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阿部 孝章, 吉川 泰弘, 木岡 信治
2016 年72 巻2 号 p.
I_598-I_603
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
本論文は,3次元 MPS (Moving Particle Simulation)法により,杭構造物との衝突による氷板の破壊過程に関して粒子法による3次元的なモデル化を行ったことを報告するものである.本モデルは氷板と杭構造物を共に連続体として取り扱っており,氷の動的な挙動は,まとまった計算粒子群の挙動として表現される.氷板破壊及び杭構造物周辺での破壊モードに関する実験と,数値解析結果との比較を通じ,本モデルの妥当性検証を行った.また,数値解析結果に関する定量的な検討も行っており,氷の破壊モードの変化は氷板内を伝播する圧力波に由来し,それに大きく影響を受けることが示された.それに加え,本モデルの氷板衝突により発生する衝撃力予測に関する適用性も示された.
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山本 健太, 磯田 隆行, 斉藤 直
2016 年72 巻2 号 p.
I_604-I_609
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
沿岸域に暴露された鉄筋コンクリート構造物は,塩分や炭酸ガスなどの多様な劣化作用を受け,その劣化過程も様々である.本稿では,潮位差3mを超える瀬戸内海に面する火力発電所の海洋・陸上構造物を対象として,鉄筋腐食の状態とコンクリートに影響を及ぼす要因を調査して劣化特性を分析した.その結果,海岸構造物と陸上構造物でその劣化要因が異なり,ひび割れのない健全な部材を対象とする場合,塩化物イオン浸透が主な劣化要因となる海洋構造物において15~20年程度,鉄筋かぶりが少なく中性化の影響を受けやすい陸上構造物においては25~30年程度で,鉄筋が腐食環境に至る可能性があることが明らかとなり,当該材齢が維持管理上の安全側の目安となることが示唆された.
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岡崎 慎一郎, 釜本 拓哉, 松島 学
2016 年72 巻2 号 p.
I_610-I_615
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
RC構造物表面に生じた腐食ひび割れの開口幅から,鉄筋腐食量を推定する手法の構築を目標に,実験的検討を行った.種々の曝露環境に置いたRC試験体を対象に鉄筋腐食量とひび割れの開口幅の関係について検討した結果,コンクリート中の塩化物イオン含有量を支配する曝露期間で,各種曝露期間および鉄筋腐食量を正規化することにより,湿潤もしくは乾燥状態の異なる曝露環境での曝露期間による腐食量の推定が可能であることを確認した.また,干満帯および飛沫帯に相当する曝露環境ごとの,鉄筋腐食量とひび割れ開口幅の関係を整理した.
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藤田 孝康, 中村 克彦, 笠井 哲郎, 冨川 裕一, 丸山 敏生, 内田 智
2016 年72 巻2 号 p.
I_616-I_621
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
漁港施設の機能診断は,その簡易化や結果の精度向上,および老朽化予測の精度向上等,多くの課題がある.また,海水中の硫酸塩の影響でコンクリート自身が劣化し,時間経過とともに進行するとされ,長時間にわたる継続的な調査の必要性が指摘されている.
本研究は,長期海水暴露の供試体の圧縮強度等の変化を確認し,非破壊検査で測定される動弾性係数,および機械インピーダンス値と比較することで,非破壊検査手法の精度向上への寄与をねらいとしている.海水暴露の条件下では,従来報告されている傾向と矛盾しないことを確認した.また,硫酸マグネシウムの添加によって,表面の劣化(剥がれ,流出)が発生し,その結果,供試体質量が減少することが確認された.さらに,動弾性係数,圧縮強度について,硫酸マグネシウムの添加により,劣化が促進される結果となった.
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田中 豊, 加藤 絵万
2016 年72 巻2 号 p.
I_622-I_627
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
港湾構造物の主要な構造部材である鋼矢板等の鋼材の肉厚測定は,1施設の限定された数ヶ所で実施される.測定値はブロックごとの代表値と見なされるが,鋼材の腐食環境は延長方向および水深方向ともに均一でない場合が多い.そこで,限られた測定データから構造物全体の腐食傾向や分布が推定できれば,より詳細にブロックごとの耐力評価や腐食速度が評価できると考えられる.
本研究では,クリギング法を用いて,空間分布予測モデルおよび肉厚測定間隔に関して検討した.その結果,適切な空間分布予測には,ナゲット効果を考慮すること,理論バリオグラム関数は適用するデータに応じて選定する必要があるとわかった.また,検討対象とした施設では,測定点間隔が20m以下であれば,構造物全体の肉厚減少量の分布を予測することができるとわかった.
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磯田 隆行, 林 稔, 齊藤 直
2016 年72 巻2 号 p.
I_628-I_633
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
海洋鋼構造物の防食方法として,アルミニウム陽極による電気防食(流電陽極方式)が広く採用されているが,電気防食の維持管理では,定期的に潜水等による目視調査が必要であり,陽極全数の調査が困難であるほか,陽極材の耐用年数が設計耐用年数を超過するなど,課題も多く残されている.本稿では,陽極取替後19年が経過した鋼管杭ドルフィン式桟橋を対象として,全陽極の消耗量と外周杭の全ての電位を測定した結果から,簡便な電位測定調査による陽極残質量の推定法の検討を行った.桟橋構造物全体が連続した電気回路としてモデル化した電位推定モデルを構築するとともに,汎用できる最適な電気防食の維持管理方法についての提案を行った.
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大久保 豊, 山田 耕一, 辻 博和, 長坂 洋光, 羽山 真介, 村上 和男, 川西 龍一
2016 年72 巻2 号 p.
