臨床リウマチ
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27 巻, 2 号
臨床リウマチ
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
Editor's Eye
誌説
総説
  • 大村 浩一郎
    2015 年27 巻2 号 p. 83-90
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
       生物学的製剤の登場で関節リウマチの治療は劇的に進歩し,治療のパラダイムシフトが起こった.しかしながら,高価な治療であり,日和見感染から命を落とすことも稀ではない.本来,生物学的製剤を用いなくとも寛解に持ち込むことが可能な症例にも早期から生物学的製剤を投与しているオーバートリートメントも問題となっている.早期から重症化が予想される患者を効率的に見出し,適切な治療を行うことが求められている.これまでアメリカリウマチ学会(ACR),ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)勧告では抗CCP抗体,リウマトイド因子(RF)が最も重要な関節予後予測因子であるとされ,その他にはCRP高値,ESR亢進などの高疾患活動性指標も重要な予後予測因子として報告されている.一方,遺伝子多型による予後予測に関しても多数の報告があるが,多施設で確認されているものはごく一部である.HLAは古くから知られるRA発症に関連する分子であるが,RA重症化に関わることも間違いない.HLA-DRβ鎖の70-74番アミノ酸がQRRAA, QKRAA, RRRAAという共通配列(shared epitope: SE)は重症化に関わり,DERAAという配列は軽症化に関わる.特にDERAAをもつと抗CCP抗体陽性でも軽症化するため,より重要かもしれない.HLA以外の重症化関連遺伝子多型としては日本人ではPADI4が関係しそうである.
  • 大村 浩一郎
    2015 年27 巻2 号 p. E1
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    論文内容の訂正 27巻2号 総説「バイオマーカーによる重症化予測と生物学的製剤の選択」
原著
  • 林 淳慈
    2015 年27 巻2 号 p. 91-99
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチに対する各種生物学的製剤の治療成績を調査し,その成績に関与する因子を検索したので報告する.
    対象・方法:2013年9月以前に関節リウマチに対し生物学的製剤を使用した114例全例を対象とし,継続率,治療後3,6か月,最終経過観察時の臨床成績,各種パラメーターを調査した.また,最終経過観察時にDAS28-CRPが寛解または低疾患活動性となっていた症例を目標達成群,中等度疾患活動性以上であった症例を非達成群として両群間で有意差の見られる因子を検索した.
    結果:継続率は1年で82.4%,8.9年では60.9%であり,TCZ,ETNが高く,ABT,IFXが低い傾向であった.EULARの改善基準はGood response 45.6%,moderate response 27.2%であり,no responseは27.2%であった.治療開始時には高疾患活動性が61.4%であったが,最終経過観察時には高疾患活動性は16.7%と減少し,寛解は39.5%となっていた.最終的には53.5%が目標達成群,46.5%が目標非達成群であった.多重ロジスティック回帰分析を用いた多変量解析により,ベースラインでのPSL使用量が低いこと,治療開始後3か月でのリンパ球数が高いことが両群間に影響を及ぼしていると推測された.また,ROC曲線を用い,ベースラインにおけるPSL使用量の目標達成群におけるカットオフ値は4mg/日であった.
    結論:生物学的製剤の継続率は8.9年で60.9%であり,TCZ,ETAで高い傾向にあった.低疾患活動性以下を達成できる予測因子は開始時のPSL使用量と治療後3か月でのリンパ球数であり,PSLの使用は4mg/日未満が望ましいと思われた.
  • 佐々木 毅志, 岡邨 興一, 米本 由木夫, 金子 哲也, 高岸 憲二
    2015 年27 巻2 号 p. 100-105
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)患者に対する新規の合成Disease modifying anti-rheumatic drugs (DMARDs )であるイグラチモド(IGU)の治療効果について検討を行った.
    対象・方法:当科において2012年9月から2013年4月までに,IGU単剤が投与開始されたRA患者11名(男性5名,女性6名)について,IGU投与開始前から投与後24週までの治療経過について解析した.中止例はLast Observation Carried Forward(LOCF)法で解析した.
