揮発性有機塩素系化合物による住居内空気の汚染実態とその吸収量を把握するため, 大阪府下の5軒の住居を対象とし'秋季と冬季, それぞれ2回ずつ同化合物への曝露実態を調査した。各住居の屋内と屋外の定点と'夫婦それぞれの移動点 (個人曝露) において'パッシブガスチューブを取り付けて空気中の揮発性有機塩素系化合物を捕集し, ガスクロマトグラフにより定量した。屋内では
p-ジクロロベンゼン (3.1ppb, v/v) の濃度が最も高く, 次いで1, 1, 1-トリクロロエタン (0.52ppb), トリクロロエチレン (0.47ppb), クロロホルム (0.39ppb), テトラクロロエチレン (0-28ppb), 四塩化炭素 (0.093ppb), プロモジクロロメタン (0.052ppb), クロロジブロモメタン (0.024ppb) の順であった。
p-ジクロロベンゼンおよびトリハロメタン類の屋内濃度は, いずれの住居においてもその屋外濃度よりも高く, その発生源が主に屋内にあると判断された。更に'各化合物間の濃度相関を調べた結果'3種のトリハロメタンの間にそれぞれ高い正相関がみられ, それらの発生源は同一であると推定された。個人曝露濃度では, 5軒の住居の夫婦いずれにおいても
p-ジクロロベンゼンが最も高かった (1.5-21.2ppb)。
これまでに得たラットにおける同化合物の吸収量に関する実験結果から, 実際の曝露濃度レベルにおけるヒト (体重60kg) での吸収量の外挿を試みた。一日の吸収量が最も多い揮発性有機塩素系化合物は
p-ジクロロベンゼン (2456nmol) であり, 測定した8化合物の全吸収量の約7割を占めた。次いで, トリクロロエチレン (848nmol)'クロロホルム (224nmol) の吸収量が多く, 他の5化合物の吸収量はこれらに比較して少なかった。
p-ジクロロベンゼンは, その発ガン性等の毒性, 吸収量の多さおよび曝露期間の長さ等から, 生活衛生上最も注目すべき室内汚染物質の一つであると考えられた。
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