臨床リウマチ
Online ISSN : 2189-0595
Print ISSN : 0914-8760
ISSN-L : 0914-8760
27 巻, 4 号
臨床リウマチ
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
Editor's Eye
誌説
総説
  • 松本 美富士
    2015 年27 巻4 号 p. 239-252
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
       本邦の多くのリウマチ医は線維筋痛症(fribromyalgia; FM)の病名の認識はあるが,疾患の存在に否定的であり,診療に対して拒否的である.最近の脳科学の目覚ましい進歩を背景に,非侵害受容性疼痛,特に慢性疼痛の分子機序,脳内ネットワークの解明などから,FMの疼痛も脳科学から解明されつつある.また,本邦では2003年から厚生労働省の研究班が組織され,疫学調査,病因・病態研究,診断基準,治療・ケア,診療体制の確立,ならびに診療ガイドラインの作成など精力的にプロジェクト研究が行われ,疾患の全体像がかなり具体的に見えてきた.その中で,特筆すべきことはFMの疼痛を,他の慢性疼痛と同様にアロディニアを伴う痛みの中枢性感作によるものと説明し得ること,この現象に脳内ミクログリアの活性化が認められ,いわゆる脳内神経炎症(neuroinflammation)の概念で説明できる可能性である.これら所見は近未来的な病態発症機構を標的とした画期的治療法の開につながるものであり,今後のさらなる発展が多い期待されるところである.病態以外にも厚労省研究班で得られた知見を中心に解説し,またEvidence Based Medicine (EBM)手法を用いて厚労省研究班と学会が合同で作成した,診断,治療・ケアについてのガイドラインも概説した.
  • 稲葉 雅章
    2015 年27 巻4 号 p. 253-260
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
       関節リウマチ(RA)は二次性骨粗鬆症の主たる原因疾患の一つであり,高率に骨粗鬆症を合併する.発症部位により全身性と傍関節性の骨粗鬆症とに大別される.早期では,手関節近傍の榛骨遠位端の海綿骨部と踵骨の音響的骨評価値(OSI)低下が有意に見られた.RA患者の4%部の榛骨海綿骨部分とRA炎症マーカーである血清CRP,ESR,およびRFとの間には負の相関が認められたが,踵骨OSIはそれら炎症マーカーとは相関せず,M-HAQとの間に負の相関傾向を認めた.したがって,傍関節性骨粗鬆症は関節炎症に伴う炎症性サイトカインによる海綿骨骨粗鬆症として,一方,荷重骨では身体活動性低下に伴う骨粗鬆症として位置づけられることが確認された.RA患者では,筋肉量の減少とともに躯幹部の脂肪量が増加しており,この脂肪量増加と動脈壁硬化度の進展が関連していた.
       さらに,RA患者の腰椎骨密度では有意な低下は見られなかったものの,ステロイド服用患者で有意な低下が見られ,RA患者の骨粗鬆症は部位によってステロイドの影響を受けていることが明らかとなった.
       活動性RA患者の血清骨代謝マーカーは一般的に上昇している.これは存真の骨代謝回転を表すとは限らず,炎症局所の傍関節部の骨破壊を示していることが,関節液と血清の骨代謝マーカー(DPD,PYD)同時測定による両者間のぞれぞれの濃度の正相関で明らかとなった.また,関節液中の骨吸収マーカー濃度は,炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6)濃度との正相関で明らかとなった.
       現在,骨量喪失と動脈硬化進展は密接な関係を示し,骨血管相関として提唱されている.我々は,骨吸収時に骨から放出されるリンが動脈硬化を進展させる主たる因子として提唱してきた.RA患者でも横断研究で骨密度や関節破壊が,縦断研究でも骨吸収速度が動脈硬化進展と独立した因子であることを明らかにし報告した.
       RAに伴う骨代謝異常は,骨関節破壊,骨折率上昇にとどまらず,動脈硬化進展など多岐にわたって患者のQOLや生命予後悪化に寄与している.
原著
  • 生野 英祐, 近藤 正一, 都留 智巳, 長嶺 隆二, 原田 洋
    2015 年27 巻4 号 p. 261-267
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    目的:ゴリムマブ(GLM)を効果的に使用するために多施設での使用成績を検討し,有効性と安全性を評価した.
