病院では,医療安全教育が推進されている.その一環として,教育シートに潜在する危険を発見することで,事故の危険性に気付く力(以下,察知力)の向上を図る危険予知トレーニング(以下,KYT)が,病院で導入されつつある.しかし,現状では,シートの具体的な作成方法は確立されておらず,効果的にKYTを実施できていない場合もある.また,KYTによる察知力向上の評価方法は存在せず,KYTの効果を測定することができていない.本論文では,事故防止に有効なシートの作成方法を提案する.提案方法では,実際に病院で発生した与薬事故をシートに反映させるため,シート作成に必要な情報を分析し,シートに反映させやすい形で整理する.提案方法によりシートの正解を作成することができるため,その正答率の推移により,察知力向上の評価も行えるようになる.実際にある病院にて,提案方法を適用して2枚のシートを作成し,57人の対象者に期間をあけてKYTを2回実施した.その結果,正解の平均危険発見数が1.23個から1.75個に向上した.以上より,提案方法を適用してKYTを繰り返し行うことで,事故防止に有効なKYTを実施できることを確認した.
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