日本環境感染学会誌
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最新号
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原著
  • 下原 朋美, 星野 輝彦
    2023 年 38 巻 6 号 p. 251-256
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

    熊本機能病院では抗菌薬適正使用を推進するため,抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)専従薬剤師(以下AS薬剤師)1名が医師や薬剤師からの抗菌薬選択や投与方法など様々なコンサルテーションに対応している.今後のコンサルテーションを適正に進めるため,AS薬剤師へのコンサルテーションに着目し,介入内容とその受入率,転帰について調査した.2018年度は医師・薬剤師より61症例,80件のコンサルテーションがあり,コンサルテーションの内容は薬剤選択が39件と最も多く,次いで用法用量が20件,投与期間が8件,細菌培養検査が7件,副作用・相互作用が6件であった.また,回答に対する受入率は95%であった.61症例のうち,受け入れのあった59症例の転帰は,49症例(83%)が治癒,7症例(12%)が判定不能,3症例(5%)が治癒に至らなかった.以上の結果より,コンサルテーションの受入率は高く,AS薬剤師が介入することにより高い治癒率を示したことから,AS薬剤師のみでも有用性が示唆された.

  • 清水 祐一, 鹿間 芳明, 山下 恵, 横谷 チエミ, 今川 智之
    2023 年 38 巻 6 号 p. 257-263
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

    バンコマイシン(VCM)はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌;Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)感染症などに有用な抗菌薬である.新生児・乳児におけるVCM投与量は出生後週数と体重に基づき投与設計されることが多いが,実測トラフ値と目標トラフ値にしばしば乖離がみられる.出生後週数だけではなく,在胎週数がトラフ値に影響するかを明らかにするため,2016年1月から2021年12月に新生児集中治療管理室;Neonatal Intensive Care Unit(NICU)でVCMが投与された206例のうち,VCM投与開始4回以降投与直前にトラフ値が測定された84例を対象に投与量・トラフ値・血清クレアチニン値の検討を行った.在胎週数は出生後週数と合わせた月経後週数(postmenstrual age;PMA)で検討を行った.出生後1週未満と1週以降での投与量とトラフ値に有意な差は認められなかった.在胎週数については,PMAが37週未満の児における投与量は37週以上の群と比較し,有意に低用量であったが,トラフ値に有意な差は見られなかった.以上より,体重変化が大きく,腎機能の未熟な早産児は低用量で目標トラフ値を達成できると考えられるため,PMAを考慮して投与設計を行うことで初期から適切に血中濃度を管理することができると考えられる.

短報
  • 上原 桃美
    2023 年 38 巻 6 号 p. 264-266
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

    東京都社会福祉協議会高齢者福祉施設協議会による感染状況調査の結果を用い,高齢者入居施設における利用者のCOVID-19感染確認後の初動対応の迅速性と感染拡大との関連を報告する.分析の結果,短時間で初動対応を完了した(3時間以内)施設におけるクラスター(感染者数5人以上)の発生率は,初動完了までに3時間よりも多くの時間がかかった施設の半分程度に抑えられており,利用者の感染者数も少なく,この傾向は大規模施設よりも小規模施設において顕著であった.ゆえに,高齢者入居施設での感染拡大を防ぐためには短時間での初動完了が求められるため,初動対応に時間を要する施設に対しては,その要因を明らかにしたうえで,対応をより迅速化させるために必要な支援は何かを検討すべきである.

報告
  • 榎本 美郷, 金坂 伊須萌, 勝瀬(金山) 明子, 小林 寅喆
    2023 年 38 巻 6 号 p. 267-271
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

    病棟看護師における鼻腔Staphylococcus aureus保菌の実態と,手指から検出されたS. aureusの由来との関連について調査した.対象者の鼻腔および業務開始前,擦式手指消毒薬による手指消毒直後,消毒直後より30分,1,2,および4時間後の業務中に採取した手指の試料よりS. aureusを検出した.手指消毒直後以降の手指衛生は通常の業務時と同様に実施した.

    対象看護師70例のうち,31例(44.3%)の鼻腔よりS. aureusが検出された.そのうち10例(32.3%)の消毒前の手指よりS. aureusが検出され,8例の手指由来株は鼻腔由来株と同一DNAパターンを示した.消毒直後以降に手指よりS. aureusが検出された10例(32.3%)のうち,5例(16.1%)の手指由来株は,鼻腔由来株と同一株であった.鼻腔S. aureus非検出39例(55.7%)のうち,消毒直後以降に10例(25.6%)の手指よりS. aureusが検出され,複数回同一株が認められたのは1例のみだった.鼻腔S. aureusの検出によらず,業務中の手指にS. aureusが認められ,鼻腔S. aureus検出例においては,本人の鼻腔由来株と同一株が手指から検出されることから,接触感染対策として,患者に接触する直前の適切な手指衛生が必要であると考えられた.

  • 髙田 正弘, 新開 美香, 前田 龍人, 吉野 弘絵, 稲田 真由美, 首藤 毅
    2023 年 38 巻 6 号 p. 272-277
    発行日: 2023/11/25
    公開日: 2024/05/25
    ジャーナル フリー

    2022年8月下旬にジェネリック医薬品メーカーT社のメロペネム(MEPM)は供給停止となった.当院は,カルバペネム系抗菌薬の代替薬選定だけでなく適正使用を目的として,カルバペネム系抗菌薬の許可制と抗菌薬適正使用支援チーム薬剤師の専従化を導入した.本研究は,当院入院患者を対象に,導入前後(以下,Pre群,Post群)を比較した単施設コホート研究である.1000入院患者あたりの提案件数と相談件数は,Pre群1.3件と0.5件からPost群3.1件と1.6件へ有意に増加した(p<0.05).カルバペネム系抗菌薬と抗緑膿菌活性のある抗菌薬の使用日数(DOTs/1000 patient-days)は,Pre群46.3±3.7と100.9±7.3からPost群10.1±6.7と85.4±9.0へどちらも有意に減少した(p<0.05).菌血症患者の30日死亡率は,Pre群8.1%(17人/209人)からPost群6.5%(15人/232人)と有意な変化は認めなかった.緑膿菌の耐性率は,MEPM(Pre群19.5%,Post群6.2%)とドリペネム(DRPM;Pre群14.9%,Post群2.5%)で有意に減少した(p<0.05).以上,MEPMの供給停止が1つの機会となり,プロセス指標とアウトカム指標の両面からカルバペネム系抗菌薬適正使用を推進できたことが示唆された.

委員会報告
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