日本小児循環器学会雑誌
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32 巻 , 5 号
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巻頭言
Reviews
  • 長嶋 光樹
    2016 年 32 巻 5 号 p. 357-364
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/10/07
    ジャーナル オープンアクセス

    体外循環とは,人工的にポンプ等により体外へ血液を導出し,血液の回路を通して酸素化,浄化等の血液操作を行い,再び体内へ血液を戻す一連の動作を体外循環と呼ぶ.今回は,人工心肺(cardiopulmonary bypass: CPB),体外膜型酸素付加装置(extracorporeal membrane oxygenation: ECMO)を中心に小児領域における体外循環について特に,CPB,ECMOの構成,体外循環の病理,体外循環の合併症について解説する.

  • 神山 浩
    2016 年 32 巻 5 号 p. 365-378
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/10/07
    ジャーナル オープンアクセス

    致死性心筋炎の死亡頻度は10万人あたり0.46人で,ウイルス性の原因が多い.神経症状や消化器症状などの心外症状から心筋炎を鑑別することが重要である.劇症化の予測として心電図や血液検査所見の経時的変化の観察が重要である.画像診断として心エコーでの収縮能低下や心膜液貯留は,専門医資格のない医師にとっても視覚的に理解しやすい所見である.急性期を脱した時点でのMRI, 核医学検査は専門医として診断に有用な低侵襲性モダリティである.致死的不整脈の合併は劇症型心筋炎に高頻度であり,回復期に不整脈が残存する症例には電気生理学的検査が必要な場合もある.治療について低心拍出状態や致死的不整脈合併例では補助循環療法の導入を積極的にすべきで,導入および離脱の施設基準が明確であることが望ましい.小児への大動脈内バルーンパンピングの心筋炎への使用は議論がある.免疫グロブリン療法およびステロイド療法の心筋炎に対する一定の治療的コンセンサスは得られていない.小児の劇症型心筋炎は急性期死亡も多いが,急性期に生還した症例であれば,神経学的後遺症を含め必ずしも予後不良な疾患ではない.

  • 石井 徹子
    2016 年 32 巻 5 号 p. 379-386
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/10/07
    ジャーナル オープンアクセス

    胎児の心機能評価は,出生後と異なり超音波による評価が唯一の方法である.心臓そのものの収縮能,拡張能は一般的に成人領域で心機能評価に用いられる方法が,胎児に応用されている.一方胎児特有の評価方法もある.多くは心機能の直接的な評価でなく,脳や胎盤などの循環障害の程度を評価し,胎児死亡などのリスクを判断する目的に,古くから産科領域で用いられてきたものである.両者をうまく使うことで,様々な病態を解釈し最適な娩出時期や予後予測が可能になることが望まれる.

  • 河津 由紀子
    2016 年 32 巻 5 号 p. 387-396
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/10/07
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,出生前診断が広がりを見せるなかで,胎児心臓診断が本邦においても急速に増加している現状である.画像技術の進歩も相まって,従来は胎児診断が困難とされていた先天性心疾患が診断されるようになり,また胎児期から先天性心疾患の心機能を評価することや出生後の状態・予後を予測することも可能となってきた.それら胎児心臓診断における新しい指標として,①心機能評価に対するもの:組織ドップラー法(tissue Doppler imaging: TDI),Tei index(myocardial performance index: MPI),cardiovascular profile score(CVPS) ②心形態診断:‘I-shaped’sign, Post LA space index(PLAS index),U-sign ③生後状態の評価・予後判定:左心低形成症候群における肺静脈血流パターンと母体酸素負荷テストでのpulsatility index(PI),完全大血管転位における卵円孔と動脈管,をピックアップしてそれぞれについての解説を行う.

  • 馬場 志郎
    2016 年 32 巻 5 号 p. 397-408
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/10/07
    ジャーナル オープンアクセス

    心臓内の心筋細胞のほとんどは最終分化した成熟細胞であり,それゆえ心不全患者に対する幹細胞由来分化心筋の臨床利用が長年望まれてきた.純粋な心筋幹細胞の同定は未だ困難で,同定できたとしても有効な移植方法についても模索中である.今回,その幹細胞からの心筋細胞分化,またその機能解析方法や利用の展望について総論的に述べる.

  • 桃井 伸緒
    2016 年 32 巻 5 号 p. 409-416
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/10/07
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    バース症候群はX連鎖性の疾患であり,心筋症,好中球減少,ミオパチー,成長障害,3-メチルグルタコンサン尿症を特徴とする.本疾患はXq28に存在するTAZ遺伝子の変異によって発症し,カルジオリピンの欠損とミトコンドリア機能異常をきたす.心筋疾患は,Barth症候群において最も多く認められる症状であり,拡張型心筋症と左室心筋緻密化障害が見られ,頻度は少ないが心内膜線維弾性症や肥大型心筋症が見られる.好中球減少やミオパチーなどの症状がなく,TAZ遺伝子異常が認められるX連鎖性の乳児心筋症が報告されており,これらはBarth症候群とallelicであると考えられている.本症候群による死亡の大半は心不全によるものであり,その多くは生後6か月以内に生じる.一方,治療に対する反応は良好であり,3歳以降は心機能が正常化する症例が多く見られる.不整脈が年長児で見られることがあるが,心機能が改善した5歳以降の予後は良好であることから,本症候群の表現型の多様性を理解し,早期診断と早期治療が重要である.

