臨床リウマチ
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27 巻, 3 号
臨床リウマチ
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Editor's Eye
誌説
総説
  • 小林 一郎
    2015 年27 巻3 号 p. 163-170
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
       皮膚筋炎(DM)は特徴的皮疹と近位筋優位の筋力低下を特徴とする自己免疫疾患である.若年性皮膚筋炎(JDM)は16才未満で発症するDMであり,症状や病態において成人DMと多くの共通点を持ちながら,血管障害が強く潰瘍性病変が多い,石灰化を残しやすい,間質性肺炎や悪性腫瘍が少なく,生命予後が成人に比較して良いなどの違いが見られる.JDMにおいては抗ARS抗体陽性例はまれである.また抗TIF1抗体はしばしばJDMで陽性となるが悪性疾患とは関連しないなど,自己抗体のプロファイルや臨床的意義にも成人DMとの違いが見られる.成人では抗MDA5抗体が急速進行性間質性肺炎(RP-ILD)および臨床的非筋症性DM(CADM)と関連することが知られている.RP-ILDはJDMにおいても予後を決定することから,全国共同研究で症例を蓄積し,その臨床像や自己抗体・サイトカインを検討した.その結果,JDMにおいて抗MDA5抗体陽性はILDと関連するがCADMとは関連せず,抗体価高値例はRP-ILDを合併していること,RP-ILD合併例では血清IL-18やフェリチン高値をとり,IL-18値とKL-6値が相関することなどを見いだした.一方,本抗体とRP-ILDの関連は白人では認められず,人種による違いが示唆された.
原著
  • 松浦 深雪, 平山 典子, 大西 誠
    2015 年27 巻3 号 p. 171-177
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    はじめに:関節リウマチ(RA)は生物学的製剤(BIO)の出現により臨床的寛解が治療目標となり,機能的寛解が最も重要な目標である.当院では機能評価の方法としてHAQ-DIを採用しているが,HAQ-DIでは女性特有の家事労働の状況を十分に把握できない現状がある.
    目的:機能的寛解にあるBIO投与中女性RA患者の家事労働の満足度を調査する.対象:BIO投与中,HAQ-DI≦0.5かつDAS28(ESR)が寛解又は低疾患活動性に達している女性患者38名
    方法:家事労働(料理,洗濯,掃除)について独自のアンケートを作成.評価方法はHAQ-DIを参考にした.また料理,洗濯,掃除の満足度をVASで評価した.
    結果:平均年齢57.7歳,HAQ-DI平均0.18だった.38名中30名が臨床的寛解,8名が低疾患活動性だった.各家事労働の分類の中で評価が低かったのは,料理の項目では「料理の入った鍋やフライパンを持つ」,洗濯の項目では「洗濯ばさみをつまむ」,掃除の項目では「布団を干す」だった.また掃除の満足度VASの平均は2.84と他の家事労働と比較して最も評価が低かった.
    結論:機能的寛解にあっても女性RA患者においては,家事労働で不便さを感じ,不満足な状況がある事がわかった.今後家事労働での不便さを把握し,セラピストと連携することでリハビリによる機能回復や補助具作成などで家事労働の質向上を検討する必要がある.
  • 石井 克志, 持田 勇一, 松本 里沙, 小澤 祐樹, 三ツ木 直人, 齋藤 知行
    2015 年27 巻3 号 p. 178-183
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)の実臨床において,生物学的製剤を導入しCRP<1mg/dlと比較的低値であるにもかかわらず複数の腫脹関節が残存する症例が存在する.疾患活動性(DAS28)の改善および関節破壊の抑制には腫脹関節を減らすことも重要であり,炎症組織への高い移行性が期待できるセルトリズマブ・ペゴル(CZP)への切り替えが有効である可能性がある.
    対象・方法:本研究では生物学的製剤を導入し血清学的炎症が改善(CRP<1mg/dl)しても,複数の腫脹関節が残るRAに対するCZP切り替えの有効性について検討した.CRP<1mg/dlかつ腫脹関節≧2の生物学的製剤使用(トシリズマブを除く)RA患者11例(疾患活動性high5例,moderate4例,low2例)を対象にCZPへ切り替え,12週後の治療効果を検討した.
    結果:EULAR改善基準でmoderate以上の改善は8例70%に認め,DAS28(ERS)と腫脹関節数は80%の症例で改善を認めた.平均のDAS28(ESR)は4.5から3.4に改善し,腫脹関節数は平均9から6まで減った.
    結論:生物学的製剤を導入し血清学的炎症反応が改善しても(CRP<1mg/dl),複数の腫脹関節が残存する症例にCZPへの切り替えは有効な治療と考えられた.
  • 大西 亜子, 松浦 深雪, 大西 誠, 奥田 恭章
    2015 年27 巻3 号 p. 184-188
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
       目的:第58回日本リウマチ学会総会で「エタネルセプト(以下ETN)ペン型の有用性」について検討したが,ペン型不可能群が17名中8名おり,水銀式握力計で130mmHg以下・Pressure値(頭部・胸部・大腿部を押す力の平均値)100mmHg以下,手指変形のある患者には適していないことを報告した.一方似た形状のトシリズマブオートインジェクター(以下TCZAI)は,自己注射希望のあった患者8名全員が導入できた.そこでこの8名について検討した.
    対象・方法:TCZAIを導入したRA患者8名を対象とし,年齢,性別,罹病期間,疾患活動性(Stage Class・CDAI等),握力,Pressure値,変形等の背景を調査し,TCZAIの注射手技を検証した.
    結果:握力が130mmHg以下(4名)・Pressure値100mmHg以下(4名),高度の手指変形がある患者(5名)でもTCZAIが,自己注射可能であった.
