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桜井 一, 伊藤 瑛海, 植村 知博, 中野 明彦, 上田 貴志
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0401
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
Rab5 GTPaseはGTP結合型とGDP結合型をサイクルする分子スイッチとして機能し、エンドソーム上で膜融合の制御を行っている。さらに、GTP型のRab5はエフェクター分子を介してエンドソームの動態や膜組成などのさまざまな制御に関与することが動物において明らかになっている。シロイヌナズナにはARA7、RHA1、ARA6の3つのRab5メンバーが存在し、ARA7、RHA1は動物Rab5のオー ソログである。この広く生物種に保存されているタイプのRab5は生物の生存に関わる重要な機能を制御すると考えられるが、そのエフェクターは発見されていない。そこで、ARA7、RHA1が下流でどのような生命現象を制御しているのかを明らかにするために、ARA7と結合するエフェクターを探索した。
GTP結合型に固定したARA7と相互作用するエフェクター候補をYeast Two Hybrid 法でスクリーニングし、脂質との結合に関与するPXドメインを持つABE1(Ara7 Binding Effector 1)を得た。さらにRab5メンバーとの相互作用を詳細に検討したところ、植物 特異的なRab5であるARA6とは結合しないことから、ARA7・RHA1特異的なエフェクターであることが示唆された。シロイヌナズナのPXドメインをもつタンパク質は相同性から4つのグループに分けられる。同じグループの他の2つのタンパク質とARA7、RHA1の結合能について現在解析中である。今回は、このPXドメインタンパク質グループのRab5結合能と機能解析についての結果を報告する。
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台信 友子, 齊藤 知恵子, 上田 貴志, 中野 明彦
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0402
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
小胞輸送は,オーキシンの極性輸送,重力屈性,細胞分裂などの植物の生命機能において重要な役割を果たしている.小胞輸送の制御に関わるRabファミリーは,真核生物に広く保存されている低分子量GTPaseで,輸送小胞の標的膜への繋留・融合を制御していることが知られている.シロイヌナズナのゲノム中には,57個のRab GTPaseがコードされており,さまざまな輸送ステップで機能している.なかでも Rab5グループは,エンドソーム/液胞前区画に局在し,他の生物のRab5と高い相同性を示すRHA1,ARA7と植物に特異的なARA6の3つのメンバーから構成されている.Rab5メンバーが植物個体レベルで持つ生理的意義を明らかにするために,変異体を用いて,各遺伝子の個体における機能の解析を行った。変異体の表現型解析から,
rha1,
ara7,
ara6の単独の変異体は野生型と同様に生育するが,
rha1 ara7二重変異体は単離できなかった.このことから,RHA1とARA7は重複した機能を持つと考えられる.さらに,野生型とのクロスポリネーション解析により,この変異体は雄性配偶体致死となることが明らかになった.そこで,
rha1と
ara7の変異が,花粉の形成や花粉管の発芽・伸長等のいずれの過程に損傷を引き起こすのかを調べるため,変異体より花粉を採取し,その構造や機能について解析を行ったのでその結果を報告する.
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植村 知博, 庄田 恵子, 海老根 一生, 佐藤 雅彦, 上田 貴志, 中野 明彦
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0403
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
トランスゴルジネットワーク(TGN)は,小胞体からゴルジ体へと輸送されたタンパク質が,液胞,細胞膜等の目的地別に選別・輸送される際の分岐点となる重要なオルガネラである。しかし,高等植物におけるTGNの定義は曖昧であり,動物・酵母においてTGNに局在するSNARE分子のオーソログ,SYP41が局在するオルガネラを便宜的にTGNと呼んでいるものの,その構造・機能は全く明らかにされていない。シロイヌナズナには,SYP41に相同性の高いホモログとしてSYP42及びSYP43が存在している(SYP4グループ)。我々は,高等植物におけるTGNの機能を明らかにするため,SYP4グループについて変異体の解析を行った。その結果,それぞれの単独変異体(
syp41,syp42,syp43)及び二重変異体(
syp41 syp42,syp41 syp43)では目立った表現型は観察されなかったが,
syp42 syp43二重変異体では根の伸長が著しく阻害されていた。このことから,SYP4グループではSYP43が主要に機能しており,TGNが根の伸長において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。次に,TGNの動態を明らかにするために,TGNを可視化した形質転換体を作成し,観察を行った。その結果,TGNは主にゴルジ体のトランス側に存在するが,一部はゴルジ体とは独立したオルガネラであることが示唆された。
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福田 真子, 佐藤 美緒, 川越 靖, Okita Thomas W, 小川 雅広, 佐藤 光, 熊丸 敏博
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0404
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
低分子量GTPase Rab5aは小胞輸送を制御する因子の1つである。イネRab5aの構造遺伝子変異、
glup4突然変異は胚乳においてグルテリン前駆体を多量に蓄積する。しかし、グルテリン前駆体の細胞内輸送におけるRab5aの機能については不明な点が多い。そこでRab5aに関する3系統の同座変異体の組織学的解析を行った。蛍光顕微鏡解析の結果、野生型では直径3~4μmのプロテインボディー(PB)が観察されたが、全ての
glup4系統において小型化したPBとグルテリン前駆体を集積していると考えられる構造体が観察された。この結果は、
Rab5a遺伝子の変異によって同構造体が形成されることを示している。同構造体は小胞体の性質を有することが示唆されており、グルテリン前駆体は小胞体内に集積していると予測される。共焦点レーザー顕微鏡を用い
glup4変異体を解析した結果、構造体内にグルテリン前駆体と細胞壁の構成成分であるβ-グルカンが存在していた。β-グルカンはゴルジ体で合成されることから、ゴルジ体からのβ-グルカンの輸送が滞っている可能性がある。従って、同構造体は小胞体の性質と共にゴルジ体の性質を有することを示唆している。以上のことから、イネRab5aは胚乳細胞における小胞体、ゴルジ体等のエンドメンブレンシステムの形成に重要な作用を有し、グルテリン前駆体の輸送に関与していると考えられる。
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長嶺 愛, 小川 雅広, 松阪 弘明, 牛島 智一, 佐藤 光, 熊丸 敏博
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0405
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
イネプロラミンはシステイン-richとシステイン-poorの2つの主要ポリペプチドから構成され、粗面小胞体ルーメン内にプロテインボディ(PB)を形成する。演者らは抗10kDa プロラミン(Cys-rich)と抗13kDa プロラミン(Cys-poor)抗血清を用いた免疫学的組織分析によって登熟イネ種子胚乳のPBを観察した。その結果、イネプロラミンPB形成は10kDaプロラミンの中心への集積によって開始し、続いて13kDaプロラミンがその核構造の周りに重層することが明かとなった。13kDaプロラミンの減少した変異体において、10kDaプロラミンを含む核構造を持つ球形のPBが観察された。一方この核構造は10kDaプロラミンの減少した変異体では見られなかった。代わりにこれらのPBの内部構造が脆弱であることを示唆する肥大化し、変形したPBが観察された。演者らは10kDaプロラミンがイネにおけるPB構造の安定化のための核を形成するという役割を果たしていると結論付けた。
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冨士 健太郎, 嶋田 知生, 高橋 英之, 河本 恭子, 西村 いくこ
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0406
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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種子貯蔵タンパク質に代表される植物の液胞タンパク質は小胞輸送経路を介し、合成場所の粗面小胞体から蓄積場所の液胞へと運ばれる。この選別輸送機構には多数の因子が関与し、厳密に制御されていると考えられているが、現在までに植物で同定された関連因子は驚く程少ない。最近、我々はGFP融合タンパク質を可視化マーカーとして利用した「シロイヌナズナにおける種子貯蔵タンパク質の輸送変異体」の新規スクリーニング法を開発した。この方法により、液胞への輸送異常を示すシロイヌナズナ変異体を容易に単離出来る。現在までに多数の変異体候補の単離に成功し、得られた変異体を
gfs (
green fluorescent seed) 変異体と命名した。
マップベースクローニング法により、これまでにいくつかのGFS遺伝子を同定した。今回、新規の輸送関連因子
GFS4, GFS5, GFS6について、原因遺伝子の同定並びにこれらの遺伝子がコードするタンパク質の解析について報告する予定である。
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山崎 美紗子, 嶋田 知生, 高橋 英之, 西村 いくこ
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0407
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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高等植物の種子は大量の貯蔵タンパク質を蓄えるため,液胞への選別輸送を登熟期に盛んに行っている.私たちはシロイヌナズナ種子を用いて液胞選別輸送に関わる分子を次々と同定することに成功している.その一端として順遺伝学を用いてVPS29が貯蔵タンパク質の選別輸送に機能していること明らかにした.VPS29はVPS35,VPS26,VPS5/17タンパク質と共にレトロマー複合体を構成し,液胞選別輸送レセプター(VSR)のリサイクルに機能していると考えられた.本研究ではレトロマーと液胞選別輸送の関係を明らかにするため,VPS35に注目し逆遺伝学的解析を行った.VPS35はレトロマーがリサイクルするカーゴの選別を行うと考えられている.シロイヌナズナには3つのVPS35遺伝子候補が見出されたが,これらの単独変異体にはなんら表現型が認められなかった.そこで二重変異体,三重変異体を確立し,3つのVPS35遺伝子(
VPS35a,VPS35b,VPS35c)は貢献度に順位があるが,機能を重複していることが分かった.また,レトロマーは貯蔵タンパク質の輸送のみならず,液胞の形態形成,胚発生,成長,老化にも重要であることが示唆された.これらの結果から細胞内輸送,植物の成長過程にレトロマーが果たす役割とカーゴの関係について考察する.
