日本環境感染学会誌
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23 巻 , 2 号
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原著論文
  • 形山 優子, 山本 満寿美, 千田 好子, 狩山 玲子
    2008 年 23 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      急性期病院に治療目的で入院した誤嚥性肺炎患者9名の口腔内の状態と口腔ケアおよび口腔と吸引痰からの検出菌に関する実態調査を行った.患者の平均年齢は77歳で,7名に誤嚥性肺炎の既往歴があった.患者の口腔内の状態は,入院時約半数に舌苔や口腔内乾燥がみられたが,退院時は改善傾向にあった.しかし,入院後の口腔ケアは,大半の患者に1日1回実施しているのが実状であり,十分な口腔内清浄度が保たれていなかった.入院時,入院後3~5日目,退院時の3回,日和見感染菌検査用キット(BML社)を使用し,口腔と吸引痰から検体を採取した.口腔または吸引痰からの検出菌(患者数)は,入院時:Candida sp. (4名),MRSA, Serratia marcescens (各3名),Pseudomonas aeruginosa, Klebsiella pneumoniae (各2名),入院後3~5日目:MRSA (5名),Candida sp. (2名),P. aeruginosa, K. pneumoniae, S. marcescens (各1名),退院時:MRSA (4名),P. aeruginosa, K. pneumoniae, Candida sp. (各2名),MSSA (1名)であった.本研究において,MRSAが最も多く検出され,入院時の3名に比して,入院後3~5日目には5名,退院時4名と増加しており,院内感染が疑われた.退院時に定着菌あるいは残存菌が検出された6名の患者は,再度誤嚥性肺炎に罹患する可能性が高いことから,口腔ケアへの積極的介入が必要とされた.また,耐性菌蔓延防止のためには,医療施設内のみならず地域医療連携による感染対策を行うことが重要である.
  • 田中 聖人, 下間 正隆, 西川 靖之
    2008 年 23 巻 2 号 p. 104-110
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      当院では2004年8月より滅菌の質のモニタリングと滅菌器材の正確な使用履歴管理,すなわち,滅菌器材の6W1Hを管理しうるシステムを導入した.これに加え,手術予約WEBオーダを実現した事で,手書きの手術申込伝票に頼る事なく,医師自らが正確な手術情報を送る事が可能になった.さらに術前の手術予定データを下に術中の器材管理,薬剤管理,看護記録を保存,閲覧が可能な新システムも導入し,手術データの共有化,可視化が可能となり,物流データとの連動も可能になった.
  • 坂田 宏, 小原 郁司
    2008 年 23 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      当院NICUで増加傾向にあったcefotaxime (CTX)耐性のグラム陰性桿菌を抑制するために,細菌感染症が疑われた際に使用する抗菌薬を3か月毎に変更するサイクリングを実施し,その効果を評価した.その結果,CTXに感受性が低い株が認められていたAcinetobacter baumanniiEnterobacter cloacaeについて,2003年12月から2004年5月に検出された株と2007年3月から2007年5月に検出された株におけるCTXに対する感受株の比率を比較した.A. baumanniiではCTX感受性株は40.8%から12.5%,E. cloacaeでは60.0%から0%に有意に低下した.検討期間中に,Extended subsitute β-lactamase (ESBL)産生Klebsiella oxytocaが検出されるようになった.抗菌薬をサイクリングすることによって,CTXに感受性を有した菌が増加した.しかし,実際の感染症の発症率には大きな変化を認めなかった.
  • 小笠原 康雄, 大野 公一, 播野 俊江, 舟原 宏子, 後藤 千栄, 長崎 信浩, 服部 聖, 三田尾 賢
    2008 年 23 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      広域抗菌薬,特にカルバペネム系抗菌薬の適正使用推進のため,感染制御専門薬剤師と各病棟薬剤師が協力をして,感染症治療症例に対する抗菌薬適性使用の取り組みを開始した.
      2006年7月より,感染症治療目的にて抗菌薬が処方された症例に対して,病棟薬剤師は「抗菌薬PK/PDチェックシート」を用い,処方内容・起炎菌・MIC (Minimum Inhibitory Concentration:最小発育阻止濃度)・腎機能等を確認し,必要があれば主治医に対して疑義照会・処方提案を行う取り組みを開始した.
      取り組み開始前133例と開始後470例について,抗菌薬処方内容を比較検討した.
      用法はペニシリン・セフェム系抗菌薬で一日二回投与が減少し(94.7%→75.8%),一日一回投与(3.5%→6.6%)と,一日三回投与(1.8%→17.2%)が増加した.カルバペネム系抗菌薬でも一日二回投与が減少し(94%→73%),一日一回投与(0%→4.9%)と,一日三回投与(6%→21.7%)が増加した.
      カルバペネム系抗菌薬の1日平均投与量は1日3回投与が増加したことにより,1.06 gから1.20 gへと増加したが,平均投与日数は6.76日から6.01日へと減少した.
