臨床リウマチ
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30 巻, 2 号
臨床リウマチ
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
誌説
総説
  • 松野 博明
    2018 年30 巻2 号 p. 69-78
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:近年,数多くの骨粗鬆症治療薬が開発され様々な骨密度測定方法による治療成績が報告されているが,診療所においては橈骨DXA(dual-energy X-ray absorptiometry)により評価される場合が多い.デノスマブ(DMAb:Denosumab)は完全ヒト型抗体の骨粗鬆治療薬であるが,過去に関節リウマチ(RA: Rheumatoid arthritis)合併例や,RAでグルココルチコイド(GC)服用患者に対するDMAb の効果を橈骨DXAにより評価した報告はない. 対象は全例60歳以上で%YAMが70%未満DMAbによる治療を行った症例である.DMAb治療群は閉経後骨粗鬆症のみの例(PO群),POでRAを合併した例(PO+RA群),PO+RAでGC治療を行っていた例(RA+GC群)である.対照は4週または1月に1回の経口ビスフォスホネート (BP)服薬による治療を行ったPO群44例,POでRA合併の33例とした.これらの症例に対して継時的橈骨DXAによる骨密度測定を行った.またDMAb治療例には骨代謝マーカーである尿中NTx(type I collagen cross-linked N-telopeptide)の測定を追加した. 橈骨DXAによりDMAb治療群で有意な骨密度増加作用が確認されたが,BP治療群では認められなかった.DMAbの骨密度増加は,RA合併例では非合併例に比べて時間的に遅れて出現した.DMAbによる尿中NTx抑制効果は,RA群,RA+GC治療群ではPO群と比べて弱かった.治療継続率はDMAb群がBP群に比べて統計学的に有意に高かった. DMAbの治療効果は橈骨DXAにおいても十分証明され,高い治療継続率が得られた.DMAbの治療はPO群,RA群,RA+GC群,全ての骨粗鬆症患者に有効な治療であるが,RA合併例ではその効果発現はPO群と比較して時間的に遅れて出現した.橈骨遠位端においてRAであってもDMAbによる治療効果が確認された.DMAbはRAにおいて骨ビランの進行抑制作用も有する薬剤であるころから,DMAbがRA骨粗鬆症の第一選択薬となる可能性が示された.

  • 小林 万希子, 津田 英資, 福田 千恵, 新田 隆也
    2018 年30 巻2 号 p. 79-88
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     世界初の抗receptor activator of nuclear factor-κB ligand.(RANKL)抗体であるデノスマブの開発には,日本人研究者の研究が大きく寄与してきた.1つめは骨芽細胞が破骨細胞の運命を握るという仮説の立証に貢献した「骨芽細胞と骨髄マクロファージの共存培養系」の構築,2つめは破骨細胞形成抑制因子(OCIF/OPG)の発見,3つめはOCIFの標的蛋白質である破骨細胞分化因子(RANKL)の同定である.このRANKLの発見に基づいて創薬が進められ,米国Amgen社によりデノスマブが創出された.デノスマブは,2010年に欧米で骨粗鬆症治療薬として承認され,2017年には,世界に先駆けて本邦で「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」の適応が追加された.その実現にも日本のリウマチ臨床医の多大な努力が寄与してきた.本稿では,RANKLが発見され,デノスマブが開発されるまでの基礎から臨床に至る経緯を解説する.