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高橋 英之, 嶋田 知生, 西村 いくこ
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0408
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
種子貯蔵タンパク質は登熟期に小胞体で前駆体として合成され,小胞輸送によりタンパク質蓄積型液胞に運ばれた後,プロセシングを受けて成熟型になる.貯蔵タンパク質の細胞内輸送機構を明らかにする目的で,私達は種子に貯蔵タンパク質の前駆体を異常蓄積するシロイヌナズナ
maigo変異体を単離し解析してきた.新規の変異体である
mag4変異体の種子細胞には,電子密度の高いコアを含む直径1 μm程度の新規構造体が多数蓄積していた.この構造体の周囲はリボソームに覆われており,小胞体由来の構造体であると考えられた.免疫電子顕微鏡観察により,新規構造体のコアは貯蔵タンパク質2S albuminの前駆体の凝集体であり,その周辺の電子密度の低い部分に12S globulinが局在することが明らかになった.マップベースクローニングにより同定した
MAG4遺伝子は,動物のp115に相同性を示すタンパク質をコードしていた. p115タンパク質は小胞体とゴルジ体間の小胞輸送に関与するtethering factorであると考えられている.
MAG4-1対立遺伝子にはスプライシング部位を含む19塩基の欠失が見られ,スプライシング異常により5アミノ酸が欠失したMAG4タンパク質が合成されると予測された.この領域は,MAG4タンパク質の機能発現において重要であると考えられた.現在,MAG4タンパク質の機能解析を行っている.
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横山 峰幸, 山口 祥子, 飯田 年以, 梁木 利男
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0409
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
KODA(9-hydroxy-10-oxo-12(
Z),15(
Z)-octadecadienoic acid)は、アオウキクサの花成誘導過程で草体から顕著に放出される成分として見出され [Plant Cell Physiol 41: 110-113 (2000)] 、カテコールアミン類と縮合反応することにより、強い花成誘導物質(FN1)を生成した[
ibid 42: 1201-1209 (2001)]。また、アサガオ子葉中の内生KODAの変動は花成の程度とよく相関していた[
ibid 44: 35-43 (2003)]。
本研究では暗処理によるアサガオ花成誘導におけるKODAの効果を調査した。暗処理の程度を変えて形成された花芽数を全て度数分布で表すと、花芽数3を谷間にした二山型分布が観察された。花芽形成数の平均値が3までのときは、最初の山型分布しか観察されないが、KODAを散布すると次の山型分布も観察されるようになり、花成誘導の促進効果が見られた。平均値が3以上では効果がなかった。KODAの構造特異性を調べたところ、αケトールの位置が12,13位にある構造異性体や立体異性体である
S型KODAには活性がないことを含め、構造特異性が大変高いことはアオウキクサの場合と同様であった。また、FN1は、KODAよりも1/10,000低い濃度(10
-5M)で同様な効果を示した。以上の結果は、KODAが花芽形成過程で重要な役割を担っていることを支持している。
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和田 雅人, 嬉野 紋乃, 高橋 佐栄, 田中 紀充, 小森 貞夫, 工藤 和典, 別所 英男
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0410
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
リンゴの開花は年に一度で、花芽の分化は前年の夏に始まる。これまでこの分化時期に発現する花成制御相同遺伝子(
AFL,
MdTFL,
MdFT)のリンゴへの働きを解析してきた。今回シロイヌナズナ
FT遺伝子に相同なリンゴ
MdTFLおよび
LEAFY遺伝子相同な
AFL2遺伝子の発現をISH法で詳細に解析し、かつ定量PCRで発現量の変動を測定した。
MdFT遺伝子は栄養成長時の茎頂や葉や根に比べ花芽茎頂で強く発現していた、しかし花芽分化ステージでの変動は見られなかった。一方
AFL2は栄養成長より花芽茎頂部の発現が強いが、花芽シュートの成長、分化時に発現が高く茎頂全体で発現が見られるのに対して、伸長や分化の停止時に外衣に発現が局在する傾向が顕著に観察された。さらに、これらの遺伝子を導入した組換え体リンゴを作出したところ、
MdFT組換えリンゴでは導入遺伝子の発現量に応じた花芽形成が観察された。ポット苗で誘導された花は、単生花で花弁が多く雌ずいの形成が未発達のものが多く見られ、花の形成はシュート頂や腋芽から連続して起こった。一方
AFL2を導入し発現が確認された組換えリンゴでは、栄養成長を続け2~3年を経過した時点でも花の形成は認められなかった。これは
AFL1導入組換えリンゴでも同様であった。以上の結果から今回解析した遺伝子のリンゴ花成への働きを考察する。
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伊ヶ崎 知弘, 西口 満, 二村 典宏, 古藤田 信博
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0411
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
一般に、木本植物は播種してから開花結実するまでに長大な期間を要する。幼若期間と呼ばれるこの期間は、リンゴ等果樹の育種を推進する上で大きな障害となっている。一方、スギやヒノキなどは、着花齢に達すると大量の花粉を大気中に放出し、花粉症問題を引き起こしている。そこで、我々は、遺伝子組換え技術を利用して木本植物の花成を自在に制御することを目的に研究を進めている。
FLOWERING LOCUS T (
FT)や
TERMINAL FLOWER 1(
TFL1)は、栄養成長から生殖成長への切り替えに関する遺伝子の一つと考えられており、今回、我々はポプラの一種であるセイヨウハコヤナギ (
Populus nigra L. var.
italica)から9種類の
FT/
TFL1 ファミリー遺伝子を単離し、その解析を行った。その結果、
TFL1と系統学的に近い遺伝子
PnTFL1は頂芽や側芽等で発現し、一方、
FTと系統学的に近い遺伝子
PnFT1、
PnFT2は花芽形成期の葉や花器官で発現していることが分かった。また、これらの遺伝子を過剰に発現する組換えシロイヌナズナを作出したところ、
PnTFL1を過剰発現する個体では花成の顕著な遅延が、また、
PnFT1や
PnFT2を過剰発現する個体では花成の顕著な促進が観察された。
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井村 有里, 山本 純子, 小林 恭士, 大門 靖史, 阿部 光知, 荒木 崇
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0412
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
われわれは、
FT遺伝子過剰発現体の花成早化表現型を昂進する優性変異体
crp-1D (cryptic precocious-1D) を単離した。原因遺伝子は転写メディエーター複合体のサブユニットMed12に相当するタンパク質をコードしていた。
CRP遺伝子は、花成を含めた発生過程において、様々な遺伝子の発現制御に関わる可能性が考えられる。そこで、
CRP遺伝子の発生過程における役割について調べるため、T-DNAの挿入による機能欠損変異体
crp-3、crp-4を取得し、
crp-1Dとともにその表現型を観察した。
crp-1Dは花成早化表現型を示すのに対し、
CRP遺伝子機能欠損変異体は花成遅延表現型を示した。さらに、
CRP遺伝子変異体は多面的な形態異常を示し、幼植物において
crp-1D変異体では野生型に比べてわずかに葉が大きくなるのに対し、機能欠損変異体は矮小形質を示すなど、互いに逆の表現が観察された。これらのことから、
crp-1D変異は機能獲得型の変異であると考えられる。
pCRP::GUSを用いた観察により、植物体全体、特に維管束と茎頂、根端における発現が示唆された。現在、マイクロアレイとRT-PCRを用いた野生型と変異体の遺伝子発現プロファイルの解析、
crp-1Dと機能欠損変異体のより詳細な表現型の解析をおこなっている。
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大門 靖史, 鳥海 修平, 阿部 光知, 荒木 崇
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0413
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
シロイヌナズナでは様々な花成制御情報が、
FTを含む花成経路統合遺伝子の発現制御の形で統合される。FT蛋白質はPEBP/RKIPファミリーに属しており、多くの植物種で相同分子種とみられる遺伝子が同定されている。われわれは遺伝学的解析により、
FTと相互依存的に機能する別の花成制御因子
FDを同定した。
FDはbZIP型転写因子をコードしており、茎頂で発現している。一方、
FTは葉の維管束で発現している。また、FTとFDは核内において蛋白質間相互作用する。これらの結果から、FTは茎頂へ長距離移動して核内でFDと相互作用することで遺伝子の発現制御をおこない、花成を促進していると考えた。近年FT蛋白質が長距離移動することが示され、長らく謎であった花成ホルモン「フロリゲン」の実体であると考えられている。われわれはFT蛋白質が茎頂に到達した後の花成促進機構を明らかとすることを目的として、35S::FT:GRとpHSP::FTの異なる二種類のFT誘導系を構築し、これらをサンプルに用いたマイクロアレイ解析をおこなっている。また、
ft変異体と
fd変異体の表現型の相違から、FTによる花成促進はFDとの相互作用だけでは説明できない。そこで、得られた
FT下流候補遺伝子の
FDへの依存性の確認もおこなっている。
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伊藤 博紀, 井澤 毅
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0414
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
Ehd1はイネ特異的な花成誘導因子であり、イネの
COオーソログ
Hd1とは独立にイネフロリゲン遺伝子
Hd3aの発現を誘導できる。そして、
Ehd1は青色光によって転写誘導されるが、その分子機構はよく解っていない。
シロイヌナズナの
GIは概日時計の構成因子として、
COの転写制御を通してフロリゲン遺伝子の発現を制御する。最近になって、LOVドメイン型F-boxタンパク質FKF1およびZTLが青色光依存的にGIと複合体を形成し、標的タンパク質CDF1またはTOC1を夕方に分解することで、
COを含む下流遺伝子の発現を制御することが明らかとなった。我々は、フィトクロムを欠損し
