-
田口 凌介, 細田 康太郎, 二井 昭佳
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20107
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
氾濫域における洪水を考慮した住まい方の実装には,日常の暮らしやすさと洪水被害の軽減のバランスが重要になる.その知見を得るために,水塚を有する住宅の母屋に着目し,センチ単位の標高測量により母屋や水塚の高さの特徴を考察した.その結果,水塚・母屋ともに対象地域での標高のばらつきが小さいこと,3 〜 4m 嵩上げされる水塚に対し母屋はその半分程度であること,敷地立地面と母屋の高低差が 1.3m を超えると敷地の高さを分割するように庭・納屋が設けられることを示した.すなわち母屋はときおり浸水する高さに設けられており,水塚という避難空間,母屋という生活空間,納屋や庭という生業空間の使い方に応じた宅盤高さが丁寧に設定されてきたことを指摘した.
抄録全体を表示
-
八木 雅大, 高橋 翔, 阿部 恭征, 萩原 亨
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20108
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
昨今の拡張現実を可能とするデバイスの市販化や第 5 世代移動通信システム(5G)のサービス開始などに伴い,多様な空間での拡張現実の適用可能性が高まっている.特に道路利用時を対象とする場合には,周囲状況の視認を妨げずに多様なデータを表示可能とするビューマネジメントが必要である.本稿では,一人称視点の映像における時間および空間的な高周波成分と Convolutional Neural Network (CNN)による物体検出結果を用いた視認すべき重要な領域を算出する手法を提案する.また,本稿では,提案手法の有効性を検証するために,実際に一人称視点で撮影した映像を用いて実験を行った.実験の結果,視認すべき多様な領域が汎用かつ高精度に算出され,提案手法の有効性が確認された.
抄録全体を表示
-
野口 徹, 宇野 伸宏, 松中 亮治, 田中 皓介, 西垣 友貴
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20109
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究では,連続車両軌跡データを用いて,車間距離不保持が直前の車両の追従挙動や衝突リスクに与える影響について分析した.線形の追従モデルである Helly モデルに関して,後方の事故リスクを考慮可能な説明変数を加え,重回帰分析を適用し,パラメータを推定した.分析結果より得られた代表的な知見として,次の 2 点を挙げておく.1) 車間を詰められた車両については,ジャークが正に大きく,加減速の変化が大きい.加えて,車間を詰められている場合,追従車の前方車との衝突リスクは小さいが,後方車とのリスクは相対的に大きい.2) Helly モデルの推定結果より,車間を詰められている状況で,先行車との車間に余裕があるケースでは,累積 back-PICUD の値が大きくなると加速する傾向が確認された.
抄録全体を表示
-
石河 万衣, 宮崎 耕輔, 松尾 幸二郎, 吉城 秀治, 葛西 誠
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20110
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
子供が大人の付き添いなしで自由に外出や移動ができる程度は,子供の移動自由性(Children’s Independent Mobility: CIM)と呼ばれており,子供の健康,身体的・社会的・精神的発達において重要な要素であるとされている.本研究では,日本における CIM に影響を及ぼす要因を明らかにするため,CIM の評価指標である CIM ライセンスに着目した順序ロジットモデルを構築して要因分析を行った.その結果,自宅周辺環境の交通安全に対する親の不安感が,子供の近所への外出に影響を及ぼしており,海外と同様の傾向となった.また,外出行動の種類によって影響を及ぼす要因が異なること,登校を除いた 5 つの外出行動すべてにおいて子供の頃の状況が自身の子供の CIM に影響を及ぼすことを明らかにした.
抄録全体を表示
-
坪田 隆宏, 島津 弘輝, 中谷 勇太, 塩見 康博
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20111
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
近年,物流産業においては大型車両による輸送の効率化が進められており,特殊車両の通行許可申請件数も増加傾向にある.この手続きに伴う運送事業者・道路管理者の負担軽減と審査の迅速化を目指し,通行可否審査の自動化が求められている.本研究では,交差点諸元と特殊車両の折進可否の情報をデータベース化し,折進可否の自動判定モデルを構築した.Google Map 等から人手で読み取った交差点諸元を用いて,各諸元値と折進可否に関する基礎集計を行った結果,交差点面積や道路幅員,折進角度などの諸元値と折進可否の間に明確な関係を見出すことができた.続いて,折進可否判定モデルの構築を行った.複数の手法を比較・検討した結果,ニューラルネットワークモデルが最も高い精度を示し,車両分類 0 を対象としたモデルで 0.7 を超える判定精度を得た.
