臨床リウマチ
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29 巻, 4 号
臨床リウマチ
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
誌説
総説
  • 東 直人
    2017 年 29 巻 4 号 p. 219-227
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     シェーグレン症候群(SS)は腺組織の破壊により涙液や唾液の産生低下を来たし,眼や口腔内などの乾燥症状を呈する.外分泌腺以外の臓器の病変や全身症状を呈することがあり,これらを腺外病変という.腺外病変は軽症のものが多いが,予後に影響する臓器病変もあり臨床上重要である.2015年にSSは指定難病となり,診断基準と重症度分類を満たす場合に医療費助成の対象となったが,この日常診療上の実務を通じてSSの腺外病変を身近に感じるようになった方も少なくないだろう.また,SSは他の膠原病を合併することが多く,臓器病変を呈した場合,SSによるものか,合併する他の膠原病によるものかを鑑別する必要がある.しかし,特徴的な症状や検査所見がはっきりせず,その鑑別に迷うことも少なくない.
     このようにSSは多彩な病態を呈するため,まず適切な診断が必要であり,診断基準の理解と活用が不可欠である.また,SSの治療は,乾燥症状に対しては対症療法が主となるが,腺外病変に対しては病状に応じてステロイド薬や免疫抑制薬を用いた治療を行う.治療方針を決定する上で,腺外病変の理解と疾患活動性指標を用いたその評価が重要となる.そして,これらの理解は適切な臨床研究のためにも必要となる.2017年には厚労省研究班(住田班)が作成した“シェーグレン症候群診療ガイドライン2017年版”が公開された.SSの理解の一助としたい.

  • 田中 伸哉
    2017 年 29 巻 4 号 p. 228-237
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     骨粗鬆症治療は骨代謝回転をコントロールすることである.1993年のアレンドロネート発売を皮切りに,デノスマブやテリパラチドなどさまざまな骨粗鬆症薬が開発され,われわれは骨代謝回転をある程度コントロールできるようになった.さらに2017年には新しい骨形成促進薬アバロパラチドが米国食品医薬品局に認可され,代謝回転を亢進しない骨形成促進薬であるロモソズマブも認可を待つばかりである.骨粗鬆症の“ゴールを目指した治療”においては,非常に効果的な骨粗鬆症薬がないことが,限界の一つと考えられていた.これまで以上に高い同化作用をもった二剤の出現により,骨粗鬆症治療はさらに発展すると期待される.この2剤を含め,2013年以降に発売になった骨粗鬆症薬について記載する.

原著
  • Satoru Kodama, Satoshi Ito, Daisuke Kobayashi, Ichiei Narita, Akira Mu ...
    2017 年 29 巻 4 号 p. 238-250
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

    目的:近年関節リウマチ(RA)患者の高齢化に伴い高齢RA患者に対しても生物学的製剤を使用する機会が増えている.エタネルセプト(ETN)は血中半減期の短さから,高齢関節リウマチ(RA)患者にも比較的安全に使用可能であると考えられ,既に多数例に使用されていると思われるが,その使用成績の報告は少ない.我々は75歳以上でETNを開始した高齢RA患者48名におけるETNの有効性と安全性を検討した.
    対象・方法:2008年5月から2014年3月に当院でETNを導入した336人のRA患者のうち,導入時の年齢が75歳以上であった48例(男性18例,女性30例)を対象に,24か月を最終評価時として,患者背景,疾患活動性の推移,有害事象をretrospectiveに解析した.
    結果:患者の平均年齢は79.0±2.9歳で,ETN使用により関節所見,血清学的所見,疾患活動性スコアはいずれも有意に改善を認め,使用前に比べ最終評価時ではプレドニゾロン(PSL)の平均使用量も有意に少なかった.有害事象は11例に認め,7例でETNの使用が中止され,そのうち4例は感染症であった.結核(85歳),ニューモシスチス肺炎(80歳)による死亡を各1例ずつ認めた.
    結論:75歳以上の高齢RA患者において,ETNは重篤な感染症については注意が必要であるが,有効な治療手段であると考えられた.

