多官能ビニル化合物のラジカル重合における三次元化に関する一連の研究の一環として, 本研究では各種多官能アリル化合物の三次元化に伴うネットワーク構造の微視的不均一化について電子スピン共鳴 (ESR) を用いて検討した。トリアリルイソシアヌレート (TAIC), トリアリルシアヌレート (TAC), ジアリルフタレート (DAP), ジアリルイソフタレート (DAI), ジアリルテレフタレート (DAT), およびトリアリルトリメリテート (TAT) の塊状重合系をESR測定したところ, ペンダントアリルラジカルが検出された。このペンダントアリルラジカルと酸素および4-ヒドロキシ-2, 2, 6, 6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル (TEMPOL) との反応性を検討したところ, ネットワークの微視的不均一性に基づく立体効果を反映して酸素のような小さい分子とは反応できるが, TEMPOLのようなかさ高い分子とは反応できないことが分かった。また, この微視的不均一化の重合率依存性を検討するためラジカル蓄積量の経時変化を追跡したところ, ラジカルが蓄積し始める点および蓄積量が急速に増加する点はモノマー種によって異なっており, 各重合系のネットワーク形成過程の違いを反映しているものと考えられた。
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