2003年 6 月から2004年 5 月の 1 年間に当院を受診した15歳未満の急性中耳炎および急性鼻副鼻腔炎患児の鼻咽腔から検出された
Streptococcus pneumoniae1322株を用い,微量液体希釈法で薬剤感受性の測定と,PCR 法でペニシリン結合蛋白(
PBP)遺伝子変異およびマクロライド耐性遺伝子の検出を行い比較解析した。薬剤感受性による分類では PSSP 145株(11.0%),PISP 544株(41.1%),PRSP 633株(47.9%),
PBP 遺伝子変異による分類では,gPSSP 59株(4.5%),gPISP 391株(29.6%),gPRSP 872株(65.9%)であった。マクロライド耐性遺伝子のうち mefA 遺伝子のみ検出したものは447株(33.8%),ermB 遺伝子のみ検出したものは593株(44.9%),mefA 遺伝子と ermB 遺伝子の両方とも検出したものは97株(7.3%),耐性遺伝子を検出しなかったものは185株(14.0%)であった。
PBP 遺伝子変異とマクロライド耐性遺伝子の関係を見てみると,
PBP 遺伝子の変異数が増加するに従ってマクロライド耐性遺伝子を検出する割合も増加していた。今回の検討では,薬剤感受性による分類と
PBP 遺伝子変異による分類では
S. pneumoniae の耐性の頻度にはほとんど差が認められず,β–ラクタム系抗菌薬の感受性は,以前と比較すると全体的に低下していた。また
PBP 遺伝子変異が増加するに従って,β–ラクタム系抗菌薬の耐性は増加しており,マクロライド耐性遺伝子が増加するに従って CAM および CLDM の感受性も低下していた。今後とも,薬剤感受性および遺伝子解析を含めたサーベイランスが必要であると考えられた。
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