臨床リウマチ
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28 巻, 2 号
臨床リウマチ
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
誌説
総説
  • 川人 豊
    2016 年28 巻2 号 p. 97-105
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー

       関節リウマチでは,生物学的製剤の登場により臨床的寛解が現実の治療目標となり,関節機能のみならず生命予後の改善がみられる.さらに,従来の製剤に効果不十分な症例に対してさらに異なる標的分子に対する製剤の開発が進んでいる.一方,関節リウマチの以外の他のリウマチ性疾患での生物学的製剤の開発は十分ではない.その背景には,免疫反応により生じ得る臓器障害には,様々な細胞による組織構築されている臓器の複雑性が起因するため,一つの標的分子の阻害のみでは疾患の制御が難しいことも示唆されている.全身性エリテマトーデスでは,B細胞関連分子を標的とした生物学的製剤の開発が中心だが,抗体産生の低下や補体の改善が見られても,従来の免疫抑制剤やステロイド治療より強力とはいえないことが多く,ほかの様々な標的分子阻害剤も検討されている.シェーグレン症候群では,腺外症状の改善が見られても腺症状の改善が困難である傾向が見受けられる.血管炎では,リツキシマブが本邦でもANCA関連血管炎ですでに承認され,Bリンパ球の表面マーカーに対する分子標的製剤も有効であることが示唆されている.強皮症の線維化についても様々な製剤が臨床試験中である.生物学的製剤の開発はゆっくりではあるが今後も進められ,関節リウマチの以外の他のリウマチ性疾患でも,その進展が期待される.

  • 森 俊輔
    2016 年28 巻2 号 p. 106-120
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー

       関節リウマチ(RA)に対する抗リウマチ薬(DMARD)治療の進展により患者のQOLや生命予後は大きく改善した.特に生物学的製剤治療の貢献は大きい.一方,DMARD治療中に見られる結核,非結核性抗酸菌症(NTM症),ニューモシスチス肺炎(PCP)などの感染症の合併とRA関連間質性疾患(RA-ILD)の増悪がリウマチ医の新たな懸念となっている.それにもかかわらず,DMARD導入時のリスク判定や予防対策,治療開始後の早期発見・治療に関して,エビデンスに基づいたガイドラインはない.RA-ILDの増悪は自然経過なのかDMARDの影響によるのか?DMARD導入時及びフォローアップ時に予後因子としてチェックするものは何か?潜在性結核感染症の診断と治療はどのようにすべきか?DMARD治療中の結核発症の早期診断はどのようにすべきか?DMARD治療中に発症するPCPとHIV陽性者のPCPとの違いは何か?PCPが重篤化する前に発見することは可能か?院内でのアウトブレークは防げるのか?RAに特徴的な気管支拡張症や細気管支炎とNTM症に関連はあるのか?肺NTM症疑い患者のDMARD治療中のマネージメントはどうするのか?今回の総説では,DMARD治療の現場で直面する上記の問題を解説し,その対処法について議論する.

原著
  • 吉井 一郎
    2016 年28 巻2 号 p. 121-129
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)治療が進歩した結果,最近ではComprehensive Disease Remission(CDR)が新たな治療目標として脚光を浴びている.長期的なCDRの維持のために必要な条件や予測因子などを,自験例を用いて統計学的検討を行った.
    方法:421例のRA患者について,3年間以上treat to targetに基づいて治療を行った.それぞれの患者の各治療年毎のCDRを構成する28-joint disease activity score with C-reactive protein (DAS28-CRP),年間あたりSharp/van der Heijde Score変化,health assessment questionnaire disability index,疼痛のvisual analogue scale(PS-VAS)を計算し,各指標の関係を統計学的に評価した.
    結果:治療4年目以降のCDRを獲得するためには,治療初年度においてCDRを獲得する事が非常に重要である事が判明した.また,初年度の平均DAS28-CRPが1.8以下であればその確率は格段に上昇した.PS-VASも10mm以内を保つ事がCDRを獲得維持する指標として有用な事が判明した.
    結論:初期治療において疾患活動性をコントロールすると同様に疼痛管理を行う事で,RA患者のCDR維持につながる.

  • 佐藤 正夫, 岩田 典子, 玉腰 恵
    2016 年28 巻2 号 p. 130-134
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー

    目的:ジェネリック医薬品(後発医薬品)は先発医薬品と品質・有効性・安全性が同等であるとされているが,後発医薬品に変更されて,効果減弱や有害事象が出現する症例も存在する.今回,抗リウマチ薬を処方している関節リウマチ(RA)患者の処方薬が院外薬局で後発医薬品に移行されている状況を調査した.
    対象・方法:外来通院中のRA患者で抗リウマチ薬を処方している200名を対象とし,お薬手帳から状況を確認した.内訳は男性47例,女性153例,平均年齢59.5歳であった.
    結果:当院で処方箋に入力可能な薬品名はMTX(リウマトレックス®,メトレート®),SASP(アザルフィジン®),BUC(リマチル®),TAC(プログラフ®)である.各々の薬品の後発医薬品への変更率(後発医薬品への変更数/処方数)は,MTX:16.4%(19/116),SASP:22.2%(18/81),BUC:11.1%(3/27),TAC:7.1%(1/14)であった.後発医薬品へ変更された患者において,効果減弱が4例,有害事象が5例あった.効果減弱はMTXで2例,SASP,BUCで各1例であった.有害事象の3例は変更後に出現したかゆみであった.その他に胆のう炎,円形脱毛症が各1例存在した.
    結論:後発医薬品に変更後も問題の無い症例がほとんどであるが,効果減弱や有害事象が発現した症例も存在した.効果減弱や有害事象の可能性についても患者にきちんと説明する必要性がある.

