日本輸血細胞治療学会誌
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59 巻, 3 号
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総説
  • 加藤 栄史, 高本 滋
    2013 年 59 巻 3 号 p. 443-449
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
  • 中山 享之, 加藤 栄史
    2013 年 59 巻 3 号 p. 450-456
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
    間葉系幹細胞(MSC)は,骨芽細胞,脂肪細胞,筋細胞,軟骨細胞など,間葉系に属する細胞への分化能を有し免疫抑制作用も併せ持つことから再生医療や治療抵抗性免疫疾患に対する臨床応用が期待されている.MSCは,種々の組織から樹立できるが,なかでも脂肪組織は,大量のMSCを含むとともに,そこより樹立したMSCは増殖が速く細胞活性も高いため有望な細胞ソースと考えられている.脂肪組織由来MSCを利用した基礎研究,前臨床試験は,血行再建,心筋再生,軟部組織修復,尿失禁,抗炎症,免疫療法(組織片対宿主病,腎障害,肝障害,膠原病など),造血支持療法などの分野で進められており有望な結果が報告されている.また脂肪組織の中には,多能性幹細胞(Muse:Multilineage-differentiating stress-enduring)が他の組織よりも豊富にあることが判明し注目を集めている.Muse細胞は,その表面形質からMSC中に混在していると考えられる.Muse細胞は,ES細胞と比べ腫瘍形成能は低いと考えられており,いわゆる山中遺伝子の導入によって効率的にiPS細胞に変化する.そのためMuse細胞における研究の進展が期待されている.
原著
  • 佐藤 英洋, 安江 静香, 内海 真紀, 野村 美奈, 上田 幹夫, 高見 昭良
    2013 年 59 巻 3 号 p. 457-461
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
    血液疾患でみられる赤血球A・B抗原発現低下と血液型亜型を血清学的に鑑別するのは難しい.ABH抗原に転換するオリゴ糖末端付近のI抗原は,フローサイトメトリー法で解析できるので,A・B抗原と発現動態が一致すれば,血液疾患によるA・B抗原発現低下との診断に役立つ.A・B抗原に異常がみられた骨髄異形成症候群2例,急性骨髄性白血病1例のI抗原発現率をフローサイトメトリー法で調べたところ,cis AB型を含む健常人に比べ,いずれも有意に低下していた.したがって,フローサイトメトリー法によるI抗原測定が,A・B抗原発現低下診断の一助となる可能性が示唆された.
  • 万木 紀美子, 小島 裕人, 平位 秀世, 菱田 理恵, 藤井 直樹, 大久保 和俊, 三浦 康生, 兼松 明弘, 近藤 忠一, 吉岡 聡, ...
    2013 年 59 巻 3 号 p. 462-469
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
    HLA抗体は臓器移植の予後と関連性があり,その測定には高い信頼性が求められる.われわれは,ドナー特異HLA抗体(Donor Specific Antibody:DSA)弱陽性の状態で腎臓移植を計画中,血漿交換(PE)後にDSAが大きく上昇したにも関わらずLABScreen single-antigen beads class I(LS-Single I)法で正しく判定しえなかった症例と,同法により高力価のHLA抗体を過少評価していた臍帯血移植の症例を経験した.これらの原因を探るため,測定系の中に含まれる抗原抗体反応が,被検血清により阻害され得るかどうかを検討した.その結果,特にHLA抗体が高力価である場合に,被検血清が二次抗体の反応を阻害する現象が認められた.この血清による反応阻害作用はEDTA添加・加熱処理・DTT処理などの血清の非働化によって減弱することから,補体が関与するプロゾーン様現象であることが示唆された.血清中の補体が二次抗体の反応を阻害するためにHLA抗体が低力価と判定される場合があるため,LS-Single I法によるHLA抗体の検査における血清の非働化が必要と考えられた.
  • 岡本 好雄, 中橋 喜悦, 千野 峰子, 松田 和樹, 久保田 友晶, 岡田 真一, 守屋 友美, 及川 美幸, 李 舞香, 木下 明美, ...
    2013 年 59 巻 3 号 p. 470-475
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
    腹水濾過濃縮再静注法(CART:Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)とは,腹水症(又は胸水症)患者の腹水(又は胸水)を採取し,濾過濃縮後に再静注する治療法で,我が国で開発されて以来,保険診療の中で30年以上広く実施されている.
    当院におけるCARTは各診療科が必要時に臨床工学技士に処理を委託していたが,院内統一の依頼・供給手順や製剤が存在せず,医療安全の面で問題があった.複数患者のCART実施時における患者取り違いのリスクを回避するために,輸血・細胞プロセシング部で申し込みから腹水・胸水処理,供給に至るまでを一括管理することとなった.具体的には,既存の輸血システムを流用し,電子カルテからの申込みと製剤固有バーコードの発行,バーコードによる製剤と患者の照合作業までの安全な供給体制システムを構築した.
    次に輸血用血液製剤同様の製剤の安全性に関する基準を作成するために,濃縮前後,および一定条件下での保存後の腹水の性状やエンドトキシン検査に関して検討を行った.濃縮後のアルブミン量は26.5±2.7gであり,回収率は66.8%であった.処理前のアルブミン量に関わらず一定の回収率が得られた.また処理前腹水の4℃一晩保存,あるいは-30℃14日保存においてもエンドトキシンは検出されなかった.今後,冷蔵保存後の処理あるいは冷凍保存分割投与によってCARTを必要とする多くの患者へ適応可能になると考えられる.
