臨床リウマチ
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24 巻, 1 号
臨床リウマチ
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
Editor's Eye
誌説
総説
  • 野畑 宏信, 今井 裕一
    2012 年 24 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       リウマチ性疾患と腎疾患は密接に関連しており,腎疾患の理解なしにはリウマチ性疾患を診療することはできない.特に腎病変を来しやすい,関節リウマチ,シェーグレン症候群,全身性エリテマトーデス,血管炎症候群,強皮症を取り上げて概説する.関節リウマチは疾患自体による腎病変は少ないが,罹病期間が長いと二次性アミロイドーシスを来しやすく,また使用される薬剤による腎障害も出現しやすい.シェーグレン症候群による腎病変は,糸球体障害よりも間質障害の頻度が高い.全身性エリテマトーデスで最も予後に影響するのは腎病変であり,治療に難渋することがあり,末期腎不全に至ることもまれではない.血管炎症候群は急速進行性糸球体腎炎のタイプで発症することが多く,他の臓器障害から遅れて腎病変が出現することもあり注意が必要である.強皮症による腎障害の頻度は多くはないが,強皮症腎クリーゼはいったん発症すると重篤な転帰をとりやすい.常に腎病変を念頭においた診療が重要である.
  • 長田 賢一, 渡邊 高志, 田口 篤, 小川 百合子, 芳賀 俊明, 中野 三穂, 藤原 圭亮, 柳田 拓洋, 貴家 康男
    2012 年 24 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       線維筋痛症は,1990年にアメリカリウマチ学会が診断基準を用いて診断していたが,2010年に米国リウマチ学会が診断呼び基準(2010)が提案され診断の仕方も変化しつつある.さらに,近年新たに疼痛に効果がある薬剤が臨床現場で使用が可能な状況になった.そこで現在まで行われたいた治療と新たな治療を含めてメンタルケアについてまとめて,現時点での線維筋痛症の治療戦略を再度考察検討した.
       三環系抗うつ薬,SNRI,SSRIの効果を比較したメタ解析の結果は,三環系抗うつ薬が,疼痛,倦怠感,睡眠障害に対して最も有効であり,次に,SNRIが有効であったが,SSRIは統計的にはすべての項目で有意な差を認められなかった.
       プレガバリン,ガバペンチンも線維筋痛症の疼痛緩和に有効である.特に,プレガバリンはガバペンチンより副作用は少ないが,主な有害事象はめまい,眠気,浮腫,体重増加であった.
       プレガバリン,ガバペンチンと抗うつ薬との併用療法についての有効性については,まだ結論はでていないが,三環系抗うつ薬あるいはSNRIのミルナシプランの併用が有効である可能性が報告されている.
原著
  • Hiroe Shikanai, Yumi Iwamitsu, Hirahito Endo, Shunsei Hirohata
    2012 年 24 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)患者の抑うつに関して,身体機能障害度および心理特性に疾患活動性の要因を加え検討した.
    対象・方法:2009年1月から3月,北里大学病院膠原病・感染内科に受診したRA患者のうち,研究参加に同意した113名に,基本属性,Negative Emotional Suppression Scale(NESS),mHAQ,およびBeck Depression Inventory-second Edition(BDI-II)の質問紙の記入を依頼した.疾患活動性はDAS28-CRPを用い評価した.返信のあった87名を分析対象とし解析した.
    結果:RA患者87名(年齢60.7±11.7歳)のDAS28-CRPは平均3.05±1.20であった.BDI-Ⅱと基本属性,NESS(怒り抑制,抑うつ抑制,不安抑制,および否定的感情抑制),mHAQ,およびDAS28-CRPとの間で相関分析を行った.BDI-Ⅱと“性別,mHAQ,およびDAS28-CRP”との間で正の相関が認められ(r≧0.243,p<0.05),BDI-Ⅱと不安抑制との相関は有意傾向にあった(r=0.201,p<0.1).
    結論:身体機能の維持やRA症状のコントロールがうまくいかないことが抑うつに関わっていることが示唆された.さらに,不安などの否定的感情を抑制しやすい患者や女性患者は抑うつをより抱きやすい傾向にあることがわかった.
  • 神戸 克明, 中村 篤司, 千葉 純司
    2012 年 24 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:メトトレキサート(MTX)投与下の関節リウマチ(RA)患者における血清TNF-αと血清IL-6濃度に関連する臨床的因子を解析すること.
    方法:RA24例(男性3例,女性21例,平均年齢56.6歳,平均罹患期間13.3年,平均MTX使用量5.48mg/週,平均プレドニゾ口ン使用量3.98mg/日,平均CRP3.07mg/dl,平均DAS284.44)の血清TNF-αと血清IL-6濃度を測定し,臨床的因子との相関関係を調査した.
