臨床リウマチ
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26 巻, 4 号
臨床リウマチ
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
Editor’s Eye
誌説
総説
  • 田中 榮一, 山中 寿
    2014 年26 巻4 号 p. 251-259
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
       薬剤の医療経済性評価は高騰する医療費の適正化を考える上で重要であるが,医療経済的研究は臨床データを基に構築されたモデルシミュレーションにより解析するため,我々が慣れ親しんでいる臨床研究とは異なり,日常診療での薬剤の有効性や安全性との関連性が理解しにくい.そこで本総説では日本のリウマチ患者の前向きコホート研究であるIORRAの日常診療データを用いて筆者らが実施したトシリズマブの医療経済的研究結果とこれまで得られているトシリズマブの有効性や安全性の関係から,薬剤の医療経済学的評価に影響を与える代表的因子として薬価,薬剤の投与継続率および有害事象発現リスクが低く効果発現の可能性の高い患者の選択の3点について考察を加えた.その結果,日常診療における有効性および安全性のバランスは医療経済学的評価に強い影響を及ぼす可能性が推察されることが明らかとなった,また,今回はトシリズマブを題材とした考察であったが,他の生物学的製剤でも医療経済学的検討で得られた成績を日常診療での有効性および安全性の成績と照らし合わせて裏づけることは,日常診療において医療経済学的評価に基づいた適正使用の妥当性を理解する上で非常に重要であると思われた.
  • 海渡 貴司, 米延 策雄
    2014 年26 巻4 号 p. 260-265
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
       関節リウマチ(RA)では,四肢関節病変のみならず,脊椎・特に上位頸椎に高率にRA病変を合併し,RA頚椎病変による疼痛・神経障害は日常生活制限のみならず生命予後にも影響する.RAの薬物治療は,メトトレキセート(MTX)をアンカードラッグとして生物学的製剤と併用することでパラダイムシフトとよばれる飛躍的発展を遂げた.疾患活動性を制御した臨床的寛解,そして関節破壊を抑制した構造的寛解を治療目標とすることで高い治療効果が報告されているが,生物学的製剤で報告された関節破壊抑制・修復効果は手足末梢の関節破壊評価指標に基づくものであり,特有の解剖学的構造・力学環境にある頚椎で同等の効果を期待できるかは明らかではない.本稿では,RAにおける頸椎病変の病態・画像診断・および現在の薬物治療体系における頚椎病変の意義・治療について概説する.
  • 宮前 多佳子
    2014 年26 巻4 号 p. 266-274
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
       若年性線維筋痛症(JFM)は本邦の線維筋痛症の2.5-5%に相当する約10万人の症例が存在すると推察されている.臨床症状は成人例と類似し,全身痛,筋痛,関節痛などの筋骨格系症状に加え,睡眠障害,易疲労感や消化器症状などの非筋骨格系症状で構成される.線維筋痛症の診断は,アメリカリウマチ学会から特徴的圧痛点の存在に拠らない予備診断基準が提唱されているが,小児例については鑑別疾患も多く,主訴の信頼性が不確かであるため,特徴的圧痛点が診断根拠の中核として重要である.その病態については,“Central Sensitization”や遺伝的な要素の関与が近年報告され,functional MRIなどの機能的脳画像診断によって中枢神経の痛み刺激に対する疼痛関連領域の活性化所見が客観的に確認されるようになった.小児例の治療は,成人例では有効と認められつつある抗うつ薬などの適応は困難な一方で,薬物に頼らない,JFMに特徴的な性格気質を裏付ける心理・発達における問題点の見直しが有効な症例が存在する.また近年,パピローマウイルスワクチン接種後にJFMに類似した症状を呈する症例が報告されている.JFMとの相違の一つが高次脳機能障害に由来する,集中力・記銘力の低下がより顕著であるとされているが,この副反応の機序もJFMに共通した部分があると推察される.現時点で科学と非科学がいまだ混在している疾患であるが,徐々に科学による解明が進みつつある.最近の知見につき解説する.
原著
  • 平野 裕司, 平原 慎也, 大石 幸由
    2014 年26 巻4 号 p. 275-281
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)に対するタクロリムス(TAC)の効果を併用薬剤の有無や種類別に比較すること.
    対象・方法:当科にてTACを投与したRA患者107例(女性85例,男性22例)のTAC投与後1年までの治療成績を調査した.TAC単剤群(M群;40例),非生物学的DMARDsのみ併用群(C群;48例),生物学的製剤併用群(B群;19例)の3群に分けて検討した.
    結果:患者背景において年齢と罹病期間にて3群間の有意差が存在した.平均年齢はM群71歳,C群63歳,B群58歳,罹病期間はM群18.8年,C群14.9年,B群11.3年であり,M群が最も高年齢かつ長期の罹病期間を有していた.開始時から1年時の間の平均改善値はDAS28-ESRではM群が0.67±1.51,C群が0.73±1.29,B群が1.21±0.91(有意差なし).CRPではM群が1.46±3.19mg/dl,C群が1.55±2.98mg/dl,B群が3.65±3.12mg/dl(M群vs.B群で有意差あり).mHAQではM群が0.159±0.462,C群が0.052±0.344,B群が0.148±0.330(有意差なし).