I_634-I_639
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
覆砂材の有無や種類によって底層水の溶存酸素(以下,DOと略す)量の改善効果がどのように異なるか等を,室内実験により検討した.実験方法としては,アクリル製カラムにて東京湾で採取した不攪乱底質を用いた比較バッチ実験を採用した.所定の条件のもと,覆砂材の違いによって,直上水のDO消費速度やpH等がどのように違ってくるかを把握することに特化する内容とした.材質や粒径の異なる9種類の覆砂材を用いて設定した各ケースについて,直上水のDO消費速度等を算出し比較した結果,材質としてはシラスや石炭灰造粒物,粒径としてはより細かい方が,概ねDO消費速度が小さい傾向が見られた.
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斉藤 直, 木戸 健一朗, 須崎 萌実, 桑原 智之
2016 年72 巻2 号 p.
I_640-I_645
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
水底の土中に含まれる有機物の分解によって生産される栄養塩や硫化水素等は,溶存態の形態で土中に蓄えられる.この栄養塩等は,温度等の土中環境や有機物の形態などの諸条件によって土中での栄養塩等の生産量が変化するほか,土中から水中への溶出過程や水中の躍層の形態等の拡散に影響する水域の諸条件によっても変化する.本稿では,汽水湖の中海を対象として,これらの諸条件の異なる場の水底土と水の栄養塩の分布状態を推定し,栄養塩等の生産に影響する土中の有機物の形態や水中への季節的な溶出特性,水温の鉛直分布の変化から栄養塩の分布形態の評価を行った.この結果,水底土中では有機物分解速度に影響する不安定な易分解有機物の影響や積算温度が,水中では水温躍層の季節変動が栄養塩等の溶出や濃縮を支配しているものと推察された.
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宇野 宏司, 北村 美咲, 辻本 剛三, 柿木 哲哉
2016 年72 巻2 号 p.
I_646-I_651
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
閉鎖性水域では,夏季に底層付近の水塊が貧酸素状態になり,底生生物の大量死を引き起こすなどの問題が生じている.一方,局所的な集中豪雨等による底質の更新によって湾奥部の貧酸素状態が解消される可能性があることが予想されるが,海域での事例に比べると都市河川河口部を対象に調べられた報告は少ない.本研究では生田川(神戸市,2級河川)の河口域において表層砂を採取し,これを用いた室内実験を行い,流動特性の異なる2地点(生田川本川・人工わんど)での底質の酸素消費速度の時間変化や有機物量との関係を明らかにした.滞流性の強い人工わんどでは本川よりも酸素消費速度,有機物量ともに多く,高い生物活性が示された.
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秋山 吉寛, 井芹 絵里奈, 岡田 知也
2016 年72 巻2 号 p.
I_652-I_657
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
侵略的な外来生物であるムラサキイガイは,港湾構造物表面に密生し,多量の糞を排泄することによって底生環境の富栄養化を増長する.しかし,本種の糞による底生環境への影響は,未だに定量評価できていない.本研究は,ムラサキイガイの糞の形態的特徴を用いて沈降物の中から本種の糞を判別する手法を開発することを目的とする.東京湾で採集した様々な成長段階の個体の排泄した60個の糞の形態を顕微鏡で観察した結果,「形が細長」,「幅が均一」,「形が扁平」,「縦筋がある」の4種の形態的特徴は,全体の86.7%の糞が共通してすべて保有していた.これらの特徴に基づき,沈降物中に含まれる本種の糞の正確な抽出が期待される.
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森本 優希, 中本 健二, 中下 慎也, 日比野 忠史
2016 年72 巻2 号 p.
I_658-I_663
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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広島市中心部を流れる京橋川河岸に堆積した有機泥に起因する環境汚濁を改善するため2013年に約1.5kmに渡って石炭灰造粒物(GCA)が散布された.造粒物層の上層には藻類が繁茂し生態系の改善が進んでいる.石炭灰を主原料とするGCAの主成分はSiO
2,CaO等の酸化物である.石炭灰造粒物の特性として非晶質であるがガラス(SiO
2-Al
2O
3系)を主体にSiO
2が含有されており,ミネラルであるCa,Siイオンの溶出能力が高い.本研究の目的はGCAから溶出するミネラルと藻類繁茂の関係を明らかすることにある.藻類繁茂のメカニズムを明らかとするため,Siに注目し感潮域干潟でのSiの時間的変化や堆積泥中に含まれるSiやクロロフィル-aを分析し検討した.
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村上 啓介, 陶山 亮哉, 黒枝 亮太, 真木 大介, 竹鼻 直人
2016 年72 巻2 号 p.
I_664-I_669
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
深い円弧状の断面を持つフレア型護岸が提案され,その越波阻止機能や波圧特性が,主に断面二次元の条件下で検討されてきた.フレア型護岸の実海域における検討事例や適用事例が増え,斜め入射波に対する越波阻止機能や波圧特性に関する知見が求められている.斜め入射波に対するフレア型護岸の換算天端高係数の考え方については既に検討されている.一方で,作用波圧の特性に対する波の入射角度の影響については検討されていない.斜め入射波に対するフレア型護岸の波圧強度の考え方を整理することは,護岸断面の設計において重要である.本研究では,斜め入射波がフレア型護岸に作用する場における波圧特性を水理模型実験により検討した.また,フレア型護岸の実海域における検討断面を対象に,作用波圧に対する入射波角度の影響を数値計算により評価した.
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福本 幸成, 佐藤 功也, 長谷川 巌, 永井 紀彦
2016 年72 巻2 号 p.
I_670-I_675
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
再生可能エネルギーの導入を進める一環として,洋上風力発電の現地実証研究が進められている.洋上風車で発電した電力を陸域に供給するためのケーブルは,重要な構造物である.しかし,ケーブル保護管のような付帯構造物に作用する波圧の評価方法について,十分な知見が蓄積されているとは言い難い状況である.そこで,二次元水理模型実験によりケーブル保護管に作用する波圧を検証した.ケーブル保護管が洋上風車基礎部本体工の背面側に配置される場合にも,基礎部本体工の左右を回り込んだ波が背面で衝突して,衝撃力が発生する場合があることがわかった.波作用方向に対するケーブル保護管の位置による,作用波圧の違いが明らかとなった.
