木材学会誌
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51 巻, 5 号
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一般論文
  • 今田 純, 安藤 直人
    2005 年 51 巻 5 号 p. 297-302
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    廃木材リサイクルチップフォーミングマットの表面チップ配向を2次元フーリエ変換および画像処理により評価した。入力画像としてデジタルカメラによって取得したデジタル画像と形状測定センサーによって取得した表面形状画像を用い, 2次元フーリエ変換結果から算出される配向度と目視によるチップ配向度を比較した。
    また, 平均化フィルタ・ラプラシアンフィルタ・2値化フィルタを表面形状画像・デジタル画像を作用させて得られたチップ境界点と目視によるチップ境界を比較し, 両画像におけるチップ境界点抽出の正確さについて検討した。
    1) 高速フーリエ変換によって表面形状画像・デジタル画像の配向評価が可能であることが認められた。
    2) 表面形状画像・デジタル画像から得られる配向度は目視によるチップ配向度と概ね一致した。
  • 辻野 哲司, 竹内 則雄, 平井 卓郎
    2005 年 51 巻 5 号 p. 303-310
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    こんにち, 集成材の曲げ破壊係数 (MOR) 予測に際し, モンテカルロシュミレーションを採用した確率モデルの適用が実用化されている。
    一方, 別の解析方法でMORを求めることも意義があると思われ, 本報告では, 剛体ばねモデル (RBSM) を適用して集成材の弾塑性解析を行って, 荷重-撓み関係, 弾性限度曲げ応力 (σp), MORを推定することを試みた。
    なお計算は, 次のような仮定のもとで行われた。
    1) 集成材を多層重ね梁とみなす。
    2) 集成材の軸方向ばね要素に対する剛性方程式としては, 単純梁の曲げに関するそれを, 材背方向のばね要素に対しては, 2次元平面応力問題に関するそれを用いた。
    3) 梁の破壊条件式として, 曲げモーメントと軸力に関する2次式用いた。
    上記, 解析方法の妥当性を検証するために, σp, MORに関する本計算値と, 既往の実測値, 計算値と比較検討したところ, 前者は後者によい適合性を示した。
    それ故, 本研究のRBSMによる解析手法は, 集成材の曲げ特性推定に対し適用可能であることが分かった。
  • 繊維平行方向引抜き理論の構築
    中谷 誠, 小松 幸平
    2005 年 51 巻 5 号 p. 311-317
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 集成材の繊維方向に対し平行に埋込まれたラグスクリューボルトの引抜き性能の理論式を導き, その妥当性を評価することを目的とした。繊維方向に対し平行に埋込まれたラグスクリューボルトの引抜き抵抗は, ラグスクリューボルトのねじ山頂部と集成材の間で起こるせん断に起因する。この引抜き挙動の理論式を, Volkersenモデルを適用して導いた。理論式に必要とされるラグスクリューボルト特有の物理常数である引抜きせん断強度fvと引抜きせん断剛性係数Γは, 引抜き時にラグスクリューボルトの長さ方向で起こるせん断応力分布がほぼ均一化されると仮定できる15mm厚の薄板試験体の引抜き実験から導いた。また理論式の妥当性を評価するため, 直径の異なるラグスクリューボルトを3種類用い, 埋込み深さを段階的に変化させ, 引抜き実験を行った。その結果, 本理論式はラグスクリューボルトの引抜き性能を推測できることがわかった。
  • ケナフ繊維オーバーレイによる曲げ性能の改善およびボードの不燃性能の評価
    藤田 巧, 小松 直利, 川井 秀一
    2005 年 51 巻 5 号 p. 318-326
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    せっこうパーティクルボードの表裏面にケナフ繊維を積層し, 半水せっこうの水和凝結により一体に成形したせっこうパーティクルボードを製造して, ケナフ繊維の補強がボードの力学的性能に与える影響を検討した。次に, 表裏面を繊維と二水せっこうで補強したせっこうパーティクルボードおよび単層せっこうパーティクルボードの不燃性能を比較検討し, 以下の結果を得た。
    1) ケナフ繊維による補強は, 繊維方向の曲げ強度, 曲げヤング率および吸水厚さ膨張率の改善に効果があった。