    結論:B群での効果が最も優れていたが,群間には患者背景の差異が存在した.TACは幅広い使用法が可能な抗リウマチ薬であることを示唆した.
  • 鈴木 王洋
    2014 年26 巻4 号 p. 282-290
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)に対するミゾリビン(MZR)を含めた抗リウマチ薬(DMARDs)ステップアップ療法の有効性と安全性について検討する.さらにミゾリビン・ステップアップ療法対象患者の特徴を明らかにする.
    対象・方法:2009年10月から2013年9月末までに当院に来院したRA患者において,ミゾリビンを含むDMARDsステップアップ療法を行い,ミゾリビンを6か月以上投与した20名を対象とした.
    結果:平均年齢は72.3歳であり,70~79歳は,11名(55%),80歳以上は4名(20%)であった.ミゾリビンの使用順位は,平均3.5剤目であった.平均併用薬剤数は4.6剤で,そのうち6例はミゾリビンが最後に追加されていた.ミゾリビン・ステップアップ療法によるDAS28-CRP値の推移は,初診時平均は2.97,ミゾリビン投与開始時は平均2.82,最終評価時には平均2.21となり,ミゾリビン投与開始時に比較して有意(p=0.043)に低下していた.有害事象は,5例(25%)に認められ,帯状疱疹4例,皮膚感染症(足趾爪囲炎1例,皮膚感染1例)2例,慢性気管支炎の急性増悪1例であった.各症状とも休薬ないし,治療薬の投与で軽快し,治療を再開することができた.
    結論:ミゾリビン・ステップアップ療法は特に慎重な治療が求められる高齢者や合併症のあるRA患者集団などに対する治療法の選択枝の一つとして有用である可能性が示されたと考える.
  • 平野 裕司, 平原 慎也, 大石 幸由
    2014 年26 巻4 号 p. 291-297
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    目的:抗TNF製剤3剤(インフリキシマブ;IFX,エタネルセプト;ETN,アダリムマブ;ADA)の早期臨床効果の比較検討.
    対象・方法:IFX,ETN,ADAを導入した関節リウマチ例で,MTX併用かつ生物学的製剤ナイーブ例のデータを使用.IFX群(64例)は開始時と6週時のデータ,ETN群(43例)とADA群(24例)は開始時と4週時のデータを使用.各期間における指標(DAS28-ESR,DAS28-CRP,VAS,CRP,ESR,mHAQ)の改善値(d)と改善率(%)を調査した.ETNでは週25mg群と週50mg群を比較した.
    結果:平均d-DAS28-ESRはIFX群1.20,ETN群1.20,ADA群1.11.平均d-CRP(mg/dl)はIFX群2.1,ETN群2.1,ADA群2.3.平均%DAS28-ESRはIFX群22.3%,ETN群22.0%,ADA群18.3%.平均%CRPはIFX群56.4%,ETN群64.7%,ADA群56.9%.その他の指標も含めて,3群間に有意差は認めなかった.ETN週25mg群と週50mg群の比較では,平均dDAS28-ESRは週25mg群が1.32,週50mg群が1.01であり両群間に有意差は認めなかった.
    結論:抗TNF製剤3剤の早期臨床効果はほぼ同等だった.ETNにおいては週25mgと週50mgの間に早期臨床効果の差異はなかった.
  • 山内 尚文, 長町 康弘, 村松 博士, 岡本 哲郎, 猪股 英俊, 宮島 治也, 野澤 えり, 後藤 義朗, 小山 隆三, 井原 康二, ...
    2014 年26 巻4 号 p. 298-304
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    目的:感染症のため生物学的製剤を休止した関節リウマチ(RA)患者の慢性疼痛に対するトラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(TRAM/APAP)の有用性について検討した.
    対象・方法:当科でTRAM/APAPを投与したRA患者6例(全例女性),平均年齢67歳,罹病期間は2-30年(平均11年),使用していた生物学的製剤は,インフリキシマブ2例,アバタセプト2例,トシリズマブ2例だった.感染症は,帯状疱疹2例,蜂窩織炎1例,腎盂腎炎1例,肺炎1例,結膜炎1例だった.全例で,NSAIDsを投与していた.TRAM/APAPの投与量は,2錠1例,3錠4例,4錠1例だった.有効性は,投与4週および8週後に,視覚的アナログスケール(VAS)で評価した.
    結果:VAS scoreは,投与4週後に,すべての症例で低下した.投与前,平均67.3mmから,4週後44.0mm,8週後39.5mmとなり,有意な改善が認められた.副作用は,6例中4例に出現し,眠気3例と嘔気が1例だった.副作用による中止例はなかった.