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越智 聖志, 木村 克俊, 中村 彰吾, 宮武 誠, 上久保 勝美, 袖野 宏樹
2016 年72 巻2 号 p.
I_676-I_681
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
緩傾斜護岸では,高波浪時において護岸背後の道路で通行障害が発生することがある.本研究では,まず現地調査を行って,越波による車両の危険性を明らかにした.水理模型実験では,3種類の周期条件に対して波高を変化させて,(1)海側車線部における最大越波水脈厚,(2)越波流量,(3)車両に働く水平波力,の特性を明らかにした.また,最も周期の長い条件に対して,最大越波水脈厚の空間分布を示した.さらに,最大越波水脈厚を指標として,車両に働く波圧分布を定式化するとともに,車両滑動実験によりその妥当性を確認した.
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平野 瑞樹, 木村 雄一郎, 水谷 法美, 平石 哲也, 間瀬 肇
2016 年72 巻2 号 p.
I_682-I_687
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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フラップゲート式防潮堤は,通常地面に倒伏し,水位に追従して起立・倒伏を行う津波防御施設である.従来型のフラップゲート式防潮堤は,両側部戸当り内に扉体動作開始の補助,ならびに動作完了時の制動の役割を果たすカウンターウエイトを設けている.しかし,カウンターウエイトは,扉体先端の両側2点で扉体本体を支持するため,径間の広い開口部への適用は現実的ではない.そこで,カウンターウエイトを扉体の背後に設置し,複数の扉体を緩やかに連結することで,支持間隔の長大化を抑制した長径間型フラップゲート式防潮堤の提案を行う.本研究では,8門の扉体を有した実験模型を対象とし,津波を模擬した水位変化に対する扉体動作の確実性,扉体に作用する波力等を計測することで当該設備の防御性能および成立性の確認を行った.作用させる模擬津波の条件や実験模型の波向き角度を変えた一連の水理実験を通じて,扉体には,設計可能な範囲で荷重が作用することがわかった.また,全ての実験条件で扉体は正常に連続した防潮壁を構築し,当該設備の防御性能を確認した.
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井下 恭次, 藤家 亘, 矢永 純一, 武元 将忠, 小野 英治, 白谷 栄作
2016 年72 巻2 号 p.
I_688-I_693
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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出水時に有明海湾奥部に流入した筑後川河川水の挙動に及ぼす吹送流の影響を明らかにするために,国土交通省観測のHFレーダによる表層流データを用いて,流入河川水を模した粒子追跡シミュレーションを行い,有明海湾奥部及び諫早湾で実施されている塩分等の連続観測データ,月 回の塩分平面分布データによる比較検証を行った.粒子追跡シミュレーションは,2013年,2014年夏季の月1回の塩分平面分布調査前の出水期間を対象として行った.その結果,有明海湾奥部に流入した河川水の挙動は,出水規模や潮流に加えて吹送流の影響を強く受けることが確認された.北寄りの風が卓越する場合には比較的速やかに諫早湾方面に輸送されるのに対し,南寄りの風が卓越する場合には,河川水は湾奥沿岸域に吹き寄せられて有明海湾奥部における滞留時間が長期化しやすくなると考えられる.
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中村 倫明, 鷲見 浩一, 小田 晃, 武村 武, 落合 実
2016 年72 巻2 号 p.
I_694-I_699
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
福島沖における放射性物質は現在においても依然として懸念されるところである.放射性物質が中長期に亘って影響を及ぼしている背景には,継続的な海域への流入があるからと考えられる.本研究では,福島前面海域における河川から負荷された放射性物質に対し,太平洋全域モデルからネスティング手法を用いて細分化した3次元力学モデルを用いて将来の濃度予測を行うことである.
計算の結果,モデルは実測値を満足するものであることが確認された.また,予測された濃度から人体への影響を評価した場合でも大きな影響はないことが推定された.
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Ngoc Thanh NGUYEN, Sota NAKAJO, Toshifumi MUKUNOKI
2016 年72 巻2 号 p.
I_700-I_705
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
Interaction between estuaries of a pair is tremendously important since evolution of an estuary will significantly impact to other and again. Lack of knowledge about the relation of them could probably result in unexpected consequences to one when implementing certain approaches to exploit, operate, maintain or protect other. The aim of this study is to investigate mutual interaction between Dinh An estuary and Tran De estuary of Mekong River in Vietnam under variations of upstream conditions. River discharge, water level, suspended sediment and salinity concentration were collected in the study area in 2009. Estuarine, Coastal and Ocean Modeling System with Sediment (ECOMSED) was used as an application of three-dimensional numerical model. Then sensitive numerical experiments were performed to figure out response of Dinh An and Tran De estuary to change of upstream discharge rate. We confirmed that redistributed portion of the upstream discharge has high responsibility to mutual interaction of hydrodynamics, salinity intrusion and sediment transport characteristics of both Tran De and Dinh An estuary.
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池田 香澄, 田中 陽二
2016 年72 巻2 号 p.
I_706-I_711
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
本研究は,宍道湖・中海連結で両湖の年間流動シミュレーションを実施し,その精度を検証するとともに,水平メッシュサイズの細密化が塩分遡上の再現性に与える影響について検討することを目的としている.三次元非静水圧モデルを用い,2種のメッシュを設定し,2012年1月1日から2年間の流動計算を行った.モデルの季節変動の再現性については,水位・水温は全地点で良好な再現性が見られたが,宍道湖では400mメッシュの塩分計算値が過大評価となっていた.大橋川における塩分溯上については,観測値に比べて塩分変動の振幅が小さく計算されており,モデルは水平メッシュサイズによらず成層が弱くなりやすいことが示された.大橋川における400mメッシュの計算流量は200mメッシュの2倍に相当することから,メッシュ細分化による影響は通水量が適切に計算されるため精度の向上に繋がる事が示唆された.
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白水 元, 佐々 真志, 宮武 誠, 本間 大輔, 成田 郁史
2016 年72 巻2 号 p.
