マテリアルライフ学会誌
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24 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
報文
  • 山本 哲也, 稲垣 穣, 数馬 安男, 浜崎 卓也
    2012 年 24 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー

    飲料用自販機やディスペンサーの飲料回路で使用される各種樹脂材料に含まれる抗酸化剤が,成形時の熱履歴によって飲料の味覚(異臭を含む)へ及ぼす影響について研究した.抗酸化剤を添加して成形した直鎖状低密度ポリエチレンを浸漬した水は,抗酸化剤の種類で味覚にそれぞれ違いがあり,抗酸化剤が異臭味へ影響することが判明した.さらに,殺菌目的の遊離塩素を浸漬水に添加すると,飲料の味覚の強度と種類が変化することを観測した.成形樹脂の浸漬水をGC/MS分析することで,異臭味の原因物質の候補として,抗酸化剤とその分解物質を同定した.抗酸化剤や異臭味候補物質の水溶液の味覚と味覚閾値を決定し,異臭味におけるそれぞれの成分の寄与を検討した.また,抗酸化剤のTG/DTA分析から,樹脂の成形温度の範囲で抗酸化剤の熱分解が起こることを明らかにした.さらに,抗酸化剤のPy-GC/MS分析から,樹脂浸漬水から見出した異臭味候補物質が,成形による熱履歴で生成することを証明した.本研究から,樹脂の成形の際に熱履歴を考慮することが,樹脂材料が接する飲料の味覚品質を確保する上で重要であることが示された.

  • 沼田 睦章, 大久保 賢, 赤嶺 健太, 櫻庭 英剛, 香西 博明
    2012 年 24 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー

    新しい超分子架橋体(ポリブタジエントポロジカルゲル,PBTG)はシクロデキストリン(γ-CD)オリゴマーとポリブタジエン(PB)の末端にかさ高い基を持つマクロモノマーを混合することで得られた.さらに,PBTGにN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)を加えて光重合すると,可動性架橋体ゲルが得られた.また,得られたPBTGは化学ゲル(PB-DMAAゲル)と比べて異なる性質を示した.ゲル体は比較的高い熱安定性およびフィルム特性を有していた.10%の熱重量損失開始温度は400°Cであり,ゲルフィルムの静的粘弾性測定における破断点-応力0.325 MPa,破断点-歪み590.2%であった.そして,N,N-ジメチルホルムアミド(1580%)および水(1460%)に対して高い膨潤率を示した.

  • 永井 靖隆, 田中 伸弥, 佐藤 琢也, 大石 不二夫
    2012 年 24 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー

    ポリ-2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル(PPE)の光劣化の波長依存性を明らかにするため,自然科学研究機構基礎生物学研究所の岡崎大型スペクトログラフ(OLS)を使用し,PPEフィルムに単色光照射を行った.光照射前後の試料を解析した結果,PPEの光劣化に最も影響を及ぼす光の波長は300nmであることが明らかとなった.さらに,主鎖切断,メチル基の酸化,溶媒不溶分の生成の閾値は,約310nmであることが分かった.320nmより短い波長の単色光を照射したときに生成する光劣化生成物は同じで,エーテル結合の切断(末端ヒドロキシ基のO-Hのホモリシス)に続くメチル基の酸化(アルデヒドやカルボン酸の生成),架橋の生成およびキノンメチド構造の生成であった.

  • Yusuke OKADA, Wataru KAWANOBE, Noriko HAYAKAWA, Sachiko TSUBOKURA, Rii ...
    2012 年 24 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー

    Poly(vinyl alcohol) (PVA) has been used as a consolidant to prevent flaking of paint pigments on traditional Japanese Shohekiga painted screens and panels. However, over time these PVA coatings can show degradation in the form of loss of transparency due to whitening.

    It is believed that this whitening is caused by the scattering of visible light by cracks and wrinkles in the film. These surface defects are thought to be formed by intra- or inter-chain dehydration and chemical cross-linking on the PVA surface.

    To validate this conclusion, test PVA films were subjected to quantified UV accelerated aging, because UV exposure is a likely cause of chemical degradation of the PVA layers on Shohekiga.

    The test PVA films became white after being irradiated with UV light and then exposed to water vapor. The chemical mechanism was analyzed by spectroscopy and surface observations.

技術報文
  • 藤本 邦三, 湯口 芳美, 古村 慎操, 友森 直美, 毛利 直
    2012 年 24 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー

    川岸周辺の籠型護岸用の線材として開発された「IR被覆鉄線」は,亜鉛めっき鉄線3種に接着性樹脂を塗布し,アイオノマー樹脂を押出し被覆したものである.IR被覆鉄線の耐久性についてWS-A(サンシャインウエザメータ)試験とSUV(メタルハライドランプ)試験との促進特性をアイオノマー樹脂で比較した.試験に当たっては、事前試験で促進速度が12倍であったため,これを仮定条件としてSUV試験625時間およびWS-A試験7,500時間を実施後,引張強さ減少率,引張伸び減少率およびIRスペクトルにおけるC=O吸収を測定して耐久性評価試験を行った.結論として,アイオノマー樹脂におけるSUV試験は,WS-A試験の20倍以上であることが確認できた.

  • 藤本 邦三, 湯口 芳美, 友森 直美, 毛利 直, 安部 有子
    2012 年 24 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2012/02/29
    公開日: 2021/05/08
    ジャーナル フリー

    「IR被覆鉄線」が国土交通省の基準を満たすことを確認するため,前報においてWS-A(サンシャインウェザメータ)試験7,500時間の20倍以上に相当することが認められた625時間のSUV(メタルハライドランプ)試験を行った後,磨耗試験および腐食促進試験を実施した.さらに,現地のIR被覆鉄線から採取した6.8年間使用後のサンプルと表面変化およびIRスペクトルにおけるC=O吸収の変化について断面解析を実施した.結論として,IR被覆鉄線が30年相当若しくはそれ以上の寿命を有している結果となり,今回の結果と前報の結果よりSUV試験はWS-A試験の1/20の試験時間での代替試験になり得ると評価した.

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