    結論:TRAM/APAPは,生物学的製剤中止時のRA患者のコントロール困難な慢性疼痛に対する有力な治療選択肢の一つになると考えられた.
  • 李 進海, 朝戸 佳世, 酒井 健史, 井上 明日圭, 田崎 知江美, 志賀 俊彦, 樋野 尚一, 矢野 智洋, 岸本 和也, 野﨑 祐史, ...
    2014 年26 巻4 号 p. 305-309
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
       RAを発症し,サラゾスルファピリジンに抵抗性を示したため,エタネルセプトが投与され,3ケ月後から発熱,皮疹,口内炎が出現し,ループス腎炎を伴うSLEを発症した症例(35歳,女性)を経験した.抗TNF-α製剤の投与によってSLEを発症したとする報告が散見されるが,本例のようにループス腎炎を伴う例は少ない.以上,抗TNF-α製剤による治療経過中は抗核抗体やSLEの素因の有無に留意する必要性が示唆された.
  • 鳥越 雅隆, 前島 圭佑, 清永 恭弘, 今田 千晴, 尾崎 貴士, 原中 美環, 石井 宏治, 柴田 洋孝
    2014 年26 巻4 号 p. 310-316
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
       症例は59歳女性.2012年に全身性強皮症と診断された.翌年4月,血栓性微小血管障害症に強皮症腎クリーゼを併発し,更に急性心不全も伴っていた.ACE阻害薬の内服や血液透析,血漿交換などで加療され,また重症心筋障害にはステロイドパルスが奏功した.直後に肺胞出血を生じたが,厳格な呼吸循環管理と上記治療の継続で病状は安定した.重篤かつ多彩な病態に対し集学的治療で救命し得た全身性強皮症の一例を報告する.
誌上ワークショップ リウマチ診療への多職種によるチーム医療の展開 ―生物学的製剤時代に対応して―
  • 近森 正幸
    2014 年26 巻4 号 p. 317-321
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
       21世紀を迎え,医療の高度化と高齢社会の到来で業務量も膨大になるとともに,診療報酬も出来高払いからDPCによる一日包括払いに変わり,「早く元気になって自宅へ帰ってもらう」という付加価値を提供するようになった.今回,マネジメントの難しいチーム医療のイロハを述べてみたい.
       病院全体から見れば,チーム医療を情報共有の仕方でカンファレンスですり合わせする「もたれあい型」と情報交換で情報共有する「レゴ型」に分類できるが,リウマチの診断,治療という業務を行っている現場の視点で分類すると,「人事レバレッジ」と「タスクシフト」の2種類に分かれる.
       [人事レバレッジ」のレバレッジは梃子であり,梃子をきかせて働かせるように医師が判断し,その指示のもと一緒に業務を行う方法である.スタッフの専門性が低いため,医療の質も労働生産性もあまり向上することがなく,医師,看護師の負担軽減が大きな役割となる.
       「タスクシフト」は業務の代替を意味しており,医療専門職がそれぞれの視点で患者を診,判断し,介入する自立,自動が特徴である.専門性が高いことにより医療の質を高め,スタッフの数だけ労働生産性を高めることができる.
       DPC時代のチーム医療においては,診療報酬の加算の有無にかかわらず必要であればスタッフを雇い,専門性を高め,自立,自動するスタッフに育て上げることが重要で,そうしてこそマネジメントができるようになりサービス業の付加価値を生み出すことが可能となる.
  • 山﨑 秀
    2014 年26 巻4 号 p. 322-328
    発行日: 2014/12/30
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
       今日のリウマチ診療においてはリウマチ患者に最適な治療を選択し良好な経過を維持していくためにチーム医療は欠かせないものとなっており,リウマチ専門施設において進めるべきチーム医療の方向性について述べる.
       リウマチセンターの役割を果たすために,チームとして取り組む際に重要なことは,基本方針を定めスタッフの意志統一を図るとともに,それぞれの職種の役割を明らかにすることである.また,チーム医療の実践には多職種間での情報交換を密にするためのミーティング,カンファレンスが欠かせない.リウマチ教室や外部の講演会に講師として参加することはスタッフのモチベーションを高める機会となる.学術講演会への参加や学会発表,他施設の見学会に多くのスタッフが参加し研修を積むことによりチーム医療構築の機運は高まっている.良好なチーム医療の形成のためには,各職種がそれぞれの専門性を高め,お互い同士に敬意を払い,専門知識,技術を最大限生かして医療を展開すると同時にスタッフをまとめるリーダー,コーディネーターの存在が重要である.リウマチ専門施設のスタッフは地域のロールモデルとしての役割もあり,自己を研鑽し常に最新の知識,技術を習得し実践していく姿勢が求められる.
臨床リウマチ医のための基礎講座
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