従来から温水用ポリエチレン管の耐久性評価として熱間内圧クリープ試験が実施されている.熱間内圧クリープ試験は実使用温度よりも高温雰囲気下で行うため,まず熱間内圧クリープ試験結果の温度依存性を確認した.その上で,暖房回路の実使用環境に近い温水循環試験を行い,双方の試験の相関性や相違点について調べた.熱間内圧クリープ試験に比べ,温水循環試験では樹脂中の酸化防止剤が循環水に溶出し酸化防止剤の消費が早まり温水用ポリエチレン管の寿命が短くなったり,真鍮製継手を使用した場合,継手部からの銅イオン溶出による温水用ポリエチレン管の劣化促進(銅害)が見られたり,割れが発生し破断に至る時間は円周応力よりも肉厚に依存する傾向があることが分った.
本研究は,温水用ポリエチレン管の樹脂材料でも酸化防止剤の配合量が比較的少なく,移行性が少ないと思われる樹脂原料を用いて,従来から行われている熱間内圧クリープ試験を比較対象として,更に加速耐久性評価の可能な試験法の確立,実使用環境に近い温水循環試験との相関性や相違点について比較評価を行った.その結果,劣化には温水中の溶存酸素や樹脂内の酸素拡散が大きく影響していること,温水循環試験における酸化劣化の温度依存性及び,銅害の発生メカニズムなどが明らかになった.