臨床リウマチ
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34 巻, 2 号
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誌説
  • 竹内 勤, 吉田 広人, 田中 栄
    2022 年 34 巻 2 号 p. 87-96
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)は,進行性の骨と関節の破壊につながる日常診療で遭遇する炎症性関節炎の一つである.進行性の骨破壊を伴うRA患者は生活の質の低下が加速するため,疾患の進行と骨破壊の抑制が重要な臨床目標になっている.RAの骨破壊においては骨関連細胞とTNF-αやInterleukin-6(IL-6)などの炎症性サイトカインが密接に関与しており,炎症性サイトカインを標的とする薬剤治療によって骨破壊を抑制できることがわかっている.特に最近の研究では,IL-6を標的とする薬物であるtocilizumabの介入によって骨や関節の破壊の抑制に加えて骨の修復をもたらすことも報告され,これらの結果は新しい治療目標の可能性を示唆している.IL-6と骨との関係については,破骨細胞に関する多くの研究が長年にわたって報告されているが,近年IL-6と骨芽細胞および骨細胞との関係についても研究が進んできている.本稿では,in vitro研究やin vivo研究などの基礎研究および臨床研究の視点でIL-6と骨関連細胞との関係をまとめ,RA治療におけるIL-6シグナル抑制の可能性を骨の観点から概説する.

総説
  • 山岡 邦宏, 奥 健志
    2022 年 34 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

     生物学的製剤は関節リウマチ(RA)治療に革新的変化をもたらし,JAK阻害薬はその治療効果を経口内服で可能としている.近年,分子標的治療薬の安全性を主要評価項目とした臨床試験の結果が複数報告され,その安全性が改めて注目されている.JAK阻害薬とTNF阻害薬が直接比較検証されたORAL Surveillance試験ではJAK阻害薬の非劣勢が証明されなかった.TNF阻害薬はRA患者でこれらイベントの発現抑制効果が報告されていることから本試験の解釈は複雑である.JAK阻害薬の安全性に問題があるのか,安全性に優れる可能性があるTNF阻害薬に非劣勢を証明できなかったかは明確にできない.この結果は分子標的治療薬導入時に可能な範囲でのスクリーニングの重要性を物語っている.帯状疱疹(HZ)はJAK阻害薬治験によりあらたに着目される様になった有害事象である.しかし,以前よりRA患者ではHZが増加することは知られており,JAK阻害薬はその頻度を約2〜3倍に増加させ,本邦ではさらに2倍程度発症頻度が上昇する.HZ後神経痛などの後遺症を考慮するとサブユニットワクチンであるシングリックスによる積極的予防策を講じるべきである.スクリーニングとワクチン接種に要する労力を考慮すると,分子標的薬の有害事象対策の課題解決に向けてはshared-decision makingという根本的課題が密接に関わっている.

原著
  • 宮脇 昌二, 相田 哲史, 西山 進, 吉永 泰彦
    2022 年 34 巻 2 号 p. 105-117
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

    目的:LLDASとDORISの有用性を検討.方法:83 SLEのmedical record review.LLDAS:維持prednisolone(PSL)≦7.5mg/日でSLEDAI≦4. DORIS: PSL≦5mg/日の① Clinical remission on treatment(ClinROT)と② Complete ROT(CompROT),PSLオフの③ Clinical remission(ClinR)と④ Complete remission(CompR)に分類.結果:全DORISはLLDASと重複.PSLオフのClinR 2例(1.4%)は再燃し, CompRの発現なし.ClinROTの 69.9%とCompROTの45.7%が再燃.DORISと病歴50%以上のLLDASに維持PSL 2.5mg/日が多く,腎障害が少なく,SLICC/ACR damage Index(SDI)が低い.腎障害と再燃がSDI増加の危険因子に, PSL 2.5mg/日維持が防御因子に該当.PSL 2.5mg/日維持群は再燃とSDIが低い.今日の標準治療下での治療戦略は,まずPSL 7.5mg/日のLLDASに到達し,次いでPSL 5~2.5mg/日維持ClinROTまたはCompROTへ至り,易再燃性のPSLオフClinRCompRは回避する戦略が考察された.結論 : LLDASは寛解到達の時期の,またDORISは治療達成の程度の把握に有用であった.

