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中西 航
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20001
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
土木計画学の様々な分野において,大規模で高解像度なデータの利用可能性が高まり続けている.このとき,統計学で一般に用いられるモデル選択規準は,サンプル数が増えるにつれて変数の多い複雑なモデルを支持する傾向がある.しかし,これは本分野がモデル推定に期待する問題解決の方向性と整合しないように思われる場面もある.すなわち,我々が直面する具体的な問題において,データ規模に応じたモデルの複雑さをどう捉えるべきか,その際にどのような課題が存在するかは必ずしも整理されていない.そこで本稿では,著者既報であるマクロ交通流の Fundamental Diagram を地点ごとに推定する問題を例に,データに関連する課題を整理し,統計的モデル選択規準の現状を説明し,規準の性質を実例で示したうえで,今後の展望を述べる.
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波床 正敏
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20002
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
スイスでは1980年代以降,幹線鉄道でパターンダイヤが導入されたが,その後,地域輸送を担う支線等でも導入が進み,一貫した輸送体系が構築された.本研究では幹線と支線との接続駅に着目し,路線間の乗り継ぎ時間を列車ごとに調査した.幹線の列車相互では概ね平均10分以内,最大15分以内に乗り継ぎ完了し,支線と幹線相互の場合は平均16分以内で最大22分以内であった.また,全組み合わせの90%以上で毎時1本以上の接続本数,半数以上で2本以上である.さらに,平均10分以下,最大15分以下,毎時1本以上の条件を同時に満たす乗り継ぎは,幹線相互では90%近く,支線と幹線相互は60%台,支線相互は半数未満である.だが,この条件を満たしさえすれば,乗り継ぎ時間のばらつきは小さく,信頼性は高い.
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柿本 竜治, 吉田 護
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20003
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
自然災害などのようにめったに発生しないイベントに個人が直面した場合,経験不足,不完全な情報,および周囲の環境の状況認識不足により,ヒューリスティックな意思決定が優先される場合がある.このことは,避難遅れが頻繁に発生している豪雨時の避難行動を論理的な思考のみを考慮してモデル化することに疑問を投げ掛けるものである.そこで,本研究では,防護動機理論と自然主義的意思決定の双方の枠組みを援用し,豪雨時の避難行動の意思決定過程をモデル化する.具体的には,2019 年の台風 19 号で被害を受けた住民の避難行動の調査結果を用いて,避難行動意思決定モデルを推定した.そして,平時の防災への取り組みの強化や豪雨時の状況認識を促す施策等が,早期の水平避難にどの程度効果があるかをシミュレーションにより検討した.
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中村 裕貴, 村上 健志, 齊田 光, 青木 聡, 柳瀬 匡雄, 大廣 智則, 伊東 靖彦
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20004
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
北海道など積雪寒冷地では,冬期の路面凍結が車両のスリップ事故や旅行速度低下の原因となる.路面凍結対策として凍結防止剤散布が行われており,路面のすべりやすさを改善する効果(散布効果)が高い方法による凍結防止剤散布が望まれる.本研究では,塩化物系凍結防止剤の事前散布を対象に,連続路面すべり抵抗計測車(CFT)で計測された抵抗値(HFN)を換算した路面のすべり摩擦係数(μ)を用いて,散布方法の違いによる散布効果の比較を行った.その結果,本研究で実施した試験の範囲における限られた条件下での知見ではあるが,路面のすべり摩擦係数が低下したとき,排水性舗装区間では塩水散布が高い散布効果を得る傾向を示した.同様に,密粒度アスファルト舗装区間では固形剤散布が最も高い散布効果を得る傾向を示した.
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松本 修一, 恩田 泰山, 若目田 綾音, 坂ノ上 有紀, 尾野 陽子
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20005
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
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SIPの調査では,自転車対自動車の事故において,単路部における追突事故は,事故件数に対する事故死者数が非常に多いことが指摘されている.自転車事故や自転車の安全性に関する現象解析等のために,プローブ自転車を用いた研究が活発になっているが,トンネル内を扱った研究事例は殆ど存在しない.また,小嶋らの研究において,日本では,トンネル部での重大事故率が高いことが指摘されている.しかし,トンネル内の自転車事故対策は,注意喚起板設置が主流となっており,ドライバが見慣れてしまい注意が薄れる可能性がある.そこで,本研究では,北海道開発局等との共同研究として,トンネル内自転車注意喚起システムの導入効果を検証した.その結果,システム稼働時は,システムがない時と比べ,自動車が自転車を追越す際に減速効果を確認できた.
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兵藤 哲朗, 坂井 孝典, 山本 隆
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20006
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
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2018 年に創設された「重要物流道路制度」の目的の一つは,物流生産性の向上であり,国際海上コンテナ車の通行条件などが「重要性」の指標に用いられている.しかし運ばれている貨物の価値については従来,数値化されることはなく,もっぱら推計交通量で「重要性」が検証されてきた.本研究では,既存の物流センサスと道路交通センサス,そして交通量配分用の道路ネットワークデータを用いることで道路リンク単位の金額値としての Value Flow を推計する手法を開発する.具体的には物流センサスから貨物の Value 値を推計し,道路交通センサスの B ゾーン OD 表でそれを按分する.推計された Value 値を確率均衡配分計算により,全国(北海道,沖縄県を除く)の道路リンク別の Value 値を算出する.
