日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
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38 巻, 3 号
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巻頭言
Review
  • 宗内 淳
    2022 年 38 巻 3 号 p. 147-157
    発行日: 2022/08/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    経皮的バルーン血管形成術は,狭窄血管を内腔より拡張し内膜から中膜にかけて一時的な亀裂・解離を生じさせ,より大きな内径へ血管リモデリングを促し血行再建することを目的とする治療である.術後遺残狭窄病変を対象に広く行われ圧較差・形態を主眼に対象病変を抽出する.狭窄病変は肥厚・萎縮・低形成・圧迫・硬化など多様性を包含し,基本的に経皮的バルーン血管形成術は肥厚病変に対して最も効果的であり,萎縮・圧迫・低形成病変に対してはバルーン治療の効果は期待できずステント治療・外科治療なども考慮される.血管形成用バルーンは高耐圧バルーンを基本とし,硬化病変に対して超高耐圧バルーンを選択する.狭窄部最小径と周辺の参照血管径から至適バルーン径を決定し,体格を加味してアクセスのためのシース・親カテーテル・ガイドワイヤーを決定してゆく.リスク評価として術後経過時間,人工物介在の有無,バルーン拡張時の周辺への干渉や血行動態に及ぼす影響を事前に評価した後,狭窄病変へのガイドワイヤーの導入,バルーンカテーテルのデリバリーと拡張,効果判定の各段階を経て実行される.適切で効果的なガイドワイヤーの留置が成功への鍵となり,治療システムが心内を通過する場合には治療中の血行動態変動に常に留意し治療システム全体の安定に努める.バルーンウエストの消失を治療完遂基準として数回の加圧を行い,バルーンカテーテル抜去後の血行動態測定と血管造影により最終的効果判定を行う.先天性心疾患における経皮的バルーン血管形成術は個々の多様な病変を対象とするため,その治療計画は個別に立案されるべきで経験の積み重ねが必要である.

  • 鎌田 政博
    2022 年 38 巻 3 号 p. 158-165
    発行日: 2022/08/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    わが国においても2009年以降,Amplatzer™ duct occluder I[Abbott社;Chicago, IL]を始めとする各種デバイスが保険収載となり,コイルを用いた動脈管(patent ductus arteriosus: PDA)閉鎖術の件数は減少した.さらに最近ではFlipper PDA coil(F-coil)[Cook社;Turlock, CA]も製造中止となり,PDA閉鎖栓としてのコイルの役割はますます減少していかざるを得ないだろう.しかし,長い間F-coilを使用して培った経験や知識,すなわちPDAの形態や特性,診断・読影上の注意,コイル塞栓術の適応や手技の留意点,合併症などは,他のデバイスを使用してのPDA閉鎖術,様々な血管系のコイル塞栓術にも有用な情報を提供してくれるだろう.またF-coilの供給が途絶えた後にも,他のコイルを使用して小さな動脈管を閉鎖することも考えられる.そのような時代の中で,今後のカテーテル治療にも役立つと思われる知識・情報について,広島市民病院・循環器小児科時代に得た経験をもとにまとめてみたい.

  • 馬場 健児
    2022 年 38 巻 3 号 p. 166-171
    発行日: 2022/08/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    側副血行路に対するコイル塞栓術は小児循環器領域で比較的多く行われているカテーテル治療の一つであるが,対象疾患,対象血管の特徴は様々であり,さらにコイルの種類も多岐にわたる.対象および道具自体も種類が多いため画一化,統一化された考え方を確立することは難しい手技ではあるが,本稿では当施設でのコイル塞栓術に関する考え方も含めて提示する.

症例報告
  • 石井 宏樹, 矢崎 諭, 竹平 健, 三森 宏昭, 藤田 早紀, 松村 雄, 小林 匠, 斎藤 美香, 吉敷 香菜子, 上田 知実, 浜道 ...
    2022 年 38 巻 3 号 p. 172-177
    発行日: 2022/08/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    好酸球性心筋炎(以下EMC)は,ステロイド治療が著効しより早い段階から導入されることで回復が見込める比較的予後良好とされる心筋疾患である.ステロイド漸減中に重症筋無力症(以下MG)が発症した症例報告はない.症例は3歳女児,先行感染がない急な顔色不良と呼吸苦症状で入院し,心臓超音波で壁運動低下を認めた.初期治療のステロイド終了後,第9病日より好酸球増多と心筋逸脱酵素の再上昇を認めたためEMCを疑い,ステロイド投与を再開した.好酸球数低下に伴い壁運動改善を認め,第81病日に退院した.その後筋力低下による歩行困難,右眼瞼下垂より精査を進めMGと診断され,ステロイド投与に加え免疫抑制剤を内服し軽快した.EMCを疑った場合には早期の段階よりPSLを導入することが重要である.またEMCとMGは共に免疫の賦活化が発症機序であり,両疾患の関連が推察された.このためステロイド漸減中の神経症状には注意が必要と考える.