  • 望月 猛, 猪狩 勝則, 矢野 絋一郎, 岡崎 賢
    2022 年 34 巻 2 号 p. 118-127
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,関節リウマチ(RA)患者において,腎機能の悪化の危険因子およびシスタチンC(Cys-eGFR)とクレアチン(Cr-eGFR)を用いて計算された推定糸球体濾過量の違いを明らかにすることである.

    方法:本研究は359人のRA患者が対象であった.1年間の腎機能障害の危険因子はCys-eGFRを用いて解析された.<60mL/min/1.73m2の有病率を359人のRA患者で統計的に分析した.Cys-eGFRとCr-eGFRの違いはベースラインの値を用いた.

    結果:腎機能の悪化に関連要因は,60歳未満の患者の疾患活動性(オッズ比1.76; 95%信頼区間1.05–2.96)であった.Cys-eGFRとCr-eGFRの比較では,Cr-eGFRは80歳以上の患者で有意に大きく(P=0.034),60歳未満の患者で有意に低かった(P < 0.001).

    結論:60歳未満のRA患者では,腎機能悪化の抑制のためには疾患活動性を抑制することが必要である.また,Cys-eGFRの使用は,高齢RA患者の腎機能管理に適している可能性が示唆された.

  • 針金 健吾, 持田 勇一, 島崎 貴幸, 長岡 亜紀子, 小林 直実, 稲葉 裕
    2022 年 34 巻 2 号 p. 128-136
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

    【背景】当院は地域医療支援病院として地域の医療機関から紹介患者を受け入れてきたが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は外来診療に影響を及ぼした.

    【方法】2018年1月から2021年3月の間に当院リウマチ膠原病センター整形外科を紹介初診した508名を対象として,2020年2月までのCOVID-19流行前と,流行開始後に分けて初診日,紹介目的,当院での治療内容を調査した.

    【結果】1診療日あたりの初診数は流行前0.98人,流行後0.53人と有意に減少した(p < 0.01).紹介目的では診断確定・初期治療目的が63.9 %から52.4 %へ有意に減少した(p=0.03).一方,手術目的は流行前後とも約20 %と変化を認めなかったが,部位別には下肢大関節が34.6 %から56.0 %へ増加し(p=0.03),上肢が38.5 %から12.0 %へ減少した(p=0.01).前医または当院で関節リウマチと診断された例に対する薬物治療は,流行前後でメトトレキサート,生物学的製剤ともに導入した割合に差がなかった.

    【結論】紹介数は流行後に有意に減少し,患者が受診控えをしていた可能性が考えられた.手術部位では一般的に待機困難な下肢大関節の手術が増加し,待機可能な上肢の手術が減少した.一方薬物治療は流行前後で有意差はなく,必要な治療は従来通り行われていたと考えられた.

  • 清永 恭弘, 中野 翔太, 藤 健太郎, 立川 裕史, 石井 宏治, 久保山 雄介, 尾崎 貴士, 柴田 洋孝
    2022 年 34 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

     症例は22歳男性.発熱と多関節炎が持続したため当科紹介受診.採血にて白血球は3300/μl.両足関節炎を認めており,関節液採取したところ,細胞数が25300/μlであり,その88%が組織球であった.また右腋窩にリンパ節腫大を認めており,リンパ節生検を施行し,菊池病の診断となった.菊池病に関節炎を合併することがあることは報告されているが,過去に関節液所見の報告はなく,貴重な症例と考えられた.

  • 竹村 正男, 出田 貴康, 佐藤 正夫, 石田 秀和, 藤垣 英嗣, 山本 康子, 佐々木 智弘, 竹村 恵里奈, 斉藤 邦明
    2022 年 34 巻 2 号 p. 144-151
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

     LPSは炎症の成立に重要な役割を果たしている.LPSはLPS結合蛋白(LBP)と結合し,さらにCD14が結合することで炎症シグナルを細胞内に誘導する.今回,我々は長期療養(5年以上)のRA患者を対象に,高感度法によるLBPの定量とACPA抗体の変動を調査した.また炎症の指標とされているCRPおよびIL-6の測定を同時に行いバイオマーカーとしてのLBPの臨床的意義について検討を行った.血中LBP値(Mean ± SD)は健常者3.69±1.26μg/mL,OA群6.05±2.40μg/mL,RA群11,10±5,16μg/mLであり,RA群で最も有意に高値を示した(p < 0.0001).さらにstage,classの亢進に伴いLBPが増加した.また,ACPAとは相関(r=0.410)を認め,陽性群と陰性群での比較では陽性例が有意(p<0.002)に高値であった.このことから高感度法によるLBPの測定はRAの新たな病態解析の指標の一つになる可能性が有るものと考える.