    対象・方法:2011年9月から2014年10月までに,当院を含む福岡の5施設でGLMを投与された患者162名を対象とした.診療録を後ろ向きに調査し,有効性の評価にはDAS28-CRPとSDAIを用いた.対象患者は,Switch群とBio naïve群,GLM 50mg群と100mg群,MTX併用群と非併用群に分けて検討した.
    結果:Switch群と比較して,Bio naïve群は寛解率が有意に高かった(p<0.005).Bio naïve群はSwitch群と比較して,効果発現が早い傾向にあった.長期的には,MTX併用群の方が非併用群よりも治療効果が有意に高かった(p<0.05).GLMの投与量で比較すると,50mg群の方が100mg群よりも有意に改善していた(p<0.05).調査期間中に重篤な有害事象の発生はなかった.
    結論:GLMは他の生物学的製剤と同等の効果と安全性を有しており,他剤で効果が得られなかった患者やMTXが併用できない患者にも効果的な薬剤である.
  • 祖父江 康司, 小寺 雅也, 安間 英毅
    2015 年27 巻4 号 p. 268-273
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    目的:間質性肺疾患(ILD)は関節リウマチ(RA)の関節外合併症の1つであり,予後を左右する.抗リウマチ薬は一般的に薬剤性間質性肺炎の副作用を有することもあるため,ILDが存在するRA患者に対する生物学的製剤 (Biological DMARD,以下Bio)を含めた薬剤の選択に難渋する.当院におけるILD合併RA患者のBioの使用状況について検討した.
    対象・方法:2013年4月より2014年3月までに当院通院歴のあるRA患者259例中ILD合併症例は23例.その内8例にBioの導入歴があり,内訳はinfliximab (IFX)1例,tocilizumab (TCZ)2例,abatacept (ABT)3例,golimumab (GLM)2例であった.
    結果:平均年齢は61.3±5.0歳で,8例のうち6例が女性であった.Steinbrocker分類のstageが比較的早い症例でclassが進行している症例にBioが使用されていた.Bio-naïve症例が4例で,Bio-switch症例が4例であった.MTX併用例は4例であった.8例ともにILDの増悪なく52週以上のBioの継続使用が可能であった.また,52週の経過で全例において,PSL投与量は減量もしくは現量維持されていた.
    結論:ILD合併RA患者に対するBioの使用はILDを増悪させるリスクがある.しかしながら,当院ではRAの疾患活動性が高い症例では,Bio導入を慎重に検討し注意深く経過観察を行っている.また一部の症例ではPSLを減量することができた.ILD合併RA患者においても慎重に経過をみることでBioを導入することができた.
  • 藤本 潤, 別府 祥平, 米延 友希, 福井 潤, 小中 八郎, 川﨑 貴裕, 小林 久美子, 藤原 弘士
    2015 年27 巻4 号 p. 274-280
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
       症例は66歳,男性.5年前に他病院で下腿浮腫と下肢筋力低下および高CK血症を指摘された.1年前より体幹部皮膚硬化が出現し,その後に下肢痛が出現して歩行困難となり当院に精査入院となった.皮膚生検結果と抗セントロメア抗体陽性から全身性強皮症と診断され,ステロイド治療開始で速やかに改善した.皮膚硬化が上肢に出現せず他部位に出現することは強皮症として典型的でなく,そのことが本症例の治療介入を遅らせた可能性がある.
誌上ワークショップ 膠原病の新規治療
  • 桑名 正隆
    2015 年27 巻4 号 p. 281-287
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
       強皮症(SSc)はいまだ有効な治療法のない難治性病態として取り残されている.その理由は線維化により正常構造が改変してしまった組織に可逆性はなく,移植や再生医療を行わない限り機能回復は望めないからである.そのため,病変に可逆性が残されている発症早期に的確な治療介入を行い,病変の進行を未然に防ぐ治療概念が提案されている.ただし,このような治療を実践するためには,早期からの正確な診断と将来の進行,予後予測が必須である.2013年に改訂された新分類基準では早期,軽症例を可能な範囲で取り込むことに主眼が置かれた.また,皮膚硬化がなくてもレイノー現象がありSScに特徴的な爪郭毛細血管異常またはSSc関連自己抗体が認められる例を超早期SScとして把握する概念が提唱されている.さらに,経過中にみられる最大の皮膚硬化範囲による分類(びまん,限局皮膚硬化型)に自己抗体を組み合わせることで病型や予後予測が可能である.今後,SScの早期診断が広く普及し,早期SScの自然歴が明確になれば,早期治療介入による治療成績の向上が期待できる.