I_712-I_717
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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波の遡上・流下によって駆動される底質間隙のサクション動態が底質の強度にもたらす効果は,未知の部分が多い.そこで本研究では2次元造波水路内に実際の砂浜を対象にした砂浜模型を製作し,現地の高波浪を想定した波を作用させ,遡上域の地形変化に伴うサクション挙動と平衡勾配形成過程の底質の間隙変化を捉えた.これにより,平均的な高波浪作用下のサクション動態による遡上域の強度増加効果を明らかにした.また,遡上域が平衡勾配に達した後の海浜地形に更にインパクトのある暴浪時波浪を与え,これに対する底質の挙動を確認し,サクション動態効果の遡上域での適応性について考察した.
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東 和之, 大田 直友, 橋本 温, 大谷 壮介, 上月 康則
2016 年72 巻2 号 p.
I_718-I_723
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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徳島市沖洲地区にある人工海浜は,埋め立てられる既存海浜の代償措置として造成されたが,既存海浜の底生生物相を再現できていなかった.決定的な違いはホソウミニナの有無であり,その原因は沖洲人工海浜で確認されている「沈み込み現象」によるものと推察された.筆者らは「沈み込み現象」の発生原因として,ニホンスナモグリに着目した.その結果「沈み込み現象」は,ニホンスナモグリの生息域のみで発生していること,加えてニホンスナモグリを排除すると「沈み込み現象」は発生しないことを示した.また,ニホンスナモグリはホソウミニナの生残に負の影響を与えることも分かった.しかしニホンスナモグリを排除することで,底生生物相が貧弱になる結果も示されており,ニホンスナモグリが干潟生態系へ与える影響は極めて複雑であることが示された.
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中村 友昭, 福田 俊, 趙 容桓, 水谷 法美
2016 年72 巻2 号 p.
I_724-I_729
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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矢板式岸壁の腐食孔からの埋立土砂の吸い出しを水理実験と数値解析の両面から検討した.その結果,岸壁前面の水位が最も低下する位相の前後に土砂の流出が生じること,埋立土砂の吸い出しは静水面に対する腐食孔の相対位置の影響を強く受けることが判明した.また,腐食孔が空気中に露出する条件では,引き波時に腐食孔内部の上側から流入し,下側から流出する流れが生じることを確認し,水理実験で確認された土砂の流出はこの沖向きの流れにより生じたことを示した.さらに,吸い出しは腐食孔の内部に生じる沖向き流速が大きいほど発生しやすく,そのときに地盤が膨張状態にあると陥没に到る大規模な吸い出しが発生する可能性があることが判明した.そのため,腐食孔が開いたとしても,その内部に生じる沖向き流速を小さく抑えることの重要性を示した.
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宇多 高明, 五十嵐 竜行, 大木 康弘
2016 年72 巻2 号 p.
I_730-I_735
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
漁港,港湾,河川事業は,法律に基く各種基準に従って進められているが,隣接の海岸管理区域との関係において,砂移動への認識が十分でない状況下でこれらの基準に忠実に従って工事を進めると,ある場所での工事が隣接海岸の侵食を引き起こすという問題について法律的側面から考察した.海岸に関係する法律と,それらに基づく各基準における海浜土砂の扱いに係る部分を整理した上で,それらの課題について考察した.さらに,これら公共土木施設が侵食などにより被災した場合,それに準拠して進められる災害復旧制度とその運用上の課題についても述べ,これらをもとに今後海浜を健全な形で維持していく上で必要な幾つかの改善方策(例えば,災害復旧制度において隣り合う海岸管理者間での砂のやり取りを可能にするなど)を提案した.
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河村 裕之, 浅田 潤一郎, 伊井 洋和, 平山 隆幸, 中村 孝幸
2016 年72 巻2 号 p.
I_736-I_741
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
本研究では,有孔平型の被覆ブロックの下部裏込め材や基礎捨石の耐波安定性について実験的に明らかにすると共にその被災メカニズムについて考察したものである.下部裏込め材や基礎捨石の所要質量の指針としては,捨石傾斜堤に対するものがあり,漁港基準では表面被覆材の質量の1/10~1/20,港湾の基準では1/20とされている.本研究で対象とする被覆材は,法面被覆用の平型ブロックであり,揚圧力低減およびコスト縮減のため,その中央に比較的大きな円孔が設けてある.このような法面被覆ブロックで構成される斜面では,裏込め材が波の作用により飛び出しなどの被災を受けやすく,結果的に全体的な斜面崩壊へとつながることが懸念される.ここでは,有孔平型ブロックの裏込め材として孔径よりも小さな割栗石を想定し,各種の代表粒径の裏込め材に対する耐波実験を実施すると共に裏込め材の移動状況に基づきその被災メカニズムについて究明する.
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佐藤 知闘祉, 泉宮 尊司
2016 年72 巻2 号 p.
I_742-I_747
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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海域の海表面流速には,様々な時間スケールをもつ吹送流,潮汐流,残差流および津波流速などが含まれている.本研究では,伊勢湾における海洋レーダによって観測された1時間毎の流速データを用いて,流れ成分の分離法の開発を行っている.用いられたモデルは,トレンド成分を考慮した多成分ARモデルで,周期成分,定常AR成分およびノイズ成分が含まれている.
トレンド成分として抽出された成分は,残差流成分を含んだ吹送流成分が抽出され,12時間周期成分にはS
2潮およびK
2潮成分が分離された.定常AR成分は,数時間から20数時間の変動時間を有する成分が抽出され,潮流の大きいところではその時間スケールの潮汐成分が抽出された.ノイズ成分には,1~2時間程度の短周期成分も含まれており,東北地方太平洋沖地震の津波成分は短周期成分として抽出された.
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夏秋 嶺, 穴原 琢摩, 琴浦 毅, 岩塚 雄大, 冨井 直弥, 片山 裕之, 西畑 剛
2016 年72 巻2 号 p.