    結果:24例の平均血清TNF-α濃度は3.63±2.72pg/mlで,平均血清IL-6濃度は30.0±26.0pg/mlであった.TNF-αは46%(11/24例)で基準値上限の1.3倍でありIL-6は100%(24/24)基準値を超え基準値上限の7.5倍であった.MTX投与下における血清TNF-αと血清IL-6に有意に関連する因子の解析では,TNF-αとCRP,IL-6と年齢,IL-6とMMP-3に正の相関を認め,IL-6とMTX投与量に負の相関を認めた.
    結論:MTX投与下では血清TNF-αと血清IL-6濃度に関してIL-6が基準値上限より高い傾向にあり,IL-6はMTX投与量に依存して減少が見られた.MTX投与下においてCRPはTNF-αと相関し,MMP-3はIL-6に相関するマーカーとして有用である.
  • 鈴木 王洋, 松本 光世, 堀越 英之
    2012 年 24 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:経口DMARDsの併用を主体としたRA発症早期からの積極的治療の有用性を検証する.
    対象および方法:1997年7月~2006年1月の間,所沢中央病院を受診した発症2年以内のRA患者のうち,寛解を目指して経口DMARDsによる積極的治療を行うことに同意した27症例について,最長5年間の治療経過をレトロスペクティブに解析した.治療開始時の疼痛関節数,腫脹関節数,CRPを当初1~2週ごとの来院間隔にモニターし,これらの数値のいずれかが前回の測定より低下しない場合,短期間のうちに,治療薬の増量もしくは追加を実施した.RAの活動性が十分低下した後は,1~2カ月ごとの診察間隔とした.
    結果:19症例(70%)が1年以内に臨床的寛解を達した.5年間の経過観察において達成した寛解状態はほぼ維持され,5年後の観察においては追跡可能であった25症例のうち21症例(84%)が臨床的寛解状態にあった.一方,5年後のHAQスコアを測定しえた23症例の中央値は0.125であり,65%が0.5未満の機能的寛解を達成した.
    結論:日常臨床での経口DMARDsによる積極的治療の有用性が確認された.
  • 菊池 啓, 嶋田 亘, 斎藤 政克, 伊東 靖宜, 辻本 晴俊
    2012 年 24 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:1st BiologicsのTNF阻害薬Failureに対し,TNF阻害薬を継続すべきか,作用標的の異なるBiologicsに切り替えるべきかを当院通院RA患者で検討する.
    対象・方法:当科で,Biologics4剤(Infliximab:IFX,Etanercept:ETN,Adalimumab:ADA,Tocilizumab:TCZ)が使用可能となった2008年7月より,1年以上経過観察し得た2nd Biologics投与RA症例22例について検討[2nd BiologicsとしてTNF阻害薬を投与したのが11例(TNF群:以下T群),抗IL-6製剤を投与したのが11例(IL-6群:以下I群).]
    結果:全例が過去にTNF阻害薬を1剤のみ使用.2nd Biologics開始時のMTX併用率は,T群36.3%,I群18.2%(P=0.635),PSLの併用率はT群90.9%,I群81.8%(P=1.000).開始前と48週後(最終観察時)の平均DAS28-CRPはT群でそれぞれ4.87±1.16,4.62±1.27,I群でそれぞれ4.87±1.47,1.93±0.91.48週間の継続率はT群36.4%(4/11例),I群81.8%(9/11例)であり,中止症例の内訳としてはT群では効果不十分例が4例,有害事象例が3例,I群では効果不十分例が1例,有害事象例が1例であった.
    結論:TNF阻害薬1剤目が効果不十分なRA症例には作用機序の異なるIL-6阻害薬に切り替える方が有用であると考えられる.
  • Hiroshi Inoue, Takeo Sakurai, Takenobu Iso
    2012 年 24 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:疾患修飾性抗リウマチ薬,MTX効果不十分・効果減弱の関節リウマチ(RA)で口腔乾燥症状を合併する症例21例に対して,ミゾリビン(MZR)1日1回150mg投与を行い,RAに対する有用性,口腔乾燥症状に対する効果,またこれらの効果とMZR血中濃度との関係について検討した.
    対象・方法:対象症例は21例,開始時の平均年齢は62.1歳だった.開始時の圧痛関節数は8.74,腫脹関節数は8.32,CRPは2.74mg/dl,患者による全般評価(VAS)は45.53mm,サクソンテストは1.95g/2分(いずれも平均値)であった.
