日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
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38 巻, 4 号
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巻頭言
Review
  • 竹内 大二
    2022 年 38 巻 4 号 p. 207-220
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    成人先天性心疾患(ACHD)患者数の増加に伴い,ペーシングデバイス器機の植え込み数も増加している.特有の心臓構造を持つ先天性心疾患ではリードや植え込み法の選択も大切である.また,新しい機能,ペーシングデバイスも登場しており,ACHD領域での使用増加も予想される.本稿では,先天性心疾患領域で活用可能な最近の知見について述べる.

  • 坂本 一郎
    2022 年 38 巻 4 号 p. 221-228
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    先天性心疾患患者の多くが成人に達する時代になり,先天性心疾患の半分以上は成人である.成人に達した先天性心疾患患者の死因として,不整脈と併せて問題になってくるのが心不全である.そのため心不全治療をすることで先天性心疾患の予後をさらに改善させることができると思われる.心不全治療で,外科的治療・カテーテルインターベンションと並んで重要なのが,薬物療法である.近年新規心不全治療薬が出現し,心不全薬物治療が変わりつつある.今後も新しい心不全治療薬が出現してくると思われるが,今の時点で古典的な心不全治療薬から新規心不全治療薬まで,その使い方を学び直すことは極めて重要と思われる.本稿が今後の皆様の日常診療に少しでも役に立てば幸いである.

  • 杜 徳尚, 高谷 陽一, 中川 晃志, 赤木 禎治, 伊藤 浩
    2022 年 38 巻 4 号 p. 229-233
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    心房中隔欠損(Atrial septal defect, ASD)は頻度の高い先天性心疾患であり,チアノーゼなどの症状が出ないことも多く,小児期に診断されることなく成人に到達する症例も少なくない.成人期まで到達したASDでは長年の右心系の負荷と肺血流の増加に伴い,心不全,心房細動,肺高血圧,などの合併症を伴い病態が複雑となることがある.従来の外科手術に加えて,近年の経カテーテルASD閉鎖術,心房細動に対するカテーテルアブレーション,肺高血圧治療薬の進歩に伴い治療成績は向上している.

  • 石井 陽一郎
    2022 年 38 巻 4 号 p. 234-242
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    近年,胎児のエコースクリーニング検査が浸透し,多くの先天性疾患が出生前に診断されている.そのなかで,胎児期に心不全から胎児死亡に進行するものや,先天性心疾患(congenital heart disease: CHD)重症度が妊娠経過中に進行し,生後治療では救命が困難となる重症CHDが存在することが明らかになっている.これらの疾患に対して様々な出生前治療介入が,欧米を中心として施行されており,治療方法や治療成績,予後改善効果について報告されている.本邦でも致死的な胎児CHDに対する胎児治療の臨床研究や臨床試験が行われており,胎児頻脈/徐脈性不整脈,重症大動脈弁狭窄に対して,母体・胎児の安全性を担保しながら一歩ずつ着実に施行可能になっている.一方でCircular shuntを伴うエプスタイン病に対する非ステロイド性抗炎症薬投与に関しては,国内ではまだ報告がなく,これから進められる介入と考えられる.いずれの治療介入についても母体・胎児に関する倫理的課題や診療制度構築の問題があり,それらに対して同時に取り組んでいく必要がある.種々の問題に対処しながら,世界の胎児心臓治療水準に並べるようにしていくことが望まれている.

症例報告
  • 玉木 愛乃, 藤岡 泰生, 國方 歩, 杉山 隆朗, 稲毛 章郎, 小林 城太郎, 大石 芳久
    2022 年 38 巻 4 号 p. 243-248
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    感染性動脈瘤はmodified Blalock–Taussig(mBT)シャント造設後に発症する稀な合併症である.致死的な経過を辿ることもあり迅速な治療が必要であるが画一した治療方法はない.今回mBTシャント術後に発症した感染性動脈瘤に対しカテーテル手技とのハイブリッド手技により安全に外科的治療を行えた症例を報告する.症例はファロー四徴症に対し左mBTシャント術後の5か月男児で,低酸素血症を主訴に来院し造影CT検査にてシャント位置に動脈瘤を認めた.また血液培養検査でStaphylococcus capitis陽性であり同菌による感染性動脈瘤が疑われた.抗生剤加療のみでは治療難渋し,感染巣の摘出が必要と考えた.胸骨正中切開の際に動脈瘤破裂や出血のリスクがあるため動脈瘤への流入血管でバルーン留置行い,完全に血流を遮断したうえで動脈瘤の摘出を行った.また同時に新規肺血流確保のため右室流出路再建を施行し術後56日に退院した.感染性動脈瘤に対するハイブリッド手技は補助治療として有力である.

  • 鈴木 謙太郎, 永田 佳敬, 佐藤 純, 吉井 公浩, 今井 祐喜, 吉田 修一朗, 西川 浩, 大橋 直樹, 櫻井 寛久, 野中 利通, ...
    2022 年 38 巻 4 号 p. 249-253
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    症例は16歳女児で,動悸や胸部絞扼感の訴えがあり前医を受診し,左冠動脈肺動脈起始症(Anomalous Origin of the Left Coronary Artery from the Pulmonary Artery: ALCAPA)の診断で当院に紹介となった.手術は竹内法を選択し特記すべき問題なく終了したが,術後より心機能低下と鬱血による呼吸不全を認めた.心不全治療目的にビソプロロールを貼付したところ症状の速やかな改善が得られ,鑑別目的にカテーテル検査を行ったところ冠血流の鬱滞と左右冠血流の上行大動脈への逆流を確認した.前医の造影CT検査を確認し直したところCS径が2.5 mmと平均と比較して1/2以下の低形成であったことも判明した.成人型ALCAPA症例の心機能低下について言及されている報告は少ないが,冠血流の鬱滞が主病態と思われること,鬱滞の一因としてCS低形成が関与していた可能性が示唆された.

  • 渋谷 将大, 正谷 憲宏, 平野 暁教, 梅津 昭宏, 居石 崇志, 吉田 拓司, 吉村 幸浩, 齊藤 修
    2022 年 38 巻 4 号 p. 254-261
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2023/10/05
    ジャーナル フリー

    我々はVA-ECMOから離脱困難となった虚血性心筋症の小児例に対し,開胸下で520 km, 10時間に及ぶ長距離の陸路ECMO搬送を経験したので報告する.搬送車両は当院独自のドクターカーを用い,事前に搬送中の各医療機器の消費電力と酸素消費量を概算し準備を行った.また搬送中のECMOカニューレの事故抜去を防ぐため,搬送前日に送血部位を大動脈基部より右総頚動脈に変更し,脱血カニューレは右房からより深めに留置,厳重な固定を行った.必要な資機材がすべて1枚のバックボードに収まるように医療機器とともに患児を固定し,ドクターカー内に収容した.搬送チームは,実働時間を加味し2チーム交代制とした.重大な有害事象なく搬送を終えることができた.ECMO搬送では,医療機器のトラブルやカニューレの事故抜去は致死的である.特に小児の開胸下ECMOでは,搬送中の振動によりカニューレ事故抜去のリスクがより高まる.搬送手段や所要時間に応じ搬送中の安全を考慮した事前準備とチーム編成が肝要である.また,本邦では小児ECMO搬送は少なく,症例を集積し搬送システムの定型化が急務である.

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