    結果:IGU投与開始前および投与後24週時のC-reactive protein(CRP)1.9±1.8,1.6±2.9 mg/dl,Erythrocyte sedimentation rate(ESR)61.6±28.7,51.5±25.9 mm/h,圧痛関節数13.2±10.7,2.2±5.9,腫脹関節数14.5±8.7,6.4±7.2,患者全般VAS 50.9±21.5 mm,29.2±27.6 mm,医師VAS 58.6±25.5 mm,28.3±23.4 mm,matrix metalloproteinase-3(MMP-3)219.0±168.6,281.8±407.5 ng/ml,disease activity score(DAS)28-CRP(4) 5.4±1.8,3.1±1.4,simplified disease activity index(SDAI)40.5±23.5,16.0±15.4であった.CRP,ESRおよびMMP-3以外はすべて,統計学的に有意な低下を示した.
    結論:IGU単剤投与は他剤併用が困難なRA患者に対する有用な選択肢の一つであると考えられる.
  • 大村 晋一郎, 伊藤 礼, 宮本 俊明
    2015 年27 巻2 号 p. 106-110
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)患者における入院が必要な肺炎発症リスク因子を明らかにする.
    対象・方法:2000年4月から2014年6月の期間にRA治療中にニューモシスチス肺炎と誤嚥性肺炎を除いた肺炎で入院した42例(肺炎群)と2014年6月までに通院中のRA患者で投薬を12週以上受けており肺炎での入院がない523例(非肺炎群)を後ろ向きに比較検討した.
    結果:非肺炎群は肺炎群よりもメトトレキセート(MTX)や生物学的製剤(Bio)の併用例が多く,より積極的な治療が行われていた.一方肺炎群は既存肺疾患や糖尿病の合併率,そしてステロイド併用率が高く骨破壊や機能障害が進行した症例が多く積極的加療が難しい症例が多かった.多変量解析では既存肺疾患の合併が明らかな肺炎発症リスク因子であった.
    結論:当院において肺炎で入院となるRA患者は既存肺疾患合併やステロイド併用,そして機能障害が進行した症例が多く,特に既存肺疾患は統計学的にも明らかなリスク因子であった.このようなリスクをもつRA患者においては治療中常に肺炎に注意する必要がある.
  • 黒瀬 理恵, 柿崎 寛, 秋元 博之
    2015 年27 巻2 号 p. 111-116
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)膝に対する後十字靭帯温存型人工膝関節置換術(CRタイプTKA)の適用については未だ確立していない.今回術後5年以上追跡し得たCRタイプTKAの中期成績について検討した.
    対象・方法: 2001年1月から2009年10月の間に当院にてCRタイプTKAを施行したRA 78例97膝のうち5年以上追跡し得た44例61膝を対象とした.手術時平均年齢は65.8歳,術後平均経過観察期間は7.4年.用いた機種はThe Foundation Total Knee System 36膝とFNK 25膝であった.膝関節可動域(ROM),JOAスコア, X線評価,血清学的因子,合併症等について検討した.
    結果:ROMは伸展術前-12.1°から最終調査時-3.9°,屈曲術前111.6°から最終調査時106.2°であった.JOAスコアは術前43.4点から術後1年90.9点へ改善した.X線でRadiolucent lineは大腿骨のzone1と4,脛骨正面のzone1と2に多かったが,明らかなゆるみを認めた例はなかった.血中CRPとMMP-3は術後減少しRAの炎症反応は改善していた.合併症は2膝に下肢静脈血栓症,2膝に遅発性感染,2膝に大腿骨顆上骨折を認めたが再置換術には至らなかった.
    結論:RA膝に対するCRタイプTKAの術後中期成績は概ね良好であり,CRタイプも選択肢の一つとして考慮してよいと考える.
  • 佐藤 正夫, 岩田 典子, 大熊 美代子, 北村 きみ子, 白木 利枝, 辻 美紀子, 広瀬 弥生
    2015 年27 巻2 号 p. 117-121
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    目的:2010年,リウマチ性疾患のケアに関する優れた看護師の育成を目的に日本リウマチ財団登録リウマチケア看護師(ケア看護師)制度が発足したことで,関節リウマチ(RA)患者を中心としたチーム医療の重要性が叫ばれている.岐阜リウマチケア研究会を設立し,ケア看護師のスキルアップ,情報交換を目的とした活動を行ってきたので紹介する.