Hd3aを恒常的に発現するイネ早咲き変異体
se5と
se5に対して顕著な開花抑制を示す
se5/osgi二重変異体の解析から、イネには
Hd1非依存的で且つ
OsGI依存的な
Hd3aの転写誘導経路が存在することを見出した。また、
se5/osgi変異体では青色光依存的な
Ehd1の転写誘導が観察されなかったことから、
OsGIの下流で
Ehd1が機能し、その転写誘導はLOVドメイン型F-boxタンパク質とOsGIとの相互作用に因る可能性がある。しかしながら、
OsGIを介した
Ehd1の転写誘導は朝方の青色光に応答して起こることから、
GIによる制御とは異なる青色光受容と概日時計の相互作用が想定され、その機構について議論したい。
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安居 佑季子, 硯 亮太, 向川 佳子, 佐藤 雅彦, 河内 孝之
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0415
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
フィトクロムは植物の主要な光受容体であり、青色光受容体と共に花成を制御している。既知のフィトクロム相互作用因子の多くは、芽生えの植物体を用いて同定されており、生長後期特有の相互作用因子を同定することが重要であると考えた。そこで抽苔時のシロイヌナズナcDNAライブラリーを用い、フィトクロム相互作用因子のスクリーニングを酵母ツーハイブリット法によりおこなった。その結果、液胞に局在するタンパク質の転写因子として見つかったVOZ (Vascular plant One-Zinc finger) が単離され、さらに
in vitroにおいてもフィトクロムとVOZの相互作用が示された。VOZは、陸上植物において広く保存されており、シロイヌナズナにおいてはAtVOZ1、AtVOZ2の二分子種が存在する。
voz1/voz2二重変異体が長日条件下で遅咲きの表現型をみせることからVOZが光周期依存的なシグナル経路上で機能することが示された。またphyBとの三重変異体を用いた解析によりVOZがphyBの下流で機能することが示唆された。花成促進因子として知られるFT、COの遺伝子発現を
voz1/voz2二重変異体において調べた結果、WTと比較して、
COの遺伝子発現に変化はないが、
FTの光周期に依存した発現上昇がみられないことがわかった。VOZと他の花成因子との機能的な位置関係を、光条件を交えて考察したい。
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遠藤 求, 村上 匡史, 鈴木 友美, 長谷 あきら
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0416
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
シロイヌナズナにおいてphyBやcry2/phyAといった光受容体は花成を制御していることが知られている。これら光受容体はCOタンパク質の安定性を制御することで、その下流にある
FTおよび
SOC1の発現を制御している。しかし、光受容体からこれら遺伝子発現制御に至る過程はまだ多くの点で不明であり、ここに位置づけられる因子は少ない。
私たちはSALKのT-DNA挿入系統およびTILILNG法よりAt1g72390に変異のある変異体を取得した。これらの変異体は顕著な遅咲き表現型を示し、当該遺伝子を
PHYTOCHROME-DEPENDENT FLOWERING (
PHF)と名づけ詳しい解析を行った。
phyB phf二重変異体の解析および単色光下での花成時期からPHFはphyB依存的に花成を制御していることを確認した。PHFとPHYBの関係をより詳細に解析するために、yeast two-hybrid assayおよびpull-down assayを行ったところ両者の結合が確認された。野生型と比較して
phf変異体では、
CO発現はそれほど変化していないにも関わらず、
FT発現および
SOC1発現が低下していたことから、これら遺伝子の発現変化が
phf変異体での遅咲きの原因であると考えられた。
こうした解析から私たちはPHFをphyBによる花成遅延を抑制する新奇花成因子と位置づけた。
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高橋 靖幸, 横井 修司, 島本 功
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0417
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
イネ品種の花成時期の多様化は世界における稲作の拡大や育種技術の発展に貢献した重要な形質の一つである。一般的にイネは短日条件下で花成が促進されることが知られている。これまでの分子遺伝学的解析から花成誘導に必要とされる多くの因子が明らかにされてきた。しかし、どのような機構でイネ品種がさまざまな花成時期を示すのかという事に関してはまだ知見が乏しい。そこで、本研究では栽培イネ64品種から構成されるイネコアコレクションを用い、花成時期の多様性をもたらす分子機構の解明を目指している。
これまでに、短日条件下における花成関連遺伝子の発現量及び花成時期を調べた。その結果、
Hd3aに関して、遺伝子発現量と花成時期の間に強い相関関係があることを明らかにした。また、それぞれの花成関連遺伝子についてシークエンス解析を行った結果、
Hd1においてタンパク質機能に重要とされるCCTドメインの一部または全てを失う原因となる塩基多型が多く見つかった。さらに、機能的な
Hd1アリルを有する品種と機能欠損もしくは低下と推測される
Hd1アリルを有する品種では花成時期及び
Hd3a発現量に差が見られた。これらの結果により、栽培イネの花成時期の多様性をもたらす主な要因の一つが
Hd1の機能性である事が示唆された。以上を踏まえ本発表では、花成関連遺伝子の塩基多型がイネ品種間での多様な花成時期に与える影響について考察したい。
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玉置 祥二郎, Navarro Cristina, 横井 修司, 辻 寛之, Prat Salome, 島本 功
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0418
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
植物の光周性反応には花成誘導や塊茎形成誘導があり、これらの反応の生理的特性として適日条件になると葉において日長の変化を感じ取り、茎頂またはストロン(地下茎)にその刺激を伝えること、誘導条件の日長で処理した植物を抑制条件の日長下の植物に接ぐことで花成および塊茎形成が誘導されること、などの共通点がある。またタバコとジャガイモを用いて、花成誘導条件下で処理したタバコをジャガイモに継ぐことで、抑制条件下に置かれたジャガイモにおいて塊茎形成が誘導される結果も示されている。これまでの研究から、葉から茎頂分裂組織へと移動し花芽の形成を誘導する物質をフロリゲン、葉からストロンへと移動し塊茎形成を誘導するチュベリゲンの存在が提唱され、その実体の解明へ多くの努力が払われてきた。
近年、イネ開花促進遺伝子
Hd3a がコードするタンパク質がフロリゲンの実体であることが明らかとなった。本研究では、Hd3aをジャガイモに導入することで、ジャガイモにおけるHd3aの効果を確認することを目的としている。イネにおいて花成誘導機能が明らかとなっている
rolC::Hd3a:GFP コンストラクトをジャガイモに導入したところ、塊茎形成抑制条件である長日条件において塊茎形成が確認された。現在、形質転換体と野生型の接木処理を行いHd3a:GFPの接木間の移動の有無等を確認しており、その結果も含めて発表する予定である。
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小宮 怜奈, 横井 修司, Lee Shinyoung, An Gynheung, 島本 功
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0419
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
イネは、日の長さが短くなると開花が誘導する短日植物である。この光周性経路において、生殖成長期へ転換を促進する遺伝子が、
Hd3aであるとされている。
Rice Flowering Locus T 1 (
RFT1)は、
Hd3aともっとも相同性が高く、第6染色体上に
Hd3aと近接して座乗している。
本研究では、RNAiを用いて、短日/長日両条件下における
RFT1の機能解析を行った。短日条件下において、
Hd3a RNAi個体は、野生型(WT)より約30日遅延して開花した。Double
RFT1-
Hd3a RNAi個体は、300日経ても開花せず栄養成長を続けたことから、
Hd3aと
RFT1は短日条件下で、重要な開花促進因子として機能することが示唆された。
短日条件下でWTと同様の開花日を示した
RFT1 RNAi個体は、長日条件下で30日以上の遅咲きを示した。一方、
Hd3a RNAi個体は、長日条件下では開花の遅延はみられなかった。さらに、
RFT1 RNAi個体では
OsMADS14の発現が減少した。以上のことから、
RFT1は、長日条件下における新規の開花促進遺伝子であること、また、
RFT1の下流に
OsMADS14が位置することが明らかとなった。
イネの光周性花成は、短日条件下では、
Hd3aが、長日条件下では
RFT1が開花促進因子として機能していることが示唆された。
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後藤 志野, 真野 昌二, 中森 ちひろ, 西村 幹夫
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0420
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
高等植物のペルオキシソームは、脂肪酸代謝や光呼吸、植物ホルモンの合成などの機能を担うオルガネラである。我々は、ペルオキシソームの形成・機能の分子メカニズムを明らかにするために、シロイヌナズナにおいてペルオキシソームの形態形成に異常を示す
apm(
aberrant peroxisome morphology)変異体の解析を行ってきた。
apm変異体は、ペルオキシソームを緑色蛍光タンパク質(GFP)により可視化したGFP-PTS1形質転換植物を親株として、EMS薬剤による変異源処理を行うことで得られた変異体である。これまで、
APM1、
APM2、
APM4遺伝子が
Dynamin-related protein 3A、
Peroxin13、
Peroxin12であることを明らかにしてきた。本発表では、新たな
apm変異体として単離した
apm9について報告する。
apm9変異体では、GFPがペルオキシソームのみならずサイトゾルでも観察されることから、APM9タンパク質がペルオキシソームへのタンパク質輸送に関与することが示唆された。マップベースクローニングにより
apm9の原因遺伝子を同定したところ、APM9タンパク質は機能未知であり、加えて植物にのみ保存された遺伝子であることが明らかとなった。さらに、
APM9遺伝子のタグラインの解析により、
APM9の欠損は胚性致死を示し、このことから種子形成におけるAPM9の重要性が示唆された。
APM9遺伝子の発現パターン、細胞内局在性についても合わせて議論したい。
