日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
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32 巻, 3 号
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巻頭言
Reviews
  • 早渕 康信
    2016 年 32 巻 3 号 p. 189-198
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    肺動脈平滑筋細胞に存在するカリウムチャネルは多彩な種類と機能を有し,多くの生理作用ならびに病態に関与している.肺動脈性肺高血圧症(PAH)においても発症と増悪に深く関与していることが明らかになりつつある.2013年にtwo-pore domainカリウムチャネルの1種であるKCNK3(TASK1)の遺伝子変異がPAHの原因遺伝子であると証明され,第5回肺高血圧国際シンポジウム(ニース国際会議)で追加された.また,PAHでは発症原因にかかわらず,電位依存性カリウムチャネル,特にKCNA5(Kv1.5)の発現低下と活性抑制が認められ,肺動脈収縮と血管リモデリングを促進することが示されている.さらに,平滑筋細胞に認められるカルシウム活性化カリウムチャネルは,形質転換によってBKca(Kca1.1)からIKca(Kca3.1)優位に変化し,平滑筋細胞の遊走の促進,増殖能の亢進,アポトーシスの抑制などに影響を与えている.これら肺血管の収縮とリモデリングへのカリウムチャネルの役割を解明することで,新たな治療戦略が見えてくるものと期待される.
  • 中山 泰秀, 古越 真耶
    2016 年 32 巻 3 号 p. 199-207
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    カプセル化反応を利用する生体内組織形成術(IBTA)を用いると,所望の形と厚さの丈夫な自己移植用組織体を,単に鋳型を皮下に埋入するだけで2か月以内に得ることができる.心血管系移植体として,管状組織体(バイオチューブ),シート状パッチ材(バイオシート)さらに導管付心臓弁(バイオバルブ)を開発している.これらを移植すると,血管や心筋,弁組織が高い信頼性を持って数か月以内に再生する.バイオチューブの成長性に関して,ビーグル幼犬モデルを用いることで初めて証明することができた.本稿では小児先天性心疾患に対する外科治療での貢献をめざす最新のIBTA研究を概説する.
症例報告
  • 小沼 武司, 阪本 瞬介, 平野 玲奈, 大橋 啓之, 澤田 博文, 三谷 義英, 新保 秀人
    2016 年 32 巻 3 号 p. 208-212
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    気管支軟化症は先天性心疾患に合併することが稀にあり,症状に応じて大動脈胸骨固定術や外ステント術等治療を必要とする疾患である.今回われわれは左心低形成症候群に合併した気管支軟化症に対して新しい手技として肺動脈幹を温存するNorwood変法手術を導入し,気管支軟化症の改善に有効であった症例を経験したので報告する.5ヶ月女児,HLHSの診断で日齢12日に両側肺動脈絞扼術を行っている.4ヶ月時に呼吸器症状から気管支鏡検査を施行し,左気管支軟化症と診断された.手術はNorwood,BDG手術を施行し,大動脈再建には肺動脈幹温存法(PA trunk saving法:PATS)を用いた.主肺動脈から左右肺動脈を起始部で離断,端々吻合し,離断部を直接閉鎖することで大動脈再建に利用できる主肺動脈長軸距離を確保し,短軸径の縮小で左肺門部狭窄を回避した.術後に呼吸器症状は消失し,気管支鏡検査でも気管枝内腔形状の改善を認めた.
  • 吉澤 康祐, 藤原 慶一, 大野 暢久, 坂崎 尚徳, 鷄内 伸二
    2016 年 32 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    無脾症候群では多様な心奇形を呈する.そのほとんどが単心室であり,Fontan型手術を目標として治療を行うことが多いが,肺動脈,肺静脈の問題を合併することがあり予後が悪い.今回,下心臓型総肺静脈還流異常を合併した無脾症候群の低体重出生時に対する2回の肺静脈狭窄解除を経験した.生後8日2,097 gで初回手術(総肺静脈還流異常修復,BTシャント変法,PDA離断部肺動脈形成)を行った.肺静脈狭窄が進行し,外科的に肺静脈狭窄解除を行ったが,術後肺静脈再狭窄が進行した.そこでBTシャント変法追加による肺血流量の増加と外科的肺静脈狭窄の再解除を連続して行い,肺静脈血流の確保を計画した.その後,段階的に肺動脈形成を行うことで,Fontan型手術に到達した.計画的な肺血流の調整が肺静脈狭窄の進行予防と肺動脈発育に寄与したと考えられた.
  • 真田 和哉, 田原 昌博, 新田 哲也, 下薗 彩子, 佐藤 友保, 野中 春輝, 石川 優子
    2016 年 32 巻 3 号 p. 223-229
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    川崎病冠動脈病変後遺症における血管内膜の評価は重要である.Black blood(BB)法を用いたmagnetic resonance coronary vessel wall imagingで血管壁肥厚を指摘された川崎病冠動脈病変合併症例4例に対し,光干渉断層法(optical coherence tomography: OCT)を用いて,血管内膜病変の観察を行った.全症例においてBB法で血管壁肥厚が存在した部位に一致して,OCTで内膜肥厚を認めた.BB法で均一に描出された血管壁にはOCTで様々な病変を認めた.BB法とOCTの比較で,BB法で血管内膜肥厚の存在が評価可能なことが示唆された.BB法は川崎病冠動脈病変における血管内膜病変のスクリーニングに有用であると考えた.
