地球温暖化は海洋中の溶存酸素を全球的に減少させると考えられており,海洋生態系や物質循環への影響が懸念されている.簡略化モデルを用いた先行研究では,酸素濃度は1000年以上減少し続け,全球平均濃度は30%程度減少すると予想されている.しかし簡略化モデルを用いているため不確実性が大きいと考えられる.
本研究では,より現実的な海洋循環を表現するGCM(MIROC3.2)とoffline海洋物質循環モデルを用いて温暖化実験(2, 4倍CO2実験)を2000年積分し, 酸素濃度の変化を計算した.
最初の500年では,先行研究と同様に海水温上昇と成層化により溶存酸素は全球的に減少した.しかしその後,表層の酸素減少とAMOCの減少は続いているにも関わらず,中深層の酸素濃度は全球的に回復し,最終的に全球平均の酸素濃度は産業革命前の濃度よりも高くなった.この酸素回復はウェッデル海における深層対流が一時的に停止した後に回復することで,深層に酸素が送り込まれた為に引き起こされることが分かった.
抄録全体を表示