原著
  • 田中 良哉, 渥美 達也, 山本 一彦, 竹内 勤, 山中 寿, 石黒 直樹, 江口 勝美, 渡辺 彰, 折笠 秀樹, 小路 利治, P. ...
    2018 年30 巻2 号 p. 89-97
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    背景:C-OPERA試験において,予後不良因子を有する早期関節リウマチ患者におけるセルトリズマブペゴル(CZP)とメトトレキサート(MTX)併用の有効性と安全性が検証されている.目的:本解析の目的は,メトトレキサート(MTX)未投与の早期関節リウマチ患者において, MTXのみでは臨床及び骨破壊に対して効果不十分となる要因を見出し,そのような要因を有する患者におけるセルトリズマブペゴル(CZP)とMTXの併用の有効性を評価することである.方法:C-OPERA試験では,MTX未投与で予後不良因子を有する早期関節リウマチ患者が無作為にプラセボ(PBO)+MTXとCZP+MTXのいずれかに割り付けられた.CZPは0,2,4週に400 mg,その後200mgを2週毎に投与した.DAS28-ESRとmTSSの変化量を52週に評価した.DAS28-ESR<2.6を寛解とし,mTSSの年間変化量>3.0をRRP(rapid radiographic progression)とした.結果:治療開始前のDAS28-ESR,SDAI,HAQ-DI,CRP値が高い患者では,寛解率は低かった.DAS28-ESR,SDAI,HAQ-DI,CRP,mTSS,MMP-3,RF,TNFα,IL-6値が高い患者では,骨破壊進行が速かった.これらの患者においても,CZP+MTX群ではPBO+MTX群に比べて良好な寛解率および骨破壊抑制が認められた.結論:PBO+MTX群において治療開始時のDAS28-ESR,SDAI, HAQ-DI,CRP,mTSS,MMP-3,RF,TNFα,IL-6高値は52週後における低い寛解率及び高い骨破壊進行と関連していた.CZP+MTX群では,それらの要因を有する患者においても,良好な結果が得られた.

  • Yoshiro Horai, Nozomi Iwanaga, Yasumori Izumi, Kiyoshi Migita
    2018 年30 巻2 号 p. 98-106
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:セルトリズマブペゴル(CZP)は関節リウマチ(RA)の治療薬として承認された生物学的製剤である.CZPは従来の生物学的製剤とは異なりポリエチレングリコール化され,また定常領域が除かれた抗体製剤であり従来の製剤とは薬物動態が異なることから高い組織移行性や治療効果が期待されている.他の製剤と比べて発売からの年数が比較的浅いことから,CZPの治療効果や継続率等については更なる検討を要する.対象・方法:当科でRAと診断されCZPの投与を行われた患者におけるCZP投与後の臨床経過を後ろ向きに評価した.結果:2012年12月から2017年2月までに10例(女性8例, 男性2例)のRA患者でCZPが開始された.うち8例が有害事象を認めることなく24週まで投与継続された.24週時までCZPを投与継続し臨床経過を追うことができた患者群では平均DAS28CRP 3.40(0週)→2.66(24週)と改善を認めた.CZP以外のTNF阻害薬投与歴のある6例のうち4例はいずれも12週の時点で疾患活動性の低下を認めたが,他の2例は開始から12週以内に有害事象の出現のため中止された.結論:今回の検討では他のTNF阻害薬の投与歴がある症例においてもCZPの有効性が期待できる一方,有害事象も比較的早期に生じる傾向が示され,CZP開始後早期は疾患活動性評価のみならず有害事象発現への注意も必要と考えられた.

  • Satoshi Ito, Chinatsu Takai, Hiroshi Fujinaga
    2018 年30 巻2 号 p. 107-113
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     我々は,セルトリズマブペゴルを使用し,帝王切開で児を得た35才の関節リウマチ患者を経験した.帝王切開は,子宮筋腫の手術歴があるために施行された.セルトリズマブペゴルは,Fc部分がポリエチレングリコールに置換されているため,胎盤通過性が極めて少ない.これまでは妊娠・出産を希望する関節リウマチ患者への生物学的製剤としてはエタネルセプトが使用されることが多かったが,今後はセルトリズマブペゴルも有力な候補の一つとなると考えられる.

