日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
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33 巻 , 6 号
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巻頭言
Review
  • 稲井 慶
    2017 年 33 巻 6 号 p. 411-422
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/01/10
    ジャーナル フリー

    三尖弁閉鎖をはじめとした単心室血行動態患者に対してフォンタン手術が行われるようになってすでに40年以上の歳月が経過した.この間当初は明らかでなかったフォンタン循環の特徴が次々と示されると同時に多くの遠隔期合併症も報告されるようになった.今や多くの患者が成人となっており,フォンタン病とも呼ばれる術後遠隔期の病態への理解を深めることが成人先天性心疾患の診療にあたる医師の重要な課題である.フォンタン循環は高い静脈圧と低い心拍出量が特徴といえるが,運動時の循環動態や全身臓器にもたらす影響などその病態は非常に複雑である.さらに,成人した患者では長期にわたる病態の継続がより深く全身の臓器に不可避的な影響を及ぼすため,各臓器同士の連関を考えた治療・管理戦略を立てなければならない.本稿では,フォンタン手術遠隔期で成人した患者の様々な合併症への管理を当科での臨床研究や臨床経験をまじえて詳述した.心不全から不整脈,血栓症などフォンタン循環のおもだった合併症や問題点を網羅している.また成人女性の問題として妊娠出産の管理についても触れた.これらの管理や治療戦略を通して,各病態への理解を深めていく一助となることを期待する.

原著
  • 福嶋 遥佑, 馬場 健児, 近藤 麻衣子, 栗田 佳彦, 栄徳 隆裕, 重光 祐輔, 平井 健太, 塚原 宏一, 岩崎 達雄, 佐野 俊二, ...
    2017 年 33 巻 6 号 p. 423-430
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/01/10
    ジャーナル フリー

    背景:左心低形成症候群(HLHS)では左房容積が小さく,心房中隔の形態や心房中隔欠損(ASD)の大きさによってRashkind Balloon Atrial Septostomy(BAS)を行うことが困難な場合もある.

    目的:当院におけるHLHSに対するBASの有効性について検討した.

    対象と方法:2006年1月から2015年12月までの10年間にHLHSに対してカテーテル治療・手術を施行した患者におけるBASの有効性について検討した.またcatheter BASを施行した群についてASDの形態別に分けて有効性について両群比較検討した.

    結果:全HLHS70例中のGlenn手術到達は57例(81%)であり,BAS未施行群では86%(44/51),catheter BAS群では91%(10/11),open BAS群では25%(2/8)と統計学的有意差を認めたが(p=0.0002),BAS未施行群とcatheter BAS群では同等の結果であった.(p=1.0)Glenn手術後にカテーテル検査を施行した56例について検討すると,BAS未施行群,catheter BAS施行群,open BAS施行群の平均肺動脈圧,肺血管抵抗,PAIいずれも3群間に差は認めなかった.次にCatheter BAS施行群をASDの位置・大きさ・atrial septumの厚さからstandard ASD (n=5), complex ASD(n=5)に分類し,ASDの形態別にBAS施行方法を検討すると,standard ASD群では全例Rashkind BAS単独施行で効果を得たが,complex ASD群ではRashkind BAS単独施行症例は1例のみで,Static BASを先行させRashkind BASに到達した症例が4例であった(p=0.048).BAS後のASD size, ASD flow, SpO2は2群間で統計学的有意差を認めなかった.

    結論:catheter BASは有効で,Glenn後のカテーテルデータではBAS未施行群と有意差は認めなかった.またcomplex ASD群の場合には,Static BASを先行し,Rashkind BASを追加することで,standard ASD群と同等の効果を得ることができた.

症例報告
  • 古川 卓朗, 泉 岳, 大野 聖子, 堀江 稔
    2017 年 33 巻 6 号 p. 431-437
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/01/10
    ジャーナル フリー

    先天性QT延長症候群では遺伝子診断の進歩により,遺伝子変異に基づいた日常診療が可能となってきている.今回複合変異の発端者を含む,QT延長症候群の家族例を経験した.発端者は女児で,6歳時より運動時の失神を繰り返し受診した.補正QT時間(Bazett)0.67 sと延長を認め,失神の既往と合わせQT延長症候群と診断し,β遮断薬および運動制限を開始した.以後無症状だったが,10歳時にβ遮断薬内服中にもかかわらず失神が再発したことを契機に,発端者の遺伝子検査および家族の遺伝子スクリーニングを行った.発端者はKCNQ1 p.K358_Q359delとSCN5A p.A1330Tの複合変異ヘテロ接合体であり,父と姉にはSCN5A p.A1330T,母と妹にはKCNQ1 p.K358_Q359delのヘテロ接合性変異を同定した.その後発端者はβ遮断薬,Naチャネル遮断薬で8か月間失神なく経過しているが,植込み型除細動器を検討している.SCN5Aの変異を有する姉は心電図所見なく経過観察としたが,一方でKCNQ1の変異をもつ妹は運動負荷心電図でQT延長を認めたため,一次予防としてβ遮断薬と運動制限を開始した.遺伝子変異のみならず,臨床検査結果や家族歴等を加え検討することが治療方針決定に重要であった.

  • 大津 幸枝, 増谷 聡, 岩本 洋一, 石戸 博隆, 先崎 秀明
    2017 年 33 巻 6 号 p. 444-447
    発行日: 2017/11/01
    公開日: 2018/01/10
    ジャーナル フリー

    小児期発症心疾患から成人移行した患者の医療費は症例により高額で,小児期の支援終結や患者・家族の高齢化は生活や医療継続可否に大きな影響を与える.適切な社会支援を得るための介入が必要であった1例と,高額であったが困窮しなかった1例を対比検討する.症例1は海外でFontan術後,19歳で帰国後,肺血管拡張薬追加により医療費が著増し,社会支援手続きの遅れにより困窮した.症例2は24歳の肺動脈性肺高血圧症で肺高血圧治療薬投与,在宅酸素等により医療費は高額で,指定難病手続きにより負担が大きく軽減した.小児心疾患患者の成人移行に際し,個々の社会支援の最適化は複雑・難解で,個々人・居住地により大きく異なり,制度も急速に変容する.小児期発症心疾患から成人移行した患者が最適な社会支援を享受でき,困窮しないよう,成人期社会支援に対する医療者の理解と,院内多職種連携が重要と考える.

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