木材学会誌
Online ISSN : 1880-7577
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64 巻, 1 号
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カテゴリーII
  • 上田 幹朗, 堀 千明, 玉井 裕, 山岸 祐介, 宮本 敏澄, 佐野 雄三
    2018 年 64 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2018/01/28
    ジャーナル フリー

    ベッコウタケ(以下同菌)に感染する頻度が高いと報告されているハリエンジュ,エゾヤマザクラ,同じく低いとされるハルニレ,アカエゾマツの各立木樹幹の地際部と胸高部に同菌を接種し,菌糸の蔓延状況や材組織で生じる反応を比較した。接種孔付近の材組織には,ハリエンジュ,ハルニレでは濃い変色と水分の集積,アカエゾマツでは淡色化と脱水など,樹種毎に特徴的な変化が生じたが,地上高による違いは見られなかった。接種した菌はハリエンジュ,エゾヤマザクラの地際部からのみ検出された。菌糸による細胞壁の分解も両種の地際接種部の変色材では認められた。接種孔近傍の材組織において,アカエゾマツでは樹脂の堆積,他の広葉樹3種では細胞閉塞物の堆積が観察された。以上から,同菌に対する抵抗性は樹種間,地上高間で異なると言える。また,同菌に対する抵抗性と水分集積などの材組織で生じる反応との間に明確な関連性はないと考えられる。

  • 部位別の劣化
    柳川 靖夫, 原田 充祥
    2018 年 64 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2018/01/28
    ジャーナル フリー

    3種類のレゾルシノール系樹脂接着剤(RF),3種類の水性高分子-イソシアネート系木材接着剤(API),および変性酢酸ビニルエマルション接着剤(VAE)を使用し,5プライのスギ集成材を作製した後に木材保存剤(ACQ)を加圧注入した。接着層を水平とし,木口面を東西に向けて10年間の屋外暴露試験に供した。暴露1年後,3年後,5年後,および10年後に試験片を採取し,せん断強度および木部破断率の変化を試験片の採取位置別(南側,中間,および北側)および接着層別に調べた。その結果,採取位置別のせん断強度残存率は,中央,北側,南側,の順に低下し,せん断強度の低下率も南側が大きい傾向が認められた。接着層別のせん断強度残存率は,上部の第1および第2接着層の方が下部の第3および第4接着層よりも低く,またせん断強度の低下率は,上部接着層は下部接着層より大きく,このことは,接着耐久性の低いVAEで顕著であった。木部破断率は,VAEの暴露10年の第1接着層で低下したものの,他の接着剤では, 暴露年数にかかわらず採取位置間および接着層間の差は小さかった。

  • 澁谷 栄, 山内 繁, 桐越 和子, 谷田貝 光克
    2018 年 64 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2018/01/28
    ジャーナル フリー

    木酢液類の消臭剤としての機序を検討するため,中和した木酢液類を用いて消臭試験を行い,原液との比較から悪臭原因物質の削減効果を化学的に考察した。本研究ではナラ,ウバメガシ,モウソウチクから得られる3種類の木酢液類(順に黒炭木酢液,白炭木酢液,竹酢液と呼ぶ)を水酸化ナトリウムで中和して用いた。代表的な5つの悪臭原因化合物を対象として消臭試験を行った。アンモニアに対する消臭効果は,原液よりは低くなるが,いずれの中和木酢液類でも明確に確認された。トリメチルアミンでも同様に各中和木酢液類で消臭効果が確認されたが,白炭木酢液では効果の低下が著しかった。硫化水素ではいずれの木酢液類についても,メチルメルカプタンでは黒炭木酢液と竹酢液で,中和により消臭効果の増加が認められた。また,中和によって,木酢液類から放散するアセトアルデヒドの量が大幅に抑制されることが示された。

カテゴリーIII
  • 福田 聡史, 野村 昌樹, 池田 剛司, 吉澤 優樹, 山崎 真理子, 佐々木 康寿
    2018 年 64 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2018/01/28
    ジャーナル フリー

    紫外線波長の短パルスレーザ(UVレーザ)を利用し,木材の表面に微細なインサイジング加工を施した。このインサイジングを利用して木材の表面に樹脂を含浸し,表層を木材・プラスチック含浸複合材とすることにより強度物性の向上を試みた。UVレーザは,木材の表面の美観を損なうことなく極めて多くの穿孔が可能である。この点に着目し,667個/cm2のインサイジングを施したところ,常圧下の塗布操作あるいは僅かな減圧操作であってもレーザによる穿孔深さまで樹脂の浸透が得られ,顕著な物性の向上が確認できた。アクリル樹脂を用いた場合,質量基準による固形分としての含浸率はスギの辺材とカラマツの心材でそれぞれ66,53%となり,ブリネル硬さはそれぞれ6倍以上,4倍以上に向上し,衝撃試験による圧痕深さはともに1/4以下に減少した。また,一般的な塗料などの樹脂を適用しても一定の性能の向上が認められた。

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