臨床リウマチ
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35 巻, 2 号
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誌説
総説
  • 川畑 仁人
    2023 年35 巻2 号 p. 58-63
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/11
    ジャーナル フリー

     乾癬は皮膚に慢性炎症を来す免疫疾患であるが,以前より乾癬性関節炎として四肢関節や脊椎に病変を来すことが知られていた.近年,さらに肥満症や高血圧,脂質異常症,メタボリックシンドローム,非アルコール性脂肪性肝疾患などの合併を来す率が高いことが国内外から示されており,全身性の疾患であることが明らかになっている.一方,肥満などの環境要因と乾癬発症リスクの関連も指摘されており,皮膚と全身が相互に発症や病態に影響を与えていると考えられている.このような皮膚と全身合併症の関連は,両者をつなぐ炎症病態の存在を仮定した乾癬マーチの概念に至っている.乾癬性関節炎ではより全身の合併症の頻度が高いとする報告もあり,リウマチ医にとっても乾癬性関節炎をコントロールするうえで,全身性疾患としての視点に立った診療が求められる.

原著
  • 伊藤 聡, 船村 啓, 阿部 麻美, 大谷 博, 中園 清, 村澤 章, 石川 肇, 須藤 真則, 高村 紗由里, 小林 大介, 成田 一衛
    2023 年35 巻2 号 p. 64-76
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/11
    ジャーナル フリー

    目的:日本人リウマチ性疾患患者での組み換え帯状疱疹ワクチン(RZV)の安全性と疾患活動性への影響の検討.

    対象:RZVが接種された 関節リウマチ(RA)60例を含む67例(男性11例,女性56例)について検討した.平均年齢は73.5±10.2歳,2回目接種からの平均観察期間(64例)は12.6±5.7ヶ月であった.

    方法:副反応,帯状疱疹(HZ)の発症,疾患活動性の変化を検討した.JAK阻害薬を使用している患者ではRZVを接種しなかった患者との比較を行った.

    結果:1回目接種後82歳女性RA患者が肺炎により死亡した.12例(17.9%)が1回目接種後に副反応を呈したがほとんどは軽微なものであった.6例(9.4%)が2回目接種後副反応を呈した.2回接種後HZ発症はなかった.RAの治療強化により接種後6ヶ月の活動性は改善しており,COVID-19ワクチン接種前にRZVを接種したRAの治療強化なしの17例の疾患活動性も不変であった. RZVなしでJAK阻害薬を使用した患者は,RZV接種患者より有意に若く罹病期間が短かったが,54例中8例(14.8%)がHZを発症した.RZV接種患者ではHZの発症はなかった.

    結論:RZVは比較的安全であり,観察期間は約1年と短かったが,2回接種後HZを発症した患者は認められなかった.RZVは日本人リウマチ性疾患患者の疾患活動性を悪化させなかった.

  • 水木 伸一, 定松 修一, 和田 周二, 田口 浩之, 森 涼子, 木本 国晴, 弓立 恭子, 永井 美緒
    2023 年35 巻2 号 p. 77-85
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/11
    ジャーナル フリー

    目的:災害対策についての患者教育,行政への働きかけへ活用するために,関節リウマチ(RA)患者が自然災害で感じた/経験したことを知ること.

    対象・方法:平成30年7月豪雨被災地域に居住しているRA患者を対象に,令和2年6月に豪雨時の状況や行動,身体・精神面の変化についてアンケート調査を実施した.その中の自記式コメントの内容を分類,集計した.

    結果:60人のアンケート回答者のうち,30人で自記式コメントの記入があった.医療機関への要望が32件あり,災害時のオンライン診療や処方を望む声が多かった.ある患者は,薬剤投与間隔を延長して自己判断して調節した対応の記載もあった.避難所への要望が16件あり,避難所の設備や感染対策についての希望が多く,ペットの対応についての悩みもあった.体調悪化の原因として,被災生活での片付けや重いもの運ぶなどの過負荷の具体例が記載されていた.ストレスは時間の経過とともに増大することや調査時にもなお残っているとの記載があった.

    結論:RA患者が自然災害へ備える対応を,災害前に教育しなければならない.災害時の診療や薬剤処方・調達についてのシステムを整備しなければならない.RAの病態・特性を考慮した対応を検討していくことが重要である.

  • 松下 功, 石吾 亘, 石田 高義, 福田 純平, 堀 遥香
    2023 年35 巻2 号 p. 86-94
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/11
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的はロコモーショントレーニングが高齢関節リウマチ患者の身体機能と疾患活動性に及ぼす影響を調査することである.

