フェノール樹脂を強靭化し, 耐水性および電気絶縁性をさらに向上させるための手段として, フェノール核間結合距離を長くし, フェノール性水酸基濃度を低下させる方法が考えられる。そこで, 10-ウンデセニルアルデヒド (UA) でフェノール樹脂を変性した。まず, 酸性条件下, フェノールとUAを種々のモル比で反応させ, フェノール核間へのUAユニットの導入を試みた。その結果,
p-トルエンスルホン酸触媒下, 高温で反応させることにより, UAの二重結合およびカルボニル基がフェノール核に付加したオリゴマー (UA変性フェノール) が得られた。次に, 酸性条件下, フェノール中でUA変性フェノールをホルムアルデヒドと反応させることにより, フェノールにUAおよびホルムアルデヒドが付加共縮合した構造の, 一般的なフェノール-ホルムアルデヒドノボラックよりも平均分子量が大きなノボラック型中間体 (UA変性ノボラック) が得られた。硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いて調製した成形材料の成形温度における流動性を検討した結果, UA変性ノボラックIおよびII (UAとフェノールの仕込み比 : 0.1/1および0.2/1) -ヘキサメチレンテトラミン系の成形材料は一般的なフェノールノボラック-ヘキサメチレンテトラミン系の成形材料よりも優れていた。また, 成形材料の硬化挙動を検討した結果, UA変性ノボラックおよびUA変性フェノールとも, 一般的なフェノールノボラックとほぼ同等の温度で硬化反応が進行し, 硬化物が得られることがわかった。硬化物物性を検討した結果, UA変性ノボラックIおよびIIの硬化物は一般的なフェノール樹脂硬化物と比べて, 靭性, 電気絶縁性および耐水性にバランス良く優れていた。また, 高分子量のUA変性ノボラックI-2を用いることにより耐熱性も向上した。
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