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新井 祐子, 林 誠, 真野 昌二, 西村 幹夫
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0421
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
ペルオキシソームには植物生理機能を担う多くの代謝系が存在する。しかし、ペルオキシソーム膜輸送系の詳細な解析はなされていない。我々はペルオキシソーム膜上における代謝産物輸送機構の解明を目指し、ダイズ由来ペルオキシソーム膜タンパク質のプロテオーム解析を行った。その結果、機能未知の新規タンパク質として
GmANT (
Glycine max adenine nucleotide transporter)を同定した。
GmANTの細胞内局在は、mRFP融合タンパク質を発現させた細胞の観察によって、ペルオキシソームであることが明らかとなった。ペルオキシソームタンパク質をマトリックスタンパク質及び膜タンパク質に分画したところ、
GmANTは膜画分に存在していた。また、
GmANTは発芽時の子葉において、脂肪酸の代謝に機能が特化したグリオキシソームの酵素と同様の挙動を示した。更に、
GmANTは酵母adenine nucleotide transporter 欠損株の機能を相補することが明らかとなった。以上の結果から、
GmANTは発芽時のグリオキシソーム膜においてadenine nucleotideを輸送していることが示唆された。現在、
GmANTのシロイヌナズナホモログについても解析を進めており、その結果を併せて報告する。
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神垣 あかね, 林 誠, 西村 幹夫
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0422
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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酵母を中心とした遺伝学的解析から30種類以上のペルオキシソーム形成因子(ペルオキシン)が同定され、ペルオキシソームマトリックスタンパク質の輸送、増殖、分裂、膜形成といったペルオキシソーム形成機能に関わることが示唆されている。これまでに、我々はシロイヌナズナゲノム上で予測されるPEX遺伝子をRNAi法によって発現抑制し、これらの遺伝子がペルオキシソームの形態とマトリックスタンパク質の輸送に直接関与していることを明らかにした。本研究では、ペルオキシソームマトリックスタンパク質輸送に関与する因子であるPEX2, PEX10, PEX12に焦点を当て、植物個体レベルで解析を行った。その結果、PEX2, PEX10, PEX12はタンパク質の構造と機能が類似しているにもかかわらず、Pex10p発現抑制株のみに葉の部分的黄化、花序の形成異常、不念といった表現型がみられた。PEX10発現抑制株でみられる表現型はクチクラワックスの欠損変異体の特徴的表現型と一致し、実際に、クチクラワックス量が減少していた。表皮細胞で合成された脂質成分が細胞外へ分泌され、クチクラワックス層を形成することから、表皮細胞におけるペルオキシソーム機能分化とクチクラワックス合成の関与を中心に検討する。
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及川 和聡, 真野 昌二, 林 誠, 近藤 真紀, 西村 幹夫
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0423
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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緑葉組織のペルオキシソームは葉緑体、ミトコンドリアと共に光呼吸代謝に関与 している。我々は緑葉ペルオキシソームの局在解析を行うことにより局在機構と代謝の効率化との関係を明らかにしたいと考えている。シロイヌナズナ葉肉細胞での観察の結果からペルオキシソームの動態変化が光に依存して活発化することが明らかとなった。光に依存したこの現象は光合成に付随して起こる光呼吸の効率化に有利であると思われる。また、光条件下ではアクチン繊維とペルオキシソームの相互作用が顕著となり多様な形態変化が生じることから、細胞骨格がペルオキシソームと葉緑体との接着機構に関与していることも示唆された。今回我々はこれらオルガネラ間の接着を欠損した変異体を数種類選抜した。これらの変異体
peup (
peroxisome
unusual
positioning)ではペルオキシソームの凝集や、細胞質に過剰なペルオキシソームが浮遊した形質を示し、正常な葉緑体との接着に欠損が生じていた。変異体の選別を行い、各変異体ペルオキシソームに関して動態解析並びに植物体の形態や成長等に与える影響等について生理学的解析を行った。これらの解析から個体の生育におけるペルオキシソームの局在機構の重要性が示唆されたので、その結果を報告する。
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谷川 いづみ, 加藤 朗
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0424
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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ペルオキシソームは真核細胞に普遍的に存在するオルガネラであり、高等植物では他のオルガネラと協同して脂肪代謝や光呼吸に関与する。多くのペルオキシソームタンパク質は、細胞質で合成された後、輸送シグナルperoxisome targeting signal (PTS)に依存してペルオキシソームへ輸送される。主なPTSには、タンパク質のC末端に存在する特徴的な3アミノ酸で構成されるPTS1と、N末端延長配列内に見出されるPTS2が知られている。PTS2を含むN末端延長ペプチド(以後PTS2と略す)は、輸送後、ペルオキシソーム内で切断されるが、PTS2の認識、切断機構の詳細は明らかにされていない。
AtDeg15(At1g28320)は、PTS1相同配列をC末端に持つ、大腸菌DegQプロテアーゼのシロイヌナズナホモログである。シロイヌナズナのT-DNA挿入変異体
atdeg15を同定、解析した結果、変異体
atdeg15では、PTS2を持つチオラーゼ、リンゴ酸脱水素酵素の、PTS2が切断されていない高分子量前駆体が蓄積することが分かった。また、
atdeg15では、β酸化系の活性が低下することが明らかになった。以上の結果は、AtDeg15がPTS2を切断するプロセシング酵素であること、プロセシング以外にもペルオキシソームの機能発現に関与する可能性を示唆する。
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五十嵐 健太, 佐藤 世理, 藤原 恵美, 林 八寿子, 加藤 朗
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0425
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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【目的】高等植物のペルオキシソームは組織や成長段階によって、その名称や機能が異なる。脂肪性種子植物の胚乳や黄化子葉に存在するペルオキシソームの一種、グリオキシソームはβ酸化系やグリオキシル酸回路が局在し、貯蔵脂肪の分解を行って発芽に必要なエネルギーを供給する。ペルオキシソーム局在型のリンゴ酸脱水素酵素であるPMDHはグリオキシル酸回路を構成する酵素の一つであり2つのアイソフォーム、At2g22780(PMDH1)、At5g09660(PMDH2)が存在する。両者の遺伝子発現解析から、PMDH1は発芽の初期に、PMDH2は光に応答して発現が上昇することが明らかになった。これは2つのPMDHアイソフォームがそれぞれ異なる役割を担っていることを示唆する。そこで本研究では、PMDHの生理機能を明らかにする為、シロイヌナズナの遺伝子欠損変異体を用いた解析を行った。
【結果と考察】
pmdh1、
pmdh2変異体には際だった表現型は観察されなかった、しかし両遺伝子を欠損した
pmdh1pmdh2二重変異体では種子貯蔵脂肪の分解が抑制され、芽生えの成長にはスクロースを必要とした。さらにβ酸化系欠損変異体である
ped1と同様に、β酸化系活性の低下が見られた。以上の結果よりPMDHはグリオキシル酸回路だけでなく、β酸化系の活性化にも関与しているのではないかと考えられる。現在、緑葉におけるPMDHの機能について、ストレス応答との関連性に注目して解析中である。
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藤原 誠, 伊藤 竜一, 石川 正行, 丹羽 康夫, 佐藤 直樹, 吉田 茂男, 阿部 知子
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0426
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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維管束植物の非光合成組織には、分裂組織の原色素体の他に、デンプンを蓄積したアミロプラスト、無色色素体である白色体などが存在し、それらは葉の葉緑体とは異なる形態制御を受ける。これら非緑色色素体の組織依存的な形態的特徴と動態を明らかにするため、我々は色素体分裂因子AtFtsZ1-1またはRubisco小サブユニットの色素体移行配列をN末端に融合した蛍光タンパク質を発現する形質転換シロイヌナズナを作出した。この融合タンパク質は、葉のみならず非光合成器官でも安定に発現し、広範な組織の色素体標識に有効であった。蛍光顕微鏡を用いた生体観察の結果、発達中の珠皮において白色体が著しくフィラメント化し、ストロミュールが活発に形成されることを見出した。それらの白色体は、種子形成過程でデンプンを蓄積してアミロプラストに分化するが、デンプン粒が成長するに従ってストロミュールの頻度は低下した。さらに経時観察により、分化途中の白色体はアメーバ様の不規則な形のオルガネラであり、その包膜は極めて動的な構造であることが示された。
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桧垣 匠, 朽名 夏麿, 佐野 俊夫, 近藤 矩朗, 馳澤 盛一郎
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0427