抄録全体を表示
-
蟻川 優人, 二井 昭佳
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20112
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
流域治水を進めるには,河川管理者と都市行政を担う自治体の連携が不可欠である.本稿では都市計画行政を担当する市町村が治水事業も実施するドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州のケルン市に着目し,市における洪水史を整理した上で,1996 年の洪水防御計画の概要と,それに基づく治水整備の内容を都市計画と治水計画のかかわりの観点から記述した.それらを踏まえ,ケルン市における都市計画行政との連携による治水整備の特徴について考察し,洪水対策を都市づくりの一環と捉え,都市計画行政と河川行政が連携することに加え,市町村が治水対策を自分ごととして捉え,流域全体の治水安全度の向上を目指し積極的に遊水空間確保や雨水流出抑制に向けて行動すること,河川行政からの積極的な働きかけと両者の濃密な協議の場が重要だと指摘した.
抄録全体を表示
-
池田 恵理子, 鈴木 雄, 寺部 慎太郎, 栁沼 秀樹, 海野 遥香
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20113
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究では,中心市街地における J リーグ観戦者の観戦前後の回遊行動やその意識を把握することで,今後の J リーグを活かしたスポーツツーリズムへの知見を得ることを目的とし,千葉県柏市の J リーグ観戦者へのアンケート調査を行った.その結果,試合日では,駅からスタジアムまで直行し,試合後に直帰する人が多いことが示された.また,試合前の滞在時間に対し,満足度が影響していることが示された.滞在時間と消費金額とも相関があることも示された.アウェイサポーターの「周辺の観光情報の充実さ」や「スタジアムグルメの良さ」に対する満足度は低く,J リーグ開催日の全体の満足度に与える影響は大きい.アウェイ席でスタジアムグルメが購入できないことや,スタジアムと街なかとが一体となった観光情報を提供できていないことに課題がある.
抄録全体を表示
-
葉 健人, 廣川 正太郎, 周 純甄, 土井 健司
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20114
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
小型電動モビリティのバッテリーを共通化し,街中のバッテリーステーションでバッテリーを即座に交換できるバッテリーシェアリングの仕組みが注目されている.また,バッテリーマネジメントの観点および省資源化の観点から,バッテリー利用状況を平準化させることの重要性が高まっている.本研究では,バッテリー交換型2輪EVの実証実験で得られたデータを元にバッテリー消費・交換行動モデルを構築した.さらに,バッテリー配置や個人のバッテリー交換型2輪EVの利用の差異による電池利用状況の平準化効果および個人の効用との関係を明らかにした.
抄録全体を表示
-
安ヶ平 玲央, 平田 輝満, 原田 明徳, 武市 昇
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20115
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
我が国では,運航分野における CO2 削減に向けた取組として持続可能な航空燃料である SAF の導入が注目されているが,短期的に実行可能性の高い運航方式の改善による削減効果についても十分に検討を行う必要がある.運航方式の改善においては,経路短縮等の飛行経路の改善のみでなく,速度抑制による CO2 削減に関する検討も有益であると考えられるが,その効果や実現性については十分に明らかにされていない.そこで,本研究では動的計画法による軌道最適化を用いて,羽田―福岡路線における燃料削減ポテンシャルを推計した.その結果,路線によって CO2 削減効果が異なることを示し,その要因について考察を行った.加えて.速度抑制が乗客や航空会社に与える影響を分析し,今後の CO2 削減策に関して検討を行った.