    結論:ETNペン型で適していない患者(握力が130mmHg以下・Pressure値100mmHg以下,手指変形のある患者)もTCZAIは,自己注射ができた.その要因はETNペン型に比べて皮膚接触面の面積が広い,ボタンの部分が厚い構造になっているためと推測される.リウマチ患者のこのタイプの自己注射デバイスにおいて,TCZAIはより高い有用性を示した.
  • 常徳 千夏, 松井 聖, 斉藤 篤史, 西岡 亜紀, 関口 昌弘, 東 直人, 北野 将康, 橋本 尚明, 角田 慎一郎, 岩崎 剛, 佐野 ...
    2015 年27 巻3 号 p. 189-197
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)の治療は近年大きく変化しており,抗リウマチ薬に加え生物学的製剤が7種類使用できるようになった.このため,相互作用や副作用管理が急務となり.医療師全体で取り組む事が重要となってきている.今回,調剤薬局薬剤師の関わりの実情と問題点を把握し,今後の薬剤師の役割の方向性を考えるためアンケート調査を実施した.
    対象:兵庫医科大学病院外来通院中RA患者のうち,平成25年3月~5月に当薬局に来局,本調査への参加に同意した70名を対象にアンケート調査を実施した.
    方法:日常診療実態下における非介入試験 ①日常生活動作 ②関節リウマチ治療状況 ③精神的影響に関する状況のアンケートを実施した.
    結果:メソトレキサート(MTX)に関しては,効果の理解度は86%と高かったが,用法の不便さを訴える回答がみられた.生物学的製剤については,注射へのストレスを感じないが67%で,効果を実感している回答も62%と半数を超えた.しかしながら,副作用への不安や,高額の医療費の負担の不安もあった.
    結論:調剤薬局薬剤師として,MTXや生物学的製剤などの積極的な治療が必要な患者さんには,積極的に関わることで,個々の状況を聞き取り不安や問題の解決を目指すことにより,アドヒアランスの向上及び治療成功へのサポートを行って行くことが重要であると考える.
  • 高岡 宏和, 藤本 哲広, 下村 泰三, 鈴島 仁, 中村 正
    2015 年27 巻3 号 p. 198-204
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
       症例は70歳,女性で,38度以上の稽留熱が3週間続き,四肢を中心とした紅斑,骨びらんを伴う多関節痛,リウマトイド因子陰性,抗CCP抗体陰性,血清フェリチン値4450ng/mlと上昇し,臨床的兆候や血液検査結果等を勘案し,成人スティル病(adult onset Still’s disease: AOSD)と診断した.プレドニゾロン(PSL)40mg/日で内服治療を開始した.初期治療で速やかに解熱したが,PSL 25mg/日まで減量した時点で発熱,関節痛の再燃がみられ,炎症反応も軽度上昇した.タクロリムス(tacrolimus: TAC)0.5mg/日を併用し,炎症反応は陰性化して軽快した.TAC併用後はステロイドのさらなる漸減が可能となり,再燃なく最終的にステロイドを中止できた.TACはAOSDでの治療選択肢のひとつで,ステロイド減量困難例でTACが有効な症例があると予想され,今後の症例の積み重ねと解析が必要である.
  • 酒井 健史, 野﨑 祐史, 伊丹 哲, 李 進海, 井上 明日圭, 田崎 知江美, 志賀 俊彦, 朝戸 佳世, 樋野 尚一, 矢野 智洋, ...
    2015 年27 巻3 号 p. 205-211
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
       43歳,女性.発熱,顔面と体幹部の紅斑,関節痛を示す成人発症スティル病に対して,プレドニゾロンの投与が行われたが,治療抵抗性であり,播種性血管内凝固を併発した.血漿交換を施行,シクロフォスファミド,シクロスポリンを追加し,病状は改善した.その後,寛解維持目的としてトシリズマブを導入し,疾患活動性の低下を認めた. プレドニゾロン,シクロスポリンを漸減, 中止したが寛解状態は維持できた.トシリズマブの寛解維持における意義について検討した.
  • 三浦 貴徳, 本間 玲子, 飯田 高久, 山岸 優雅
    2015 年27 巻3 号 p. 212-218
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
       症例は61歳,女性.白血球減少,血小板減少のほか,抗核抗体および抗ds-DNA抗体が陽性であり,腎生検にてループス腎炎を認めたため全身性エリテマトーデス(SLE)と診断した.また,血清のIgG,IgAは高値であったが,IgMは測定感度以下であり,選択的IgM単独欠損症の合併を認めた.選択的IgM欠損症には,SLEなど自己免疫疾患を合併することが知られており,両者の合併について若干の文献的考察を含め報告する.
  • 由井 智子, 新井 桃子, 福井 めぐみ, 三井 亜希子, 金子 朋広, 清水 章, 渡辺 淳, 鶴岡 秀一
    2015 年27 巻3 号 p. 219-226
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/11/30
    ジャーナル フリー
       22歳女性.発熱・多関節痛を主訴に来院,SLEと診断した.SLEDAI高値・ループス腎炎ⅢA/Cより疾患活動性が高くステロイドハーフパルス療法を施行した.一時症状改善したがプレドニン40mg後療法中に再燃したためタクロリムス・ミゾリビン併用を開始した.タクロリムスの血中濃度が上昇せず,薬物代謝酵素の遺伝子多型による影響を疑いシクロスポリンに変更すると有効血中濃度に達し著効した.後の測定で血中濃度の上昇しにくいCYP3A5*1/*1であることが判明した.
臨床リウマチ医のための基礎講座
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