報告
  • 古牧 宏啓, 渡邊 弘子, 藤原 晴美, 山田 千亜希, 牧 明日加, 芝田 大樹, 永井 聖也, 石塚 恵子, 金子 誠, 竹下 明裕
    2013 年 59 巻 3 号 p. 476-481
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,従来の音声情報に加え,手術室画像モニタリングと輸血情報システムを活用し,該当手術の,出血の程度,使用中の血液製剤の種類,輸血量,輸血速度,さらには,手術室内の医療スタッフ数と業種,製剤の保管状況や取り扱い等の情報を,リアルタイムに把握した.そして,手術室のニーズを迅速に察知し,充分量の製剤の準備,迅速な供給,部門を超えた輸血に関連する業務の補助を行い,製剤の準備状況などの情報を提供した.これらは,フレキシブルかつ臨床側とより一体化した形で進めた.
    本システムの導入による効果を,赤血球濃厚液(RCC)の廃棄件数,廃棄量と廃棄率および術前請求量,初回出庫量,総出庫量,使用量,返納量,インシデント件数を,システム導入前後2年間で比較し評価した.RCCの廃棄件数は15件から2件(p=0.002),廃棄量は51単位から3単位(p<0.001)と有意に減少し,廃棄率は1.02%から0.09%に減少した.RCCを10単位以上使用した心臓血管手術におけるRCCの初回出庫量(平均±SD)は7.5±2.2単位から6.7±2.4単位と減少した(p=0.020).また,システム導入後2年間に製剤の保存や取扱いに関するインシデントは発生していない.本システムの活用により,提供可能な輸血業務は広がり活性化され,臨床側との密接な連携が構築された.
  • 前越 大, 燈明 奈緒, 冨田 靖子, 高橋 真奈美, 齋藤 俊樹
    2013 年 59 巻 3 号 p. 482-485
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
    新鮮凍結血漿(FFP)製剤は2007年に規格が変更され,新規格のFFP-LR-1,FFP-LR-2は従来のFFP-1,FFP-2に対して容量はそれぞれ1.5倍である1).しかし電子オーダリングシステムにおいては慣習的に用いられてきた「単位」数でのオーダーが現在でも主流である.
    当院のFFP使用量は製剤規格変更と共に増加した.そこでFFPを規格変更前の1単位80mlに換算した容量で払い出す運用を開始した.製剤規格変更前,製剤規格変更後,運用変更後の3つの期間におけるFFP払出量を集計し,規格変更と運用変更の影響を検討した.それぞれ期間の平均月間使用量は14.2l,23.9l,17.0lであり,規格変更と共に払い出し量が増え(p<0.001),運用変更後,払い出し量が減った(p=0.014).運用変更後は規格変更前と比べ払い出し量に有意差はなかった(p=0.086).これより規格変更に伴う混乱の解消に輸血管理室での運用変更が有効であったと考えられた.
  • 稲岡 千佳子, 矢原 健, 安井 昌博
    2013 年 59 巻 3 号 p. 486-491
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
    当センターで不規則抗体検査を実施した妊産婦について,不規則抗体の種類,溶血性疾患発症状況とその治療内容(胎児輸血,交換輸血,新生児輸血,光線療法,γグロブリン製剤投与)について集計し,考察を試みたので報告する.
    2003年2月~2011年7月に不規則抗体検出検査を行った13,902検体中,冷式抗体を除いた不規則抗体陽性数は279件(2.0%),妊産婦数では8,251名中不規則抗体陽性者は89名(1.1%)で,その内訳はRh系47名(52.8%),MNSs系19名(21.3%),その他の抗体15名(16.9%),同定不可8名(9.0%)であった.これらの妊産婦から出生した児83例中,溶血・黄疸で治療を要した児は21例(25.3%),治療例の内,さらに胎児輸血・交換輸血・新生児輸血を実施した症例は10例(12.0%)であった.不規則抗体の種類別に見ると,抗D抗体とRh系複合抗体保有例の母体より出生した児の治療率は他の不規則抗体症例に比べて高く,加えて輸血を必要とした症例もこれらの群で多く見られた.また,抗M,抗Jra抗体保有例においても重症例が認められた.
論文記事
  • 及川 伸治, 佐々木 大, 菊地 正輝, 澤村 佳宏, 伊藤 孝
    2013 年 59 巻 3 号 p. 492-498
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/19
    ジャーナル フリー
    血小板製剤(PC)輸血時の非溶血性副作用発生頻度を低下させるためには,血漿の大部分を洗浄保存液に置換した洗浄血小板(WPC)が有効である.現在,日本では承認された洗浄保存液が無いため,市販の酢酸リンゲル液,重炭酸ナトリウム,硫酸マグネシウムなどの混液が使用されている.近年,アルカリ化剤として重炭酸塩が用いられた重炭酸リンゲル液(BRS)が開発された.本研究では,BRSが洗浄保存液として使用できるかどうか検討した.
    BRS 500mlにACD-A液25mlを添加し,その混液を除菌フィルターで処理して洗浄保存液(BRS-A)を調製した.BRS-Aで調製したWPC(血漿残存率5%未満)を7日間保存し,その機能を非洗浄PC(血漿浮遊)と比較した.
    7日間保存中,洗浄血小板のpH,低浸透圧性ショック回復率,グルコース消費割合,乳酸産生割合,スワーリング,CD62P・CD42b発現率は非洗浄PCと同等かそれ以上に優れていた.
    国内で認可されている2つの輸液を混合することにより,血小板機能を良好に維持する洗浄保存液を調製できた.今回の結果から,BRS-AはPCの洗浄保存液として有用であることが示された.
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