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山本 隆, 上水 一路, 兵藤 哲朗, 根本 敏則
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20007
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
高速道路のSA・PAにおける大型車駐車場が,夜間時間帯を中心に混雑している.トラックドライバーの確実な休憩・休息機会の確保や,荷卸しのための待機などを理由に,長時間駐車が多くなり,高速道路のSA・PAに求められる機能が変化してきた.特に,高速道路を短距離しか利用しないにもかかわらず,長時間駐車するトラックが一定数存在している.これまで高速道路会社では,駐車マス拡充といった供給側の対策を中心に進めてきたが,求められる機能の変化に対応するためには,需要を料金によりコントロールことも重要と考えられる.本研究では,高速道路料金を高速道路空間占有料と捉えたSA・PA駐車場の有料化を提案する.そして,高速道路利用距離と駐車時間の関係に応じた駐車料金を設定し,その影響と導入効果について推計した.
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早川 敬一郎
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20008
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
公共交通にサブスクリプション型運賃が導入されると,人々の外出の際の交通手段選択行動はどのように変化するだろうか.また,そのとき公共交通にどのような役割が求められるだろうか.本研究では,愛知県在住の 66 名の被験者を対象に公共交通無料実験を実施し,その行動変容を分析した.実験の結果,公共交通の都度払い料金が無料になると,環境要因の影響が大きい一部の利用者を除く多くの利用者が公共交通利用を増やすこと,買い物や娯楽など自由目的の公共交通利用が増え,通勤時の公共交通利用形態が変化することがわかった.また,現状では交通弱者向けの補助的な交通機関と位置付けられている低頻度の路線は,幹線系の公共交通と一体的に利用できる環境が整えば様々な外出における端末交通として重要な役割を担う可能性があることが示唆された.
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谷本 圭志, 橋本 礼記, 馮 文浩
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20009
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
タクシーは需要が少ない地域に適した移動手段であるため,地方の小都市などでは公共交通としての役割が期待されている.しかし,需要が少ないと自ずと利益も小さいため,このような地域におけるタクシー事業の持続可能性は脆弱である.そこで,旅客の運送のみならず,買い物の代行や運転手の派遣などの兼業を実施することで利益を補完することが持続可能性を高めるための有効な策となる.ただし,兼業を実施すると本業での収入が減る可能性もあることから,事業者はこの点を踏まえて兼業の実行可能性を判断する必要がある.そこで本研究では,タクシーの日報データを用いて兼業の実行可能性を評価する手法を整数計画法に基づいて開発するとともに,実際の事業者を対象として実行可能性の評価を試みる.
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谷本 圭志, 小川 大輝, 馮 文浩
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20010
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
中山間地域では利用者の減少に伴って公共交通サービスの持続可能性が継続的に低下すると考えられる.このため,新たな収入を確保するための取り組みとして,旅客の運送と貨物の配達のサービスをあわせて供給する貨客混載サービスの導入を検討している公共交通事業者が見られる.その検討に際しては,先行している事例を参考として貨客混載サービスにどれほどの費用対効果が期待できるのかを概略的に把握することが重要となるが,そのような情報はほとんど得られない.そこで本研究では,実際に貨客混載サービスを実施している地域を対象として,どれほどの費用対効果が期待できるのかについて,車両の運行を再現する数理モデルを用いて明らかにするとともに,効果に及ぼす影響要因について実証的に検討する.
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浅田 拓海, 日原 弘貴, 後藤 宏行, 及川 宏之, 亀山 修一
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20011
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
昨今,道路インフラの長寿命化と予防保全の着実な実現にむけて,網羅的かつ定期的な点検の実施とその結果に基づくアセットマネジメントの導入が積極的に進められている.膨大な延長が対象となる舗装維持管理では,新技術の開発,活用による点検の低コスト化や省力化が喫緊の課題となっている.本研究では,市販カメラと AI を用いた簡易型舗装点検技術を開発し,北海道内の一般国道において,測定精度の評価および大規模実証実験による導入効果の検証を行った.その結果,本技術は,既存技術と同等の精度を有すること,さらに,従来の機械点検や目視点検に比べて,点検の費用および延べ作業人員数を 5~8割削減できることを示した.
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安 思奕, 青木 俊明, 鈴木 温
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20012
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究では,高齢過疎化にある秋田県の4町村で質問紙調査を行い,社会規範が定住意図に及ぼす影響を検討した.居住歴の長い高齢者が中心の回答から,次の知見を得た.すなわち,1) 他者の高い定住意図は個人の定住意図を高めるが,他者は住み続けるべきだと思っているという認知は個人の定住意図を低下させる,2) 地域の将来への不安は,定住意図を低下させる,3) 地域アイデンティティが高いほど,個人の定住意図も高まる,4) 住み続けるべきという規範は,地域アイデンティティが低い場合には定住意図を低下させるが,地域アイデンティティが高い場合には定住意図に影響しない,5) 社会規範が定住意図に与える効果は居住満足度の効果より小さいこと,などが示された.最後に,定住促進策の進め方と知見の限界が考察された.
