目的:抗ARS抗体陽性および抗MDA5抗体陽性の間質性肺疾患(ILD)患者の長期予後を明らかにするとともに,両群の経時的な残存正常肺容積をMulti-slice CT(MSCT)を用いて解析する.
対象・方法:2014年1月から2019年5月までに当院において抗ARS抗体(n=38),抗MDA5抗体が陽性(n=13)でILDを 合併している患者で,皮膚筋炎(DM)・多発性筋炎(PM),筋無症候性皮膚筋炎(CADM),並びに,interstitial pneumonia with autoimmune features(IPAF)と診断した患者を後ろ向きに解析した.
結果:抗ARS抗体,抗MDA5抗体陽性ILD患者のPM/DM/CADMの頻度はそれぞれ,29% / 45% / 5%,0% / 31% / 54%,残りはIPAFであった.MSCTを用いたベースラインの平均残存正常肺容積(SD)は3100(720)mL,2796(887)mLであった(P=0.226).抗ARS抗体陽性患者の生命予後は抗MDA5抗体陽性患者よりも良好であった(4年生存率,93% vs. 77%, P=0.022).ILDに対して寛解導入療法を施行した抗ARS抗体陽性ILD患者(n=31),抗MDA5抗体陽性ILD患者(n=13)のうち,それぞれ,94%, 85%で寛解が得られた.MSCTによる経時的[平均(SD)21(9)ヶ月] な残存正常肺容積は抗MDA5抗体陽性ILD患者群(P=0.030)では改善を認めたが,抗ARS抗体陽性患者群では認めなかった(P=0.867).年間正常肺容積改善率は抗MDA5抗体陽性患者で119(15)%,抗ARS抗体陽性患者では104(18)%であった(P=0.055).
結語:抗ARS抗体陽性ILD患者の生命予後は抗MDA5抗体陽性ILD患者に比べ生命予後は良好であった.しかし,抗ARS抗体陽性ILD患者における,ILDの改善はわずかであった.抗ARS抗体陽性ILD患者における,長期治療戦略の確立が必要である.
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