関節リウマチ(RA)治療は生物学的製剤の登場による寛解を達成できるようになった.生物学的製剤は作用機序からTNF阻害薬,IL-6受容体阻害薬,T細胞機能調整薬に分けられる.T細胞機能調整薬であるアバタセプト(ABT)は,ターゲットを特定の生理活性物質分子としたものと違い,T細胞の機能を調節する薬剤である.日本国内で初めてのT細胞を標的とするRAの治療薬が使えるようになった.そのため,従来の作用機序の薬剤との違いを明らかにするために,関西の多施設において登録して頂いた前向き観察研究として,1st-bioにABTを導入したRA患者の有効性と安全性を検討した(ABROAD試験).
ABROAD試験を完結した評価対象症例全277例で有効性を治療前(0週)12,24,48週での臨床的寛解を検討した.さらに,サブ解析として,持続的臨床的寛解(Sustained Clinical Remission: SCR)達成に影響するbase lineの予測因子を検討した.
48週臨床的寛解は27.2%が達成した.また,治療開始24週以降,試験終了(48週)までの24週間に12週間以上の臨床的寛解(DAS28-CRP≦2.3)を継続した症例をSCRと定義した.SCRに影響するbaselineの予測因子を年齢別(65歳以上:高齢群,65歳未満:非高齢群)で比較した.
SCRを達成した症例は高齢群と非高齢群で有意差は認めなかった.そこで多変量ロジステイック解析ではSCR達成に影響するbaselineの因子として高齢群ではACPA陽性とDAS28-CRP低値が,非高齢群ではMTX併用とHAQ-DI低値が抽出された.
1st-BioとしてABTは高齢患者ではACPA陽性症例で,また,非高齢患者ではMTX併用症例でその効果が十分発揮される可能性が示されている.
これらのABROAD試験の結果から,TNF阻害薬,IL-6受容体阻害薬の比較も含めてABTの位置付けについて討論する.
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