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西垣 友貴
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20014
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
観光産業の発展に伴う観光地周辺の混雑により,観光者や住民に不満が広がっている.しかし,経済効果を考慮すると,観光産業の発展を維持しつつ混雑を解消する必要があり,そのためには観光行動の把握が不可欠である.そこで本研究では,エントロピーモデルを用いたツアー別観光者数の推計手法を構築した.構築した手法の妥当性や推計精度は,アンケート調査結果を用いて検証した.また,事前確率の有無で結果を比較し,事前確率を考慮することで,精度の向上や計算時間の短縮といった効果が得られることを明らかにした.さらに,観光者総数が未知の場合でも,事前確率を考慮することで,観光者総数の推計精度が向上した.加えて,感度分析の結果から,観光者総数が大きくなった場合でも,事前確率を用いたモデルの優位性が保たれることが確認できた.
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何 玏, 楽 奕平
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20015
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
都市交通計画制度は,最適な交通手段分担を実現するとともに,公共交通サービス水準を保障することで立地政策に貢献することが求められる.しかし,2014 年以降に都市部にも策定対象が拡大された地域公共交通活性化再生法に基づく交通計画は,サービス自体の再編効率化や事業収支改善を目指したものが多く,都市部において公共交通サービスを強化して自家用車から転換させる方向性が希薄である.地域公共交通計画制度は,都市交通計画と生活支援交通計画とを区別しておらず計画方法論が混乱していること,ローカルバス向け国庫補助の事業改善効率化へのコミットメントが計画制度に混入していることなどが問題である.このような帰結に至った歴史的経緯も明らかにした.
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塩見 康博, 坪田 隆宏, 志野 有, 藤村 和紀
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20016
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
車両制限令の一般的制限値を超える車両は,特殊車両に分類され,交差点での折進可否などを事前に審査し,通行許可を取得する必要がある.一般にこれらの処理は人手を介して行われ,大きな行政コストとなっている他,運送事業の生産性を低下させる要因となっている.本研究では,容易に取得可能な空中写真を用い,半自動で折進条件の判定を行う手法を提案する.提案手法では,判定精度の正確性を担保するため,マクロ・ミクロの異なるモジュールで構成されるものとした.実際の交差点を対象とした検証の結果,全体の正解率はマクロ判定モジュールが上回っているものの,危険側の誤判定率に着目するとミクロ判定モジュールのほうが優れた性能を示し,両者は相補的な傾向を有することが明らかとなり,両モジュールを併用することの有効性が示された.
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中垣 弦一郎, 鶴見 直樹, 三輪 富生
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20017
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
近年,世界中でエアタクシー,いわゆる空飛ぶクルマに対する関心が高まっている.機体開発が進められている一方で,利用意向や離着陸場位置などのインフラ整備に関する研究は不十分である.そこで本研究では,中京都市圏を対象にエアタクシー利用意向を調査し,エアタクシー利用行動モデルを構築するとともに,パーソントリップデータを用いて離着陸場位置の選定を行った.感度分析の結果,離着陸場の数と待ち時間が利用者数に大きな影響を与えることや,離着陸場の数を増加させる場合,都心から郊外へと配置を広げることで利用者を確保できることが示された.さらに,業務・観光目的の利用者を対象とした方が,通勤・業務・観光目的の場合より,1 台あたりで多くの利用者を輸送できることが示された.
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萩田 賢司, 新井 棟大, 森 健二, 木平 真, 矢野 伸裕
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20018
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
地理空間上における交通規制,デジタル道路地図,交通事故の統合分析システムを活用し,右折車と対向直進車の流入道路の交差角に着目して,右折直進事故を分析した.その結果,右折車からみて対向直進車の流入道路が左側に屈曲している交差点では,右側に屈曲している交差点より右折直進事故が相対的に多く発生していた.このような交差点では,対向右折車の影に隠れて対向直進車が交差点に流入する傾向にあり,右折直進事故が相対的に多く発生していると考えられる.また,昼間時や悪天候時,車道幅員が5.5~13.0m未満である場合や無信号交差点では,この傾向が顕著であった.右折車運転者が25~64才であったものや業務・通学関連時に発生した場合にも同様の傾向がみられ,移動に費やせる時間の制約が影響を与えていることも想定される.
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谷川 友彩, 姜 美蘭, 佐藤 仁美, 森川 高行
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20019
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究は,全国的に交通事故の危険度が高い愛知県における交通安全対策に寄与するために,Hierarchical ordered probit モデルを用いて交差点での自動車相互の交通人身事故における当事者の重傷度要因分析を行う.過失の軽重による当事者区分を反映することや,従来の頻度分析においても検討された地域特性を考慮することで,事故の多面的な理解を目指す.推定結果から,高齢者自身,若者や高齢者の相手,相手との車両重量差,正面衝突や右折,夜間の薄暗い状態,交差点規模,故障信号機,内部照明式拡大標識,田農用地,人口集中地区,過疎地域などの説明変数が重傷度に有意に影響を及ぼすことが明らかとなった.また,閾値に変数を加えることで,自身の年齢などの重傷度に部分的に影響する要因を特定した.
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井原 雄人, 紙屋 雄史
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20020
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
運輸部門のカーボンニュートラル達成のために,車両の電動化が求められている.しかし,バス等の商用車では,航続距離や充電時間による車両稼働率の低下といった制約があり普及が進んでいない.本研究では,時間帯ごとの発電構成及び発電手法ごとの CO2 排出係数から推計した,時間帯別 CO2 排出係数による評価手法を提案する.これを用いて電気バス導入時に,現状の仕業を維持した夜間充電と成行充電の充電パターンを構築し,CO2 削減効果及びエネルギーコストについて評価した.この結果,従来の時間帯によらない CO2 排出係数の平均値による評価と比較し,時間帯別 CO2 排出係数による評価では,CO2 削減効果が 5.6%拡大することを明らかとした.また,56.6%のエネルギーコストが削減可能であることを明らかとし,電気バスの普及促進に資することを示した.