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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気孔とは一対の孔辺細胞に囲まれた間隙であり、日周期や環境変化に応じて開閉運動を行う。孔辺細胞のアクチン繊維は気孔開閉運動に関与することが示唆されているが、その動態に関しては不明な点も多い。本研究ではGFP-ABD2によりアクチン繊維を可視化したシロイヌナズナ植物体を作出し、スピニングディスク式共焦点レーザー顕微鏡により終日約500対の孔辺細胞アクチン繊維の顕微鏡画像を取得した。一方、一連の顕微鏡画像 セットからアクチン繊維の配向や束化の指標となる複数の特徴量を半自動的に計測する画像解析システムを開発し、アクチン繊維構造の日周変化について検討した。その結果、開口時には放射状に配向したアクチン繊維の束が出現し、閉口時には束がほどけてランダムに配向することが定量的に示された。さらに、アクチン繊維の配向と束化の指標に基づいて個々の孔辺細胞対の顕微鏡画像クラスタリングを試みたところ、4つの特徴的なクラスに分類された。これらの細胞が全体に占める割合を日周期を通して測定したところ、約4割の範囲でダイナミックに変動していることが明らかになった。以上の結果から、孔辺細胞アクチン繊維の配向変化や束化は日周期に応じて協調的に調節されている可能性が示された。現在、アブシジン酸や光処理による気孔開閉誘導時における解析も進めており、その結果と併せて孔辺細胞アクチン繊維の制御機構に関して議論したい。
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本瀬 宏康, 富永 るみ, 和田 拓治, 酒井 達也, 杉山 宗隆, 渡辺 雄一郎
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0428
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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表皮細胞の形態を制御する新規な因子を明らかにするため、表皮細胞に異所的な突起が形成されるシロイヌナズナ
ibo1変異体を単離・解析した。
ibo1変異体の胚軸や葉柄の表皮細胞では、細胞中央部から横方向に向かって異所的な成長が起こり、先端が丸い突起が形成される。シロイヌナズナの胚軸表皮では、気孔を含まない細胞列と気孔を含む細胞列が交互に形成されるが、
ibo1における異所的な突起は気孔を含まない細胞列において生じた。また、
ttg1変異により表皮細胞列の分化を擾乱すると、
ibo1における突起形成が抑圧された。生理実験と二重変異体の解析から、エチレンが異所的な突起形成を促進することがわかった。
IBO1はNIMA様のタンパク質カイネースをコードしており、
ibo1-1変異によりカイネース活性が消失していた。IBO1は表層微小管に局在し、細胞骨格系を介して表皮細胞の異所的な伸長抑制や形態形成に関与すると考えられる。
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河村 英子, Wasteneys Geoffrey
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0429
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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微小管機能は、植物の形態形成に必要不可欠である。シロイヌナズナの微小管結合蛋白質MICROTUBULE ORGANIZATION1(MOR1)はMAP215/Dis1ファミリーに属し、真核生物に広く保存されている。
mor1-1はN末端領域に1アミノ酸置換変異を持ち、制限温度下(31°C)で微小管が短くなり、その配向が乱れる。これまで
mor1-1の微小管の動態(重合、脱重合速度など)がどのように異常なのかは不明であった。本研究では、葉表皮生細胞を用いて微小管の動態を測定した。GFP標識された微小管全長の動態を解析した結果、一見微小管配向に異常がない21°Cでも、
mor1-1の微小管の重合、脱重合速度は野生型よりも遅かった。温度を31°Cに上げると、野生型では、微小管の重合、脱重合速度はいずれもほぼ2倍に上昇した。一方
mor1-1では21°Cの時よりも遅くなり、重合と脱重合の両方が抑制される事が明らかになった。さらに、
mor1-1では微小管伸長に費やした時間は短くなり、ポーズした総時間は長くなった。これは、重合している微小管の先を特異的に認識するEnd Binding1-GFPコメットのサイズと蛍光強度が
mor1-1で減少していた事とも一致する。本解析から、MOR1には微小管の重合、脱重合の速度を上げつつ、ポーズを抑制する事によって、微小管をダイナミックに保つ機能がある事が分かった。
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五十嵐 久子, Topping Jen, Deeks Michael, Hawkins Timothy, Smertenko Andrei, ...
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0430
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
植物の形態形成において微小管は細胞分裂や細胞壁合成、細胞伸長、小胞輸送及び分泌など様々な役割を果たしている。これらの過程でおこる微小管の束化、細胞膜へのアンカーリングおよび細胞内微小管ネットワーク制御などには、微小管関連タンパク質の存在が不可欠である。
これまでにタバコ培養細胞BY-2を出発材料として微小管関連タンパク質の単離をおこなってきた。その一つに190kDaポリペプチド(MAP190)がある。本報告では、シロイヌナズナMAP190類似タンパク質(AtTMP; Arabidopsis Tobacco MAP190-like protein)の解析結果について報告する。T-DNAインサーションラインの解析を行ったところ、
attmp 変異体において胚発生や根発生に異常が見られた。
attmp 変異体において微小管の構造には大きな変化が見られなかったことから、AtTMPは発生過程において微小管の構造維持とは別の役割を果たしている可能性が考えられた。
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濱田 隆宏, 藤田 智史, 安達 澄子, 梅田 正明, 橋本 隆
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0431
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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植物細胞では細胞周期の進行と共に様々な微小管構造物が構築される。間期には表層微小管や原形質糸が構築され、G2/M期には分裂準備帯が、分裂期にはスピンドル、フラグモプラストが構築される。これらの微小管構造物は役割を終えると分解され、そこから放出されたtubulinは次に必要とされる微小管構造物の構築に用いられると考えられている。
この細胞周期依存的な微小管構造物の構築と分解の機構を明らかにするために、細胞周期依存的にタンパク質のリン酸化を行うサイクリン依存性キナーゼ群(CDKs)に注目し、その基質を探索した。シロイヌナズナ培養細胞MM2dからミニプロトプラストを調製し、粗抽出液を得た。そこから免疫沈降法により精製したCDKA, CDKB1, CDKB2と微小管重合脱重合サイクルにより精製した微小管付随タンパク質群(MAPs)を用いてin vitro kinase assayを行った。その結果、3種類の全てのCDKによりリン酸化されるタンパク質があることが明らかとなった。CDKA, CDKB1, CDKB2はG2/M期に活性化されており、細胞周期の進行に不可欠であることが知られている。本研究ではCDKsによるリン酸化が微小管の動態にどのような影響を与え、また微小管構造物へどのような影響を与えるのかをin vitroで解析し、報告する。
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上野 琴巳, 平松 佐織, 水谷 正治, 平井 伸博, 轟 泰司
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0432
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)は、cytochrome P450であるABA 8'-水酸化酵素(CYP707A)によって8'位を水酸化され、ファゼイン酸へ自発的に環化することで不活性化する。種々のABAアナログ及びCYP707A3阻害剤の酵素阻害試験の結果から、ABA 8'-水酸化酵素リガンドの基本骨格は、分岐鎖を含む炭素数7以上の炭化水素鎖を5位に有する2
Z,4
E-pentadienoic acidで構成されることが明らかになった。特に1位カルボン酸は酵素との結合に重要な官能基であるが、酵素の結晶構造解析が行われていないため、カルボン酸と相互作用する酵素のアミノ酸残基は明らかになっていない。そこでホモロジーモデリングによって予想された活性部位周辺のアミノ酸残基の変異酵素を部位特異的変異導入法によって作製し、基質との相互作用に重要なアミノ酸残基を探索した。Lys220及びLeu343をアラニンに置換した変異酵素は活性を維持していた一方で、Lys109やPhe119, Asn207, Phe274, Lys366をアラニンに置換すると酵素活性が大きく低下した。特にCYP707A3変異酵素K109A及びN207AはCO差スペクトルが観察されたにもかかわらずABAの8'位水酸化能が大きく低下した。この結果より、これらの部位はABAの1位カルボン酸と相互作用をし、基質の結合に重要であると示唆された。
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今泉 隆次郎, 藤岡 昭三, 内山 寛, 綾部 真一, 青木 俊夫
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0433
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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我々は早期老化などの表現型を示すミヤコグサのアクティベーションタギングラインから変異原遺伝子候補として新規カルモジュリン結合タンパク質遺伝子を単離した。その詳細な機能を同定するために、
brassinosteroid positive regulators (BPRs)と命名した2つのシロイヌナズナオルソログ遺伝子について解析した。野生型と比較して、
BPR1の過剰発現体は葉身と葉柄が縦方向に伸長した。一方、T-DNA挿入破壊株では葉身と葉柄が短縮したが、ブラシノライドの処理で野生型のレベルまで回復した。
BPR2の過剰発現体ではロゼット葉が上偏成長した。
BPR1と
BPR2の形質転換体を用いたブラシノステロイド生合成酵素遺伝子の半定量的RT-PCR解析によって、BPR1は
CYP90C1、CYP90D1、CYP85A1の各酵素遺伝子、BPR2は
CYP85A1と
CYP85A2をそれぞれ調節することが示唆された。
BPR1または
BPR2プロモーターに連結した
GUS遺伝子はそれぞれ異なった組織・器官で発現し、BPR1-GFPとBPR2-GFPの各融合タンパク質はそれぞれ核と色素体に局在していた。これらの結果によって、BPR1とBPR2はブラシノステロイド生合成酵素遺伝子の空間的・時間的発現調節に関与することが示唆された。
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野村 崇人, 三ツ口 尚志, 海老塚 豊, 久城 哲夫, Jager Corinne, Symons Gregory, Reid James ...