抄録全体を表示
-
髙森 駿, 小林 慎太郎, 佐々木 邦明
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20116
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
平常時においては,人々の活動や車の移動を予測・再現する方法として,ミクロシミュレーションが利用されるようになってきた.一方で,災害時の交通は,被害状況などの様々な要因によって変化するため,事前の把握と予測が非常に困難である.そのような状況において,リアルタイム性を持つ観測データが収集されるようになり,その活用が様々な分野で進んでいる.そこで本研究では,人々の行動から交通状況の再現に至るまでの一連のミクロシミュレーションにリアルタイム性のある観測データを組み合わせることで,状況に応じた人々の移動を予測・再現するモデルを構築し,その適用可能性を検証した.その結果,一定の再現性が担保できることを示し,今後のデータ活用方法についての示唆を得た.
抄録全体を表示
-
曽 翰洋, 箕輪 拓真, 葉 健人, 青木 保親, 土井 健司
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20117
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
近年,居心地が良く歩きたくなる公共空間へのニーズが高まっている.その中でも,人々の交わりの場,地域の中心として,駅まち空間が着目され,改札内がシームレスかつ一体的な空間設計が求められている.本研究では,歩行者の低速歩行や滞留を促進させる空間性能である Lingerability に対し,無改札化がもたらす影響の分析を目的とする.駅まち空間を 3D モデルより再現し,画像認識 AI モデル用いて,駅まち空間の歩行空間性能を評価した.そして,駅空間の改札有無や改札周辺環境の変化による空間要素や交互作用の影響を分析した.その結果,駅構内の無改札化が Lingerability に寄与することを定量的に示した.また,無改札化による歩行者増加に合わせて,カフェや休憩施設を導入することより,Lingerability の更なる改善効果が期待されることを示した.
抄録全体を表示
-
小泉 稜太, 鈴木 雄, 寺部 慎太郎, 栁沼 秀樹, 海野 遥香
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20118
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
地方部を中心に中心市街地の賑わいの低下が大きな課題となっている.賑わいを創出するためには来街者の回遊を促進する要因を把握することが重要である.本研究では携帯電話のGPSビッグデータを用いて,千葉県柏市中心市街地の来街者の行動特性を把握し,回遊に寄与する要因を探った.本研究で用いるGPSデータは携帯電話のアプリから取得されたものである.分析では,まずMNLを用いて施設選択モデルを構築し,遊びや食事・買い物ができる比較的大型な店舗を有する建物が選択される傾向にあることを示した.次に滞在時間・移動距離・回遊面積の各指標と建物利用との関係について分析した.その結果,柏では物販(衣料)利用者の滞在時間が短く,範囲も狭いことを示した.また,分析を通してアプリ型GPSデータの適用可能性を探り,分析手法を示した.
抄録全体を表示
-
中村 僚, 松田 曜子, 佐野 可寸志, 高橋 貴生
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20119
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
水害時の避難について,近隣住民からの声かけで避難を促されたケースが多いことが既存研究により報告されている.また,自治会や地域内において,メッセージアプリ上で日常的に必要なやりとりや災害時の情報伝達等を行う事例も増えている.本研究では,水害の危険が迫る際に,近隣の住民どうしの避難に関する会話の画面を見ることが,従来の避難指示の情報提示画面を見ることより,人々の避難意思(willingness to evacuate)を高めるという仮説を検討する.避難意思の評価方法として,主観的な評価を間隔尺度の水準で連続変数として得られる Visual Analogue Scale を用い,避難指示,住民会話の画面の他,画像情報など計 5 種類の提示画面について,それらを見た個人の避難意思を評価する.
抄録全体を表示
-
稲本 里美, 小森谷 隆, 牧村 雄, 坂下 文規, 佐竹 日向子, 伊東 誠, 森地 茂
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20120
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
コロナによる社会変化が,鉄道需要へ多大な影響を与え,未だにコロナ前の水準に完全には回復しておらず,コロナによる輸送人員への影響度合いは鉄道事業者によって異なる.東京圏では通勤目的の鉄道需要が多く,働き方の変化によって大きな影響を受けており,その中でもテレワークの進展による影響が大きいが,テレワークの実施状況は東京圏内でも一様ではなく,そのことが鉄道事業者ごとの輸送人員への影響の違いであると考えられる.そこで,テレワークによる通勤目的の鉄道需要に及ぼす影響の差異が,都県別・産業別テレワーク率と産業別就業・従業人口構成割合の差異によって,一定程度説明できることを確認し,その結果を用いてテレワークによる出勤頻度の減少を反映した需要推計をエリア別,事業者別,路線別に行い,影響の差異を明らかにした.