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高嶋 晃琉, 新谷 浩一, 永岩 健一郎, 西村 悦子
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20022
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
空コンテナの車両回送に伴う台数削減のため,折りたたみコンテナ(折りコン)の導入が期待されている.しかし,折りコンを使用すれば,折りたたみ作業時間(FT)と,集積段数(NT)と同数のコンテナが集まるまでの待機時間(WT)が発生する.これらの時間の増加が車両の生産性やコンテナの流動性に負の影響を与え,折りコンの効率性を低下させる可能性がある.そこで本研究では,これらの時間の影響を分析するため,確率的シミュレーションモデルを構築する.このモデルを使用して,折りコン導入による車両台数の削減と,FT や WT に起因するコンテナの滞留時間との関係を検証する.数値実験の結果から,FT の長さが空コンテナの回送効率に与える影響が顕著であることが明らかとなった.
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棟方 遼河, 石山 翔大, 佐々木 悠貴, 有村 幹治
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20023
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
地球温暖化ガス対策の一環として職場交通マネジメントが提唱されている.本研究の目的は港湾都市である苫小牧市に立地する企業を対象に,複数台の通勤送迎バスの運行をオンデマンド化させた場合の効果を分析することにある.そのために高粒度人流データとマクロ交通シミュレーションを用いて,総移動需要をカバーするために必要なオンデマンド交通の車両台数と通勤交通量・CO2 排出量へ与える影響を評価した.その結果,自動車のピーク交通量を最大で約 96.3%削減できることを明らかにした.また一人当たりの CO2 排出量は最大で約 59.6%削減できることを明らかにした.
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國井 大輔, 谷本 圭志, 山本 尭大
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20024
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
中山間地域では共助交通の導入を検討する地域が増加している.しかし,既存のタクシー事業者にとっては旅客の奪い合いに伴う利益の減少が懸念されるため,導入に理解が得られない場面が見られる.一方で,タクシー事業者にとって非効率な運送も存在するため,そのような運送をタクシー事業者が共助交通に割り振る体制が確立できれば旅客の奪い合いは発生せず,タクシー事業者の経営改善にもつながる.そこで本研究では,この体制をタクシー事業と共助交通の一体的な運営管理体制と呼び,この体制のもとでのタクシー事業と共助交通の車両運行を再現する数理計画モデルを構築する.その上で,このモデルを実際の地域に適用し,営業所の立地などがタクシー事業者の利益に及ぼす影響を定量的に明らかにするとともに,経営改善の機会が存在しうることを示す.
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大江 航介, 田中 伸治
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20025
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
我が国における歩行者の交通死亡事故の大半は道路横断中に発生しており,無信号横断歩道での車両一時停止率の低さが課題となっている.これらの対策としてバルブアウトの導入が挙げられる.バルブアウトとは横断歩道部において歩道を車道側に拡幅するもので,ドライバーと横断者相互の視認性向上等が利点として挙げられる.そこで本研究では,3 種類の無信号横断施設(標準型・二段階型・バルブアウト型)を対象に,ドライビングシミュレータによる走行実験を実施し,ドライバーの運転行動と運転意識の両面から,各横断施設について比較分析を行った.その結果,無信号横断歩道へのバルブアウト導入により,車両の安全性及び円滑性が向上すると共に,ドライバーの運転操作の負担軽減や横断歩行者に対する視認性向上に繋がることが明らかになった.
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矢ヶ井 那津, 田中 尚人
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20026
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
まちづくりを支援する拠点となる市民センター(公民館)や活動を支援する職員数は減少傾向にあり人材確保が求められている.一方,内閣府の世論調査より働く楽しさや達成感など個人の内面から得られる報酬はワークモチベーションに影響を与える可能性がある.そこで本研究では内発的動機づけに着目し,まちづくり支援者である市民センター職員のワークモチベーションの継続理由を明らかにすることを目的とした.インタビューの結果,ワークモチベーションの継続に関する自律性,有能性,関係性についての語りを得た.特に関係性は「会話ができる」「関係の広がり」を実感できる,「ロールモデルを発見」する関係性に分類でき市民センター職員は特に関係性が高まることで,ワークモチベーションの継続につながる内発的動機づけが生じることが分かった.
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奥村 誠, 赤塚 昌哉
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20027
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
COVID-19 の流行により都道府県間の移動は大きく減少し,感染症法上 5 類への移行がなされた 2023 年 5 月以降でも以前の水準には回復していない.ドコモ・インサイトマーケティング社のモバイル空間統計から平日昼間の他都道府県滞在者を集計すると,2020 年度は全距離帯で比例的に減少していたのに対し,21 年度の減少や 22 年度の停滞は長距離帯で著しい.本研究では,最適多階層業務配置モデルを用い,全国的に業務を展開する企業の本支社の位置や規模という業務構造の変更を逆解析することを試みた.その結果,全国企業は 2022 年まで安定的に多数を占め,中期的対応を進める企業の割合がわずかに増加していること,2023 年には地域企業の構成比が増加した一方で,発生原単位の減少と距離抵抗の増大による長距離移動の減少が定着していることが確認された.
