周期的に反復する前肢の指間血疱を7例の犬に認めた。犬種はペキニーズとシー・ズーが各3例,フレンチ・ブルドッグ1例,平均発症年齢は4.3歳齢であった。指間の腫脹は両側ないし片側に第2と第4指間に好発,跛行と共に急性に生じた。病変は数日で出血し消退,1~8週毎に再発した。全例で前肢の前屈・外反がみられた。血管強化薬のカルバゾクロムスルホン酸ナトリウム水和物を服用し長期追跡できた4例で寛解が得られた。犬種や加齢の関与した構造的歪みに起因する血管破綻を予想した。
6歳齢のゴールデン・レトリバーが両側前肢の肉球周囲に発生した色素脱失を伴う丘疹を主訴に来院した。病理組織学検査で上皮向性T細胞リンパ腫と診断されたため,レチノイドによる治療を開始したが十分な反応が得られなかった。そこで第204病日よりオクラシチニブに変更したところ良好な反応が得られ,明らかな副作用も認められず投与開始1年以上経過しているが良好な状態を維持している。以上より,上皮向性T細胞リンパ腫の治療法として,オクラシチニブが有効で安全に使用できる可能性が示唆された。
1歳齢,雌のゴールデン・レトリーバーが眼瞼や口唇,鼻鏡の皮膚の腫脹や痂皮,出血を主訴に来院した。臨床所見および皮膚病理組織学的検査所見から無菌性肉芽腫性皮膚炎およびリンパ節炎と診断した。母犬は発症前に交配を行なっており,出産した仔犬のうち2頭が2ヶ月齢で本疾患に罹患した。