  • 松井 聖, 野上 みか, 橋本 尚明, 西岡 亜紀, 關口 昌弘, 東 直人, 北野 将康, 岩崎 剛, 佐野 統
    2016 年28 巻2 号 p. 135-142
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー

    目的:リウマチ性多発筋痛症(PMR)は,高齢者に発症する原因不明のリウマチ性疾患である.Birdらの診断基準により診断され半年以上診断の変わらなかった患者79名を対象に臨床的特徴と治療について検討した.
    対象と方法:2003年10月から2010年2月までBirdらの診断基準により診断され半年以上診断の変わらなかった患者79名を対象とし,後向きに検討した.検討項目は,Birdの診断項目合致率,検査データはCRP, ESR, IgG, CH50, MMP-3と各種自己抗体を検討した.また,ステロイド剤の初期治療量およびステロイド剤の初期治療量と診断項目合致数との相関,ステロイド剤の初期治療量と検査値の相関を検討した.
    結果:プレドニゾロンの使用量は14.3±5.7mg/dayで,検査値や診断項目数の相関はなかったが,抑うつ傾向や体重減少と男性の方で使用量が多い傾向にあった.結論:ステロイド剤の初期使用量は検査データよりも臨床的兆候に起因して用いられる傾向が強かった.

  • Masashi Wakasugi, Naoki Kondo, Dai Miyasaka, Junichi Fujisawa, Naoto E ...
    2016 年28 巻2 号 p. 143-149
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー

        We encountered a case of rheumatoid arthritis with hip destruction due to a communication between the hip joint and trochanteric bursa, even if this case preserved low disease activity. A 43-year-old woman with rheumatoid arthritis had a mass in the right buttock. Although she had no pain initially, she noticed a gradually growing mass, and developed pain and instability while walking within 3 years. Magnetic resonance imaging showed trochanteric bursitis in the buttock. The bursitis persisted despite aspiration for a few times, and hip destruction was subsequently detected. After total hip arthroplasty, she felt no pain in the right hip while walking. 
        Intraoperative findings of excessive synovial fluid that was discharged immediately after incision of the hip joint capsule demonstrated a communication between the trochanteric bursa and hip joint. Although some reports have described iliopectineal bursitis associated with rapid hip joint destruction, to our knowledge, no report has described a similar association between trochanteric bursitis and hip joint destruction. We speculated that the communication caused giant trochanteric bursitis, and it remained a few years because of a “valve-like mechanism” similar to that in a popliteal cyst.

  • 加藤 愛美, 藤原 道雄, 中山 貴博, 北 靖彦
    2016 年28 巻2 号 p. 150-157
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー

    53歳男性.多関節痛を主訴に受診した.発熱とわずかな皮疹を認めたがCK上昇はなかった.全身検索の一環として行った全身拡散強調MRI検査で筋炎の存在を疑い,局所のSTIRを併用し筋炎の画像診断に至った.抗PL-12抗体陽性が判明し,筋生検の所見とあわせ皮膚筋炎と診断した.抗PL-12抗体陽性筋炎は,本症例のように発熱や関節痛,必ずしも皮膚筋炎に典型的でない皮疹が初期症状であることが多い.また,拡散強調MRIの膠原病領域での有用性を示唆する症例であった.

  • 新川 雄高, 八木田 麻裕, 籏智 さおり, 八木田 正人
    2016 年28 巻2 号 p. 158-163
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー

       72歳男性.1年半前からの息切れと体重減少で受診.精査にて間質性肺炎,MPO-ANCA陽性と同時にステージIのS状結腸癌も認め,S状結腸切除術を施行した.切除標本では高分化型腺癌とともに血管炎を認めた.顕微鏡的多発血管炎と診断し,プレドニゾロン30mg/日およびアザチオプリン50mg/日で,MPO-ANCAは陰性化,間質性肺炎も改善傾向を認めた.本症例の病態の考察および当院における検討から,積極的な悪性腫瘍検索が必要と考えられる.

  • 三浦 貴徳, 本間 玲子, 飯田 高久
    2016 年28 巻2 号 p. 164-170
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/08/30
    ジャーナル フリー

       近年,特発性後腹膜線維症と炎症性大動脈瘤は慢性動脈周囲炎という疾患概念に包含されるとする説が示されている.肺炎クラミジア感染が炎症性大動脈瘤の発症に寄与しているとの報告があることから,特発性後腹膜線維症の発症にも関連している可能性が考えられる.今回,肺炎クラミジアに対するIgM抗体が陽性であった後腹膜線維症の1例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.

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