木材学会誌
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56 巻, 2 号
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総説
  • 竹村 彰夫
    2010 年56 巻2 号 p. 61-66
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル フリー
    木材接着におけるこの10年間の最も大きな変化は,ホルムアルデヒド,VOC対策接着剤の開発,およびそれを利用した建材のホルムアルデヒド放散量基準をクリアーさせることであった。今後は環境に配慮した接着剤が重要となり,その中でも特に(1)シックハウス対応型接着剤,(2)非化石資源由来接着剤,(3)解体性接着剤が中心になると考えられ,それらについての概要と筆者の見解を述べた。また,ヤモリの足のようなファンデルワールス力で接着するような夢の接着剤について解説した。
カテゴリーI
  • 北守 顕久, 鄭 基浩, 森 拓郎, 小松 幸平
    2010 年56 巻2 号 p. 67-78
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では圧縮木材を構造用接合具として使用することを意図し,様々な圧縮率のスギの圧縮木材を用いて,各種力学特性値の密度との関係を調べた。非圧縮材料の物性値を元にした基準化を行うことで,材質向上の傾向を明らかにするとともに,圧密の過程に伴う細胞の変形モデルと比較することで,定性的な説明を行った。結果,縦圧縮・引張および曲げ特性値は密度に比例したが,せん断特性はLR面とLT面でそれぞれ異なった。LT面横圧縮特性は弾性率,強度ともに密度上昇率に対し約2乗に比例して増大した一方,LR方向のそれは早材細胞が完全に圧密細胞に変わる圧縮率程度まではあまり変化無く,それ以降に急激に上昇する結果が得られた。これらの傾向をハニカムセルの変形を考慮する事でモデル化し,元材料の力学特性値と圧縮率,および細胞壁真密度を用いた実用的な算定式を導いた。
カテゴリーII
  • 外崎 真理雄, 齋藤 周逸, 宮本 康太
    2010 年56 巻2 号 p. 79-83
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル フリー
    高温乾燥材の内部割れと各種振動的性質の関係を明らかにした。スギ正角心持ち材(11.4×11.4×304 cm)の,高温乾燥材45本と中温乾燥材20本の振動試験を行った。振動試験により縦ヤング率El,たわみヤング率Eg,ねじりせん断弾性率Gt,たわみせん断弾性率Ggを得た。振動試験後,材の5カ所の断面内の割れ長さを測定した。内部割れによりたわみせん断弾性率は低下し,たわみヤング率との比Gg/Egは小さくなった。動的せん断弾性率の測定により内部割れが評価できる。
  • 3層壁の音響透過損失
    中村 哲男, 矢野 隆, 村上 聖, 長谷川 麻子, 江藤 留寿, 高橋 優樹, 北原 良誠
    2010 年56 巻2 号 p. 84-92
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,スギ角材およびスギ合板等で構成された3層構造壁材の音響透過損失をJIS A 1416,JIS A 1419-1により計測・評価し,在来工法での壁材と比較した。結果は以下のとおりである。(1)今回開発した3層構造壁は在来工法壁に比べ全周波数帯域で高い空気音遮断性能が見られた。(2)3層構造壁は2000 Hzから4000 Hz帯域にかけてコインシデンス効果が現れにくかった。(3)3層構造壁は二重壁で懸念されるコンセント穴よる空気音遮断性能の低減は殆ど認められず,中心板の空気音遮断効果が確認できた。(4)RCコンクリート壁,ALC壁の片面あるいは両面にGLボンドを用いた二重あるいは三重壁においては,200 Hzから400 Hz帯域に共鳴透過による著しい遮音欠損が発生するが,今回開発したすべての3層壁材は,共鳴透過による遮音欠損は小さかった。
  • 3層床の床衝撃音レベル
    中村 哲男, 矢野 隆, 村上 聖, 長谷川 麻子, 江藤 留寿, 高橋 優樹, 北原 良誠
    2010 年56 巻2 号 p. 93-103
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,スギ角材およびスギ合板等を用い,フローリングと270 mmのサンドイッチパネルで構成される3層床構造の床衝撃音レベルをJIS A 1418-1,JIS A 1418-2,およびJIS A 1419-2により計測・評価し,在来工法で作られた床構造と比較した。結果を纏めると以下のとおりである。(1)3層床構造の軽量および重量床衝撃音遮断性能は在来工法床構造よりも優れていた。(2)上部空気層をゴムで支持した3層床構造はさらに軽量床衝撃音遮断性能が高かった。(3)桁材間隔を433.5 mmから289 mmに狭くした場合,曲げ剛性が増加し重量床衝撃音遮断性能は向上した。(4)桁材間隔が433.5 mmの床構造にCFRPプレートを貼り付けると,重量床衝撃音遮断性能は向上したが,桁材間隔が289 mmに狭くした場合ではCFRPプレートを貼り付けても曲げ剛性が増加しないため,重量床衝撃音遮断性能は向上しなかった。
  • 多雪区域に建設された住宅の梁
    青井 秀樹, 宮武 敦, 神谷 文夫
    2010 年56 巻2 号 p. 104-112
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル フリー
    多雪区域に建設された3棟の木造住宅の梁について,各種応力および最大たわみを算出し,許容応力度およびたわみ制限に対する負担率をそれぞれ求め,各梁において最大負担率を示す各応力・変形条件および荷重継続期間を調べた。調査の結果,平均すると7割以上の梁は負担率が20%以下であり,強度的な余裕は充分にあったことが示唆された。しかし最大負担率が80%以上となった例外的な梁もいくつか存在した。スパンの短い2階床梁において,強度的な余裕が乏しい主要因は梁のスパン中間に耐力壁が載る設計にあった。また 4P以上の2階床梁,および 3P以上の小屋梁では「最大たわみ」での最大負担率の決定が支配的であった。
カテゴリーIII
  • 山内 隆弘, 枝 克昌, 鮎澤 澄夫, 長島 葵, 松本 かほる, 飯塚 和也, 横田 信三, 石栗 太, 吉澤 伸夫
    2010 年56 巻2 号 p. 113-121
    発行日: 2010/03/25
    公開日: 2010/03/29
    ジャーナル フリー
    スギ材によるシイタケ菌床栽培技術を確立するために,スギ培地を用いた品種開発を進めた。その結果,スギ材に適応力の高い菌株としてHS807を作出した。HS807を接種したスギ培地による菌床栽培で広葉樹適応株である北研600号と比較して6倍の収量を得た。しかしながら,これらの収量は広葉樹材による菌床栽培における収量の 1/2 程度であった。スギ材適応品種として選抜したHS807の培養特性を評価するために,物理的および化学的な分析を行った。その結果,菌床培地中の菌体量はコナラ培地と比較してスギ培地で少ない傾向が認められた。培養時における菌床培地中の菌体量は,子実体発生を判定する重要な因子であると考えられる。
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