      また,取り組み開始後に多剤耐性緑膿菌の検出頻度は有意に減少した.
      病棟薬剤師が症例ごとに「抗菌薬PK/PDチェックシート」を用い,抗菌薬の使用状況を確認し,必要があれば主治医に提案を行う今回の活動は,抗菌薬適正使用に有効であることが判明した.
  • 白石 正, 川合 由美, 布施 明美, 大谷 和子
    2008 年 23 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      従来から術前の手洗いは,4%グルコン酸クロルヘキシジンなどのスクラブ製剤を使用して行われているが,米国疾病管理センター(CDC)のガイドラインでは,速乾性擦式消毒薬を用いたウォーターレス法を推奨している.そこで,4%グルコン酸クロルヘキシジンスクラブ剤と0.5%グルコン酸クロルヘキシジンエタノール剤の手指消毒効果について看護師22名を対象にグローブジース法にて比較するとともに2製剤を使用した場合の経済効果を併せて検討した.その結果,消毒直後および消毒3時間後では2製剤間に有意差は認められず,2製剤の同等性が認められた.また,経済効果では,スクラブ製剤に比較してエタノール製剤のコスト低下が認められた.
報告
  • 北島 博之
    2008 年 23 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      平成15年度の厚生労働省医療機関関係者陽性確保対策費等補助金看護職員確保対策特別事業による調査では,全国規模で一般産科病棟において産科単独で病棟運営が出来ているのは許可病床数501床以上の大病院の8.6%に過ぎず,その他は婦人科・内科・小児科などとの混合病棟であった.この混合病棟で看護管理者が危惧するのは,母子のケア不足と婦人科・内科の成人患者(ターミナルケアも含まれる)のもつMRSAや肺炎原因菌による新生児への院内感染であった.
      そこで,そのような院内感染が存在するのかどうかをJANISの全病院サーベイランスに参加されたうちの27病院の感染症データから,生後28日以内の新生児期に限ってMRSA感染症データを抽出し,その病棟の背景とその要因を調べた.結果として① 2004-05年の2年間で37例(菌血症4例,肺炎1例を含む)の新生児MRSA皮膚感染症は全て混合病棟の8施設に観察されたが,産科単独病棟3施設では発症がなかった.② 2年間で2例以上発症した5施設は,年間分娩数が多く(年間500件以上),分娩数/看護職員数比が20以上であった.分娩後母子異室の時期のある施設では,発症が短期に集中することがあり,院内感染を疑わせた.③産科単独病棟の3施設(各施設の年間分娩数は814 (同室)・650 (3日異室)・250 (異室))では,母子異室が2施設あったが発症はなかった.
      以上の事実は,JANISにおける全病院のサーベイランスデータから判明したものである.これは日本における院内感染の実情を把握する上でも,このサーベイランスシステムが充実してゆくことが,これからの院内感染予防対策における病院管理のあり方を調べる上で,行政上で非常に重要なことであることを証明している.現在NICUにおいては,予防対策の普及と共にMRSA感染は減少傾向にある.一方上述したように,少産少子のために日本の各地域において産科病棟は集中化を必要としてきている中で,MRSA感染症の新生児への波及が脅威となってきている.そこでは地域の集約化の要望に合わせる一方,産科病棟は健康棟として運営されることが基本である.産科の混合病棟体制は,先進国の中では日本にしかなく,周産期医療体制としては早急に改善される必要がある.
  • 山下 葉子, 石橋 和重, 因幡 美津子, 今村 豊, 本田 順一
    2008 年 23 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      2004年,インフルエンザウイルス治療薬であるオセルタミビルに,条件付で予防内服の効能が追加承認された.聖マリア病院では感染拡大の可能性が高いとICTが判断した場合に,接触者に対する予防内服を推奨することとした.しかし,2007年,オセルタミビル服用後の異常行動による死亡例が相次いで報告された.今後のインフルエンザ院内感染防止対策の検討材料とするため,過去3シーズンの予防内服の状況について調査を行った.予防内服の方法としては,オセルタミビルを1日1回1カプセル,原則として5~7日間経口服用とした.予防内服対象者は,2004/05シーズンが83名,2005/06シーズンが57名,2006/07シーズンが42名であった.予防内服開始後のインフルエンザ発症率は13.3%, 3.5%, 2.4%と減少傾向にあった.オセルタミビルの使用量は,2006/07シーズンに大きく減少した.各シーズンの迅速診断依頼数,スタッフのインフルエンザワクチン接種率には変化がなかった.予防内服後の異常行動などの報告はなかった.オセルタミビルによる曝露後予防内服を効果的に行うためには,発端者の早期発見が重要であると考えられた.
