禁煙科学
Online ISSN : 1883-3926
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  • 入谷 智子, 東山 明子
    2024 年Vol.18 巻07 号 p. 1-17
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル オープンアクセス
    要 旨
    緒言・目的: Bow1by は、愛着を「ある特定の人と他の特定の人の間に形成される愛情の絆である」と定義している。また幼少期に十分な愛着が形成されず、対人関係や感情面で問題が生じた状態のことを愛着障害と説明している。愛着障害が悪化すると社会不適応をきたすことが示されている。喫煙をしている妊婦は、子どもへの愛着が低い傾向にあることが報告されていることから、愛着障害と喫煙行動には関連があるのではないかと考えた。そこで本研究では大学生を対象に愛着と喫煙の関連を検討し、親の幼少期の子どもへの養育による愛着の影響が大学生の喫煙行動に影響するのかを明らかにする。
    方法:愛着スタイル診断テスト(岡田)を用いて質問紙調査を行った。分析方法は、愛着スタイル診断テストのそれぞれの項目と大学生本人と両親の非喫煙群、過去喫煙群、非喫煙群(以後喫煙状況とする)をχ²検定で分析し、有意差があった項目のみ残差分析を行った。また安定型・不安定型・回避型・未解決型の愛着スコアの得点と大学生本人と両親の喫煙状況をKruskal Wallis 検定で分析した。
    結果:対象者はスポーツ学部の大学生 213 名(男性 166 名、女性 47 名)であった。大学生本人は過去喫煙群、喫煙群、非喫煙群の順で回避的愛着スコアの得点の中央値が高く、3群間に有意差(p=0.012)みられた。また愛着スタイルテストのそれぞれの項目と喫煙状況を分析した結果、「あなたは親(養育者)から、よく傷つけられるようなことをされましたか(p=0.004)」 「いつも冷静でクールな方ですか。(P=0.041) 」「関わりのあった人と別れても、すぐ忘れる方ですか。(p=0.008)」の 3 項目において 3 群間で有意差がみられた。さらに残差分析を行った結果、過去喫煙群が「はい」と回答したものは有意に高かった。一方で両親の喫煙状況と愛着スタイルテストの各項目と両親の喫煙状況と愛着スコアの得点は、いずれにおいても有意差はみられなかった。
    結論:本研究において喫煙群と愛着には明らかな関連はみられなかった。しかしながら過去喫煙者の大学生は、回避的愛着スコアが最も高く、非喫煙群・喫煙群と 3 群間に有意差があったことから、愛着は喫煙行動になんらかの影響があることが示唆された。
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