  • 山崎 宜興, 飯田 春信, 安藤 貴泰, 後藤 由多加, 鈴木 翔太郎, 川崎 達也, 石崎 克樹, 櫻井 恵一, 清川 智史, 水島 万智 ...
    2022 年 34 巻 2 号 p. 152-165
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

    目的:抗ARS抗体陽性および抗MDA5抗体陽性の間質性肺疾患(ILD)患者の長期予後を明らかにするとともに,両群の経時的な残存正常肺容積をMulti-slice CT(MSCT)を用いて解析する.

    対象・方法:2014年1月から2019年5月までに当院において抗ARS抗体(n=38),抗MDA5抗体が陽性(n=13)でILDを 合併している患者で,皮膚筋炎(DM)・多発性筋炎(PM),筋無症候性皮膚筋炎(CADM),並びに,interstitial pneumonia with autoimmune features(IPAF)と診断した患者を後ろ向きに解析した.

    結果:抗ARS抗体,抗MDA5抗体陽性ILD患者のPM/DM/CADMの頻度はそれぞれ,29% / 45% / 5%,0% / 31% / 54%,残りはIPAFであった.MSCTを用いたベースラインの平均残存正常肺容積(SD)は3100(720)mL,2796(887)mLであった(P=0.226).抗ARS抗体陽性患者の生命予後は抗MDA5抗体陽性患者よりも良好であった(4年生存率,93% vs. 77%, P=0.022).ILDに対して寛解導入療法を施行した抗ARS抗体陽性ILD患者(n=31),抗MDA5抗体陽性ILD患者(n=13)のうち,それぞれ,94%, 85%で寛解が得られた.MSCTによる経時的[平均(SD)21(9)ヶ月] な残存正常肺容積は抗MDA5抗体陽性ILD患者群(P=0.030)では改善を認めたが,抗ARS抗体陽性患者群では認めなかった(P=0.867).年間正常肺容積改善率は抗MDA5抗体陽性患者で119(15)%,抗ARS抗体陽性患者では104(18)%であった(P=0.055).

    結語:抗ARS抗体陽性ILD患者の生命予後は抗MDA5抗体陽性ILD患者に比べ生命予後は良好であった.しかし,抗ARS抗体陽性ILD患者における,ILDの改善はわずかであった.抗ARS抗体陽性ILD患者における,長期治療戦略の確立が必要である.

誌上ワークショップ リウマチ診療における看護師の役割
  • 橋本 聡美, 松野 博明, 河上 瑞稀, 長森 真弥, 伊藤 彩香, 中村 理恵
    2022 年 34 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー

     破局的思考は痛みに対する誇張された否定的思考のことで,疼痛部位が多いほど破局的思考が強いことも知られている.そこで当院外来通院中の関節リウマチ(RA)患者204例を対象に破局的思考の問診票PCS(Pain Catastrophizing Scale)による調査を外来で行い,各患者のPCSの結果を目的変数とし,患者の年齢,性別,活動性,患者VAS,modified Sharp-Heidje(S-H)法による年間のレントゲン進行度,治療薬の種類による差を説明変数として重回帰分析により何が最もRAの破局的思考に影響を及ぼすかを解析した.その結果,破局的思考は総点で18.8 ± 12.2,項目別では反芻:9.4 ± 5.8,無力感:4.3 ± 3.1,拡大視:5.1 ± 4.3であり,各項目の満点に対する障害割合はRAの場合,反芻と拡大視が高いことが判明した.説明変数との関連では反芻が関節腫脹(p=0.029),拡大視がS-Hの年次進行度(p=0.049),無力感が患者VAS(p=0.019)と有意な相関を認めた.恐怖回避モデルでは,痛みに対する恐怖や過剰行動回避を通じて抑うつや社会生活の適応障害を生じることで慢性疼痛に対する悪循環が生じるとされている.RA診療に従事する看護師はこれらを踏まえて患者の精神的不安を和らげるように日頃から注意すべきであると考えられた.

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