家族性副甲状腺機能亢進症は原発性副甲状腺機能亢進症の約2~5%にみられる。家族性副甲状腺機能亢進症は多発性内分泌腫瘍症1型,2A型,副甲状腺機能亢進症顎腫瘍症候群,家族性孤発性副甲状腺機能亢進症,家族性低カルシウム尿性副甲状腺機能亢進症(FHH)がある。その診断において家族歴聴取は必須であるが,家族歴だけでは判断できない場合も多い。家族性副甲状腺機能亢進症を疑う場合,遺伝子診断としては
MEN1,
RET,
HRPT2/cdc73,
CDKN1B,
CaSR遺伝子などが対象となり,家族歴や臨床徴候を参考にどの遺伝子を検索するかを考えていく。FHHは尿中カルシウム排泄量が低値となるが,他の疾患はすべて高値となることからFHHは鑑別可能である。FHHは治療適応がなく,その他の家族性副甲状腺機能亢進症は手術対象となる。各疾病で手術法に微妙な違いがあるものの,基本的コンセプトは1腺のみ切除ではなく,副甲状腺全腺切除の対象となることである。家族性副甲状腺機能亢進症は散発性と異なり,診断・治療・管理が大きく異なり,また遺伝カウンセリングや遺伝学的検査の知識・手法が必要となる。
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