抄録全体を表示
-
川名 神威, 菅原 遼
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20121
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究では,2011 年より開始された河川空間のオープン化事業の動向を概観し,各事例の空間利用の工夫と浸水対策の双方を捉えることで,親水と浸水の両義的側面による河川空間利用を明らかにすることを目的とした.調査は,利用形態及び事業スキームを分類した上で,徒歩 15 分到達圏人口を算出し,人口規模より傾向を捉えた.次いで,浸水リスクを有する事例の浸水対策や空間構成,空間利用の比較検討を行った.その結果,事例は人口規模で二極化され,都市部での比較的限定された空間で実施可能な飲食利用,郊外部でのイベント・広場利用が多くみられた.また,水域特性に応じて特徴がみられ,占用主体の工夫により立地条件,施設形態,移動・仮設性を考慮した親水性の確保と浸水対策が行われ,柔軟な空間利用に繋げていた.
抄録全体を表示
-
金 利昭
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20122
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
現代社会には様々な交通手段があり,またそれを利用する様々な属性の利用者がいて,限られた道路空間にはすでに多様な交通モード(交通手段×利用者)が混在している.多様な交通モードが共存していくための交通具や道路,交通規則をデザインするためには,交通モードの優先順位を確立する必要がある.本研究では,20 交通モードに関しての WEB 意識調査データを用いて人々の交通モードに関わる優先意識と共存意識を分析した.結果,高齢者と弱者の優先度が高いことは当然としても,自動運転小型バスの優先度はその運用目的や優先施策に関わらず低いものではないこと,歩道上を通行する自動運転配送ロボットの優先施策に対しても反対より賛成が多いこと,電動キックボードの優先度は最も低いことが判明した.
抄録全体を表示
-
九岡 大輝, 森田 哲夫, 塚田 伸也
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20123
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
わが国では未婚率の増加に伴う家族形態の変化から維持できない墳墓が増加するとともに,死亡率の増加により墓地の需要が増加すると考えられている.この問題を解決するために大都市においては樹林墓地の供用が始まっている.本研究は,地方都市における樹林墓地の供用が墓地需要特性に及ぼす変化を把握することを目的とする.樹林墓地の供用前後においてアンケート調査を行い供用前後の墓地需要特性の変化を分析した.さらに共分散構造分析により個人属性,地区特性,生活質評価,墓地需要特性の関係を検証した.分析の結果,樹林墓地供用前後で墓地の取得時期や墓地形態の変化を把握した.また,年齢,世帯構成と取得したい墓地形態の関係を把握した.さらに共分散構造分析によって墓地需要特性と生活質評価の関係を分析した.
抄録全体を表示
-
山本 航, 臼田 鉄也, 塚井 誠人
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20124
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
バイパス整備による代表的な効果は旅行時間短縮だが,地域交通ネットワークとしての容量拡大や自動車専用道路化による旅行時間信頼性の向上もみられる.本研究では,令和 5 年 3 月に開通した東広島 BP を走行する車両の ETC2.0 データを用いて,旅行時間信頼性の分析を行った.東広島 BP は広島市,東広島市の都市圏をつなぐ道路ネットワークの一部を形成していることから,同区間の代替路となる高速道路区間の旅行時間を含めた旅行時間信頼性を検討した.東広島 BP の開通により,区間全体の平均旅行時間や旅行時間信頼性が向上した一方,区間毎に詳細に分割して旅行時間信頼性を観察すると,区間毎に傾向が異なることを明らかにした.さらに,代替路となる高速道路区間においても,当該路線に比べると大きくはないが,開通後の時間信頼性効果の向上を確認した.
