当院に勤務している職員(618名)を対象に,流行性ウイルス感染症の抗体価を測定し,抗体保有状況について検討した.その結果,約7割の職員にワクチン接種歴の調査や追加のワクチン接種が必要であることが判明した.
麻疹の基準を満たす抗体陽性者は全体の46.1%と低値であり,麻疹が院内に持ち込まれた場合アウトブレイクの危険性が高いことが分かった.一方で,水痘は基準を満たす抗体陽性者が90%を超えており,抗体価が基準に満たない職員を把握しておくことで帯状疱疹や播種性帯状疱疹の患者からの曝露リスクを回避することが可能と考えられた.風疹の抗体陽性者は79.4%であり,男女差はなかった.流行性耳下腺炎の抗体陽性者は59.3%と麻疹に次いで低く,麻疹同様院内に持ち込まれた場合アウトブレイクの危険性が懸念された.
抗体価が基準に満たない20代職員を対象にワクチン接種歴を調査した結果,麻疹では66.7%,風疹では56.5%の職員にワクチン接種歴があることが分かった.これは,1次性ワクチン不全および2次性ワクチン不全の両者を含むワクチン不全者の存在を示唆する.流行性ウイルス感染症の免疫獲得状況は抗体価測定とワクチン接種歴を併せて確認することが重要であり,今後は全職員を対象にワクチン接種歴を調査し,その結果をもとにワクチン接種を推奨していく必要がある.
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