植物ペルオキシダーゼは,大きな遺伝子ファミリーを形成しており,大部分が細胞壁に局在することが知られている。しかし,細胞壁におけるそれらの機能については不明な点が多い。植物ペルオキシダーゼの中にはフェノール類に対する酸化酵素としてだけでなく,活性酸素種の発生源としても機能するものが存在する。さらに近年の生化学的な研究によって,木化に関与する植物ペルオキシダーゼのもつ特徴的な基質酸化能力が明らかとなった。したがって,植物ペルオキシダーゼは反応特性の面でもそれぞれ差別化されており,相応の役割を細胞壁で果たしていると考えられる。
大スパン床における静的および振動性状を測定することを目的に,4つの木造校舎および2つの木造事務所の床を測定対象として,静的たわみおよび振動の実測を行い,曲げ剛性ならびに固有振動数,減衰比の算定を行った。設計上の床の初期たわみはスパンの約1/430~1/1100,クリープを考慮した床のたわみはスパンの約1/280~1/800であり,1つの小学校を除いていずれもたわみ制限値を下回っていた。また,梁または平行弦トラスの曲げ剛性の実験値は設計値より1.1~3.9倍大きかった。さらに,実際の建築物における床の1次固有振動数の実測値は9.5~12Hzであり,荷重を固定荷重とし,単純支持を境界条件として計算した梁の固有振動数は床の固有振動数の実験値よりも10~30%小さかったが,比較的精度よく推定できることがわかった。なお,減衰比は3.1~6.5%で,既往の研究と同じような値となっていた。
木質床材の製造者はより高い木質感を製品に付与しようとするが,その程度を客観的に評価することは一般的に難しい.そこで本研究では,木質感に寄与する床材の外観特性を画像特徴量で記述する評価技術の考案を目指した.まず47種類の木質床材を収集し,その材面を様々な方位から照明して精細に撮影した.得られた画像を多重解像度コントラスト解析および相関解析に供して,4つの画像特徴量(材面の細かい特徴の鮮明度,木目模様の鮮明度,コントラストの異方性,照りの移動)を抽出し,これらが各試料の光反射などの外観特性をうまく表しうることを確認した.続いて,新たに収集した20種類の木質床材について同様の画像特徴量を算出するとともに,それらの見た目の印象を24名の一般消費者に評価させた.印象を目的変数に,画像特徴量を説明変数に設定した重回帰分析により,今回の画像特徴量は一般消費者の主観的な見えの評価にも対応すると判断された。
木材のボルト接合における座金のめり込み挙動について,座金を弾性床上の梁とみなす2次元問題に置き換え,弾性床上の梁理論および木材のめり込み理論を用いて,座金のめり込み剛性およびめり込み降伏荷重の算定法を提示した。そして,算定式による計算値と座金寸法をパラメータとした座金のめり込み実験により得られる実験値とを比較検証した。座金のめり込み剛性および降伏荷重の計算値は,一部を除いて,実験値と概ね一致することが分かった。また,計算により予測される座金のめり込み変形モードは実験結果と概ね適合することが分かった。しかし,座金板の有効幅を梁の有効幅に置き換える方法については,今後の検討課題となった。
現行の製材JASの目視等級を基にした節評価モデルを定義し,焼きなまし法を用いて,そのパラメータの最適化を試みた。断面が120mm角の人工乾燥カラマツ心持ち材40本の曲げ試験データと材面の画像データを用い,節指標を説明変数とする回帰モデルの決定係数の最大化により,節評価モデルのパラメータの最適化を行った。その結果,従来の目視等級を説明変数とした回帰モデルと比較して,その決定係数は著しく大きくなったが,指標値を決定する節径比の種類には大きな偏りがあり,過剰適合が起こっていると考えられた。そこで材縁と集中の区別および単独節を廃した,簡略化した節評価モデルに修正し,そのモデルのパラメータを最適化したころ,前述のモデルと比較すると決定係数は低下したが,従来の目視等級を用いたモデルに比較すると大きく,単回帰モデルでは相関係数に有意な差が認められた。