日本医療・病院管理学会誌
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61 巻, 4 号
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巻頭言
研究論文
  • 阪口 博政, 古井 健太郎, 渡邊 亮, 荒井 耕
    2024 年61 巻4 号 p. 70-77
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/12/05
    ジャーナル フリー

    本研究では医業利益率向上を目的としたマネジメントにおいて重視すべき指標を明らかにするため,2020年2–4月DPC/PDPS病院に対して重視している経営指標に関する郵送アンケート調査を実施し,その回答病院の同時期の財務データを収集した。

    結果として105病院のデータを分析し,医業利益率がよい病院群では,「病床利用率」「入院患者数」などに加え,経営・管理職層では「職員1人当たり医業収益」「医師1人当たり入院患者数」をも重視するとともに「医師1人当たり外来患者数」は重きを置かず,スタッフ層に対しては「職員1人当たり外来患者数」への着目を期待していた。これらは,行動変容を促す影響システムの観点から考慮すると,病院の財務構造を展開して対応範囲を収益に絞ることでコントロール可能な範囲を明示したといえ,1人当たり指標を用いることでより具体的な行動結果に繋げるため選択したものと考えられる。

研究資料
  • 大儀 律子, 齋藤 信也
    2024 年61 巻4 号 p. 78-89
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/12/05
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は,すでに妥当性・信頼性が検証されている「看護職と介護職の協働関係構築のための看護管理者の能力測定尺度(看護職評価用)」を用いて,看護職と介護職の協働関係構築に対する看護管理者の取組みについて,看護職からの評価に影響を及ぼす要因の分析を行った。【方法】48病院の療養病床で働く看護職893名を対象に,尺度全体の平均得点及び5つのカテゴリー別得点を目的変数,看護職の属性及び職場環境を説明変数として,重回帰分析を行った。【結果】高い学歴を持つ非正規の看護職ほど,また看護経験の長い看護職ほど,管理者の取組みを厳しく評価している可能性が示唆された。【結論】療養病床における看護管理者の看護職と介護職の協働関係構築能力に対して,看護職からの評価には,看護職の個人属性と職場環境がともに全体的な評価に影響を及ぼしていることが明らかとなった。

  • 小林 真衣, 松本 加奈子, 福井 佳子
    2024 年61 巻4 号 p. 90-97
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/12/05
    ジャーナル フリー

    看護職員に対する看護師長の承認は,肯定的な評価と受け止められ自律性の成長につながる。本研究では看護の質向上における中核を担う中堅看護職員が上司から受けたと感じる承認とキャリア自律性の関係性を明らかにすることを目的に調査した。

    今回の質問用紙は看護職員が主体的に看護師生活を送ることを調査する内容であり,承認とキャリア自律性にはわずかではあるが関係性があった。また,上司からの承認は男性看護職員のキャリア自律性に影響した。男性看護職員は上司に対し,組織を牽引する管理力やリーダーシップを求めていると考える。さらに,上司から権限委譲と役割を与え,役割遂行に対する承認を行う事で,キャリア自律性を高めることに影響されることがわかった。看護師長は,個人の特性や得意分野を理解し,相手にあった役割は何かを吟味することが重要である。

  • 渋谷 高志
    2024 年61 巻4 号 p. 98-108
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/12/05
    ジャーナル フリー

    近年,診療報酬抑制の動きに加え,医業経営上における物的,人的資源のコスト増傾向が続く中,医療機関の運営効率性向上は一病院の経営上のみならず,持続的な医療サービスの提供という観点からも不可欠な状況となっている。医療機関を取り巻く環境は内的,外的環境ともに多岐にわたり,その効率性の検証にあたっては,各医療機関の特性,類型を考慮することがより望ましい。本研究では,次元圧縮の手法を用いて公営病院をシームレスに類型化し,医業経営上の収益性に影響を及ぼす要因を検討した。結果,患者数が普遍的な収益要因となる一方,入院診療の収益性は病床機能等のハード面に加え,職員経験年数等の人的資源プロファイルに左右されることが観察された。本研究で用いた手法は恣意的な閾値の設定によらず,類型別の特性を組み入れた収益効率性の検証が可能であり,より詳細な検討への応用を通して医業経営の実態把握,効率性向上に資することが期待される。

  • 龍川 初江, 佐々木 美奈子
    2024 年61 巻4 号 p. 109-116
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/12/05
    ジャーナル フリー

    【背景】定年退職前後の看護職を「プラチナナース」とし,豊かな看護の経験を活かした様々な場での活動が期待されている。

    【目的】本研究はプラチナナースが地域高齢者対象のACP教育への参加を通して,自らのキャリアや役割をどう捉えるか把握することを目的とした。

    【方法】高齢化率30%を超えるA地方在住のプラチナナースを対象とし,地域高齢者対象のACP教育への参加を通して,感じたこと,気づいたことについてグループインタビューを2回実施した。インタビュー内容を分析しカテゴリ化した。

    【結果】1か月後の聞き取りでは,参加したACP教育全体の感想が聞き取れた。1年後には,ACPへの多様な思いに寄りそえる看護職の強みに気づくとともに,自身の技量向上の必要性も語られていた。

  • 中野 隆之
    2024 年61 巻4 号 p. 117-128
    発行日: 2024/10/31
    公開日: 2024/12/05
    ジャーナル フリー

    病院では近年,経営管理に関する事務職員の人材育成や機能拡充について提言がみられるが,本研究は医療法人立病院の経営管理部門において,現場診療部門とのコンフリクト対処を含め事務職員が果たすべき機能について,「他病院との競合状況」への適応との関係で量的調査を実施した。本州で医療法人が経営する120の中小規模病院を対象に分析した結果,「他病院との競合状況」との関係では,看護師という人材の数的充足と並び,経営管理上の意思決定過程に事務職を積極的に関与させることが課題として示唆された。またそのためには,医師など現場の専門職と対等に話し合える地位や権限,役割を事務職に与えること,会議など公の場で発生する医師など現場専門職とのコンフリクトに際して自己の意見を積極的に表明する姿勢で臨ませること,そして組織への愛着的な感情の高い事務職を経営管理上の意思決定過程に積極的に関与させることが課題として示唆された。

総目次
編集後記
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