  • 和田 卓三, 打田 俊司, 本田 賢太朗, 湯崎 充, 山本 暢子, 西村 好晴, 垣本 信幸, 末永 智浩, 武内 崇, 鈴木 啓之, 岡 ...
    2016 年 32 巻 3 号 p. 232-236
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    冠動脈瘻の頻度は低く,両側冠動脈が関与血管となるものは非常に稀である.今回,心雑音を主訴とした無症候性冠動脈瘻の4歳男児に対し冠動脈瘻閉鎖術を施行した.冠動脈瘻は小児期は無症状で経過することが多いが,成人期以降で心不全や狭心症状が生じるため,早期治療が望まれる.治療適応は,症状の有無や瘻孔血管の瘤化,瘻孔の大きさ等をもとに決定される.また,瘻孔の閉鎖方法には様々な術式が報告されているが,本症例では瘻孔血管の心筋壁内走行を認め,術前および術中所見から右室切開による直接瘻孔閉鎖法を選択した.
  • 岩﨑 秀紀, 藤田 修平, 谷内 裕輔, 久保 達哉, 永田 義毅, 臼田 和生, 仲岡 英幸, 伊吹 圭二郎, 小澤 綾佳, 廣野 恵一, ...
    2016 年 32 巻 3 号 p. 237-243
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    LMNA遺伝子は,核膜の裏打ち蛋白であるLamin A/Cをコードし,心筋・骨格筋・末梢神経の障害,皮膚疾患など多彩な疾患の発症に関与する.LMNA変異には,拡張型心筋症や伝導障害,心室性不整脈の合併が多いとされ,これらの心不全・伝導障害に対して心臓再同期療法(Cardiac resyncronization therapy; CRT)の有用性の報告が散見される.本症例は乳幼児期発症の先天性筋ジストロフィーの女児で,遺伝子検査でLMNA変異を認めた.8歳以降,徐々に心機能が低下し,完全房室ブロックや非持続性心室頻拍を認め,13歳時より心房細動,徐脈および心不全が進行し,入退院を繰り返すようになった.14歳時に,伝導障害を伴う高度徐脈を合併した心不全に対して,経静脈的に両心室ペースメーカ植込み術を施行し,心不全症状の改善が得られた.LMNA関連心筋症は成人期以降に徐脈性不整脈・心不全や突然死を呈することが多く,成人例でのCRTの有用性が報告されているが,本症例のように小児期発症例においてもCRTの有用性が示唆される.
  • 池川 健, 鉾碕 竜範, 若宮 卓也, 咲間 裕之, 中野 裕介, 森崎 裕子, 山田 修, 上田 秀明, 岩本 眞理
    2016 年 32 巻 3 号 p. 244-249
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    症例は12歳女児.幼児期より鼻出血を繰り返し,母と母方祖父も鼻出血が多い.数年前から運動時の呼吸苦を認めており,近医で多血症を指摘されて精査目的に紹介受診した.左背部に連続性雑音を聴取し,胸部単純X線写真で左下肺野に結節影を認めたことから造影CT検査を施行し,左S1と左S9に異常血管病変を確認した.診断基準に基づき,遺伝性出血性毛細血管拡張症に伴う肺動静脈瘻と診断した.左S9の肺動静脈瘻に対してカテーテル塞栓術の適応と考え,コイル塞栓術を行い,完全閉塞に成功した.術後,運動時の呼吸苦は消失した.本人と母に施行した遺伝子解析の結果,endoglinENG)遺伝子に新規遺伝子変異IVS2-1G>C(c.220-1G>C)が同定され,本変異がHHT発症の原因遺伝子変異である可能性が示唆された.遺伝子変異と疾患関連性について今後の症例の蓄積が必要である.
  • 藤野 光洋, 江原 英治, 九鬼 一郎, 中村 香絵, 佐々木 赳, 川崎 有希, 吉田 修一朗, 吉田 葉子, 鈴木 嗣敏, 村上 洋介
    2016 年 32 巻 3 号 p. 251-256
    発行日: 2016/05/01
    公開日: 2016/06/15
    ジャーナル オープンアクセス
    mTOR阻害薬のeverolimusは,結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫や上衣下巨細胞性星細胞腫に対する有効性が報告されているが,心臓横紋筋腫に対する報告は稀である.症例は生後10か月の男児.胎児期から両側側脳室上衣下結節と多発性心臓腫瘍を指摘され結節性硬化症(TS)と診断された.出生後,小さな心臓腫瘍は自然退縮したが,右室中隔,左室自由壁,左室心尖部の大きな腫瘍は残存した.流入路,流出路狭窄はなかった.生後3か月から難治性痙攣が出現し,頭部MRIで上衣下巨細胞性星細胞腫を認めたため,生後10か月から同腫瘍に対してeverolimusを開始した(3.0 mg/m2/日).その結果,上衣下巨細胞性星細胞腫は縮小し,痙攣も抑制できた.心臓腫瘍は,everolimus投与後1か月で左室自由壁の腫瘍が消失し,投与後7か月で左室心尖部の腫瘍も消失した.残存した右室中隔の腫瘍もeverolimus投与前は最大23.4×16.7 mmあったものが,投与後1か月で16.1×4.3 mmまで急速に縮小した.Everolimusは,TSに合併した心臓横紋筋腫を急速に退縮させる可能性がある.
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