  • 小林 大介, 村松 春菜, 伊藤 聡, 長谷川 絵理子, 野村 優美, 阿部 麻美, 大谷 博, 石川 肇, 村澤 章, 成田 一衛, 中園 ...
    2017 年 29 巻 4 号 p. 251-260
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

    目的:アダリムマブ皮下注製剤(ADAsc(0.8))は注射時痛が比較的強い製剤であったが,2016年11月に注射時痛軽減が期待できるADAsc(0.4)が発売された.今回ADAsc(0.4)を中心に,各種皮下注生物学的製剤の注射時痛の比較検討を行った.
    対象・方法:当院通院中の皮下注生物学的製剤を使用中の関節リウマチ患者のうち同意が得られた423例(ADAsc群72例,他製剤351例)に対し注射時痛のアンケート調査を行った.
    結果:ADAsc製剤変更前後で疾患活動性に統計学的有意な変化は認めなかった.注射時痛のShort-Form McGill Pain Questionnaire version 2 (SF-MPQ-2)スコアは,4.50 (1.00-19.0)から1.00 (0.000-5.00)点(p<0.001)に改善した.穿刺時痛は55.4%,薬液注入時痛は78.6%の患者がADAsc(0.4)の方がとてもよいと回答した.重回帰分析で注射時痛が高値(SF-MPQ-2スコア3点以上)となる因子を検討したところ,ADAsc(0.4)と比較してADAsc(0.8),アバタセプト,エタネルセプト,セルトリズマブペゴルでオッズ比が高かった.
    結論:注射時痛が改善したことにより,ADAscはさらに使用しやすい製剤となった.

  • 松下 功, 新井 聖子, 元村 拓, 平岩 利仁, 木村 友厚
    2017 年 29 巻 4 号 p. 261-268
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

    目的:リウマチ外来における医療クラークの役割を紹介し,その重要性を明らかにすることである. 
    対象・方法:医療クラークがリウマチ外来に関わる直前の前期(2010年3月),クラークの援助が始まった1年後の初期(2011年4月),3年後の中期(2013年4月),5年後の後期(2015年4月)の各時期において,連続する50名の関節リウマチ(RA)患者のカルテを抽出しT2Tの実践率と疾患活動性を評価した.T2Tの実践率はSDAIのコンポーネントがすべてカルテに記載され,かつ1年に1回以上関節X線検査を行っている場合を実践あり定義して評価した.疾患活動性の指標としてはSDAIとCDAIを用い,それぞれの時期における寛解および低疾患+寛解の達成率を評価した.また各時期での使用薬剤の内容を調査した. 
    結果:T2Tの実践率は前期50%,初期86%,中期94%,後期100%と向上した.SDAIの寛解および低疾患+寛解の達成率はそれぞれ,前期で30.8%と65.4%,初期で28.5%と69.3%,中期で30%,90%,後期で58%と96%と著しく向上していた.またCDAIの寛解および低疾患+寛解の達成率もSDAIと同様に後期になるに従い上昇していた.この間MTXの使用量は徐々に増加していたが,使用率に変化はなかった.また生物学的製剤の使用率にも大きな変化がなかった.一方ステロイドは後期に向かうに従い使用率,使用量ともに減少していた. 
    結論:医療クラークがリウマチ外来にて医師を援助することはT2Tの実践率をあげることにつながり,さらにはRA患者の疾患活動性の改善に関与すると考えられた.

  • 前島 圭佑, 石井 宏治, 梅木 達仁, 清永 恭弘, 大村 雄一, 鳥越 雅隆, 今田 千晴, 尾崎 貴士, 柴田 洋孝
    2017 年 29 巻 4 号 p. 269-275
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     症例は64歳女性,63歳男性,70歳女性の3例.いずれも発熱を主訴に来院し,最終的にPET/CTにて大型血管炎(LVV)と診断.ステロイド療法により寛解導入し,以後漸減している.2例は寛解維持のために他の免疫抑制薬の併用を要した.全例で側頭動脈病変,筋痛や関連HLAを認めなかった.巨細胞性動脈炎に特徴的な所見を欠く高齢発症LVVの存在と,これらの診断におけるPET/CTの有用性が再認識された.