抄録全体を表示
-
相澤 拓斗, 原 祐輔
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20125
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究は,交通行動の利用者異質性はいくつかの基本的な交通行動パターンの混合分布で表現可能という利用者異質性の有限性と都市間の公共交通 LOS 分布と選択結果分布の違いに着目し,交通手段選択モデルの地域間移転可能性を検証した.全国都市交通特性調査データを用いて,都市規模の異なる 52 都市に対し,潜在クラスモデルによる地域間移転可能性を検証し,多くの都市で提案モデルの地域間移転可能性が高いことを示した.また,提案モデルでの地域間移転可能性が低かった東京特別区部について,説明変数である LOS と結果変数である選択結果の分布が他都市と大きく異なることが問題であることを指摘し,それらの分布を調整することで,地域間移転可能性が実現できることを示した.
抄録全体を表示
-
吉田 護, 陣川 心, 柿本 竜治
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20126
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究では,指定避難所の立地分布を考慮した徒歩による立退き避難の行動環境を評価する手法を提案し,長崎市の土砂災害警戒区域に適用,その有効性を示す.その評価手法では年齢及び道路勾配による歩行避難速度への影響をTobler関数を応用して定式化し,最寄り避難所の収容可能性及び徒歩による到達可能性の観点から住民の避難行動環境を評価する.最寄り避難所の収容可能性の低い地域の住民は,複数の避難所または指定避難所に拠らない避難行動計画,徒歩による到達可能性の低い地域の住民は車による避難や早期避難を考慮した避難行動計画の検討が必要であることが示唆される.
抄録全体を表示
-
高橋 貴生, 佐野 可寸志, 加藤 哲平
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20127
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
近年,全国各地において空き家が増加しており,管理不全な空き家による外部不経済は,防災・防犯,衛生,景観など多岐にわたる.また,物件の市場性の低下をもたらし,不動産としての有効活用の機会損失にもつながる懸念がある.そこで,本研究では成約に結び付いた空き家物件の内部的要因,立地的要因を把握するため,全国版空き家バンクに登録された物件を対象に,物件詳細情報や周辺施設,都市計画区域等を説明変数として,成約に与える影響を判別分析によって明らかにした.判別分析結果や既往研究整理から,市街化区域かつ鉄道駅や保育園・幼稚園から離れた交通利便性が低い地域が,空き家が発生しやすく成約されにくい課題箇所となる傾向にあることが明らかとなった.
抄録全体を表示
-
片山 慎太朗, 山崎 雅人, 仲 達哉, 小池 淳司
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20128
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
英国運輸省で取り組まれている広範な経済効果(Wider Economic Impacts:WEIs)は,不完全競争市場を想定した効果計測方法であり,既存の費用便益分析では計測できない効果として注目されている.一方,それらの計測手法は,理論モデルの近似的な計測方法であることから,利用者便益との二重計上が完全に排除された計測方法ではないことが指摘できる.本稿では,利用者便益との二重計上を排除するため,独占的競争を考慮したSCGEモデルと完全競争を考慮したSCGEモデルを構築し,理論整合的な方法により,WEIsの1つである集積の経済を全国47都道府県別に計測した.その結果,各地域の産業構造や移出入構造の違いによる差異はあるものの,その程度は約20~40%であることが分かった.
抄録全体を表示
-
矢端 伸一朗, 坪田 隆宏, 吉井 稔雄, XING Jian
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20129
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究では,CNN (Convolutional Neural Network)と Grad-CAM (Gradient-weighted Class Activation Mapping)を活用して,都市間高速道路を対象に事故の発生地点を予測する手法を構築する.具体的には ETC2.0 走行履歴データを用いて生成した現在時点から過去 60 分間の車両のプローブ軌跡図を入力データとし,約15km の高速道路区間における将来 30 分間の事故発生の可能性を出力する事故リスク予測モデルを,CNN を用いて構築する.続いて,事故リスク予測モデルに Grad-CAM を適用することで得られる,プローブ軌跡図中の各領域がもつモデル出力への寄与度情報を活用して事故の地点を予測する手法の構築を行う.提案手法による事故地点予測の精度検証を行った結果,naïve 予測と比較して事故地点予測誤差が 19%程度改善するとの結果を得た.