  • 伊澤 美貴, 佐藤 要, 白神 一博, 山口 哲弘, 大森 紹玄, 小川 陽介, 田中 優, 益田 瞳, 神田 祥一郎, 松井 彦郎, 犬塚 ...
    2022 年 38 巻 3 号 p. 180-185
    発行日: 2022/08/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    メッセンジャーRNA (mRNA)新型コロナウイルスワクチンの副反応の一つとして心筋炎が知られているが,その診断方法は確立していない.今回血液検査値の異常から診断に至った小児例を経験したため報告する.症例は生来健康な13歳男児で,2回目のmRNA新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2)接種後である.接種2日後に強い胸痛を自覚し,同日近医を受診した.受診時には胸痛以外の身体所見の異常を認めなかった.心電図検査や心臓超音波検査等の他の検査では異常を認めなかったが,血液検査において心筋逸脱酵素の上昇を認め,心筋炎と診断した.無治療で経過を観察したところ,症状・心筋逸脱酵素の上昇は改善した.経過を通して,急性期の検査所見の異常は血液検査値のみであった.3回目以降の追加接種や低年齢児へのワクチンの適応拡大により,今後ワクチン接種後心筋炎患者は増加すると推測される.ワクチン接種に伴う心筋炎の正確な頻度,長期予後を明らかにするために,血液検査まで含めた積極的な検査による診断と症例の蓄積が望まれる.

  • 浦山 耕太郎, 真田 和哉, 野中 春輝, 森田 理沙, 田原 昌博, 佐藤 友保, 山田 和紀
    2022 年 38 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2022/08/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー
    電子付録

    心室中隔欠損症(VSD)のうち,筋性部の肉柱部中隔に存在するものは多孔性であることが多く,心臓超音波検査による形態や短絡量の評価は困難なことがある.一方,心臓MRI位相差コントラスト法(Phase Contrast:PC法)は,任意の断面において直行する血流を撮像できる.今回,perimembranous VSD(pmVSD)と多孔性のmuscular VSD(mVSD)に僧帽弁上狭窄輪(supra mitral ring: SMR)を合併した1歳の症例にPC法を用いてVSD en face画像を撮像し,複数あるVSDの位置を描出し,欠損孔毎の短絡量を計測した.肺体血流比(Qp/Qs)2.05,短絡血流の内訳は,pmVSD 76.4%,mVSDのうち右室流出路(RVOT)近傍の最も大きな欠損孔は13.4%であった.SMRの解除,pmVSDの閉鎖に加え,RVOTからアプローチし,mVSDの最大孔とその近傍の孔を閉鎖した.術後,遺残短絡は少量で,PC法でQp/Qsは1.05であった.mVSDに対するPC法を用いたen face画像は孔の位置の同定や短絡量の推定に有用で,術前評価の一助となりうる.

  • 今西 梨菜, 中右 弘一, 岡 秀治, 島田 空知, 梶野 浩樹, 髙橋 悟
    2022 年 38 巻 3 号 p. 198-203
    発行日: 2022/08/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    先天性右心耳瘤は1968年のMorrowらによる報告以来,新生児から成人を含め国内外での症例が数十例しかいない稀な心内構造異常である.合併症として不整脈や血栓塞栓症,動悸や息切れなどが問題になる場合があり,適切な診断および治療が重要であるものの,その指針は定まっていない.症例は在胎29週の男児で,前医で右房拡大を指摘され,当院に紹介された.胎児心臓超音波検査では,14.2×7.9 mm(実測値:0.7 cm2)の瘤を認め,先天性右心耳瘤と診断した.診断時の瘤のサイズ(<20×13 mm,実測値:<2 cm2)を参考に無治療で経過観察できると判断し,胎児期は合併症なく経過し出生した.生後の瘤のサイズは22×11 mm(実測値:1.7 cm2)であり,右房とのサイズの比率が胎児期から変化がなかったため,引き続き経過観察をする方針にした.現在1歳になったが,合併症は起こさずに経過している.先天性右心耳瘤のフォローアップには,瘤のサイズが一つの目安になると考える.

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