    2) 単層せっこうパーティクルボードはパーティクル/二水せっこうの重量比1/5以下で, 表裏面を繊維と二水せっこうで補強したせっこうパーティクルボードは密度0.8g/cm3以上で準不燃性能に適合した。
    3) せっこうパーティクルボードの表裏面を繊維で補強することによって, ボード強度を低下させないで不燃性能のボード製造が可能となった。
  • 佐藤 真由美, 斎藤 直人, 関 一人, 福川 英司, 中住 晴彦
    2005 年 51 巻 5 号 p. 327-333
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    スギの樹皮および間伐材粉砕物のイチゴ高設栽培用培地としての適性を検討した。「とよのか」「けんたろう」「エッチエス-138」の3品種を高設栽培し, 収穫後, 収量, 果重, 糖度を調査し, 結果を標準培土と比較した。スギ樹皮を培地として栽培した結果, 規格内収量は培土の77%であった。これには樹皮含有成分と保水性が影響していると考えられた。GC-MS分析により, スギ樹皮の水抽出物 (樹皮 : 水 ; 1 : 10, w/w) からvanillic acid (4.7 mM), vanillin (0.1 mM), p-hydroxybenzoic acid (5.1 mM), 3-hydroxy-4-methoxybenzaldehyde (0.6×10-2 mM) が検出された。これらの化合物はコマツナ (Brassica campestris L. var. perviridis) に対して0.5mMで生育阻害活性が認められた。
    野外堆積したスギ樹皮粉砕物培地のイチゴの収量は標準培土より低かった。培地を上下2層 (上層 : 標準培土, 下層 : 樹皮) として栽培すると, 収量は標準培土と同等になった。これらの結果, スギ樹皮粉砕物の透水性の高さと保水性の低さが培地の含水量を減少し, イチゴの収量が減少したと考えられた。スギ材粉砕物では, 生材よりも野外堆積した粉砕物の規格内収量が少なかった。これは野外堆積した粉砕物の方が吸水性および保水性が低いため, 乾燥がちになり, イチゴの生育に影響を与えたためと考えられた。
    イチゴ栽培では含有成分がかん水によって溶出し, 減少するため, 含有成分よりも, 保水性が収量に影響すると考えられた。
ノート
  • 大釜 敏正, 今村 祐嗣, 則元 京, 阿部 恵子, 立本 英機
    2005 年 51 巻 5 号 p. 334-339
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    500℃, 700℃および900℃で炭化した木炭の調湿性能を調べた。木炭 (重量 : Wkg) を封入した鋼製箱 (容積 : V = 0.0197m3) 内の相対湿度の対数と温度の関係を直線で近似した式の勾配 (B) を調湿性能の指標に用いた。ブロック状の木炭のB値は温度変化の周期の影響を受けるが, 粒状の木炭 (5.5mm~8.0mm) のそれは周期の影響はなく, 活性炭および木粉のそれと類似している。500℃および700℃で炭化した木炭の調湿性能には差は認められなかった。しかしながら, 900℃で炭化した木炭の調湿性能は, 500℃および700℃で炭化された木炭のそれより若干劣る。木炭は, 博物館において調湿に用いられているシリカゲルと比べた場合, メーカーによるシリカゲルの推奨値であるW/Vが0.5kg/m3以下ではかなり性能が劣る。しかしながら, W/Vが1.0kg/m3以上では, 木炭とシリカゲルの調湿性能の差は小さくなる。シリカゲルでは, 温度変化の波形の違いがB値に及ぼす影響はみられなかった。材料の単位重量当たりの吸放湿量はW/Vの減少とともに急激に増大する。特にシリカゲルで著しい。しかしながら, W/Vが1.5kg/m3以上では, 材料によらずほぼ同一の値1~2g/kgを示す。
  • 塔村 真一郎, 宮本 康太, 井上 明生
    2005 年 51 巻 5 号 p. 340-344
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    JISの小形チャンバー法を用いて, ホルムアルデヒド等級の異なる市販合板素板および塗装型枠合板から放散されるアルデヒド類とVOCを測定した結果, 以下のことがわかった。
    (1) F☆☆☆☆の合板から放散されるホルムアルデヒド放散速度は小形チャンバー法21日後で5μg/m2h以下であった。 (2) ホルムアルデヒド放散等級とその他のアルデヒド類の放散には明確な関係がなかった。 (3) 今回使用されたホルムアルデヒドキャッチャー剤はホルムアルデヒド以外のアルデヒド類には効果がなかった。 (4) 合板からの主なVOCは木材からの天然揮発成分であるテルペン類であり, その量と種類は樹種によって異なった。
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