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0434
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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ブラシノステロイド(BR)は植物の生長調節に必須な植物ホルモンである。カンペステロールからブラシノライド(BL)に至る生合成経路の多くの酸化反応は、シトクロムP450酵素により触媒されることが示されている。なかでもCYP85Aファミリーが触媒するC-6酸化は活性型BRを生成するために重要な反応である。CYP85Aファミリーには2種類の分子種が存在し、シロイヌナズナとトマトのCYP85A1は6-デオキソカスタステロンのC-6位を2段階に酸化し、カスタステロン(CS)へと変換する。シロイヌナズナのCYP85A2とトマトのCYP85A3は、これに加えて更にバイヤー・ビリガー型(BV型)の酸化反応を触媒し、最も活性型のBLへと変換する。最近我々は、エンドウからも二つのCYP85A遺伝子を単離したが、それらは両方とも主にCS を生成する酵素であった。興味深いことに、これまでに単離された双子葉植物のCYP85Aファミリー遺伝子では、独立的に重複が起きたことが系統樹解析により示されている。したがって、BL合成酵素は種の分化後に、種特異的に独立進化したと考えられる。CYP85Aファミリー酵素について、その役割の植物種間差や、独立的に獲得した(または保存された)と思われるBV型の酸化反応に必要とされるアミノ酸領域について報告する。
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川邉 綾美, 清水 文一, 嶋田 幸久, 藤岡 昭三, 坂本 知昭, 水谷 正治
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0435
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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ブラシノステロイド(BR)はシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)により不活性化される。シロイヌナズナ由来CYP734A1(BAS1)およびトマト由来CYP734A7は、BR生合成経路の下流に位置するカスタステロンとブラシノライドのC26位を水酸化することによりBRを不活性化することが示されている。一方、イネにはCYP734Aホモログは4つ(CYP734A2,4,5,6)存在している。これらのP450を過剰発現させたイネはCYP734A5を除いて矮小な形態を示し、内生BR含量は減少していた。そこで我々は、イネのBR不活性化機構を酵素化学的に解明することを目的として、イネCYP734Aの組換え酵素をバキュロウイルス昆虫細胞系で発現させ、様々なBR中間体を基質として酵素アッセイを行った。イネCYP734Aは広い基質特異性を示し、また、BR生合成経路における上流の中間体に対して高い活性を示し、さらに、三つの代謝物が生成した。それら代謝物を詳しく解析した結果、イネCYP734AはBRに水酸基を導入し、さらにアルデヒドを経てカルボン酸へと三段階に酸化していることが明らかとなった。現在、その酸化位置の特定を試みている。以上より、イネのBR不活性化機構はトマトやシロイヌナズナとは異なる可能性が示された。
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中野 雄司, 山上 あゆみ, 辻本 雅文, 吉田 茂男, Joanne Chory, 浅見 忠男
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0436
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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ブラシノステロイドは発生・成長・生殖などの植物生長の様々な過程で重要な生理機能を発現している。本研究は、ブラシノステロイド生合成阻害剤Brzを用いた化学遺伝学(ケミカルジェネティクス)により、未解明の部分が多く残されているブラシノステロイド情報伝達機構の解明を試み、それらによる植物栄養成長期制御の分子機構を解明することを目的としている。
暗所Brz存在下の暗所発芽において、胚軸が矮化し子葉が開く、暗所光形態形成を示さない胚軸徒長形質
bil (
Brz-insensitive-long hypocotyl)変異体は、ブラシノステロイド情報伝達の活性型突然変異体であると期待し、Fast Neutron変異種子から半優性形質の
bil5を単離した。
bil5は、ロゼッタ葉の細長形態での縮小、花茎の垂直方向の短化と水平方向の細化を伴う細矮性slender dwarf様の特徴的な矮性形質を示した。この
bil5のmappingにより予測した変異候補遺伝子の高発現体において
bil5形態が再現されたこと、また、この
bil5変異が受容体変異
bri1-5形質を相補したことより、ブラシノステロイド情報伝達因子としての
bil5原因遺伝子の同定により近づいたと考えられた。当変異
bil5遺伝子領域には、bisulfite sequence等によりエピジェネティック変異を同定しており、現在その詳細な解析を進めている。
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山上 あゆみ, 中野 雄司, 斎藤 知恵子, 中澤 美紀, 松井 南, 作田 正明, 中野 明彦, 辻本 雅文, 吉田 茂男, 浅見 忠男
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0437
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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ブラシノステロイド(BR)は植物生長の様々な局面で重要な機能を果たしている植物ホルモンである。我々はBR情報伝達機構の解明を目指し、BR生合成阻害剤Brz存在下での胚軸伸長を選抜条件にして、
ArabidopsisのアクティベーションタグラインからBR情報伝達変異体
bil4 (
Brz-insensitive-long hypocotyl 4)を選抜した。明所下で生育した
bil4はロゼット葉の細小化と花茎の短化に基づく細矮性slender dwarf様の形態を示した。タグ挿入部位の解析や過剰発現体の作製により、
BIL4遺伝子として、植物から哺乳類まで幅広く保存されている7回膜貫通ドメインを持つ新規遺伝子が原因遺伝子であると同定した。
BIL4プロモーター::GUS形質転換体の解析を行った結果、幼葉や根、花茎、暗所胚軸の伸長の極初期に限定的にGUS活性が認められたことにより、細胞分裂直後の細胞伸長帯でBIL4は重要な機能を持つと考察された。また、GFP形質転換体の解析により、BIL4タンパク質が細胞伸長初期にはトランスゴルジネットワーク(TGN)と予測されるドット状オルガネラと液胞膜に局在し、細胞伸長の中後期には液胞膜に主な局在が移動することが観察された。現在、既存のマーカータンパク質との二重染色像を用いてより詳細な解析を進めている。
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小松 知之, 中野 雄司, 松井 南, 篠崎 一雄, 川出 洋, 夏目 雅裕, 安部 浩, 辻本 雅文, 吉田 茂男, 浅見 忠男
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0438
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
[目的]
我々はブラシノステロイド情報伝達機構解明のため、ブラシノステロイド生合成阻害剤Brzを用いて、暗所発芽時の胚軸の伸長、緑化異常を選抜基準に、アクティベーションタグラインから新規変異体の選抜と遺伝子解析を行った。
[結果と考察]
1,Brz高感受性矮性変異体
bss1 暗所発芽時において、通常MS培地条件では野生型と同程度の胚軸伸長を示しながら、Brz条件下において野生型の半分程度の胚軸短化を示すBrz高感受性変異体として半優性の
bss1(Brz-sensitive-short hypocotyl1) を単離した。
bss1変異体は、弱光条件ではBrz無処理にもかかわらず、胚軸が短化し、さらに、成熟個体は花茎の伸長が著しく阻害された矮性形質を示す。タグ挿入部位の解析、過剰発現体により、
bss1原因遺伝子として、細胞質型タンパク質を同定した。
35S::BSS1-GFP形質転換体を用いた局在解析では、タンパク質の凝集体と予想されるドット状のGFP蛍光が細胞質と核で観察された。現在、BSS1の細胞内局在、器官別発現などの機能解析を行っている。
2,Brz耐性緑化異常型変異体
bpg2 Brz処理により、野生型シロイヌナズナは子葉およびロゼット葉において濃緑化が観察される。Brz存在下において、低緑化形質を示す変異体として劣性の
bpg2を単離した。この原因遺伝子として、葉緑体局在型の新規GFP結合タンパク質を同定し、その機能解析を進めている。
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坂本 知昭, 藤岡 昭三, 北野 英己, 松岡 信
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0439
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
フリー
本研究では、新規のブラシノステロイド(BR)情報伝達因子の単離を目的として、BR非感受性イネ変異体の解析を行った。イネの葉身はBRに鋭敏に反応して屈曲することから、葉身が屈曲しない直立葉変異体の解析により、複数のBR欠損変異体とその原因となった生合成酵素遺伝子が単離されている。一方で、既知のBR非感受性変異体はすべて
d61のアリルで、その原因遺伝子はBR受容体OsBRI1をコードしていた。
d61とは表現型の異なる変異体4系統について解析を進めたところ、3系統は
d61のアリルであることが判明した。この結果から、イネにおいて、BRの作用が部分的に抑制された変異体の表現型は、遺伝的背景の影響を強く受けると考えられた。残りの1系統の原因遺伝子は第3染色体に座乗し、
d61とは異なると考えられた。この変異体は暗形態形成が起こらない、BR投与で鞘葉が伸長しない、カスタステロンが蓄積するなどの典型的なBR非感受の表現型を示した。さらに
d61との2重変異体が相乗的な表現型を示したことから、BR受容体の下流で機能していることが推測された。単離された原因遺伝子はE3リガーゼをコードしていたことから、標的タンパク質のユビキチン化を介してBR情報伝達に機能していると考えられた。