抄録全体を表示
-
浅尾 晃平, 柳沼 秀樹, 寺部 慎太郎, 鈴木 雄
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20130
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
近年,利用者減少による事業者の収益悪化や,乗務員の人手不足により,路線バスの大幅な減便または路線廃止が行われ,利用者の足が失われるといった問題が全国各地で生じている.事業者はこういった減便および路線廃止を収益改善に向けた運行効率化の一環として行うことも多いが,利用者需要への影響が十分に考慮されていないことによって利用者離れを引き起こし,さらに収益が悪化して再び減便・廃止の必要が生じることが懸念される.本研究では地域内のトリップが既知な地方都市のバスネットワークを対象に,利用者需要と収益を明示的に考慮した上で,事業者にとって実現しやすいバス運行ダイヤの生成と施策検討ツールとしての利用を可能としたバスダイヤ生成モデルを構築し,挙動の確認および施策検討シミュレーションを行う.
抄録全体を表示
-
張 宇宸, 佐藤 仁美, 姜 美蘭, 森川 高行
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20131
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
COVID-19 の沈静化に伴い,企業にとっても働く人にとってもテレワークの在り方を見直す時期に来ている.本研究では,働く人へのテレワークの影響について主観的幸福感に着目し,アンケート調査データを用いて構造方程式モデルを構築した.その結果,テレワークが直接的に主観的幸福感に影響を及ぼさないことが明らかとなった.しかし,仕事によるストレス,仕事への熱意,ワークライフバランス,及び移動時幸福感を経由し,間接的に主観的幸福感に影響することが示された.さらに,サテライトオフィス勤務が仕事への熱意に正の影響を与えること,在宅勤務を希望しているのに実施できない場合に仕事への熱意に負の影響を及ぼすことなどが確認された.
抄録全体を表示
-
浜崎 美帆, 栗原 剛, Lorenz POGGENDORF
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20132
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
2020 年にウポポイ(民族共生象徴空間)が公開され,アイヌ文化観光の振興が観光政策の中に位置付けられているが,わが国の文化観光は人々の関心から遠く,まだ初期段階にある.本研究ではアイヌ文化観光への心理的距離に着目し,心理的距離の軽減に向けた方策を考察することを目的とした.そこで,アイヌ文化観光への心理的距離を規定する概念モデルを提示し,首都圏・北海道居住者を対象とした Web 調査データに基づいて構造方程式モデリングにより仮説を検証した.分析の結果,アイヌ文化観光に対する心理的距離の軽減には個人のアイヌ文化体験が有効であり,体験メニューとしてアイヌ文化イベントへの参加,常設展示博物館への訪問,常設展での文化体験の順に人々のアイヌ文化への関心を高めることが示唆された.
抄録全体を表示
-
ハン ケイコウ, 寺部 慎太郎, 柳沼 秀樹, 海野 遥香, 鈴木 雄
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20133
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
新幹線駅は在来線駅に比べ駅の影響範囲や駅周辺の市町村に与える影響はより大きいと考えられる.今後新たに新幹線駅が立地する市町村も,同様の影響を受けることが予測されるが,新幹線駅の整備はどのように地方人口を左右するかはまだ不明確である.本研究では特定な条件で選ばれた日本全国の 1125 市町村を対象として,傾向スコアマッチング-DID 分析を行い,1995 年~2000 年まで開業した新幹線駅,2000 年~2005 年開業した新幹線駅と 2010 年~2015 年開業した新幹線駅 3 つの分析グループを分けて,地域,交通,社会などを考えながら新幹線駅の開業が周辺市町村人口に及ぼした因果効果を定量的に算出した.その結果,主要な経過都市及び終点都市以外において新幹線駅の開業は周辺市町村の人口の社会増減率に負の効果があることがわかった.