誌上ワークショップ ドラッグ・リポジショニングが変える膠原病リウマチ性疾患治療
  • 川上 純, 福井 翔一, 岩本 直樹
    2017 年 29 巻 4 号 p. 276-280
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     全身性血管炎であるANCA関連血管炎(AAV)は顕微鏡的多発血管炎(MPA),多発血管炎性肉芽腫症(GPA),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA),腎限局型ANCA関連血管炎に分類される.本邦のAAVではMPAが多い,ミエロペロキシダーゼ(MPO)-ANCAが多い,高齢発症が多い,間質性肺障害が多いことなど臨床像が海外とは異なる点が挙げられる.B細胞を標的とするキメラ型抗CD20抗体リツキシマブ(RTX)であるが,主に海外のランダム化比較試験(RCT)(GPAが多く含まれる)において有効性が示され,2011年に米国でGPAおよびMPAに対する承認が得られ,本邦でも2013年に公知申請でGPAおよびMPAに対して保険適応となった.本邦ではAAVに対するRTX治療のエビデンスは海外より少ないが,本誌上ワークショップでは,AAVにおけるRTX治療のエビデンスとANCA関連血管炎診療ガイドライン2017における位置付けを述べる.

誌上ワークショップ 関節リウマチ治療Update:Biologicsを中心に
  • 松井 聖, 關口 昌弘, 佐野 統
    2017 年 29 巻 4 号 p. 281-291
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)治療は生物学的製剤の登場による寛解を達成できるようになった.生物学的製剤は作用機序からTNF阻害薬,IL-6受容体阻害薬,T細胞機能調整薬に分けられる.T細胞機能調整薬であるアバタセプト(ABT)は,ターゲットを特定の生理活性物質分子としたものと違い,T細胞の機能を調節する薬剤である.日本国内で初めてのT細胞を標的とするRAの治療薬が使えるようになった.そのため,従来の作用機序の薬剤との違いを明らかにするために,関西の多施設において登録して頂いた前向き観察研究として,1st-bioにABTを導入したRA患者の有効性と安全性を検討した(ABROAD試験).
     ABROAD試験を完結した評価対象症例全277例で有効性を治療前(0週)12,24,48週での臨床的寛解を検討した.さらに,サブ解析として,持続的臨床的寛解(Sustained Clinical Remission: SCR)達成に影響するbase lineの予測因子を検討した.
     48週臨床的寛解は27.2%が達成した.また,治療開始24週以降,試験終了(48週)までの24週間に12週間以上の臨床的寛解(DAS28-CRP≦2.3)を継続した症例をSCRと定義した.SCRに影響するbaselineの予測因子を年齢別(65歳以上:高齢群,65歳未満:非高齢群)で比較した.
     SCRを達成した症例は高齢群と非高齢群で有意差は認めなかった.そこで多変量ロジステイック解析ではSCR達成に影響するbaselineの因子として高齢群ではACPA陽性とDAS28-CRP低値が,非高齢群ではMTX併用とHAQ-DI低値が抽出された.
     1st-BioとしてABTは高齢患者ではACPA陽性症例で,また,非高齢患者ではMTX併用症例でその効果が十分発揮される可能性が示されている.
     これらのABROAD試験の結果から,TNF阻害薬,IL-6受容体阻害薬の比較も含めてABTの位置付けについて討論する.

誌上ワークショップ リウマチ膠原病診療における感染症マネージメント
  • 槇野 茂樹
    2017 年 29 巻 4 号 p. 292-299
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー

     非結核性抗酸菌(以下NTM)は結核菌以外の抗酸菌の総称で,ヒトからヒトへの伝染性はなく環境の常在菌で受攻性のある個体に感染する病原体である.結核治療に反応するM. kansasii等と特異的治療が必要なMAC (Mycobacterium avium-complex)等,有効な治療のないM. abscessus等がありMAC症が約9割を占める.主な感染部位は肺で,主要な病型は軽症の結節・気管支拡張型(NB型)と重症の線維空洞型(FC型)である.診断はCT画像の所見と,複数回の菌の検出(感染部位の特殊検体の場合は1回で可)が揃って初めて可能になる.RAでは細気管支病変があり鑑別が困難である.RAでNTM症の発生は一般人の約2倍,TNF阻害薬を使えば,その5倍感染し易くなるとのデータがある.NTM症合併RAでは,TNF阻害薬を始めとするb-DMARDsは禁忌となっている.しかし,日本呼吸器学会が2014年に出した手引きではMAC症でNB型であればTNF阻害薬による治療もケースにより認めうるという見解を示し,状況によるb-DMARDs使用の道が開かれたが,治療絶対不応のM. absessus症やFC型のMAC症では抗リウマチ治療を控え不十分な病勢コントロールで妥協すべきと考える.またNTM症そのものの治療は高度に専門性を要求するため,熟達した呼吸器内科医に委ねるべきと考える.

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