I_748-I_753
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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衛星搭載型合成開口レーダー(SAR)は,天候に左右されずに数十キロ四方の広範囲に位置する観測対象を一度に観測できる強みを持つ.SAR 画像の干渉解析は,二回の観測の間に生じた地盤高の変動を数センチ単位で計測できる性能を持ち,これまで地殻変動や被災域の検知を目的として研究されてきた.著者らは,陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)を利用し,SAR干渉解析による災害時の港湾の被害状況を迅速に把握するべく研究を進めている.本稿では,港湾施設を模した消波ブロック列を用い,干渉解析の適用可能性を検討し,標準偏差で約2 cmの精度を得たほか,平成26年台風第11号により被災した兵庫県神戸市の長田港および須磨港の防波堤の被災領域の検出を試みた結果についても報告する.
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原野 崇, 諏訪 義雄, 下村 博之, 朝比奈 利廣, 望月 貫一郎, 本田 禎人, 洲浜 智幸, 花田 大輝
2016 年72 巻2 号 p.
I_754-I_759
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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航空レーザ測量は広範囲の地表面の凹凸を測量することができ,接近困難な場所の測量も容易に実施できることから,海岸保全施設の現状把握に有効な測量手法と考えられる.そのため本研究では,航空レーザ測量データのオリジナルデータと,航空レーザ測量時に撮影した簡易オルソ画像を重ね合わせて解析を行うことで,パラペットの天端高を推定する手法について検討を行った.
あわせて,対象地区で現地測量を行い,推定したパラペットの天端高と現地測量成果を比較することで,パラペット天端高を把握する際の航空レーザ測量データの有効性を確認した.また,複数時期の航空レーザ測量データの比較等を行うことで海岸保全施設の経年変化の把握が可能になることなど,より有効な航空レーザ測量データの活用について明らかにした.
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伊藤 佳洋, 長尾 毅, 山田 雅行, 森田 真弘
2016 年72 巻2 号 p.
I_760-I_765
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
建設後年数を経た臨海部護岸や岸壁においては,裏埋土の流出等が生じた結果,護岸直背後の舗装直下に空洞が生じる場合がある.このような空洞を非破壊で検出する方法として,常時微動の活用が考えられる.これまで,60cm程度の短いピッチで機器を配置する常時微動アレイ観測により空洞を検出できるという報告はあるが,一般に数百mの延長を持つ岸壁を60cm程度のアレイ展開で観測するには多くの労力を要することは否めない.そこで,本研究では,数百mの延長を持つ岸壁を対象として,岸壁背後の埋め立て地盤までを広範囲に調査することを目的として,空洞を単点常時微動観測により検出する手法の適用性について検討を行った.
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村上 智一, 小花和 宏之, 河野 裕美, 下川 信也, 田林 雄, 水谷 晃
2016 年72 巻2 号 p.
I_766-I_771
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
本研究の目的は,サンゴ礁海域を対象として,SfM(Structure from Motion)による水中3次元計測(水中SfM)の可能性を明らかにすることである.そこで,サンゴ礁海域である西表島網取湾において,枝状サンゴ,塊状サンゴおよび海草であるウミショウブを対象に水中SfMと実施コストが高い従来の測量を同時に行い,これらの結果を比較・検討した.
その結果,水中SfMは,サンゴの高さ,長径,短径および枝状サンゴの枝幅を最大誤差4.5 cm,最小誤差0.1 cmの精度で計測でき,サンゴ保全のためのモニタリングなどにおいて有用となることが明らかとなった.一方,ウミショウブは,連続写真撮影中に葉が波や流れによって揺らぐため,SfMによる3次元化が不十分であった.
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Kavinda GUNASEKARA, Yoshimitsu TAJIMA, Le Hanh CHI, Ho Viet CUONG, Ngu ...
2016 年72 巻2 号 p.
I_772-I_777
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
フリー
This paper develops a satellite-based monitoring system for observations of spatial and temporal variations of turbidity of the sea surface around Hai Phong Bay in the northern part of Vietnam. The monitoring system is based on MODIS and consists of sub-tools required for the monitoring, such as cloud masking and turbidity estimations based on multiple band data. The developed system is validated through comparisons of estimated and measured turbidity patterns around Hai Phong Bay. The system is then applied for monitoring of turbidity patterns around the bay over the past sixteen years and it was found through the monitoring that observed turbidity shows decreasing trend after the construction of dams along the upstream of the rivers around the area.
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後藤 祐哉, 横山 佳裕, 宇野 潔, 矢永 純一, 武元 将忠, 小野 英治, 中西 弘
2016 年72 巻2 号 p.
I_778-I_783
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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有明海及び諫早湾における濁りの指標項目の経年的な傾向と,平均潮位の上昇等の潮流速の低下要因との関係について検討した.有明海では,1980年代から2000年代にかけて有明海を含む九州一帯でみられた平均潮位の上昇に伴い潮流速が低下したことで,湾央部・湾口部で濁りが低下し,透明度が上昇していると考えられた.また,その変化は,ノリ漁期の網の設置による潮流速の低下に伴う透明度の変化と比べて大きいことが示唆された.諫早湾では,湾央部・湾口部の濁りは有明海湾奥部・湾央部と概ね類似した変動を示しており,この変化は有明海同様に平均潮位の上昇による寄与が大きいことが示唆された.一方,諫早湾湾奥部では,平均潮位の上昇による濁りの変化に加え,1997年に設置された潮受堤防による変化が示唆された.
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黒岩 正光, 末葭 良太, 市村 康, 福岡 和明
2016 年72 巻2 号 p.
I_784-I_789
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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本研究では,浦富海岸の海岸侵食対策を検討するためのひとつの手法として,砂浜域を比較的高頻度で,なおかつ簡易的にモニタリングできるシステムを開発することを目的としている.本報では,UAVにより得られた空撮画像についてSfMを用い3次元モデルを作成し海岸地形変化の解析を行ったのでその結果について報告する.