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篠原 秀文, 松林 嘉克
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0440
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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植物には多数の受容体様キナーゼ遺伝子が存在しているが,特異的なリガンドが同定されているものは極めて少数である.数多く残されているリガンド未知受容体に対するリガンドの探索は,ポストゲノム研究において細胞間情報伝達を知る上で重要であると考えられる.我々はPSKおよびPSK受容体をリガンドー受容体ペアのモデルとして,リガンド結合活性を維持したまま受容体キナーゼをビーズ上に固定化する手法を確立した.蛍光標識リガンドを用いた場合,受容体固定化ビーズの表面で起こるリガンドー受容体相互作用を,共焦点レーザー顕微鏡による解析により可視化することが可能であった.また受容体固定化ビーズを用いて受容体をベースとしたアフィニティーカラムを作製し,植物培養細胞の培養上清に含まれるリガンドを直接,高純度に精製するリガンドフィッシングにも成功した.この新たな受容体固定化の手法およびリガンドフィッシングの技術は,従来行われてきた遺伝学的手法やバイオアッセイによる生化学的な低分子リガンドの探索に代わる,新奇リガンドー受容体ペアの直接的な同定に有力な手法になり得る.現在リガンド未知受容体キナーゼ群に対するリガンドの同定への応用を進めている.
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小川 真理, 篠原 秀文, 坂神 洋次, 松林 嘉克
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0441
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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分泌型ペプチドをコードする
CLV3と受容体型キナーゼをコードする
CLV1は,同一の遺伝学的経路において茎頂メリステムにおける幹細胞の数を制御している.これら2つの分子はリガンド−受容体ペアとして機能していると予想されているが,これまで生化学的な裏付けはなかった.CLV1のように細胞増殖に抑制的に機能する受容体型キナーゼは,植物細胞での過剰発現にしばしば困難を伴うが,細胞内キナーゼ領域を欠失またはタグ等に置換させることで,安定的な発現が可能となる.今回我々は,リガンド結合アッセイとフォトアフィニティーラベルにより,タバコBY-2細胞で発現させたCLV1細胞外領域にCLV3が結合定数17.5 nMで直接結合することを確認した.結合は迅速かつ可逆的であり,過剰のCLV3で完全に競合阻害されたが,
clv3-1変異に相当する[Ala
6]CLV3ではほとんど競合阻害されなかった.また,競合的リガンド結合アッセイにより,CLV1細胞外領域はCLEペプチド群とも配列特異的な親和性で相互作用することを見いだした.これらの結果は,CLV3とCLV1がリガンド−受容体ペアとして機能していることを示すとともに,CLEペプチド群の受容体がCLV1と分子系統的に近縁の分子群である可能性を示唆している.
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大山 健太郎, 松崎 曜, 小川 真理, 松林 嘉克
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0442
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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近年,シロイヌナズナゲノム解析の進展に伴い,機能未知ながら多数の受容体様キナーゼおよび分泌型低分子ペプチドをコードする遺伝子群が見出され,それらの機能およびリガンド−受容体ペアの同定に大きな注目が集まっている.分泌型低分子ペプチドは,通常N末端に分泌型シグナルを持つ100アミノ酸前後の前駆体ペプチドとして翻訳されるが,チロシン硫酸化やヒドロキシプロリン化などの翻訳後修飾を受けた後に,プロセシングにより短鎖に切断され,成熟体として細胞外へと分泌されるタイプと,複数のシステイン残基(6~8残基)を介して分子内ジスルフィド結合を形成後そのまま分泌されるタイプに分けられる.いずれの場合も翻訳後の成熟化のステップが機能発現に重要であることから,構造や分子量に依存することなく,生化学的に成熟体を同定し機能解析を行なう網羅的手法の確立が求められている.我々は,分泌型ペプチドのプールと考えられる植物細胞培養液を材料として,生物検定に依存しないペプチドリガンド候補の網羅的な解析・同定を目指し,実験系の確立を行なってきた.培養系では,細胞は条件により様々なペプチド群を分泌していると考えられ,多くの培養系の培地を探索源とすることで,多くのペプチドを同定できると期待できる.種々の細胞培養液に含まれる分泌型ペプチドの解析結果を報告する.
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荒田 勇登, 長澤 朝子, 釆女 英樹, 中島 寛樹, 柿本 辰男, 佐藤 良
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0443
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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新規植物生長調節剤の開発を目的とした探索で選抜した根部生長促進活性を有する化合物にサイトカイニン(CK)の受容体アンタゴニストを見出した。根部生長促進活性で選抜された一部の化合物の作用機構を解析したところ、CKの受容体遺伝子を発現する組換え酵母を用いた実験結果からCK受容体アンタゴニストである可能性が示唆された。選抜化合物から構造最適化を進めて活性の高いリード化合物を得るとともに、放射性標識したCKと組換え酵母から調製した受容体蛋白質を用いて受容体結合実験を行い、これらの化合物が放射性標識したCKと受容体との結合を非競合的に阻害することを証明した。一方、同様な作用性が推測された抗CK化合物はCKと受容体の結合を阻害しなかった。このようなCK受容体の非競合的アンタゴニストはこれまでに全く例のない新規作用性化合物である。次に、当該化合物で、シロイヌナズナにおいて主根伸長抑制や胚軸からのカルス形成等のCKによる効果を抑制する植物生理活性が明らかになった。また、CK誘導性のレポーター遺伝子(GUS)を発現する組換えシロイヌナズナにおいて、これらの化合物がCKのシグナル伝達を阻害してCK依存的なGUSの発現を抑制することを確認した。我々の見出したCK受容体アンタゴニストは、植物生理学研究におけるCKの機能解析の有用なツールや根部生長促進剤のリード化合物として期待される。
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黒羽 剛, 徳永 浩樹, 小嶋 美紀子, 上田 七重, 名川 信吾, 福田 裕穂, 榊原 均
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0444
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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アデニン誘導体であるサイトカイニンは、植物の発生や生長における様々な生育段階、場所において非常に重要な役割を果たしている。植物体内でサイトカイニンが生理的に活性を持つにはヌクレオチド体から塩基体への転換が必要である。この過程にはヌクレオシド体を経由する二段階経路が関わっていると考えられていたが、近年ヌクレオシド体を経由しない経路(直接経路)を触媒するサイトカイニン活性化酵素LOGがイネから同定された。
LOGおよび類似配列を持つ遺伝子は、イネやシロイヌナズナ等において遺伝子ファミリーを形成しているが、それらの詳細な機能については明らかになっていない。そこで我々は9遺伝子存在するシロイヌナズナ
LOG(
AtLOG)遺伝子ファミリーについて機能解析を試みている。
AtLOG遺伝子ファミリーのうち、7遺伝子の産物についてイネLOGと同様にサイトカイニン活性化に関わる酵素活性を持つことが既に明らかになっている。各
AtLOG遺伝子を恒常的あるいはデキサメタゾン誘導的に過剰発現させると、サイトカイニン内生量の変化とともに、サイトカイニンに関連する顕著な表現型の異常が観察された。また、各遺伝子における植物体内での発現部位と発現制御、遺伝子産物の細胞内局在性および機能欠損変異体の表現型を調査した。本発表では、各
AtLOG遺伝子産物のサイトカイニン活性化および植物の発生や生長における機能について考察する。
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上田 七重, 菅原 肇, 槙田 庸絵, 小嶋 美紀子, 山谷 知行, 榊原 均
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0445
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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サイトカイニン合成の初発反応はisopentenyltransferase(IPT)により触媒される。植物病原菌の一種であるアグロバクテリウムのIPT(Tzs)は、高等植物のIPTとは異なる基質特異性を示すことを以前当研究チームで明らかにした。TzsはDMAPPとHMBDPの両者を基質として利用できるのに対し、植物のIPTは専らDMAPPを基質とした。植物のIPTが利用不可能なHMBDPを基質に出来ることで、アグロバクテリウムのIPTは植物細胞内で代謝バイパスを構築し、tZ型のサイトカイニンを直接過剰に生産する。これにより宿主植物細胞内のホルモンバランスが崩れ、腫瘍化が誘導されると考えられる。
Tzsタンパクの構造解析を行った結果、173番目のAspと214番目のHisはTzsの基質結合部位に存在しており、基質特異性に関与していることが予想された。実際にこれらのアミノ酸残基を植物のIPTで保存されているGlyとLeuにそれぞれ置換したところ、HMBDPを利用できなくなったことから、これらはバクテリアと植物の IPTの基質特異性の違いを決めている重要なアミノ酸残基であることが明らかになった。