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下岸 楓季, 松中 亮治, 宇野 伸宏, 田中 皓介
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20028
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究では,複数の居住誘導施策を対象として,家計の転居行動を考慮した土地利用・交通モデルを構築し,人口減少下において,居住誘導施策が都市構造と交通状況に与える影響を定量的に分析した.家計の転居行動をシミュレートした結果,趨勢時には鉄道沿線から幹線道路沿いへと人口が移動することを明らかにした.また,施策を分析した結果,住宅補助施策と居住規制施策では高い人口誘導効果があり,徒歩分担率が上昇することを明らかにした.さらに,公共交通利便性向上施策とその他の居住誘導施策をパッケージとして実施した場合について分析し,中心商業地活性化施策との組み合わせでは人口誘導効果の観点から相乗効果があることを明らかにした.
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林 和磨, 瀬尾 亨
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20029
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
本研究は,交通容量などの交通流の性質が定まる要因の解明を念頭に置き,速度車頭距離関係の区間別かつ車両別の推定を目的とする.そのために,まず,階層ベイズを用いて Greenshields の速度車頭距離関係を区間別車両別に表現するモデルを提案した.そして,提案モデルを実際の車両軌跡データを用いて推定し,その結果を解釈し,区間や車両が運転挙動に与える影響を検証した.その結果,自由流速度と停止時車頭距離を,区間と車両が及ぼす影響を分離して推定できた.例えば,自由流速度は区間と車両から影響を受け,停車時車頭距離は車両から影響を受ける傾向にあると分かった.
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佐藤 玄佳, 室岡 太一, 谷口 守
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20030
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
認証あり
福島原発事故によって,周辺市町村の住民は避難を余儀なくされ,大きな人口変動が生じた.人口統計には国調人口と住基人口の 2 つが多く用いられるが,両者の間には差異が発生している.人口は都市計画の中で基礎的な指標の一つであり,その変化を追うことは復興をはじめとする様々な計画を進める上で重要である.本研究では,全国および原発事故前後の福島県全体の人口変動を 2 つの人口の差異に着目して分析した.分析の結果,事故前は県全体で住基人口が多かった傾向が,事故後は主に中核市で国調人口が住基人口を上回り,その傾向が 2020 年も続いていることが明らかになった.一方をみるだけでは把握できない 2 つの人口の差異は,福島県においては特に「望郷指数」としてとらえることもでき,人口減少下における計画策定などへの展開が期待される.
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松本 浩和, 大門 創
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20031
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
ジャーナル
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本研究では,これまで整理されてこなかった公共交通利用促進策による駐車場の附置台数低減制度に着目し,自治体等が公表している資料から 13 自治体の制度を収集・整理した.それら制度の内容に関する比較検証を行い,自治体ごとの差異や共通点を明らかにした.それらの整理結果と制度の利用状況に関する整理結果を基に制度の考察を行い,施設単位での緩和の意義と本制度のメリットを提示したうえで,制度としての安全性,制度としての公平性,制度の説明責任,の各観点から制度上の課題や留意点,検討すべきポイントについて考察を行った.
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室岡 太一, Sukhbaatar ANARSUVD, 久米山 幹太, 谷口 守
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20032
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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脱クルマ社会の実現のため,x-minute city の都市計画理念の関心が世界的に高まっている.我が国においても居住地をベースとした満足度の高い生活環境を構築することが重要である.しかし,自宅から x 分で生活サービスまで到達可能な地域に対する満足度は不明であった.そこで本研究では,個人の価値観を切り口とし,x-minute city の実現による満足度の高い居住地環境の形成に向けた方向性と課題の検討を目的とし,独自アンケート調査により分析を行った.その結果,1) D 群は商業施設まで 15 分でアクセスできる居住地への満足度が他の類型と比較して最も高いものの,2) 90%以上が買い物に自動車を利用していることが明らかになった.
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薄 雪晴, 鈴木 雄, 寺部 慎太郎, 柳沼 秀樹, 濱田 知己
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20033
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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近年,人口減少や地域格差等により,生活関連サービス産業の撤退が進んでいる.このことから,買い物困難者が増え,店舗立地や閉店問題が注目されている.一方,大都市圏の地域特性は複雑であり,店舗の競争や地域内での経済的,社会的差異を表現するために,空間データの統計解析手法の検討が重要である.既往研究では,地域空間特性の視点から店舗立地を評価する研究がほとんど見られない.そこで,本研究は地域の空間特性を考慮した店舗立地モデルを構築し,それぞれの立地因子を明らかにした.さらに,ロジスティック回帰分析を用いて,店舗の開店閉店要因を分析した.
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桐木 峻平, 有村 幹治, 溝口 龍太
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20034
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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近年,持続可能な都市計画においてウォーカブルなまちづくりが注目されている.本研究の対象である苫小牧市では中心市街地の空洞化などの課題を抱えており,苫小牧駅南口をウォーカブルな人中心の空間へ転換することを目指し,中心市街地の再生が期待されている.しかしながら,苫小牧市では 2009 年以降 PT 調査が実施されておらず,最新の人流データが存在しない.そこで本研究では,デジタル化の進展に伴い開発された高粒度人流データを用いて徒歩移動ネットワークグラフを作成し,モジュラリティ指標などを活用して徒歩圏クラスターの拠点性を把握した.その結果,モジュラリティ指標を用いたネットワークハブ評価に関する手法に有用性が確認され,苫小牧駅南口を拠点としたネットワークハブ形成に向けた知見を得られた.