UAVは、4枚羽の飛行体を用い,2秒間隔の撮影で80m上空を飛行させた.得られたデータは,SfM専用ソフトとGISソフトを用い解析を行った。
UAVを用いた海岸線の調査は,約2km程度であれば,所用時間20分程度で済み,比較的簡易にモニタリングが行えることが確認できた. また, 精度については、RTK-GPS測量結果との比較から0.05m程度であることが確認できた.
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渡邉 博之, 小林 泰輔, 菊 雅美, 中村 友昭, 水谷 法美
2016 年72 巻2 号 p.
I_790-I_795
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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三重県南部に位置する七里御浜では海岸侵食が深刻な問題となって久しく,特に侵食が厳しい井田海岸では,様々な海岸侵食対策が行われてきた.しかし,依然として礫浜の回復には至っていないのが現状である.本研究では,同海岸を対象に行った3回のUAV-SfM測量と,ネットワークカメラによる撮影画像から,礫浜の海浜変形について検討した.その結果,礫浜の広範囲な3次元モデルの取得や断面図および体積量の算定を行えることから,海浜変形の把握にUAV-SfM測量が有用であることを示した.また,七里御浜井田海岸において,沿岸方向となる波向かつ有義波高4 m以上の波浪状況のときに侵食性,法線方向となる波向きかつ有義波高2 ~4 m程度の波浪状況のときに堆積性,有義波周期や波向に関係なく,有義波高1 m程度の波浪条件が続くときに安定状態の傾向になることを示した.
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山城 徹, 加賀 惇也, 小牧 裕幸, 広瀬 直毅, 劉 天然, 加古 真一郎, 山田 博資, 小田巻 実
2016 年72 巻2 号 p.
I_796-I_801
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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DREAMSの高分解能モデル(DR_E)の開発を行い,その計算結果を用いて黒潮を利用した海流発電の適地選定を行った.精度検証のために潮岬沖で観測された流速結果と比較を行ったところ,4つの中で,バージョンKが黒潮の流路変動を最もよく再現できていた.バージョンKの計算結果を用いると,本州南方沖では四国沖と潮岬沖で海流が特に強いことがわかった.また,現在の発電装置の設置条件を考慮すると,足摺岬沖と室戸岬沖,潮岬沖で平均流速100 cm/sを超える流れがあるが,これらの中で特に足摺岬沖が海流発電に適していることを明らかにした.
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木原 一禎, 増田 光一, 居駒 知樹, 細川 恭史, 永田 修一, 下迫 健一郎, 大澤 弘敬, 坂本 辰哉
2016 年72 巻2 号 p.
I_802-I_807
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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本研究で対象とする波力発電装置は,日本で30年以上の研究実績がある振動水柱型空気タービン方式(Oscillating Water Column: 以下OWC)である.従来型OWCの高効率化を目指し,プロジェクティングウォール(PW)付ユニット型発電装置(PW-OWC)を発案するとともに,初めて実証機に衝動タービンを採用した
1).発電装置の発電出力は,一次変換,二次変換効率をそれぞれ独立していかに向上させるかという点が注目されてきた.しかし,一次・二次変換装置の運転状況や諸元は相互に影響を及ぼしあうため,一次,二次変換を同時に扱う全体設計法が求められるようになっている.酒田港内の護岸上に波力発電装置を設置した.実証実験をとおし,一次,二次の変換効率の向上を確認した.そして,エネルギー伝達の全体を最適化する手段を検討し,一次,二次変換の連成手法を確立した.
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吉岡 健, 坂本 登, 川口 浩二, 永井 紀彦, 仲井 圭二
2016 年72 巻2 号 p.
I_808-I_813
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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北九州市沖海域では現在,洋上風力発電設備の合理的な計画・設計に資することを目的とした実証研究が進められている.本稿では特に他海域(ナウファス各地点)との比較に主眼を置き,洋上風車の維持管理に重要となるアクセス性すなわち静穏度について,太平洋側と日本海側で季節によって大きな違いがあることを示す.続いて,支持構造物の耐波・耐風設計に重要となる両作用の同時生起性について,擾乱毎の有義波高と10分平均風速の相関係数を調べるとともに,両作用の簡易な組合せ方法を提案する.
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渡邉 由香, 居駒 知樹, 増田 光一, 惠藤 浩朗
2016 年72 巻2 号 p.
I_814-I_819
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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本研究は,ファンモデルとポーラスメディアを用いて潮流発電装置を簡易的に模擬し,流況について考察した.ポーラスメディアはブレードの回転影響を考慮することができないが,ファンモデルはブレード形状を詳細に定義せずにモデル化でき,さらに回転影響を考慮することができるため,周辺の流場解析に適していると考えられる.ただし,ファンモデルの場合,モデル通過後の流速が増加するためポーラスメディアによるエネルギー減衰を人工的に与えた.
本手法を用いて複数のモデルを配置し,装置間の流況について考察したところ,モデル後方20Dで流入速度の98 %まで回復することが確認できた.さらに,流入方向に対して垂直に配置した場合には,装置間を1.5Dにすると流入速度と同じになることが確認できた.
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細谷 和範, 平尾 瑞樹
2016 年72 巻2 号 p.
I_820-I_825
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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越波型の海水交換工内のように摂動や乱れを伴う小規模水路に設置可能なマイクロ水力発電機として,本研究では板バネに支持された円柱の渦励振によって圧電素子が弾かれるVIV発電装置を試作した.はじめに乱流強度が異なる一様流中と摂動流中における円柱の振動特性を調査したところ,一様流中では共振振幅が幅広い条件で得られること,また摂動流では円柱は閾流速を越えるとロックイン周波数を伴う共振を発生することを確認した.続いて振動円柱が圧電素子を弾くフリッキング発電装置を試作し,定常的な一様流場と摂動流場での発電量を計測した.素子を弾く発電方法は屈曲動作を与える方法の約二倍の出力電圧を発生し,フリッキング発電機構を搭載したVIV発電装置は乱れや摂動がある流れ場でも共振を維持した発電が可能であり,一様流場と同程度の出力を発揮することがわかった.