  • 廣畑 俊成
    2015 年27 巻4 号 p. 288-295
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
       神経ベーチェット病は急性型と慢性進行型の2つに分類される.急性型は急性ないし亜急性に発症した髄膜脳炎の形をとり,髄液の細胞数が著明に上昇し,時にMRIのフレア画像で高信号域を認める.一方,慢性進行型では,認知症様の精神神経症状や失調性歩行が徐々に進行し,患者はついには廃人同様になってしまう.この病型では,髄液中のIL-6が持続的に異常高値を示すとともにMRIでは脳幹部の萎縮を認める.稀に両者が合併することもあることから(acute on chronic),両者の病態生理が異なることがわかる.慢性進行型の発症に先立って急性型の発作を起こしている場合が少なくないことから,急性型の発作がおさまった段階で,一度髄液IL-6をチェックしておくことが推奨される.シクロスポリンを投与している患者の約20%に急性の炎症性神経病変を生じるが,これは急性型神経ベーチェット病と同一であると考えられる.慢性進行型では,男性,喫煙,HLA-B51の頻度が高い.
       急性型の発作急性期の治療の中心はステロイドである.急性型の発作予防には,コルヒチンの有用性が示唆されている.シクロスポリンによって誘発された急性型ではシクロスポチンの中止でほぼ完全に再発は抑制される.一方,慢性進行型ではまずメトトレキサートによる治療を行うべきであり,効果不十分な場合は,なるべく早くインフリキシマブの追加併用を行う必要がある.ステロイドの大量療法やアザチオプリン/シクロフォスファミドは無効である.
誌上ワークショップ 有機的な関節リウマチの医療連携の構築に向けて
  • 簑田 清次
    2015 年27 巻4 号 p. 296-301
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
       関節リウマチの治療が大きく改善され,リウマチ患者に対する治療効果を多くのリウマチ医は実感している.より早期にリウマチを診断し,初期から積極的に強力な治療法により寛解を目指すことがリウマチ治療の基本となってきた.この場合,早期診断・早期治療を総合医にお願いするのは困難なことが多い.やはり専門医の介在が必要であろう.しかし,専門医数は全国的に見ても数が少ない.特に,地方においては専門医が存在しないところさえ多くある.
       このような状況下で地域差のない最新治療をリウマチ患者に実践するためには専門医と総合医(家庭医)の連携がどうしても必要である.これは大病院と診療所の連携と置き換えることもできる.大病院は初期治療や治療効果の確認と必要に応じた変更および緊急事態への対応が重要であり,一方,診療所は小回りのきく診療をお願いしたい.専門医の診療は通常は4~6ヶ月ごと,または必要性が生じた場合とすることで,限られた数の専門医を有効に活用することができる.また患者は利便性と安全性を確保したうえで,最新治療を専門医と総合医の協力の下で行うことができる.専門医が数多く存在する大都会では必要性は低いかも知れないが,地方では推進しなければならない制度である.
       これは何もリウマチ領域に限られたことではない.この病診連携の理念は理解できるものの広く実践されているかというと必ずしもそうではない.中核となる大病院の意識次第ともいえる.
誌上ワークショップ 生物学的製剤存在下の旧来のDMARDsの役割
誌上ワークショップ RAにおける生物学的製剤の最新エビデンス
  • 川人 豊
    2015 年27 巻4 号 p. 307-311
    発行日: 2015/12/30
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
       アバタセプトは免疫反応の抗原提示における副刺激を抑制するnon-TNF型生物学的製剤である.CD80/CD86を有する細胞に影響を及ぼし,抗原提示細胞や破骨細胞の分化増殖にも関与している可能性が,近年示唆されている.その有効性,安全性は直接比較試験でアダリムマブと同等であることが示され,生物学的製剤の第一選択薬として推奨されている.アバタセプト中止後の寛解(バイオフリー寛解)の維持は,他の生物学的製剤と同様に難しい.関節リウマチの病因に関わるACPA産生の抑制効果には様々な結果が出ており明確な結論は得られていないが,今後の研究のさらなる研究結果が待たれる.
臨床リウマチ医のための基礎講座
feedback
Top