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蛯名 将平, 佐藤 陽介, 佐々木 悠貴, Tran Vinh Ha, 有村 幹治
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20035
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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2022 年 2 月札幌市では,大規模な雪害が発生した.JR・バスでは運休や遅延,自動車では渋滞が発生し,交通全体が大きな影響を受けた.これに対応するため,雪害時の各交通手段の移動の変化とその要因を理解した上で優先すべき手段・地域を特定し,効果的な対策を行う必要がある.そこで本研究では,各メッシュの出発・到着トリップを交通手段別に把握できる携帯電話の位置情報集計データ,及び降雪情報を用いて,大雪時の降雪パターンと移動回数の関係性を把握した.また,地域別の利用増減を客観的に評価するためエシェロン解析を行った.これにより滞在人口の増加・減少傾向のある地点を地図上に示し,大雪時の各交通手段の移動の増減とその集積パターンを明らかにした.
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金家 侑希, 瀧本 康太, 江戸 元希, 有村 幹治
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20036
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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近年,AI カメラやミクロ交通シミュレーションを活用した交通流解析が進展している.本研究では,観測地で車両判別を行うエッジ AI を利用し,リアルタイムで渋滞予測を可能にする機械学習モデルを構築した.札幌市新川 IC を対象に,ミクロ交通シミュレーションを近似する機械学習モデルを構築し,エッジ AI の車両判別精度が渋滞予測に与える影響を評価した.NN と LGBM を用いて学習モデルを作成し,車両判別精度のばらつきによる予測精度の変動を分析したところ,ばらつきがある場合は LGBM が NN を上回る性能を示した.またミクロ交通シミュレーションの代替として機械学習モデルを用いることで予測時間を大幅に短縮できることが確認された.今後はさらなる精度の向上が課題となる.
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佐谷 一樹, 金子 雄一郎
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20038
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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本研究では東京圏で過去に台風接近や大雪が予想され,鉄道事業者による計画運休や国土交通省と気象庁による大雪に対する緊急発表が行われた事象を対象に,まず携帯電話位置情報を基にしたモバイル空間統計を用いて 500m メッシュ単位で滞在人口の推移を把握した.次に東京都心 5 区へ鉄道で通勤している就業者を対象に Web 調査を実施し,悪天候予想時における出社行動を分析した.その結果,平常時と比較して地域別で滞在人口の増減傾向が異なり,出社等の自粛や早期の帰宅開始などの行動変化が生じたことが推測された.また Web 調査からは,日頃の在宅勤務頻度や通勤時間,職種や業種が出社と在宅勤務の選択要因となっていることがわかった.以上の分析から,悪天候予想時に,業務を継続し通勤需要の減少を図るマネジメントが可能であることが示唆された.
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山中 豊
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20039
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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自動運転車の開発が進んでおり,プログラムが主体となって運転制御を行う自動運転レベル3以上の技術が登場した.これに伴い,事故発生時の責任所在などの議論が行われている.一方で自動運転車におけるトロッコ問題が注目されている.トロッコ問題は命の選択をテーマとする哲学的な問いである.人は何をもって正しいと判断するのかという正義の価値観の議論はいまだ結論が定まっていない.しかし自動運転車の制御にはプログラムの定義が必要である.では正義の価値観をどのように定義すればプログラムとして実装できるのか,それは自動運転車の社会受容性においてどのような意味を持つのか.本研究ではトロッコ問題を功利主義,義務論,利他主義,二重結果論の四つの類型に整理し,技術,倫理,法律の観点から自動運転車における実現性の検討を行った.
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喜多 秀行, 上坂 和子, 山田 崇, 村瀬 弘次, 國井 大輔
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20040
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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“既存路線バスのバス停まで到達できない住民の増加”と“公共交通維持経費の増大”の狭間で,多くの自治体が苦慮している.その一因は(共助輸送を除けば)公共交通とマイカーの 2 つしか選択肢がない点にある.本研究では,パーソナル・ビークル(PV)に着目し,ラストワンマイル問題解消への PV の寄与を定量的に推計する.また,PV 利活用社会を実現する上で,PV に対する住民の利用意識,走行環境,入手環境が同時に整うよう関係者が協調しなければ状況の改善が図れない相互依存的構造が存在していることを指摘し,この構造を打破して PV を利活用しやすいしくみを公的に整備するための自治体支援パッケージの設計枠組みを提案する.
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何 玏, 楽 奕平
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20041
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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規制緩和後,生活交通を確保する役割は自治体が負うこととなった.公共交通を自治体の生存権保障の一手段と位置付けるならば,自治体には生活に必要な最低限度の公共交通を特定して維持することが求められる.しかし実際には,収支率や利用者数を指標に一定の利用度のある公共交通を維持するという考え方や,地域住民の努力を公的補助の条件とする考え方を採る自治体が少なくない.本研究は,国・自治体の政策文書やそれに影響を与えた専門家の文献を分析することを通して,それらの議論がコミュニティバスブームの時代的制約も受けてミニマム保障のための公共交通と追加的な利便性向上のための公共交通とを概念的に区別してこなかった問題があることと,国・自治体によるミニマムな公共交通の特定と保障という政策目的が希薄化していることを指摘した.