抄録全体を表示
-
岡村 元太郎, 川端 祐一郎, 藤井 聡
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20134
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
リーマンショック以降,わが国の労働現場において「人手不足感」が高まっているとされる一方で,人手不足感の決定要因に関する実証研究は不足している.本研究では,特に市場競争の激化が労働環境を悪化させ人手不足を招くという仮説に焦点を当て,政府統計を用いた時系列データの重回帰分析と独自のアンケートデータを用いたパス解析により,人手不足感の要因分析を行った.政府統計の分析からは,業況が良く国内需要が高いほど人手不足感が高まり,生産設備の投資が多く,総実労働時間が長いほど人手不足感が低下する傾向が示唆された.またアンケートデータの分析からは,市場競争の激化に伴って上昇すると考えられる需要の価格弾力性が高いほど,賃金に対する満足度や賃金上昇見込み等の労働条件が低下し,人手不足感が高まる傾向が示唆された.
抄録全体を表示
-
植澤 聖, 菊池 輝
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20135
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
「自らの命は自らが守る意識を持つ社会」を目指すことが求められている一方で,近年の災害においても,避難行動の遅れや避難意識の低さが問題となっている.本研究では災害時の避難意思に着目し,メッセージが避難意思に与える影響の把握と避難意思の促進案を提案し,その効果検証を目的とした.具体的な避難状況を想定させる web アンケート調査により,ナッジを応用したメッセージに関して 4 つの仮説を検証した.結果として,ナッジメッセージの効果は通常のメッセージに比べて避難意思を促進(仮説 1)させ,さらに損失表現の場合には強調ナッジの効果(仮説 3)が一部確認できた.一方で,本研究ではフレーミングによる効果(仮説 2)や,メッセージを具体的記述した際の効果は確認できなかった(仮説 4).
抄録全体を表示
-
喜多 秀行, 池澤 伸夫, 村瀬 弘次, 西村 和記, 粉川 朋美
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20136
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
地域公共交通計画の多くは利用者数や収支等の“交通の状況評価”に主眼が置かれ,“住民の豊かな生活の実現にどれだけ寄与するか”といった本源需要の充足にあまり目が向けられていない.原因のひとつとして,本源需要の充足を見据えた現状評価や目標設定のための適切な指標の未整備という実態が推察される.本論文では,「活動機会指標を用いた移動環境の定量評価に基づく計画策定方法論」の社会実装として策定した宝塚市地域公共交通計画の考え方と評価結果,活動機会指標による計画目標値の設定,それを達成するための事業選定,方法論が大きな支障なしに機能し計画のとりまとめに至った経緯等について報告するとともに,計画の目的を明確化したうえで定量指標による合理的根拠(エビデンス)に基づき計画を策定することの有用性について考察する.
抄録全体を表示
-
三浦 瑞貴, 上坂 大輔
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20137
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
個人が自主的に災害に対する備えを行い,平時から防災意識を醸成していくためには,リスクを定量的に示し,自然災害リスクを適切に評価するための評価指標が重要である.自然災害リスクの定量化および指標化は各国で進められてきたが,これらの取り組みは,国や州を対象としており,個人を対象としたものではない.そこで,本研究では,計量書誌学の手法を応用し,自然災害における個人の脆弱性に焦点を当てた,探索的な分析を試みる.自然災害に関する論文にトピックモデルを適用した結果,従来の脆弱性指標内には内包されない 5 つの要素を抽出し,時間性,計測可能性,個人への還元性の 3 つの観点から照合した結果,うち 4 つを個人の脆弱性を考える上での追加的な要素と結論付けた.
抄録全体を表示
-
中谷 颯太, 川端 祐一郎, 藤井 聡
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20138
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
我が国では人口の東京一極集中化が現在も継続中であるが,その一方で地方定住意識は高まっており,意に反した転居が増加している恐れがある.また,海外においては転居を頻繁に行うことに様々な弊害が存在するという研究も多数見られるが,日本において転居の弊害を定量的に分析した研究は行われていない.そこで本研究では,アンケート調査を通じて,転居と様々な心理的・身体的弊害の関連性を分析した.分析の結果,幼少期における転居が後の幸福度を下げるという傾向を始め,頻繁に転居をすることの心理的・身体的な弊害が統計的に観察され,地域定住社会を推進することが合理的な政策方針であることが示唆された.