またTzsの結晶構造から、p-loop 構造を持つIPT とnucleoside triphosphate hydrolase (pNTPase) は共通の祖先タンパク質から進化したと考えられるが、リン酸基を転移するpNTPaseとは異なり、IPTはプレニル基を転移するという特徴があり、独自の進化を遂げてきたと考えられる。
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中村 崇, 神木 隆行, 山崎 征太郎, ユエン ヨンシァン, 山崎 秀雄
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0446
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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沖縄のような熱帯・亜熱帯のサンゴ礁域では、海産無脊椎動物である無腸類ヒラムシを見ることができる。ヒラムシの一種である
Convolutriloba longifissuraは、体内に共生性の単細胞藻類(
Tetraselmis spp.)を保持している。このヒラムシの特徴として、昼間に体内の共生藻の光合成を促す“サンニング(共生藻を含有する軟体部を葉状に広げて光を受ける)”行動が知られている。野外ではサンゴ群体上などの最適光量域の場所に集団で移動し、集合を形成するのがしばしば観察される。サンニング行動とは逆に、強光域からヒラムシの集団が弱光域への退避行動を始めることがある。これらの一連の光強度に依存した行動の主導権を、宿主あるいは共生藻のどちらが持っているのかは不明である。本研究では、強光領域と弱光領域下における個体群の移動パターンを比較する事で、宿主の行動と共生藻の光合成光阻害との関連を調べた。PAM蛍光測定法によって共生藻光合成をモニターした結果、光合成と移動行動が一致することが明らかになった。また、強光条件で見られる宿主体の組織溶解が、光退避行動によって防がれる事が確認された。カタラーゼ添加によって強光域からの退避行動が抑えられた事から、強光時に発生する過酸化水素が強光ストレスの原因物質であることが明らかになった。今回の結果は、共生藻の光合成が宿主動物の行動を規定していることを示唆している。
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高橋 美佐, 重藤 潤, 浅田 浩二, 坂本 敦, 森川 弘道
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0447
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
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二酸化窒素(NO
2)曝露したシロイヌナズナ葉のニトロ化されたタンパク質を網羅的に解析したところ、ほとんど全てPSII表在性タンパク質PsbOまたはPsbPであった。この事実を契機として詳細を検討した結果、我々は、「光・窒素・酸素ストレスによってPSII酸素発生中心が蒙る損傷の分子的実体は、PsbO/PsbPのチロシン残基のニトロ化である」との仮説を考えている。
プロテオミクス:NO
2曝露したシロイヌナズナ(4週齢)葉から抽出したタンパク質を二次元電気泳動で分離、抗ニトロチロシン(3-NT)抗体を用いてウェスタンブロット解析した結果、>1000個のSYPR Rubyで染色されたタンパク質スポットの内、7個が3-NT抗体と反応した。MALDI-TOFMS分析、PMFによりニトロ化タンパク質を同定した結果、全てPSII表在性タンパク質PsbOまたはPsbPに帰属された。単離葉緑体を用いた解析からも同様な結果が得られた。
酸素発生測定:シロイヌナズナ単離チラコイド膜を用いて、酸素発生量とタンパク質ニトロ化に対すNO
2曝露の効果を解析した。その結果、PsbO/PsbPのニトロ化と酸素発生には負の相関が認められた。
光および活性酸素の効果:NO
2曝露処理によるPsbO/PsbPのニトロ化は、光および活性酸素処理により促進されることが新たに分かった。
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Masaya Ishikawa, Taeko Toshida, Asuka Oda, Ikuko Hasegawa, Ken Sawada
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0448
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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Trachycarpus fortunei is probably most cold-hardy palm species. They tolerate -14C and can grow up to Sendai. NMR micro-imaging non-invasively visualized freezing behavior of
Trachycarpus leaves. Epidermis and water in the vascular bundles froze around -10C while the mesophyll cells remained deep-supercooled until -14 to -22C. The results suggest that most live tissues employ deep supercooling as the mechanism of cold hardiness in this plant, which makes it a good model system to study mechanisms of deep supercooling. DTA revealed that
Trachycarpus leaves had a HTE starting around -10C, unusually low compared to other cold-hardy plants. To elucidate factors involved in deep supercooling and low HTE, we are currently analyzing substances extracted from the leaves. The extract has the ability to stabilize deep-supercooling of water and also work as anti-ice nucleating agents. The extract can inhibit the ice nucleation by several known ice nucleators such as ice nucleating bacteria.
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丹野 有里子, 猿山 晴夫, 上村 松生
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0449
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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イネを始めとする低温感受性植物では、低温傷害過程で活性酸素が大量に発生し、傷害を引き起こす一方、活性酸素除去系酵素を持つことで傷害を回避することが知られている。我々はすでにコムギカタラーゼ遺伝子を過剰発現させたイネが野生型イネよりも高いカタラーゼ活性を維持すること、形態上でも葉の萎れが遅延することを明らかにした。しかし、形質転換体が低温耐性を獲得した詳細なメカニズムに関しては不明なままである。今回、我々は、低温下で形質転換体が低温耐性を獲得したのは、高いカタラーゼ活性が低温耐性に関与するタンパク質の酸化を防ぎ、その機能を維持したためと推定し、低温下で酸化されるタンパク質の存在を明らかにすることを試みた。低温下では、根の吸水能力の低下により葉の傷害が生じることが知られているため、我々は根に着目し、根のみ低温に曝す実験系を用いた。まず、電解質漏出法の結果、葉では根よりも傷害を受けること、形質転換体では野生型よりも傷害が抑制されることが分かった。また、野生型では低温暴露により大幅に酸化タンパク質が増加するが、形質転換体では酸化タンパク質の増加抑制が見られた。この結果から、形質転換体は低温下での酸化タンパク質の発生を抑制し、低温耐性を獲得することが示唆される。現在、細胞分画後の酸化タンパク質の解析を行っており、細胞内局在を考慮した解析結果も報告する予定である。
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圓山 恭之進, 城所 聡, 高崎 寛則, 成田 一義, 櫻井 望, 鈴木 秀幸, 斉藤 和季, 柴田 大輔, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
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0450
発行日: 2008年
公開日: 2008/12/18
会議録・要旨集
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陸上植物は、自立的な移動手段を持たないため、様々な自然環境に瞬時に応答して適応するメカニズムを持っている。低温及び乾燥環境下では複数の代謝酵素をコードする遺伝子の発現が誘導され、種々の糖、アミノ酸、有機酸、フラボノール等の蓄積量が増加する。これら低温及び乾燥環境下における代謝酵素遺伝子の発現や代謝産物の蓄積量の変化は、ストレス耐性に関与すると考えられている。しかしながら、これまでイネの代謝産物に関する大規模解析は行われていなかった。
本研究では、ゲノムレベルで網羅的に解析できるイネを用いて、低温及び乾燥環境下におけるトランスクリプトーム及びメタボローム解析を行い、低温及び乾燥耐性に関与すると考えられる因子を同定した。具体的には、低温及び乾燥処理したイネ植物体地上部からRNAを抽出して、44K イネオリゴアレイを用いて低温及び乾燥誘導性遺伝子を同定した。同定した遺伝子群から代謝関連酵素遺伝子を抽出した後、系統分類して鍵酵素を選抜した。低温及び乾燥環境下では、数種のデンプン分解酵素、アミノ酸合成酵素、二次代謝関連酵素をコードする遺伝子のmRNAの蓄積量が増加した。さらに、低温及び乾燥処理したイネ植物体地上部から代謝産物を抽出して、LC/MS、GC/MS、CE/MSを用いて蓄積量が変化する代謝産物を同定した。低温及び乾燥環境下では、数種のオリゴ糖、アミノ酸、フラボノイドの蓄積量が増加した。
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