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奥嶋 政嗣, 豊田 哲也, 牧田 修治, 森本 寛太郎
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20042
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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地方圏の人口減少を緩和するためには,出身者のふるさとへの回帰行動の促進を図ることも必要である.本研究では,初職時に県外で就職した徳島県出身者を対象として,帰県移住の要因を明確にすることを目的とする.特に,帰県時までの経過期間と年齢時点による意思決定要因の差異に着目する.そのため,県外就職者のアンケート調査への回答結果に基づいて,帰県移住に関係する要因を分析した.帰県時までの経過年数には,ワイブル分布を仮定した分布形状と関連する要因を特定した.その結果,帰県移住に関わる要因は,それぞれの年齢時点により異なることが明示された.初職地により帰県移住には差異があり,40 歳までは出身地への自動車旅行時間に応じて,帰県率が低下する.一方,40 歳以上では給与格差に対応して,帰県率が低下することが示唆された.
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鶴 元史, 木村 真也, 宮﨑 耕平, 中野 宏俊, 山本 隆, 上水 一路, 花田 大輝
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20043
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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高速道路における大型車の駐車需要の増大に対し,駐車マスの配置レイアウトを見直し,既存用地の利用効率最大化・最適化を図る戦略がある.通常の駐車マス間の車路を駐車スペースに転用し,出発時刻順に 1 列に 3 台駐車する隊列駐車方式もその一つである.本研究はこの隊列駐車マスと通常駐車マスの併用方式を前提として,必要マス数を最適化する諸条件と整備効果を検討したものである.新東名高速(上り)掛川パーキングエリアを分析対象として検討した結果,この駐車方式を制御する 3 つのパラメータの適切な組合せにより,利用効率を評価する指標であるスペース占有率が,通常駐車マスのみの場合と比較して上昇することを示した.さらに各制御パラメータがどのような特性を有するのかを明らかにした.
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横山 茂樹, 金井 義和, 岩倉 成志
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20044
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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日本では,営業利益が出ている都市鉄道の混雑緩和対策は鉄道事業者が取り組むべきとする議論がなされることがある.一方で鉄道事業者にとって混雑緩和は利益につながりにくいと言われるが,公には定量的な根拠が示されていない.本研究では,東京圏の鉄道事業者 4 社を対象とし,交通政策審議会答申第 198 号に基づく交通需要モデルを用いて,朝ピーク時間帯の運行本数増加による輸送力増強を行った場合の鉄道需要および運賃収入を推計した.また,運行本数増加に伴う費用の増加を試算し,収入と支出の変化を示した.その結果,輸送力を 10%増強させたケースでは 3 社が,30%増強させたケースでは 4 社すべての収支は減益となった.民間企業である鉄道事業者にさらなる混雑緩和を求める場合,何かしらの収支改善につながる支援が必要なことが明らかとなった.
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瀧本 康太, 高田 光太, 有村 幹治
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20045
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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我が国では平常時・災害時を問わない道路の常時観察を目指し,CCTV カメラを用いた AI 観測手法として AI カメラの運用要件・精度基準が選定された.また,AI 観測に関しては追加学習の有用性が周知されており,学習コスト削減や教師データ確保のための手法研究も活発化している.しかし,教師データと AI カメラの精度要件の関係性について補完する研究が不足しており,全国的な AI 観測の普及に向けてデータセットの選定に関わる精度検証が必要であると考える.本研究では一般に公開されている 2 種のオープンデータセットと独自の半自動化手法で作成したオリジナルデータセットを用い,AI 観測を実施した.結果として,教師データの作成・選定と AI カメラの精度要件の関連性を明示し,留意すべき諸事項について考察した.
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桐木 峻平, 高田 光太, 有村 幹治
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20046
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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近年,居住地の近隣における都市機能の近接性を重視する X-minute city 理念が世界的に注目されている.この理念に基づき,住宅と都市機能の近接性や居住者の生活利便性を評価し,徒歩によるアクセシビリティの現況の公平性を把握することは,「生活必需サービスへの公平なアクセス性」を将来的に保証する上で必要だと考えられる.本研究は札幌都市圏を対象に,各種生活利便施設別ポイントデータと 100m メッシュ人口データを用いて,居住者の徒歩によるアクセス性を定量的に評価した.さらに,ローレンツ曲線およびジニ係数を用いて施設の集積と偏在状況について分析した.その結果,76.4%のメッシュ,全人口の 87.1%が「15 分都市」の理念に基づく生活利便性を享受していることが明らかになった.
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西村 航太, 橋本 成仁, 海野 遥香, 氏原 岳人
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20047
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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近年,我が国における道路政策の方向性として安全性や快適性が確保された歩車共存の生活道路の実現が掲げられており,そのような道路空間を実現させるためには,生活道路における利活用の観点も踏まえた「歩行者が優先」という意識を今後より一層浸透させていく必要があると考えられる.以上から,アンケート調査によって歩行者優先意識に関連する要素を定量的に明らかにした.分析の結果,生活道路において歩行者が優先して通行できれば十分と考える意識と生活道路の利活用までを許容できる意識において,それらの意識の形成原因が異なる可能性を示した.また,生活道路において利用者の滞留や利活用を許容できる意識の醸成に向けて,地域との関わりの深さや安心安全な環境づくりなどが重要である可能性が示唆された.