    活動実績:2012年,県内のケア看護師を中心に研究会を設立し同年10月より県内の複数の地区(岐阜市,高山市,多治見市,大垣市,美濃加茂市)で開催し,2年2か月の間に第9回まで行った.毎回,リウマチケアに関連した講演(1時間)とパネルディスカッション(1時間)を予定し,ケア看護師資格の申請・更新に必要な教育研修会単位を2単位取得可能とした.テーマは薬物療法に関することが多かったが,感染症対策,理学療法,身体障害者手帳や介護保険などの医療サービスにも言及した.参加人数は20名~50名,平均30名であった.岐阜県におけるケア看護師数は2010年6名,2011年14名,2012年28名,2013年37名と,順調に増加している.
    結論:看護師のRA治療に対する関心の維持と看護師間における情報交換を目的に研究会を設立し活動した結果,ケア看護師数も着実に増加した.参加者からは,他施設の医療従事者との情報交換を通じて勤務施設間での現状比較ができることが有益であるとの多くの感想が得られた.
  • 福井 潤, 加藤 保宏, 小中 八郎, 川﨑 貴裕, 森田 貴義, 藤本 潤, 小林 久美子, 藤原 弘士
    2015 年27 巻2 号 p. 122-128
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
       症例は87歳、女性。発熱、関節痛、咽頭痛、血清フェリチンとLDHの著明な上昇、凝固系検査異常を呈し、他疾患を除外の上、成人スティル病と診断された。骨髄穿刺検査にて血球貪食像は捉えられなかったが、マクロファージ活性化症候群の病態と考えデキサメタゾン、シクロスポリン、血漿交換にて治療を行った結果、一旦病勢はコントロールされた。しかしながら、ステロイドの減量後に成人スティル病の再燃を認めた。シクロスポリンをタクロリムスに変更したところ、病勢のコントロールを得ることができ、その後はステロイドの減量を行っても再発を認めなかった。
  • 下山 久美子, 鈴木 大介, 小川 法良
    2015 年27 巻2 号 p. 129-134
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    目的:巨細胞性動脈炎と鑑別を要した頭蓋底腫瘍の一例を経験したので報告する.
    対象・方法:79歳,女性.複視,右側頭部痛,右顔面の違和感,咀嚼困難,2kgの体重減少を認め,巨細胞性動脈炎の疑いで当科に紹介となった.複数の脳神経障害を認め,リウマチ性多発痛症様症状や,炎症所見が乏しかったことなどから,神経学的精査が行われた.
    結果:頭部MRIにより頭蓋底腫瘍が示唆された.
    結論:非典型的な所見を有する場合,巨細胞性動脈炎の診断は慎重行う必要があると考えられた.
誌上ワークショップ 関節リウマチのコホート研究
  • 宮本 誠也, 杉村 祐介, 柏倉 剛, 浦山 雅和, 小林 志, 櫻場 乾, 伊藤 博紀, 相澤 俊朗, 加茂 啓志, 青沼 宏, 小西 奈 ...
    2015 年27 巻2 号 p. 135-145
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    背景:2010年7月,秋田県のリウマチ診療に関わる整形外科勤務医と開業医を統合し,秋田整形外科リウマチグループ(Akita Orthopedic group on Rheumatoid Arthritis;AORA)を設立した.メンバーによる診療範囲は,県内のほぼ全域をカバーしている.秋田県は面積が約11,600km2,推計人口が約103万人(2015年2月現在)で東北の日本海側に位置している.AORA registryから得られるデータは,実臨床を反映しており,その特徴は地域住民の異動が少ないことから長期観察できること、長距離移動ができない患者さんも含まれることである.
    目的:AORA患者データについて収集・解析したので報告する.
    対象・方法:2010年からAORA所属の28施設32医師が診療している患者を対象とした.
    結果:2014年の登録では,症例数は1987例,平均年齢66.4歳,女性80%,平均罹病期間12年であった.メトトレキサート(MTX)は56%,副腎皮質ホルモン(PSL)は44%に投与されており,生物学的製剤の累積使用数は619であった.登録症例数は年に約10%ずつ増加していた.2012年から疾患活動性も調査し,DAS28ESRは3.20±1.27(2012年)から3.04±1.22(2014年)まで低下し,低疾患活動は51%であった.
    結語:AORA registryには,2014年に1987例が登録されていた.AORA施設は,患者の居住地近隣の施設なので治療継続率は高い.将来のRA治療を発展させるためには,地域医療における実臨床データを長期間観察することが重要と考えられる.
臨床リウマチ医のための基礎講座
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