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石川 仁憲, 風間 隆宏, 中川 儀英, 青木 伸一, 田中 秀治, 小峯 力, 中山 昭
2016 年72 巻2 号 p.
I_826-I_831
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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わが国の海水浴場では,毎年多くの溺水事故が発生している.海水浴場における意識なしの溺者を含む救助は毎シーズン1,000~3,000件,応急処置は10,000~25,000件であり,溺水の要因は主に離岸流,風等であった.また,海水浴場における具体的な傷病として,刺胞毒を有するクラゲやエイ等による被害が多いことが分かった.溺水や傷病を未然に防ぐためには,海水浴場の危険性を明らかにし,海岸利用者に周知することで事故防止を図るとともに,適切なリスク管理による海水浴場の運営が望まれる.そこで,わが国の海水浴場における溺水の要因や傷病の特徴,監視救助体制の課題などを考慮した海岸利用者の安全性に関するリスク評価手法を検討し,安全な海岸利用に影響を与える要因(ハザード)とそれによる溺水や傷病(ケガ等)が起こりうる可能性を考慮したHazards & Risksと,事故防止・監視救助体制などのBeach management & Patrol systemに関わる評価項目,評価指標,評価方法,さらに安全性の高い海水浴場の条件(総合評価)について提案した.
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風間 隆宏, 石川 仁憲, 中川 儀英, 青木 伸一, 田中 秀治, 小峯 力, 中山 昭, 細田 直彦
2016 年72 巻2 号 p.
I_832-I_837
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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毎年,海水浴中に多くの水難事故が発生し,尊い命が失われている.本研究では,若狭和田海水浴場において,筆者らが開発したリスク評価に基づき,自然環境に対するHazards & Risks(18項目)及び利用及び海岸管理状況(Beach management & Patrol system)(13項目)に関する多角的なリスク評価を行った.その結果,安全性がHazards & Risksでは80%,Beach management & Patrol systemでは94%満たしており,かつ重大なリスクや安全性を著しく損なう可能性がないことから,安全性が高い海水浴場と評価された.また抽出されたリスク(離岸流やライフセーバー数等)に対してリスク緩和策を提案すると共に,この評価手法の適用性を確認した.
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杉野 弘明, 道田 豊, 城山 英明, 八木 信行, 久保 麻紀子, 徳永 佳奈恵
2016 年72 巻2 号 p.
I_838-I_843
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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環境修復事業は施工後長期に渡り空間の在り方を規定する一方で,自然環境としては変化をし続け,またその環境を背景として生活する人々の関心事や利用の在り方も時代と共に変化し続ける.そのため,当該事業に関わる合意形成の議論は,時間的方向性を有した流れを捉える必要性がある.本研究では,東京都大田区の「大森ふるさとの浜辺公園」におけるフィールド調査から,施工前後の期間中,そして開園後現在に至るまで,各関係主体が大森の「これまで」と「今」に対する意識と知識を互いに共有し,「これから」という将来像を“投影”していく“持続的合意形成”の形を明らかにした.また当該事業目的の中でも心理的要素を含んだ項目の成果に対する評価を,公園利用者の東京湾に対する意識を尋ねる自由連想記述調査の分析を通して試みた.
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五明 美智男, 清水 麻里, 稲村 純一, 嶋津 健太
2016 年72 巻2 号 p.
I_844-I_849
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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里海の保全や創出のために,「地域の環境を地域の人が知る」ことができ,里海の探究や理解につながるような地域学,地元学としての海洋教育の展開が望まれる.本研究では,遠浅の海岸と海浜植物や海岸林に恵まれた千葉県南房総市の岩井海岸を対象に,将来の里海像を描くために必要な地域理解につながる海洋教育のコンテンツを示すとともに,コンテンツの実践から見えてくる里海像について検討した.
海岸でのコンテンツとしては,漂着物拾い,海藻おしば,漂着貝類の被度,海浜植物の分布,海岸林の現況などの調査項目を選定し,その実施結果を示した.また,海岸背後域のコンテンツとしては,道の駅での地先漁港漁獲物による地産地消特性,写真によるKJ法による地域特性の分析結果を示した.これらの成果を活用し,地元中学校での環境教育授業を実施した.
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澁谷 容子, 林 健太郎, 森 信人, 後藤 拓海, 黒岩 正光
2016 年72 巻2 号 p.
I_850-I_855
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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気候変動に伴い,海面上昇や台風強度の増加,波浪特性の変化などの沿岸外力の変化が予測されている.沿岸域の影響評価や経済評価も行われつつあるが,経済効果が計りにくい砂浜に対する適応策の経済評価は難しい.本研究では,気候変動に伴う沿岸域の影響の経済効果を調査するために,海岸との関わりが異なる3種類の対象者(海岸利用者,非海岸利用者および海岸従事者)にアンケートを実施し,気候変動への意識や適応策への支払い意思額について調査した.気候変動への適応策に対する支払意思額は約700円/月程度であり,CO
2排出シナリオの将来推移に対する予測が悲観的なほど支払意思額は増加した.また,砂浜保全を重要視している人ほど支払意思額は高いなど,海岸との関わりや気候変動への意識により支払意思額が増減することがわかった.
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加藤 広之, 横山 大地, 小林 健一, 西嶋 靖子, 佐藤 勝弘, 五十嵐 雄介, 西崎 孝之
2016 年72 巻2 号 p.
I_856-I_861
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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福井県越前漁港厨地区は、冬季荒天時に著しい越波が生じており,安全かつ円滑な漁業活動に支障をきたしている.2012年12月7日に冬季風浪による越波のため,漁船の転覆被害が発生した.
本研究の目的は,安全かつ円滑な漁業活動の維持のために,越波による漁船被害の状況を再現することであり,また,設計波来襲時における漁船保護のための越波対策を提案することである.