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西嶋 晃佑, 片桐 紳太郎, 三輪 富生, 田代 むつみ, 森川 高行
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20048
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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本研究では,無信号交差点における協調制御手法を検討した.全車両が位置や速度を共有できるコネクティッド自動運転車である状況を仮定し,それらがスムーズに合流するための協調制御モデルを深層強化学習により構築し,ミクロシミュレーションにより評価した.無信号T字交差点を対象とし,衝突を回避しつつ,旅行時間を最小化できる加速度を遂次的に指示するモデルを,Deep Q-NetworkとSoft Actor Criticを用いて構築した.分析の結果,本手法では平均速度を高めることができ,効率的な交通制御が可能であることが示された.特に,Soft Actor Criticにより構築された協調制御手法は,Deep Q-Networkを用いた協調制御より安全で,安定した車両制御が可能であり,さらに優先非優先制御と比較しても,タイムロスが少ない車両制御が可能であることが確認された.
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三村 泰広, 野下 浩平, 小塚 みすず, 北折 充隆
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20049
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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本研究は,知的障害者の公共交通利用時における特性についての周囲の他者別の認知状況と,周囲の他者自身が公共交通利用時に同乗する知的障害者が困難な状況に陥っている場面に遭遇した際に支援するか否かの関連性を分析することで,今後の公共交通を利用する知的障害者に対して「手を差し伸べない」といった心のバリアの解消に向けた政策的介入のための基礎的知見を提供する.分析の結果,乗客などの第三者に対しては,知的障害者が公共交通を利用する際に,本人がどのような状況に陥っているかを優先して伝えていくことが,知的障害者の公共交通利用時における心のバリアの解消,軽減において特に有効であることを明らかにした.
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齊藤 龍, 松島 格也, 多々納 裕一, 廣野 洋太, 関井 勝善, 山田 進二
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20050
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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気候変動により激甚化する自然災害のなかで,企業の持続可能な事業継続体制を構築することは喫緊の課題である.本稿は,企業の事業継続リスクアセスメントに貢献することを目的に,災害復旧時に必要な臨時の事業継続費用,主に人件費に着目し,その支出行動の要因を回帰分析を使い定量的に説明し,支出額を事前に推計することを試みるものである.具体的には,水害復旧時における被災企業の支出行動に関する意思決定と復旧にかかる臨時の事業継続費用の関係を定式化し,2018 年 7 月の西日本豪雨災害を対象に実施した被災企業へのアンケート調査データを使い,打ち切り回帰モデル(Tobit タイプ 1)で事業継続支出行動の要因とその影響度を定量的に評価する.
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恒川 祐亮, 海野 遥香, 寺部 慎太郎, 栁沼 秀樹, 鈴木 雄
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20051
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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都心部の一極集中により地方では地域づくりの担い手が不足していく中,交流人口と定住人口の間に存在する「関係人口」の存在が注目されている.特に現地へ訪問して関わる「訪問型関係人口」は,地域や地域の人々と関わりを持つ為,担い手として期待されている.本研究では,現地へ訪問することの重要さから訪問型関係人口に焦点を当て,遠隔で地域と関わる「非訪問型関係人口」や,単に観光や帰省を行う「交流人口」との変遷要因を,地域意識などの側面から把握する.分析の結果,地域の人と関わるサイトの利用者や,手や体を動かす活動を趣味としている人,地域の魅力に満足している人,移住意欲がある人などが訪問型関係人口へ移行し,居住年数が長い人や,外食や勉学を趣味としている人が非訪問型関係人口や交流人口へ移行していることが分かった.
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波床 正敏, 高野 晋作, 田中 辰弥
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20052
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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本研究ではPERT/CPMを参考に,「結節点駅で必ず短時間で乗換が実現する公共交通網(同期運行ネットワーク)」の条件を最小費用で構築する計算手順確立が目的である.PERT/CPMでは大別して余裕日程解消段階とその後の追加的改善段階に分けられ,前者ではクリティカル作業とフロートの確認,フロートを解消しながらクリティカル作業の日程短縮が繰り返し行われる.一方,同期運行ネットワーク構築でも,結節点での待ち時間解消とその後の追加的改善に大別できる.前者の作業が本研究の対象であり,結節点間の時間的距離と運行周期からPERT/CPMでのフロート相当の待ち時間を求め,待ち時間解消およびリンクの所要時間短縮をネットワークの断面において繰り返し実施するという計算手順を経ることで,同期運行ネットワークが実現できることが確認された.
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森 博子, 園原 舜平
2024 年80 巻20 号 論文ID: 24-20053
発行日: 2024年
公開日: 2025/07/01
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道路幅が狭く樹木の生い茂るような道路において,ドライバーが標識を見落とし交通事故や訴訟に発展する事例があるため,標識の視認性の検討が必要である.しかしながら従来研究では,街路での検討が多く,そのような道路環境は着目されていない.本研究では,その一検討として,ドライビングシミュレータを用いて山道と道路標識を再現し,視標色による視認性の違いを実験的に検討した.結果より,緑葉が生い茂る山道に関しては,制限速度標識の視認時間は黄色・赤色・青色・緑色の順に短く,一時停止標識の見落とし率は有意差がなかった.同一道路上で緑葉を紅葉にした結果,緑葉の場合とは視認性が異なり,赤色の見落とし率が最も高く,視認時間は緑色よりも0.68秒有意に長かった.紅葉における赤色の標識の視認性を高める対策の必要性が示唆された.
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