準の薬剤固形分量の処理を行った薬剤処理木材について,国内3地点において36ヶ月までの屋外暴露操作を行い,燃焼抑制作用の低減挙動および残存薬剤固形分量の低下挙動を検討した。発熱性試験の結果から,薬剤処理木材は,当初の薬剤固形分量に関係なく,暴露の経過に伴う燃焼抑制作用の低減が認められた。また,当初の薬剤固形分量を過剰にして性能に余裕を持たせることは,防火材料の基準性能維持期間の延長に有効であるが,延長できる期間には限界があると推測された。発熱性試験の結果および残存薬剤固形分量の算出結果から,屋外暴露後の薬剤処理木材は,材内の厚さ方向に薬剤固形分量の傾斜が生じると考えられた。また,薬剤処理木材の残存薬剤固形分量と総発熱量の関係には屋外暴露の影響が見られ,上述の暴露による材内の薬剤分布状況の変化が原因として推察された。このことは,屋外で使用した薬剤処理木材の防火性能の予測には,材内の薬剤分布状態を考慮する必要があることを示唆した。

カテゴリーIII
  • 富田 夏生, 村田 功二, 仲村 匡司, 秋津 裕志, 大崎 久司
    2020 年 66 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    ダケカンバは北海道の先駆種でもあり蓄積量も多いが十分な活用がなされてこなかった。そこで価値の高い活用方法としてバット用材としての評価方法とその適正を検討した。バット用材に最も要求される物性を衝撃曲げ強度と考え,ダケカンバ材の繊維傾斜と衝撃曲げ強度および衝撃曲げ破壊エネルギーの関係を調べた。既存の報告に近い傾向が衝撃曲げ強度でも確認でき,ハンキンソン式の適用が可能であった。バット用材のグリップを模した試験体で衝撃曲げ試験を行い,既存のバット用材と比較した。密度および繊維傾斜を補正した結果,ダケカンバは既存のバット用材と破壊エネルギーと強度の両方で同等の性能を示した。実際に硬式野球バットを試作し,大学野球部で試打を行った。一週間の試打で破損は見られず実用に耐えうることが確認できた。アンケートの結果では打球感や飛距離などでも「良い」や「普通」の回答が大半をしめ,実用上問題がないことが確認できた。

  • 許 銀超, 金 光范, 翟 睿, 朱 春鳳, 王 立軍, 吴 安波, 中川 明子
    2020 年 66 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/02/01
    ジャーナル フリー

    稲ワラ漂白化学パルプから調製した手すき紙に,塩化亜鉛水溶液を含浸させて高湿潤強度の紙を調製することを試みた。処理における塩化亜鉛水溶液の濃度,浸漬温度,浸漬時間,およびエタノール洗浄時間が紙の湿潤強度に与える影響を分析した。X線回折により,セルロース結晶構造の変化を調べ,走査型電子顕微鏡を用い,処理前後の紙の微細構造の変化を調べた。その結果,塩化亜鉛水溶液の濃度60%,浸漬温度65ºC,浸漬時間10分,および洗浄時間12分の条件で調製した手すき紙の湿潤強度が最も高く,処理前の手すき紙と比較すると,乾燥引張強さと乾燥破裂強さが約2倍,湿潤引張強さと湿潤破裂強さが約4倍に向上した。湿潤引張強さ/乾燥引張強さ比は21.0%で,湿潤破裂強さ/乾燥破裂強さ比は21.6%であった。共に20%を超え,高湿潤強度紙の条件を満たすことができた。また,処理前後の手すき紙の表面形態の変化は著しいが,セルロース結晶構造および結晶化度の変化はないことが分かった。

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