    結果:圧痛関節数は投与前に比して1,3ケ月後に,腫脹関節数は3ケ月後に有意差が認められた.VASとCRPは投与前後で有意差が認められなかった.DAS28-CRPは3ケ月後に有意差が認められた.投与3カ月後のEULAR改善基準による臨床効果判定はgood response3例,moderate response5例で,moderate response以上は8例/18例(44.4%)であった.サクソンテストによる唾液分泌量は3ケ月後に有意な改善が認められた.MZR血中濃度とRAの有効性ならびに唾液分泌量の改善には関連が認められなかった.
    結論:口腔乾燥症状を合併するRA患者に対するMZR1日1回150mg投与は,選択可能な療法の一つとなり得ると考えられる.
  • 戸田 佳孝, 月村 規子
    2012 年 24 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチの顎関節炎による開口障害は頻度の高い症状であるが,局所治療法は少ない.そこで,パワードプラ法を用いて浅側頭動脈とそれに伴走する静脈ならびに耳介側頭神経を確認した後に,超音波診断装置(以下,エコー)でモニタリングしながら,顎関節内にステロイドを注射する試み,その効果を評価した.
    対象・方法:14例の顎関節痛による開口障害を訴えるRA患者を無作為に顎関節内注射群(8例)と塗り薬群(6例)に分類した.観察期間は4週間とし,治療前後での開口距離の変化を各群で比較した.
    結果:治療前に対する治療後の開口距離の変化は,顎関節内注射群で10.4±2.7mm であり,対応あるt検定で有意な改善があった(P<0.0001).塗り薬群の開口距離の変化は-0.17±0.75mmであり,有意な改善はなかった(P=0.61).
    結論:パワードプラ・エコー法は顎関節内注射に有用なモニタリングである.
  • 上野 貢生, 山崎 顕二, 金田 宗也, 神谷 正人, 宗圓 聰
    2012 年 24 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       血液検査上は改善していたものの関節破壊が進行し,TKAが必要となった一例.症例は44歳女性.41歳で発症し,近医内科を受診.治療開始後3年で血液検査は改善するもX線検査でstage 4の変形.手術の説明を受けるが,X線検査未施行であったことに患者は不満をもち,当科に転医してTKA施行.血液検査のみでは関節破壊の程度は判断できないこともあり,患者とのやりとりは可能な限りカルテに記載しておくことが重要である.
  • 井上 誠, 山崎 宜興, 東 浩平, 土田 興生, 清川 智史, 三富 博文, 前田 聡彦, 山前 正臣, 岡崎 貴裕, 山田 秀裕, 尾崎 ...
    2012 年 24 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       症例はSjögren症候群(SjS)で通院中の78歳女性.繰り返す右下腹部痛により精査を行うも,内視鏡検査および生検で確定診断が出来ないなか急性腹症を呈し,緊急開腹手術に至った.切除小腸病理所見より局所性のdiffuse large B cell lymphomaによる小腸穿孔の診断をえた.SjSに合併する悪性リンパ腫のなかでも小腸悪性リンパ腫は診断が困難であり,薬剤不応性の持続的腹痛には,場合により試験開腹も必要であると考えられ,文献的考察を含めて報告する.
  • 渡部 龍, 石井 智徳, 張替 秀郎, 佐々島 朋美, 宇部 健治, 小野寺 賢, 中村 明浩, 中屋 来哉, 相馬 淳, 小野 貞英
    2012 年 24 巻 1 号 p. 74-80
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       全身性エリテマトーデス(SLE)の多くは若年女性に発症し,80歳以降に発症する超高齢発症SLEは,極めて稀である.今回我々は,83歳で発熱,多発関節痛,心囊液貯留にて発症した,超高齢発症男性SLEの1剖検例を経験した.入院時に認められた多量の心囊液は,剖検時にはほとんど認められず,臓側心膜と壁側心膜への著明な炎症細胞浸潤と線維化を認め,敗血症および線維素性心膜炎が死因と考えられた.
  • 神林 隆道, 増山 敦, 横江 勇, 鶴田 信慈, 原岡 ひとみ
    2012 年 24 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2012/03/30
    公開日: 2015/12/30
    ジャーナル フリー
       自己免疫疾患と骨髄異形成症候群(MDS)の合併は10数%程度の頻度との報告があり,自己免疫疾患とMDSを合併した報告例は多く認めるが,皮膚筋炎(DM)とMDSを合併した症例は極めてまれである.我々はDMとMDSを合併し,治療経過中にサイトメガロウイルス(CMV)胃腸症に伴う難治性の消化管出血を認めた貴重な症例を経験したため,文献的考察を含め,報告する.
臨床リウマチ医のための基礎講座
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