    【方法】60歳以上の関節リウマチ患者30例に対し,ロコモーショントレーニングを実施し,開始時と3カ月後の下肢筋力,10m歩行時間,Timed Up-and-Go(TUG)テスト,2ステップ値,疾患活動性などを比較検討した.

    【結果】ロコモーショントレーニング中3例の患者において関節痛の増悪が認められたため,トレーニングを中止した.またトレーニングと関係のない外傷により1例はトレーニングを中止した.最終的に26例がロコモーショントレーニングを3カ月間実施することができた.股関節外転筋力は37.5N(IQR: 27.0, 43.0)から40.5N(IQR: 34.0, 47.0)と有意に上昇した(P<0.001).また10m歩行時間は7.83秒(IQR: 6.93, 9.38)から7.42秒(IQR: 6.12, 8.53)(P=0.026)に,TUGテストは8.28秒(IQR: 7.09, 10.56)から8.06秒(IQR: 6.46, 9.56)(P=0.012)に有意に短縮した.一方,CRPおよびSDAIは開始時と3カ月後で変化はなかった.

    【結論】ロコモーショントレーニングは高齢関節リウマチ患者の疾患活動性を悪化させず,身体機能を向上させる可能性が示唆された.

  • 山田 麻和, 古山 雅子, 折口 智樹
    2023 年35 巻2 号 p. 95-107
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/11
    ジャーナル フリー

    【目的】関節リウマチ(RA)患者と健常者におけるサルコペニア有病率と栄養・運動状況について比較検討した.

    【対象】RA群は53名(平均66.5歳,罹病期間11.7年,全員女性),対照群は健常者30名(平均65.8歳,全員女性)とした.

    【方法】骨格筋量,握力,10m歩行速度,5回起立時間を測定し,栄養状態(簡易栄養状態評価表,1日の動物性タンパク質の摂取頻度),運動(頻度,内容)を聴取した.

    【結果】RA群におけるサルコペニア有病率は37.8%(対照群3.2%)と有意に高く,骨格筋量および下肢の筋肉量が有意に低下していた.BMIは有意差がなかったが,体脂肪率35%以上の割合は41.5%(対照群16.7%)とRA群で高かった.肉か魚を1日2食以上摂取しない割合はRA群54.7%(対照群20.0%)と有意に高かった.サルコペニアがあるRA群はサルコペニアがないRA群と比較して,高齢かつ低栄養であったが有酸素運動の頻度は高かった.

    【結論】RA群は健常者と比べサルコペニア有病率が高く,動物性タンパク質の摂取頻度が低かった.BMIが標準値内であっても体脂肪率35%以上の割合が高く,下肢の筋肉量の低下が特徴的であった.サルコペニアがあるRA群は,低栄養傾向を示したが有酸素運動の頻度が高く,リハビリテーションの指導を全く受けていなかった.本調査より,早期からの栄養指導と運動療法の複合介入が望まれる.

  • 谷川 英徳, 武田 勇樹, 野本 聡, 林 綾野, 竹内 知恵, 江口 裕三
    2023 年35 巻2 号 p. 108-113
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/11
    ジャーナル フリー

    【目的】続発性骨粗鬆症には関節リウマチやステロイド薬に関連する骨粗鬆症があるが,適切に治療介入が行われていない入院患者も存在する.当院Osteoporosis Liaison Service(以下OLS)運動器ケアチームが行った骨粗鬆症病棟回診の効果について報告する.

    【対象と方法】2017年7月から2019年12月までにステロイド薬の使用,脆弱性骨折の既往などに基づき患者をスクリーニングし,薬剤投与の必要性や患者の全身状態を評価し,治療介入を行った.

    【結果】スクリーニングされた患者は472人で,その理由はステロイド薬およびピオグリタゾン使用中の患者が322人と最多であった.疾患は膠原病関連の患者は45人で,このうち関節リウマチが33人と最多であった.膠原病関連の患者での回診結果は「治療済:13人」「ステロイド低用量:12人」「外来誘導:6人」「薬剤処方:5人」「全身状態不良5人」「その他:4人」であった.

    【考察】骨粗鬆症回診によって,それまで見逃されていた続発性骨粗鬆症に対して治療を行うことができた.回診を続けていくうちに,病棟の看護師や薬剤師からの依頼が増加し,最後は骨粗鬆症に興味を持った内科医師がチームに加入してくれた.本取り組みにより,骨粗鬆症の見逃しを防ぐことができると同時に,医師やメディカルスタッフの骨粗鬆症に対する認知度が上昇したと考える.

    【結論】当院OLS運動器ケアチームによる骨粗鬆症病棟回診は続発性骨粗鬆症の治療介入率上昇に有用であった.

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