  • 浦山 雅和, 青沼 宏, 柏倉 剛, 伊藤 博紀, 小林 志, 櫻場 乾, 谷 貴行, 相澤 俊朗, 河野 哲也, 阿部 秀一, 加茂 啓志 ...
    2018 年30 巻2 号 p. 114-119
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    目的:秋田整形外科リウマチグループ(Akita Orthopedic group on Rheumatoid Arthritis: AORA)レジストリーにおける,関節リウマチ(rheumatoid arthritis, RA)に対するトシリズマブ(tocilizumab, TCZ)治療の効果不十分による脱落症例を調査し,本薬剤の有用な使用の可能性を検討する.対象・方法:TCZ使用累積症例177例,ナイーブ群(N群)95例,スイッチ群(S群)82例を対象とした.患者背景,脱落までの使用期間,脱落後の治療,疾患活動性を後ろ向きに調査した.結果:効果不十分による脱落症例は12例(7%)であった.平均58歳(44~82歳)で,罹病期間は平均120ヵ月(6~366ヵ月)であった.N群が4例,S群が8例で,全てTNF (tumor necrosis factor)阻害薬からのスイッチであった.TCZ使用開始から脱落までの期間は平均30ヵ月(6~67ヵ月)であった.脱落後に他の生物学的製剤にスイッチした症例は10例で,TNF阻害薬が2例,abatacept(ABT)が8例であった.最終調査時,S群かつABTにスイッチした3例がさらにTNF阻害薬にスイッチした.CDAIは,使用開始時が平均±標準偏差20.3±13.4で,脱落時は12.4±8.1であり,6例は低疾患活動性を達成した.最終調査時は9.5±8.4で,8例は低疾患活動性を達成した.結論:効果不十分による脱落症例は,TNF阻害薬からのスイッチ症例が多かった.脱落後のスイッチは,TNF阻害薬,ABTともに有用であった.総合的な効果不十分の判断により,TCZの有用な使用継続の可能性がある.

  • 坂根 英夫, 金子 哲也, 米本 由木夫, 岡邨 興一, 大倉 千幸, 須藤 貴仁, 橘 昌宏, 勝見 賢, 友松 佑介, 筑田 博隆
    2018 年30 巻2 号 p. 120-125
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     60歳女性.46歳時に関節リウマチと診断され56歳よりトシリズマブ(TCZ)が導入された.TCZ開始後3年8か月で右下腿遠位に発赤・熱感・腫脹を認め蜂窩織炎として入院した.入院時体温36.4度・CRP0.92mg/dlであったが,MRIで右足関節外側の膿瘍形成が明らかとなり,同部からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が検出された.TCZ使用中は,感染徴候のマスキングが起こる可能性があることを念頭に置き,診療にあたる必要がある.

  • 舩津丸 恵美子, 黛 弘美, 福田 めぐみ, 山本 武司, 伊藤 静子, 伊藤 聡, 石井 義則
    2018 年30 巻2 号 p. 126-134
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     目的:埼玉県は関節リウマチ(RA)治療のネットワークが確立されていない為,メトトレキサート(MTX)や生物学的製剤(bDMARDs)導入にあたり,事前スクリーニング・緊急時受け入れ等,地域医療機関と連携している.今回その治療成果を調査し,看護師の役割を明らかにする事を目的とした. 対象・方法:対象はRA患者78名である.MTX(M)群26名,bDMARDs(b)群14名,従来型疾患修飾抗リウマチ薬:csDMARDs (cs) 群38名に分類し,カルテより振り返り調査を行った. 結果:寛解達成率はM群100%,b群77%,cs群69%であった.専門医不在時の問い合わせはM群25件,b群31件,cs群44件であった.内容は服薬法52件,副作用13件,その他35件であり,看護師のみで対応が可能だったもの29件,専門医に問い合わせたもの31件,当院医師受診35件,連携医療機関受診は5件であった.また,調査期間に重大事象の発生は認めなかった. 結論:専門医が常駐しない診療所でも多様化したRAの薬剤治療を安全に行うことが可能であり,患者の問い合わせに迅速かつ的確に対応する事も看護師の重要な役割であることが示唆された.

  • 生澤 太雅, 増嶋 香織, 新井 麗奈, 杉山 隆広, 河野 千慧, 濱里 一裕, 松本 弘俊, 縄田 泰史, 高橋 成和, 渡邊 紀彦, ...
    2018 年30 巻2 号 p. 135-140
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     巨細胞性動脈炎は高齢者に発症する大・中型動脈の炎症を主徴とする原因不明の疾患である.診断においてはしばしば画像検査が活用されるが,そのなかでFDG-PET検査は感度・特異度共に高い,優れた検査である.今回我々はGCA分類基準を満たすもFDG-PET所見が陰性であったが,造影MRI検査を用いることで血管炎を同定しGCAの確定診断に至った症例を経験したので報告する.

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