マテリアルライフ学会誌
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30 巻, 3 号
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解説
報文
  • 宮原 和美, 徳満 勝久, 竹下 宏樹, 脇坂 博之
    2018 年 30 巻 3 号 p. 52-63
    発行日: 2018/10/31
    公開日: 2022/03/03
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    本研究では,バインダーを用いて熱融着法により籾殻活性炭ボードを調製し,建材応用の観点から各種物性評価を行った.また,比較のためにヤシ殻炭についても同様の実験を行ったほか,炭粒径の影響についても検討を行った.バインダーにはポリビニルブチラール(PVB)を用い,籾殻炭と乾式で混合しホットプレスすることにより,ボード状に成形することが可能であることが分かり,従来の方法と比べ製造エネルギー・生産コストにおいて優位にボード成形することが可能となった.力学物性評価の結果,籾殻炭よりもヤシ殻炭ボードが約3倍高い破断応力値を示し,この要因として炭粒子の充填密度が約5倍異なることが考えられる.吸音測定の結果,炭の種類による吸音機構の変化は確認されず,粒径によるボード構造の変化が吸音特性に影響することが示唆された.また,揮発性有機化合物(VOC)吸着特性評価の結果,トルエン・酢酸に対してはヤシ殻炭よりも籾殻炭が速い吸着速度を示した.この要因として,籾殻炭は細孔の中でも比較的大きいメソ・マクロ孔を多く有するが,ヤシ殻炭はマイクロ孔を多く有することが挙げられる.さらにDubinin/Radushkevich式を用いてVOC最大吸着理論容量を算出した結果,実VOC吸着量よりも約102倍大きい理論容量が得られた.つまりVOC吸着測定では吸着初速度のみ測定されており,吸着容量の測定には至っていないことが示唆された.そして吸放湿測定の結果,小粒子を用いた場合籾殻炭ボードよりもヤシ殻炭ボードが約1.7倍大きい吸放湿容量を示した.一般に細孔の吸着力は細孔が小さいほど大きくなるため,マイクロ孔比表面積が約2倍大きいヤシ殻炭が2倍の吸放湿容量を示すと考えられたが,結果は1.7倍であった.籾殻炭の吸放湿特性はメソ・マクロ孔によっても発揮していることが考えられる.

    以上より,熱融着法によって簡易に,低コストで籾殻炭ボードを調製可能であることが分かり,さらに各種特性を有することから建材への応用が期待される.

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