原著
  • 櫻井 一, 野中 利通, 櫻井 寛久, 小坂井 基史, 野田 美香, 大沢 拓哉, 大橋 直樹, 西川 浩, 吉田 修一朗, 鈴木 一孝, ...
    2016 年 32 巻 5 号 p. 417-422
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/10/07
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:主肺動脈の狭窄や閉鎖を伴う多くのチアノーゼ性心疾患では,上行大動脈の拡大と弓下の空間の狭小化が見られ根治術を困難にする.この問題に対する手術方法として,自己大動脈組織によるaortic extension法を考案した.

    方法:本術式を2005年から2013年までに肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損症の1例と機能的単心室の4例の計5例に行い,手術時データ,予後,術前後大動脈造影検査で大動脈径の変化につき比較,検討した.

    結果:手術時年齢は18.2±7.6か月(7か月~2歳),体重は8.4±0.9 kg(7.1~10.0 kg)で,手技としては全例30分程度で施行可能だった.術前後の上行大動脈最大径/上行大動脈末梢径比は1.64±0.22から1.01±0.36に有意に減少し弓下の拡大がえられた.術後観察期間は53.8±38.3か月(32~130か月)で,狭窄や再拡大は認めず経過良好だった.

    結論:自己大動脈組織のみによるaortic extension法は,大動脈径の縮小と延長が同時に可能で,成長も期待でき十分な弓下拡大による太い中心肺動脈再建や気管支の圧迫解除を可能にする有用な術式と考えられた.

症例報告
  • 池田 麻衣子, 小沢 広明, 永田 佳敬, 馬場 礼三, 加藤 太一, 長井 典子
    2016 年 32 巻 5 号 p. 423-428
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/10/07
    ジャーナル オープンアクセス

    リウマチ熱に伴う極めて稀な突然死症例を経験した.12歳男児.心肺停止で来院したが,蘇生には成功しなかった.剖検の病理診断で,心組織の様々な部位にリウマチ熱に特徴的なAschoff体を認め,房室結節周囲に著明な炎症所見を認めたため,リウマチ熱による伝導路障害が死因であると推定された.リウマチ熱は発展途上国ではいまだによく見られる疾患であるが,日本小児循環器学会の稀少疾患サーベイランスで年間4~10例と,本邦では稀な疾患である.しかしながら,発熱症例に対する過剰な抗菌薬投与が見直されている現在では,発熱性疾患の鑑別においてリウマチ熱の存在を念頭に置くことも忘れてはならないであろう.

  • 山田 佑也, 太田 宇哉, 野村 羊示, 田内 宣生, 西原 栄起, 倉石 建治
    2016 年 32 巻 5 号 p. 432-436
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/10/07
    ジャーナル オープンアクセス

    TCPC(total cavo-pulmonary connection)手術後の蛋白漏出性胃腸症(protein-losing enteropathy: PLE)に伴う低IgG血症に対し,pH 4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)(Subcutaneous Immunoglobulin: SCIG)による在宅補充療法を導入した1例を経験した.症例は左心低形成症候群の21歳男性.5歳時にTCPC手術を施行,術後5年でPLEを発症した.15歳より感染症等によるPLE症状増悪時に静注免疫グロブリン(intravenous immunoglobulin: IVIG)補充を行い,20歳でSCIG在宅補充を導入した.8 g/週で開始したが血清IgGの上昇を認めず,16 g/週に増量した.SCIG使用前と16 g/週補充後を比較し,血清IgG値は370→484 mg/dLと上昇,血清アルブミンは2.7→2.4 g/dLと低下,入院日数は4.7→1.2日/月と減少した.SCIGにより血清IgGが上昇し,感染症による入院回避に効果があった.PLE患者への維持投与量は,重症度に応じた個別の検討が必要と考えられる.

  • 重光 祐輔, 馬場 健児, 近藤 麻衣子, 栗田 佳彦, 栄徳 隆裕, 福嶋 遥佑, 平井 健太, 吉本 順子, 鷲尾 洋介, 大月 審一
    2016 年 32 巻 5 号 p. 439-444
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2016/10/07
    ジャーナル オープンアクセス

    巨大な心臓横紋筋腫合併結節性硬化症(tuberous sclerosis: TS)患児に対し,救命のためeverolimusを使用し,腫瘍の縮小と血行動態の改善を得た症例を経験した.胎児診断症例.横紋筋腫,上衣下結節,多発性網膜過誤腫を認めTSと診断.横紋筋腫は巨大であり,右室内に充満していた.出生直後は無治療で経過をみることができ,動脈管自然閉鎖に伴う循環動態の変化も明らかではなかった.しかし心不全が徐々に進行し,日齢11より挿管人工呼吸管理を含む集中治療を開始した.腫瘍による圧排がその原因と考えられた.手術による摘除も困難な状況下で,救命のために適応外ではあるが日齢19よりeverolimus投与を開始した.投与開始後20日程度で腫瘍断面積は1/2以下に縮小した.縮小に伴い心不全も徐々に改善し,日齢42には抜管が可能であった.日齢93に退院した.横紋筋腫に対するeverolimus使用の報告は稀ではあるが,本症例では有効と考えられた.

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