生分解性プラスチックのコンポスト中における分解機構は複雑で, コンポスト組成, 溶存酸素量, 温度などに強く依存する.コンポスト中では, 分解微生物による直接分解の他に, 有機廃棄物の発酵過程で生じる低級脂肪酸やアンモニアなどの酸・塩基による間接的な加水分解が考えられる.本研究では, 好気性及び嫌気性条件下, 25~50℃ の温度範囲でポリ乳酸 (PLA) のコンポスト分解試験を行い, コンポスト中で生成した酸・塩基がPLAの分解に与える影響について調べた.PLAは50℃ の嫌気性条件下で最も速く分解した.このとき, コンポスト中に生成した低級脂肪酸量が最も多かった.また, 36℃ と50℃ の好気性条件下で低級脂肪酸に加えアンモニアが生成した.コンポスト中に生成した低級脂肪酸やアンモニアの濃度範囲内で溶液を調製し, その中にPLAを浸漬して分解試験を行ったところ, 酸・塩基によりPLAの加水分解が著しく促進された.これらの結果は, コンポスト中では有機物の発酵過程で生じる酸・塩基によるPLAの間接分解の影響が無視できないほど大きいことを示した.
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