  • 細田 昌良, 小松 敏美, 松下 美幸
    2008 年 23 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      流行性角結膜炎(EKC)は接触伝播し,しばしば院内感染を引き起こす.2006年7月から9月に眼科病棟のない当院でEKCが流行した.入院患者4名,職員2名,外来患者7名の計13名の発症があり,当院感染対策委員会は,アウトブレイクと判断した.院内の対策として,感染者の隔離,患部処置法の指導,環境の消毒などの接触感染対策の強化を行い,感染職員には出勤停止を指示した.更に,職員全員への啓発を目的に,院内へのポスター掲示や警告文書回覧を行った.EKC患者が発生した特別養護老人ホームへは当院の認定ICDが,接触感染対策と新規EKC発症の監視を指導した.また,院外の発症に対しては,地域内の保育園がEKC感染の媒介になっている可能性があり,当院から当該保育園へ患児の登園停止や集団生活での接触感染対策を指導した.更に,家庭内や教育現場での感染拡大を防ぐために地域社会全体への啓発活動を実施した.行政保健師を中心にEKCへの啓発番組を制作し,地域内ケーブルテレビで2週間放映した.これらの対策の結果,院内・院外ともEKC流行は終息した.行政と地域メディアの協力を得た,地域社会へ向けた感染対策は有用であった.感染制御に携わる医療従事者は,地域社会での感染対策活動にも指導的立場で臨むことが必要である.
  • 渡部 節子, 高島 尚美, 戸田 すま子, 濱田 安岐子, 佐藤 陽子, 満田 年宏
    2008 年 23 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      感染看護教育において市販の感染管理教育ソフトウエアを利用したe-learning方法を導入し,その教育効果を知ることを目的に看護短大生1年生120名,3年生115名を対象に2003年4月及び翌年2月にアンケート調査を実施した.
      その結果,両学年共に4月より翌年の2月に実施した知識修得度が有意に高かった.さらにe-learningの実施群,非実施群に分けて知識度を比較したところ,両学年共にe-learning学習項目において「知っている」「聞いたことがある」割合が実施群において有意に高く,約80%の学生は「e-learningは役にたった」と回答していた.
      以上のことから,e-learningによる感染管理教育プログラムの導入は看護教育における自己学習方法として有用と考える.
  • 田口 洋子, 木村 紫, 五十里 博美, 山下 佳子, 星野 守邦, 新妻 隆広
    2008 年 23 巻 2 号 p. 151-154
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      病棟業務に直接関わる機会の少ないコ・メディカルスタッフにも院内感染予防の意識を浸透させるため,院内感染予防の意識・知識・実践の現状を把握し,問題点を抽出した.コ・メディカルスタッフに対して,教育・情報・手洗いに関するアンケート調査を実施したところ,院内感染対策予防に教育が重要と66.3%のスタッフが回答したのに対し,実際に勉強会に参加した事があるスタッフは49.5%と,意識と実践に解離がみられた.情報・手洗いに関しても同様の傾向があった.院内感染予防に関する知識・実践ともに乏しい科や,知識はあるが意識に偏りのある科,実践はしているものの知識が不十分な科があり,各職種によってアンケート結果に差があった.以上より,今後は,訪問勉強会の開催等,各業務内容に合わせた具体例を提示し,職種毎にフィードバックしていく事が重要と考えられた.一方,当院のICTは多職種で構成されているため,各科の状況把握が容易であった.病院全体で院内感染予防に取り組んでいくためにも,多職種で構成されているICTの活動は有用と考えられた.
  • 山内 勇人, 河野 恵, 戸村 美名子, 長尾 さおり, 大西 誠, 遠藤 美紀, 佐伯 真穂
    2008 年 23 巻 2 号 p. 155-159
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
      大規模震災の発生に備えた「防災イマジネーション」という概念がある.防災に限らず,緊急事態発生に備えて,常日頃からイメージして「イマジネーション」を高めておくことが大切である.院内感染においても,遭遇した者に適切な初期対応が欠けていれば,被害を最小限に抑えることは困難である.そこで,「感染制御イマジネーション」を高めるための研修会を,ノロウイルス感染症を題材に開催した.
      対象はA病院看護師13名.具体的事例を提示し,感染制御を目指してイメージを膨らませた個人検討内容を記述した後,グループ検討を経て再び個人検討を行った.グループ検討はメンバーを入れ替え,計2回行った.感染制御の理想的対応として,それぞれ小項目5つを含む,大項目計6項目(I初期対応,II嘔吐物処理,III患者対応,IV職員自身の健康管理,V病棟管理・院内制御,VI中長期的対応)をICTで作製した.小項目1項目に付き1点として,個人検討での記載内容から該当項目の有無により点数化し,イマジネーションの拡がりを客観的に評価した.開始時,第1回グループ検討後,第2回グループ検討後の平均総得点数は,それぞれ9±1.63点,11.7±2.14点,13.5±2.22点と有意に増加した(p<0.01).大項目別得点数も経時的拡がりを示し,II・VI以外では有意に増加した(p<0.05).
      感染制御イマジネーションを高めることの出来る本法は,施設の専門性や規模に関わらず施行可能な実践的な教育方法である.
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