抄録全体を表示
-
芝原 渓人, 菊池 輝
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20139
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
近年,自動車の安全技術が発達しており交通事故件数は徐々に減少しているものの,事故は無くならない.交通事故が無くならない主張の 1 つに Wilde が提唱するリスク・ホメオスタスシス理論1)(以下 RH 理論)があり,この理論には Wilde が実施した心理実験(Brinkmanship 実験)が強い根拠を与えているがこの実験で設定された得点関数がリスクへの態度を現実的に取り扱っているとは言い難い.そこで本研究ではプロスペクト理論における価値関数を得点関数として設定した Brinkmanship 実験を追試的に行い,Wilde の知見の再確認を試みた.その結果,本研究で設定した得点関数においても部分的に RH 理論の性質が確認できたが,一部の性質は再現できなかったため RH 理論は限定的な解釈が必要である可能性が示された.
抄録全体を表示
-
永田 右京
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20140
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
地域公共交通政策のうち,Mobility as a Service (MaaS) と呼ばれる分野が勃興する以前から,「交通に関連する地域の課題への対応をベースにして,市民と行政が協働して進めるまちづくり」として,「交通まちづくり」という思想体系が発展してきた.本稿ではこうした MaaS の政策進捗において,「交通まちづくり」のそれと類似する理想が実現されているか,また公共交通事業者の一方性を取り除けているかについて,2020 年度の「日本版 MaaS」の全事例を精査した.その結果,交通政策において重視される機能の維持管理に関して,多くの計画では関知できていなかった.さらに市民参加による事業精査を内部に組み込んでいる事例も少数であった.この結果から,日本版 MaaS は構想段階では「交通まちづくり」と捉えられるが,実装段階ではそうではないといえる.
抄録全体を表示
-
伏原 穂高, 大平 悠季, 清水 哲夫
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20141
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
自転車は日本において重要な交通手段の 1 つであり,COVID-19 感染症拡大期以降の生活様式の変化によって利用の場面が多様化している.国や地方自治体が自転車通行空間整備を推進しているが,道路の空間特性に応じた利用実態や地域の実情を踏まえた整備計画となっているとは言い難い.本研究は自転車プローブデータを活用し,自転車通行回数と通行空間特性の関係を実証的に明らかにすることを目的とする.東京都大田区を対象に,交通路の状況や周辺環境等と自転車通行回数の関係性を一般化線形モデルによって検証した.分析の結果,通行空間の整備されている道路区間では未整備の区間よりも通行回数が多く,より高度な整備レベルの道路区間ほど通行回数が多いこと等が示された.
抄録全体を表示
-
岩本 慎司, 岸 邦宏, 髙野 伸栄
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20142
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
北海道の都市間交通の現状として,特急列車は慢性的な赤字を抱えており,路線の維持が困難になっている.利用促進にあたっては様々な取り組みがなされているが,地域住民に対する抜本的な利用促進方策が必要である.本研究では,石北本線沿線の北見市・網走市を対象とし,札幌までの交通手段選択についてアンケート調査を行った.AHP を用いて車内空間の重要度評価と鉄道とバスでの比較を行い,またネスティッドロジットモデルを用いて高速化や車内空間の向上が鉄道の選択率にどう影響しているかを定量的に分析した.都市間鉄道の利用促進方策としては,高速化と車内空間の向上の双方が効果的であること,一方で地域住民の自家用車の選好意識が高いことから交通モード転換の意識改革も同時に必要であることを明らかにした.
抄録全体を表示
-
楢山 卓以, 岸 邦宏, 髙野 伸栄
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20143
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究は,地域公共交通における地域間幹線系統バスの高規格道路の活用方策を提案することを目的とする.鉄道廃止後は鉄道と並行する一般国道を中心に路線バスが運行されることが多い.そこで,地域間のバスでの移動において,高規格道路を通行する地域間バスと,自治体内を巡る地域内バスに分離したバスネットワークを導入すべき区間を明らかにする導入判定プロセスを構築し,これを北海道内の日高,後志,道北に適用した.その結果,目的地たる施設が市街地に集中している箇所,またIC間が10km程度離れている箇所を中心に,これが適する区間が多く存在することを明らかにした.また,道北における中川–幌延間では,提案するバスネットワークは乗継の影響により鉄道ほどの速達性は持たないことも示した.
抄録全体を表示