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木下 真吾, 安部 智久
2016 年72 巻2 号 p.
I_862-I_867
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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国際バルク戦略港湾は平成27年及び32年までに品目に応じた最大級の輸送船舶の満載での入港に対応することを目標としているが,そのための航路などの港湾整備には長期間を要することになる.我が国各港で効率的な輸送を促進させるため,航路整備期間中に当面の効率性を確保する手法として潮位を利用した航行が考えられるが,その実態はよく知られていない.
本研究は,国内外の港湾における潮位を利用した航路航行実態を分析し考察する.
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林 浩志, 濱田 奈保子, 高原 裕一, 丹羽 真
2016 年72 巻2 号 p.
I_868-I_873
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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漁港では様々な漁業で漁獲された多くの種類の水産物が陸揚げ・搬入され,また,その状態(生鮮,冷凍,活魚等)も多様で,かつ,陸揚げやその後の作業工程もそれぞれ異なることから,これら作業工程と形態に対応した衛生管理と鮮度保持が求められる.
本研究では,はじめに漁港における衛生管理と鮮度保持について整理し,次いで,HACCPシステムと漁港における衛生管理基準との関係を明らかにした.
さらに,はえ縄漁業,まき網漁業,底曳網漁業,定置網漁業などの漁業種類において,作業工程・状態に応じた衛生管理と鮮度保持の基本的な考え方,そして,漁港施設(荷さばき所)の整備のあり方について検討を行った.
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中泉 昌光
2016 年72 巻2 号 p.
I_874-I_879
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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食文化と食産業のグローバル展開のため,政府と民間が水産物の輸出倍増に取り組んでいる中で,水産物については,水揚げ港や加工施設等を含めた産地での衛生管理対策や,水揚げ,加工から輸出まで一貫した生産・物流について十分な検討に至っていない.そこで本論文では,水産物の特徴に留意し,漁業・養殖業生産統計,財務省貿易統計等の分析や関係者からのヒアリング,衛生管理対策に関するアンケート調査の分析から,漁港・港湾・空港が衛生管理対策を含めた流通拠点として,また鮮度保持対策を含めた輸送機関の拠点として,生産地から輸出先国までの重要な生産・物流機能を果たしていることを明らかにするとともに,輸出促進においては,活魚、生鮮・冷蔵やフィレ加工ものの輸出拡大は効果的であり,鮮度保持対策を強化した上で近接航路を活用し東アジア諸国への輸出を推進すべきという結論を得た.
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大矢 淳, 柴山 知也, 中村 亮太, 岩本 匠夢
2016 年72 巻2 号 p.
I_880-I_885
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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2011年台風15号を例として気象-海洋結合モデルを用いて再現計算を行う.次に,疑似温暖化手法を用いて作成した気象場を構築しこの統合モデルを適用し台風・高潮の将来予測計算を行う.さらに,高潮計算と先行研究で行われた津波計算とからそれぞれ浸水面積を算出し,治水経済調査マニュアルの方法に従って直接被害額と間接被害額を求める.本研究では,温暖化ガスの排出が多く,高潮の再現について比較的危険側に設定した場合における例を検討した.水害対策は防潮堤や内部護岸のかさ上げ,水門の新設,既存構造物の耐震強化,維持管理費用を含めた対策費用(以下:構造物費用)と家屋のピロティ化(以下:高床化)の費用の2つを検討した.台風と地震の発生確率を基に50年間の予想被害額は高潮で5.76兆円,津波で13.99兆円となった.構造物費用は,50年間で2.12兆円となり,高床化にかかる費用は51.3兆円となった.海岸構造物強化の対策を行った場合の費用便益比は9.32,高床化の場合には津波の浸水域で1.32となり,高潮の浸水域で0.38となった.
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Dinh Van DUY, 田中 仁, Nguyen Trung VIET
2016 年72 巻2 号 p.
I_886-I_891
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
ジャーナル
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クアダイ海岸はベトナム中部クアダイ河口の左岸に位置するビーチリゾートである.しかし,近年クアダイ海岸における河口周辺部の侵食が著しく,現地の観光産業にも影響を与えつつある.これまで,Google Earth画像や衛星画像を用いた侵食の状況に関する検討がなされている.しかし,現地においては使用出来る現地資料が十分ではないことから,評価の精緻化に困難を伴っていた.そこで,まず,現地においてビデオカメラ撮影を設置して継続的なモニタリングを行い,比較的短期間における侵食の進展状況を明らかにした.さらに,これまで実施されている衛星解析範囲に比べて広域の海浜を対象とし,全域で75kmにわたる砂浜の変化傾向を明らかにし,さらに河川からの供給土砂量を考慮することにより,クアダイ河口から周辺海浜を含む領域での土砂収支評価を実施した.
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田中 仁, Vo Cong HOANG, Tran Minh THANH, Nguyen Trong HIEP, Nguyen Trung ...
2016 年72 巻2 号 p.
I_892-I_897
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/30
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ベトナム南部に位置するダラン川河口周辺海浜においては,近年,深刻な海岸侵食が見られる.ただし,侵食は限定された箇所に存在している.このような局所的な海岸侵食機構を検討するために,Google Earth画像を用いて汀線変動の傾向を解析した.その結果,汀線変動は河口開口部をはさんで左右岸において非対称であり,右岸で約5 km,左岸で約4 kmの範囲で汀線変動が顕著であった.その多くの区間において2009年から2012年の間に顕著な汀線後退が見られた.一方で,右岸で局所的に約1 kmにわたり汀線が前進する箇所が見られた.そこで,河口前面海域における深浅測量データとこの侵食・堆積との対応を検討した.その結果,ダラン川河口前面には沿岸方向4 kmにも及ぶ大規模な河口テラスが存在し,汀線前進を示す箇所は河口テラス縁辺部が汀線に接する場所に対応することが判明した.これは,河口テラスの縁辺部に沿って河口前面堆積砂が岸向きに回帰することを示している.
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